えちごトキめきリゾート雪月花
えちごトキめきリゾート雪月花(えちごトキめきリゾートせつげっか)は、えちごトキめき鉄道が2016年から保有する観光列車である。本項では車両に関してはET122形1000番台を参照して頂きたい。
概要[編集]
いわゆる観光列車にあたる車両・列車であり、えちごトキめき鉄道では「リゾート列車」の呼称で呼ばれている。
主にえちごトキめき鉄道線内を周遊し、車内では食事を提供する。
本列車が運行されるきっかけ[編集]
2015年3月14日の北陸新幹線金沢延伸に伴い、新潟県内の並行在来線であるJR東日本信越本線・JR西日本北陸本線はJRから分離、三セク(えちごトキめき鉄道以下トキ鉄と呼称)化された。
トキ鉄社内では「観光列車の運行」が計画されていた。
しかし、2011年の時点では気動車2両を制作し走らせるということのみが決まっており、「具体的なことは何もないところからのスタート」だった。
その後、開業前の2014年に策定された同社の「経営基本計画」中で、「沿線の観光振興に寄与するリゾート列車 - 観光列車」の運行と、「リゾート列車の車両 - ディーゼル車」2両の新製を発表。開業前の2015年1月からはデザイン案が公開され、2016年3月31日付で車両が落成した。営業運転は2016年4月23日から行われている。
詳細は「えちごトキめき鉄道ET122形気動車#1000番台」を参照
愛称[編集]
白居易の漢詩で使われた、雪・月・花という自然の美しい景物を指し、日本では転じて「四季折々の良い眺め」「四季を楽しむ」といった含みを持つようになった語「雪月花」に由来する。
愛称はデザイン案の公開と同時に公募を行なった。だが、「応募されたものを参考としつつも、自分たちできちんとしたストーリーを組んで名づけるべきであるっ…!」との意見から、応募案からは選ばれず、結局は当時の社長、嶋津が発案した現行のものが採用された。
コンセプト[編集]
デザインコンセプトは「新潟県にしかない観光列車の決定版を創り上げ、全く新しい視点と車窓、五感を楽しむ旅の時間を提供する」である。
また、全国に観光列車が乱立していることを踏まえ、観光列車としては珍しい完全オリジナルの新造車であることを活かし「新潟県ならではのデザイン、雪月花にしかないサービスを提供し、インパクトのある鉄道車両デザイン」が指向されている。
なお、「all made in NIIGATA - 訳すとすべてのものが新潟県産のもの」が標榜され、製造には以下の企業が携わった。
- 新潟県に工場を持つ新潟トランシス
- 車内外に使用される金属類はすべて金物生産で有名な燕・三条地域のものを使用。
- 内装に用いられる木材は各号車および場所ごとに異なる新潟ゆかりの国産木材を用いた。
- デッキ・バー部などの床材は滑り止めも兼ね、鉄道車両史上初となる瓦を使用。この瓦は阿賀野地域の安田瓦となっている。
このほか内外装ともに新潟の四季や「雪月花」をモチーフとした意匠が施されている。
車内コンセプト[編集]
- 内装は和モダンを基調とし、乗客を「新幹線のグリーン車またはグランクラスに乗って観光地に向かわれる層」と仮定。「一等車クラスの居住性」を確保すべく、座席幅は北陸新幹線E7・W7系のグリーン車・グランクラス以上の550mm、シートピッチは新幹線グリーン車やフランスSNCFが運行する高速列車TGVの一等車並とした。ちなみにまじですごーく広い。
- 「見たことのない眺望体験」「乗る度に異なる旅」を提供すべく、さまざまな座席配置を設定。運転室直後に関しては通常より床面が600mm高いハイデッカー構造を採る。なお、家具類の制作は山形県の天童木工が担当した。
- 客室内の照明は照明プランナーの三島立起が監修。
運行[編集]
えちごを、めしあがれ
- えちごを、めしあがれをコンセプトにした食事とともに観光ができる。なお、
- 食材へのこだわり - 「雪月花」とは、「四季折々のよい眺め」。だから地元の旬の食材にこだわる。車窓に広がる沿線地域の豊かな自然からの恵みである。
- 食材の活かし方へのこだわり「午前便」「午後便」では、地元食材の良さを知る地元出身の一流料理人が、生産者の現場を直接訪問し、オリジナルメニューを考案。難度の高いレシピを確かな技術で調理する。
という2つのこだわりをあげている。
ここからは列車ごとに紹介する。
午前便[編集]
午前便の食事は、「ミシュラン二つ星が手がける・越後上越フルコース」。十日町市出身の二つ星シェフ飯塚隆太がオリジナルレシピを考案。
新潟の旬の食材をフレンチに昇華させた、繊細で華やかな料理の数々をいただきながらゆっくりと観光できる。なお、食事は重箱となっている。
重箱[編集]
- 一段目
前菜。重箱の中身は以下の通り。
- フレンチの前菜でおなじみの海老のフランの上には、かにをふんだんに使用。
- 新潟県内有数の良港が集まる日本海ひすいライン。新鮮なバイ貝と蛸はバジルソースでさっぱり香り豊かに仕立てられている。
- 身がジューシーな鯛は甘酸っぱいエスカベッシュに。
