全農号
種別 | 高速貨物列車 |
列車番号 | 9077列車~9076列車 |
運行事業者 | 日本貨物鉄道(JR貨物) 全国農業協同組合連合会(JA全農) 全農物流(ZLC) |
走行路線 | 青い森鉄道線 奥羽本線 羽越本線 白新線 信越本線 日本海ひすいライン あいの風とやま鉄道線 IRいしかわ鉄道線 北陸本線 湖西線 東海道本線 おおさか東線 片町線 関西本線 |
起点駅 | 八戸貨物駅 |
終着駅 | 百済貨物ターミナル駅 |
両数 | 20両 |
使用車両 | JR貨物EF510形電気機関車 |
運行開始年 | 2023年(令和5年)11月5日 |
備考 | 東青森駅、秋田貨物駅、新潟貨物ターミナル駅、金沢貨物ターミナル駅に途中停車 |
全農号(ぜんのうごう)とは、日本貨物鉄道(JR貨物)が八戸貨物駅→百済貨物ターミナル駅間で設定している、コンテナ貨物列車の愛称[1][2]。全国農業協同組合連合会(JA全農)、全農物流(ZLC)、日本貨物鉄道(JR貨物)の共同運行によるブロックトレイン(貸切列車)である。日本海縦貫線を経由する米専用の輸送列車であることから、かつて北海道・東北から日本海を通り大阪まで運航していた北前船になぞらえて「現代の北前船」「北前貨物」とも呼ばれている[3]。
青い森鉄道線、奥羽本線、羽越本線、白新線、信越本線、日本海ひすいライン、あいの風とやま鉄道線、IRいしかわ鉄道線、北陸本線、湖西線、東海道本線、おおさか東線、片町線、関西本線を経由する。
概要[編集]
「物流の2024年問題」への対策に向けて、米の一大産地である東北地方・新潟県・北陸地方から米の消費地である東海地方・西日本へ、安定した米の供給輸送を実現するために設定され、2023年(令和5年)11月5日より『全農号』として八戸貨物駅→百済貨物ターミナル駅間で運行されている[1][2][4][5][6]。「物流の2024年問題」や慢性的なドライバー不足などにより、農産品輸送の今後の輸送力確保に強い危機感を持つJA全農・全農物流に対し、JR貨物が米の産地である北東北や日本海側各地区を縦断する専用列車の運転を提案したことで運行が実現した[4][7]。米のみを輸送する専用の貨物列車は日本国内では過去に例がなく、史上初の取り組みとなる。
主に玄米を積載しており、1度の運行で10トントラック50台分の代替輸送が可能。2023年度中は1ヶ月に2回程度(隔週日曜日[注 1]運行)、2024年度からは月4回程度(毎週日曜日[注 1]運行)の運行が予定されており、月に4度運行される場合はJA全農が販売先まで輸送する玄米の総量の2%(約2万4000トン)が本列車に転換出来る[5]。今後の運行では玄米だけでなく精米や大豆も輸送予定[8]。
定期運行開始前の2023年(令和5年)2月・3月・7月には計3回の試験運行が実施された[4][9][10]。2月と3月の2回は玄米のみが使われたが、7月の試験では玄米の他に大豆と精米を積載したうえで、穀温計を使って輸送中の温度変化などの検証を実施。さらに到着後に実際に炊飯をして米の品質の確認を行い、いずれの品目においても夏場の高温環境下においても品質への影響がないことが確認された[4]。JR貨物では、貨物列車を貸切る際の1度のコンテナ積載量の最低要件を80基としており、JA全農側も一度にこの量の発注が集まるかが懸念事項であったが、東北のみならず新潟県や北陸などからも米を積載し、懸命な取引先からの発注確保により100基分のコンテナを動かすことに漕ぎ着けた[11][12]。
編成は牽引する機関車を除いてコンテナ車20両で構成され、積み荷のすべてにJR貨物の汎用12フィートコンテナが用いられ、コンテナは最大で100個積載される。また、コンテナ集配を担当する利用運送事業者の負担を軽減するため、パレットやフレキシブルコンテナバッグ(フレコン)の形態でコンテナに積載される[13]。列車種別は高速貨物列車Bで、およそ23時間で青森と大阪を結ぶ。列車番号は八戸貨物→東青森間が9077列車、東青森→百済タ間が9076列車[14][注 2]。
停車駅[編集]
- 荷役停車駅
- 八戸貨物駅 → 東青森駅 → 秋田貨物駅 → 新潟貨物ターミナル駅 → 金沢貨物ターミナル駅 → 百済貨物ターミナル駅
- 荷役を伴う停車駅のみ記載。
- 八戸貨物→百済タ間の片道運行。百済タ→八戸貨物間は『全農号』としては運行されない[15]。
沿革[編集]
使用車両[編集]
現在の使用車両[編集]
- 富山A14仕業に全ての行路が設定されている。全農号は定期列車としての4076列車とは異なり、米原操車場を経由せずに湖西線を西進する[14]。
- 2023年12月現在、代走等を含むEF510形以外の牽引例は確認されていない。
立浪のせい[編集]
