大内秀明

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大内 秀明(おおうち ひであき、1932年10月17日[1] - 2024年1月9日)は、マルクス経済学者。東北大学名誉教授、仙台・羅須地人協会代表[2]。専門は経済原論、日本経済論[3]

経歴[編集]

東京生まれ[4]。1955年東京大学経済学部経済学科卒業。1960年同大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。明治学院大学経済学部専任講師[1]。1963年「マルクス価値論の形成 : 労働価値説と価値法則」で経済学博士(東京大学)[5]。1962年東北大学川内分校講師、1963年同助教授。1964年東北大学教養部助教授、1971年同教授。1982年文部省在学研究員としてロンドン大学に留学[1]。1987年12月連合総合生活開発研究所理事[6]。1992年東北大学退官。1993年東北科学技術短期大学学長、東北大学名誉教授。1999年東北文化学園大学総合政策学部教授、2003年定年退職[4]。2004年仙台市青葉区作並に「賢治とモリスの館」を開設。2013年「仙台・羅須地人協会」を設立、代表[7]

2004年時点で(社)中小企業研究所理事長、(財)みやぎ建設総合センター所長・副理事長、NPO法人シニアネット仙台理事長[8]。2007年時点で(社)中小企業研究所理事長、(財)みやぎ建設総合センター所長[4]

2024年1月9日、老衰のため入所していた仙台市内の介護老人保健施設で死去した。91歳没[9]

人物[編集]

宇野派の代表的論客[10]東京大学大学院で宇野弘蔵に師事し、『価値論の形成』(東京大学出版会、1964年)、『景気と恐慌』(紀伊國屋書店、1966年)、『日本資本主義の再編成』(現代評論社、1974年)などを刊行[11]大内力の国家独占資本主義論の影響を受け、高度経済成長の破綻のメカニズムを分析し、官民労一体の体制の改変を主張した[3]

日本社会党のブレーンとしても活動した[11]社会主義協会で活躍した「宇野経済学三羽烏」(鎌倉孝夫新田俊三)の1人だったが[3]、1978年時点で協会を離脱していた[12][13]。1978年の社会党第42回大会で社会主義理論センターが設置されると、福島新吾と大内秀明が座長格に、新田俊三、福田豊高木郁朗らが助言者に起用され、「日本における社会主義への道」の見直し、「日本社会党の新宣言」の作成に携わった[13]。1993年2月-8月社会党シャドーキャビネット経企庁長官[14]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『価値論の形成』(東京大学出版会、1964年)
  • 『景気と恐慌――経済危機の本質』(紀伊國屋書店[紀伊國屋新書]、1966年)
  • 『転機に立つ日本資本主義』(現代評論社、1970年)
  • 宇野経済学の基本問題』(現代評論社、1971年、増補1980年)
  • 『多極化のなかの日本経済――戦後体制の崩壊と再編』(河出書房新社、1972年)
  • 『日本資本主義の再編成――高度経済成長とその破綻』(現代評論社、1974年)
  • 『『資本論』の常識――現代の生活を問い直す発想』(講談社[オレンジバックス]、1984年)
  • 『連合新時代の構図』(第一書林、1989年)
  • 『ソフトノミックス』(日本評論社、1990年)
  • 『新しい現実と社会民主主義』(第一書林、1990年)
  • 『世界と日本新しい読み方』(講談社、1991年)
  • 『もう一人のマルクス』(日本評論社、1991年)
  • 『東アジア地域統合と日本経済――アジア単一通貨への道』(日本経済評論社、1998年)
  • 『知識社会の経済学――ポスト資本主義社会の構造改革』(日本評論社、1999年)
  • 『恐慌論の形成――ニューエコノミーと景気循環の衰減』(日本評論社、2005年)
  • 『ウィリアム・モリスのマルクス主義――アーツ&クラフツ運動を支えた思想』(平凡社[平凡社新書]、2012年)
  • 『日本におけるコミュニタリアニズムと宇野理論――土着社会主義の水脈を求めて』(社会評論社[ダルマ舎叢書]、2020年)
  • 『甦るマルクス――「晩期マルクス」とコミュニタリアニズム、そして宮澤賢治』(社会評論社[ダルマ舎叢書]、2022年)