- 地元産コシヒカリの稲わらを豊富に与えられて育ったくびき牛は、柔らかくローストビーフに仕上げ、ひんやりコンソメジュレと一緒に。
- 二段目
メインディッシュ。中身は以下の通り。
- 二段目は新潟野菜をフレンチに仕立てたメインディッシュ。
- クロケットは、妙高市の伝統調味料「かんずり」で香り高く。
- カラフルな野菜を薄く切った大根で巻いた、見た目も美しい野菜巻き。
- 新潟の夏野菜を代表する茄子でオイルサーディンを包みこんだバロティーヌ。
- 新潟地鶏の牛蒡巻きは、ゆっくりと火を入れて柔らかく仕上げた。
- 三段目
主食となっている。中身は以下の通り。
- 三段目にはオリジナリティ溢れるポークリエットときのこのディップサンドが。[1]使用している「妻有ポーク」は濃厚なうまみがあり、ワインとの相性が抜群。
- かわいい手まりおにぎりには、冷えてもおいしい県内産コシイブキを使用。笹の葉をひらいて、妻有ポークと塩引鮭とのマリアージュを楽しむ。
スープ[編集]
この列車にはスープもつけられている。このスープはとうもろこしの甘みが凝縮されたスープとなっている。とても優しい味わいだ。
デザート[編集]
フレンチコースなので食後は優雅にデザートを。四季折々の旬の食材をふんだんに使用。
- 新潟の桃を使ったコンポート。カカオのほろ苦い甘さが引き立つクリーム。
- マカロンは食後のコーヒーと一緒に。
午後便[編集]
午後便のお食事を担当していただいているのは、江戸時代から続く地元糸魚川の老舗割烹・鶴来家。この地域で採れる旬の食材を伝統の技で折箱に詰めた、和食のフルコースは、遅めのランチ、早めのディナー、どのシーンでもはんなりとした午後の上質なひとときを演出している。日本海に沈む夕日を眺めながら、ゆったりとした旅を。
重箱[編集]
- 一の重
一の重は和のご飯物が入っている。中身は以下の通り。
- 蓋を開けると、糸魚川市の名産・紅ズワイ蟹を贅沢に使ったちらし寿司が。蟹の下には、地元の海洋高校が開発した魚醤「最後の一滴」をプラスした錦糸卵を、彩りよく引き詰めた。
- 二の重
二の重には郷土料理の他、その土地で取れた山の幸をたっぷり使っている。新潟の味がふんだん!中身は以下の通り。
- 新潟の味をぎゅっと詰めた二の重。糸魚川の郷土料理「こくしょ」は、具は大きめ、片栗粉などでとろみをつけ、冷まして味がしみ込んだものを食べる。
- 香り高く歯ごたえのよい「うどぶき」は地元にしかない希少な山菜で、春に収穫して塩蔵し、煮物にするのが一般的。
- 新潟県産のさつまいもを甘く煮たレモン煮は箸休めにどうぞ。
- 牛肉巻きは、新潟県産の牛肉で巻き、甘辛く味付けした。
- 日本海で採れた「えご草」を水だけで固めた「えご練り」は新潟を代表する郷土料理、甘酸っぱい紅白なますと一緒に食べる。
- 三の重
三の重には地元新潟の海の幸を余すことなく使用。二の重と合わせて新潟コースを楽しめる。中身は以下の通り。
- 旬を詰め込んだ三の重。糸魚川の鯛は、北大路魯山人が相馬御風のため自ら調理したとして著名。文献より調べた魯山人の調理方法を参考にした山椒焼きは、上品な辛みが鯛によく合う。
- 夏が旬の新潟の鱸は、オイルでふっくらと焼いた。
- 優しい口どけの冷やし茶碗蒸しは、いくらをたっぷりと添えて。
- 新潟では「甘えび」のことを、鮮やかな赤色と形から「南蛮えび」と呼ぶ。香ばしく、かつ柔らかく焼きあげた。
- コク深い真鯛の身寄せには、さっぱりとしたトマトの煮凍りをそえた。
味噌汁[編集]
味噌汁は素朴だがとても上品な物となっている。なお、具材に関しては骨ごと丁寧にすりつぶしたいわしのつみれを使用。
食後には[編集]
- 和のお菓子。寒天などが提供される。
- 食事の余韻を楽しむ甘味。「さるなし」をさっぱり寒天で。甘酒は糸魚川流に生姜を入れて。六方焼は上品な甘み。
飲み物[編集]
- ウェルカムドリンク
- 乗車の際、特別な「初めの一杯」を用意。
- 新潟市西蒲区のワイナリー「Fermier」の醸造家・本多孝氏によるスパークリングワインを、雪月花のためだけに小出ししていただいた。
- なお、ノンアルコールのドリンクも用意されている。お酒を飲まない人にとってはありがたいサービスだ。
- 食後のコーヒー
- 「雪月花」のコーヒーは全て新潟市の鈴木コーヒーが作る「雪室コーヒー」で用意した。中でもホットコーヒーは雪月花の食事に合うよう、独自のブレンドをしてきた「雪月花オリジナルブレンド」です。雪室で寝かせたコーヒー豆は雑味がなく、まろやかな味わいの中に豊かなコクが余韻を残す。
- このコーヒーは土産品として車内「さくらラウンジ」でも販売。
- 他にもさくらラウンジでは新潟県らしい土産品、燕市で作られた「ぐいのみ」を購入することができる。
外部リンク[編集]
関連項目[編集]
脚注[編集]
- ↑ ポークリエットとは、豚肉をゆっくり加熱して作るフランスの伝統料理のこと。
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