全農号運転開始のニュースを聞きつけたインターネット上の反応の1つに「立浪のせい」というワードが飛び出した。
これは中日ドラゴンズの立浪和義監督がシーズン中に選手に米を食べさせなかった「白米禁止令」を発動したことが由来。2023年の8月頃に監督が調子を落としていた細川成也に対し米の量を減らさせたところ復調したという理由で、同月3日から球場食堂での白米の提供を禁止したというものである[20]。このことから、全農号が名古屋を経由しないのは米を禁止させた「立浪のせい」だというジョークが流布された[21]。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ↑ a b c “米専用列車「全農号」 11月から運行スタート ~鉄道へのモーダルシフトにより2024年問題へ対応~” (日本語) (PDF) (プレスリリース), 全国農業協同組合連合会(JA全農)・全農物流株式会社・日本貨物鉄道株式会社, (2023年11月1日), オリジナルの2023年11月19日時点によるアーカイブ。 2023年12月15日閲覧。
- ↑ a b c “米専用列車「全農号」 11月から運行スタート ~鉄道へのモーダルシフトにより2024年問題へ対応~”. 全国農業協同組合連合会(JA全農)・全農物流株式会社・日本貨物鉄道株式会社 (2023年11月1日). 2023年12月15日確認。
- ↑ “米専用列車「全農号」が大阪・百済貨物ターミナル駅へ到着”. 鉄道プレス Osaka-Subway.com (2023年11月6日). 2023年12月15日確認。
- ↑ a b c d e “「24年問題」見据え、米専用列車を試験輸送=JR貨物/JA全農”. カーゴニュース (2023年7月6日). 2023年12月15日確認。
- ↑ a b “JA全農グル―プ/JR貨物、米専用列車「全農号」が定期運行開始”. カーゴニュース (2023年11月9日). 2023年12月15日確認。
- ↑ “JR「米専用列車」爆誕!? 八戸~大阪で約1000km走破「全農号」運行開始で"安定供給ルート"めざす”. 乗りものニュース (2023年11月1日). 2023年12月15日確認。
- ↑ “お米専用の貨物列車“全農号””. TOKYO FM (2023年4月27日). 2023年12月15日確認。
- ↑ a b “[物流24年問題]「全農号(米専用列車)」いざ出発 玄米2・4万トン鉄道輸送に”. 日本農業新聞 (2023年11月7日). 2023年12月15日確認。
- ↑ “米輸送の専用貨物列車「全農号」を運行”. JA全農ウィークリー (2023年4月24日). 2023年12月15日確認。
- ↑ a b “米運搬専用に貨物列車 全農が青森→大阪で実証 「24年問題」対応”. 日本農業新聞 (2023年3月8日). 2023年12月15日確認。
- ↑ “23年度に米運搬専用貨物列車定期化も 2度の試験輸送で手ごたえ JA全農”. 農業協同組合新聞 (2023年3月29日). 2023年12月15日確認。
- ↑ “【JR貨物】八戸-大阪を結ぶ米専用「全農号」を運転開始へ”. 鉄道プレス (2023年11月1日). 2023年12月15日確認。
- ↑ “JR貨物、“お米”専用列車「全農号」 11月5日定期運行開始!物流2024年問題に対応”. レイルラボ (2023年11月2日). 2023年12月15日確認。
- ↑ a b “富山機関区EF510運用状況”. 貨物ちゃんねる. 2023年12月15日確認。
- ↑ “お米輸送列車「全農号」運転開始”. 鉄道ファン railf.jp (2023年11月6日). 2023年12月15日確認。
- ↑ “全国農業協同組合連合会 全農物流株式会社”. 日本貨物鉄道株式会社. 2023年12月15日確認。
- ↑ みやがわ (2023年11月1日). “今月5日より米専用輸送列車「全農号」運行開始へ”. 新・貨物ちゃんねる. 2023年12月15日確認。
- ↑ “コメ専用貨物列車の全農号が運行”. 徳島新聞. (2023年11月6日) 2023年12月15日閲覧。
- ↑ “コメ輸送貨物列車「全農号」運行スタート”. 東奥日報. (2023年11月6日) 2023年12月15日閲覧。
- ↑ “中日、“米騒動”以外にも食べ物の恨み! 前指揮官はラーメンを禁止、球団が食事代ケチったことも”. niftyニュース (2023年8月26日). 2023年12月15日確認。
- ↑ Osaka-Subway.com (2023年11月4日). “八戸-大阪を結ぶ米専用列車『全農号』誕生。「現代の北前船」「立浪のせい」と話題に”. note. 2023年12月15日確認。
関連項目[編集]
日本海縦貫線の主なJR旅客列車 |