半導体

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半導体(はんどうたい)とは、 一定の条件下で電気を通す物質である。電子回路素子として使われている。幅広い製品に使われるため、「産業の米」とも言われる。

登場の背景[編集]

かつて電子回路素子として真空管が多用された。真空管には2極真空管、3極真空管、多極真空管がある。以下、2極真空管について記述する。2極真空管は陰極(カソード)と陽極(アノード)があり、陽極を負電位とすると電子は陽極のために反発されて、そこには入り込まないから電流が流れない。陽極に交流電圧をかけた場合には、電流は陽極が正電位になっている半周期分だけ管内を一方的に流れるから、いわゆる整流作用を示す。
しかし、小型化しにくいこと、電力消費の大きいこと、破損しやすいこと、構造が複雑なために高価となることから、役割のほとんどが構造が簡単な半導体デバイスに置き換えられた。昨今、大電力用途など特殊な用途にのみ使われている一方、音色を重視するマイクロフォンへの使用が見直されるなど、音響機器で復権しているレガシーデバイスとなっている。

概要[編集]

抵抗率が導体と不導体の中間の物質を半導体という。固体の導体はエネルギーバンドのギャップが小さいため自由電子を多く持ち電気伝導性があるが、不導体(絶縁体)はエネルギーバンドのギャップが大きいため自由電子を持たず、電気伝導性に乏しい。半導体はエネルギーギャップとしては半導体と不導体の中間で電圧をかけることなどにより、電流を流す性質を持つ。

  • 真性半導体(純粋半導体)は、低温では伝導性がほとんどないが、温度が高くなると、自由電子に相当する電子が発生し、伝導性を持つようになる。これは一般の導体金属とは逆の性質を持っていることになる。[1]
  • 不純物半導体シリコンゲルマニウムにごく微量のある種の元素が不純物として入ったものは、そのために伝導性が与えられる。
  • 元素の周期表の14族のシリコンやゲルマニウムは原子価が4価の元素で、原子の最も外側の軌道をまわる電子の数は4個である。これらの電子を価電子という。以下、ゲルマニウムを例にとる。
  • ①n型半導体
    • 純粋なゲルマニウムの結晶中のある原子が、第15族の元素、例えばヒ素の原子と置きかわったとすると、ヒ素の価電子は5個であるから電子が1個余り、これが自由電子と同じ働きをし、電気伝導性を生じる(電子伝導)この電子を過剰電子という。このように第14族のシリコンやゲルマニウムに、ごく微量の第15族の元素が混じったものをn型半導体という。
  • ②p型半導体
    • 純粋なゲルマニウムの結晶中のある原子が第13族の元素、例えばインジウムの原子と置きかわったとすると、インジウムの価電子は3個で結晶を作るのに必要な電子数が不足し、電子のないところができる。これをホール(または正孔)という。このホールに近くの電子が移ると、その電子の位置が空席、すなわちホールとなる。電子が次々とホールに移動すると、結局ホールが電子の運動と逆向きに移動することになる。電子とホールの変位は逆向きであるから、ホールの運動は正の荷電粒子の運動と同じ働きとなり、電気伝導性の原因となる(ホール伝導)。このように、第14族のシリコンやゲルマニウムにごく微量の第13族の元素が混じったものをp型半導体という[2]

半導体デバイス[編集]

ダイオード[編集]

元来は2極真空管のことをいったが、現在は半導体ダイオードのことをいう。
構造はp型とn型の半導体結晶片を接合し、両端に電極を接続したものである。半導体ダイオードはp型部のアノード(+)とn型部のカソード(-)で構成され、p型部からn型部へは電流が流れるが、n型部からp型部へは流れにくい。
このように、ダイオードは、順方向の電圧のときだけ電流が流れるので、交流直流に直す回路に使われる。この働きをダイオードの整流作用という。非可制御デバイスであり、いわゆるスイッチング作用はない。

トランジスタ[編集]

3個の不純物半導体を組み合わせたもので、2つの同型の半導体はコレクタ、エミッタ端子となり、間に挟まる別型の半導体はベース端子となる。2つのp型半導体の結晶片の間に、薄いn型半導体の結晶片を挟んだ構造のpnp型トランジスタと、2つのn型結晶片の間に、薄いp型結晶片を挟んだ構造のnpn型トランジスタとがある。
電気信号を増幅させる作用がある他、スイッチング素子としても使用できるため、リレーの代替にもなる。

サイリスタ[編集]

pn接合を三つ以上持つデバイスの総称である。これはnpn構造とpnp構造のトランジスタが接合したものとみなされる。真空管のほとんどはトランジスタに置き換えられたが、現在の構造のトランジスタでは大容量のものは作れない。しかし、pnpn構造をもったサイリスタでは、電圧で1500V、電流数百A程度のものが作られて数多く用いられ、パワーエレクトロニクスの分野が開拓された。

  • ①.逆阻止3端子サイリスタ(オフ→オン)
    • pnpn4層構造で3端子を持つデバイスである。単にサイリスタと呼ぶことが多い。これはオン機能可制御タイプのスイッチ、すなわちオフ状態からオン状態への移行は制御できるが、オン状態からオフ状態へはゲートでは制御できず、この移行は主回路状態によって支配されるデバイスである。直流では別回路が必要になるので最近は使用されなくなったが、交流では電流の向きが絶えず逆向きになる関係で回路上でもオン→オフ出来るので現在も使われている。
  • ②.GTOサイリスタ(オン↔オフ)
    • ゲートターンオフサイリスタの略である。オンオフ機能可制御タイプのスイッチ、すなわちオフ状態からオン状態へ制御できるとともに、オン状態からオフ状態へも制御できるデバイスである。逆阻止3端子サイリスタに取って代わったが、モーター音が大きくなること、熱を発生させること、回路が複雑になることからIGBTに取って代わられた。

パワートランジスタ[編集]

  • ①.バイポーラパワートランジスタ(オン↔オフ)
    • 単にパワートランジスタと称されることもある。本来、トランジスタは増幅機能を持つ半導体デバイスだが、パワーエレクトロニクスではスイッチング作用を持つ、オンオフ機能制御可タイプのデバイスである。
  • ②.パワーMOSFET
  • ③.IGBT

使用例[編集]

電車の制御[編集]

抵抗制御直流電動機を駆動する電車は構造が簡単で、19世紀から1960年代まで採用されていた。しかし、抵抗器に流れる電流は熱として捨てられていたので、電力の節約のために抵抗器を使わない方式を採用することになった。サイリスタのようなパワー半導体デバイスが実用化されると抵抗器を機械的に切り替えず、半導体スイッチが入ったサイリスタ位相制御で直流電動機を駆動する国鉄711系電車が登場した。これは北海道での使用に際し、が抵抗器の機械的接点に入って支障が出ないよう、雪切室を設けるとともに行った耐寒耐雪装備である[3]
1960年代後半からは直流電車としてチョッパ回路による高周波でのオンオフ制御による電圧制御が出来るシステムが開発された。これにより制動時に電気エネルギーを架線を介して近くの電車に使ってもらうこと(回生)ができ、電力の節約になった。直流電動機はブラシなどの消耗品があり、保守に手間がかかるため、接触部分の少ない交流電動機を使うのが最良の方法だが、その中で三相交流電動機がもっとも直流電動機に特性が似ており、電車に使うのに適していた。そのためには直流交流に変換するインバータが必要だが、これに適した半導体素子がなかなか現れなかった。1980年代後半からはGTOサイリスタで回路を高速でオンオフして三相交流を生み出すシステムが開発されたが、2000年代後半からはさらに高性能な半導体素子であるパワートランジスタ、IGBTにとって代わった。
交流電化区間ではコンバータとインバータを共に装備した電車が必要であるが、他産業で実用化している交流 - 交流変換のサイクロコンバータで鉄道に適したものは、まだ現れていない。

自然エネルギー発電[編集]

風力発電太陽光発電といった自然エネルギー発電化石燃料を消費しない発電として注目を集めているが、天候に左右され、安定したエネルギーを得られないという短所がある。そこで、電機子チョッパ、インバータ制御によって不安定な電圧を一定にする技術が開発されている。

太陽電池[編集]

セレンに電極を2か所設置して抵抗Rを接続し、を当てると電流が流れる現象は19世紀後半に知られており、効率は低いが、研究が重ねられ、これが後の半導体の研究に繋がった。pn結合の半導体素子(ダイオード)に抵抗を接続してを当てると、n型半導体からp型半導体に電流が流れる。これが太陽電池で、太陽光発電として使用される。発生する電流は直流なので消費者に送電するときは半導体を用いて交流にする必要がある。シリコンの単結晶でできており、高温で焼成するので高価である。

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 堀孝正『パワーエレクトロニクス』オーム社出版局2002年2月25日第1版第7刷発行
  • 酒井善雄『電気電子工学概論』丸善株式会社1997年5月15日第4刷発行。
  • 力武常次、都築嘉弘『チャート式シリーズ新物理ⅠB・Ⅱ』数研出版株式会社新制第11刷1998年4月1日発行

外部リンク[編集]

脚注[編集]

  1. この半導体の例として単体ではケイ素(シリコンSi)、ゲルマニウム、セレンなど、化合物では酸化亜鉛、酸化銅、硫化鉛。
  2. 結晶内の電流に寄与するのが負の電荷をもつ電子のとき、n型半導体といい、正の電荷に相当するホールのとき、p型半導体という。
  3. 雪切室の装備は国鉄115系電車国鉄417系電車国鉄413系電車にも設けられた。