共著[編集]

  • 『経済学概論』(大内力、戸原四郎共著、東京大学出版会、1966年)
  • 宇野弘蔵をどうとらえるか』(清水正徳、海原凛岩田弘山口重克桜井毅鎌倉孝夫降旗節雄山口勇共著、芳賀書店、1972年)
  • 『マルクスを読む――資本論講義』(野坂昭如共著、朝日出版社[Lecture books]、1979年)
  • 『宇野弘蔵 著作と思想』(鎌倉孝夫、林健久佐伯尚美共著、有斐閣[有斐閣新書]、1979年)
  • 『80年代の構想――新しい革新の選択』(富塚三夫高木郁朗共著、毎日新聞社、1980年)
  • 『自立への熱望――ポーランド1980年』(富塚三夫、高木郁朗、新田俊三共著、国際文化出版社、1981年)
  • 『ヨーロッパの政権と労働組合』(真柄栄吉、新田俊三、福田豊、高木郁朗共著、第一書林、1984年)
  • 『土井社会党――政権を担うとき』(田中愼一郎、高木郁朗、福田豊、新田俊三共著、明石書店、1989年)
  • 『転換と新しい構想――ヨーロッパの政権と労働組合』(総評センター編、高木郁朗、住沢博紀共著、第一書林、1992年)
  • 『まちづくりのシナリオ』(清成忠男、伊藤公一、前田壽、樋口兼次、五十嵐敬喜共著、日本経済評論社、1994年)
  • 『建設業再生のシナリオ――住民支援型コミュニティ・ビジネスの展開』(増田聡、みやぎ建設総合センター共著、日本評論社、2004年)
  • 『マルクスの業績と限界――マルクス生誕200年』(村岡到編、久保隆、千石好郎、武田信照、村岡到共著、ロゴス[ブックレットロゴス]、2018年)
  • 『土着社会主義の水脈を求めて――労農派と宇野弘蔵』(平山昇共著、社会評論社、2014年)

編著[編集]

  • 『講座 現代資本主義――戦後体制の崩壊と再編(全6巻)』(鎌倉孝夫、新田俊三共編著、日本評論社、1975-76年)
  • 『資本論研究入門』(桜井毅、山口重克共編、東京大学出版会、1976年)
  • 『経済原論』(鎌倉孝夫共編、有斐閣[有斐閣新書]、1976年)
  • 『講座 現代経済思潮 第2巻 マルクス経済学の現状と展望』(桜井毅、山口重克共編、東洋経済新報社、1978年)
  • 『現代の国家と経済』(柴垣和夫共編、有斐閣[有斐閣選書]、1979年)
  • 『連合時代の可能性――日本型参加の社会システムを求めて』(高木雄郷共編著、総合労働研究所、1988年)
  • 『いま、税金を考える――「税制と国家システム」の選択』(編著、三一書房[三一新書]、1988年)
  • 『賢治とモリスの環境芸術――芸術をもてあの灰色の労働を燃せ』(編著、時潮社、2007年)
  • 『協同の力で復興を――「東北」の豊かな資源を活かす 10・8仙台シンポジウムの報告』(半田正樹、田中史郎共編、変革のアソシエ、発売:JRC、2012年)
  • 『自然エネルギーのソーシャルデザイン――スマートコミュニティの水系モデル』(吉野博、増田聡共編著、鹿島出版会、2018年)

監修[編集]

  • A.ブリッグス著、小林健人訳『マルクス・イン・ロンドン――ちょうど100年前の物語 グラフィック・ベンチャー』(社会思想社、1983年)
  • ウィリアム・モリス、E・B・バックス著、川端康雄監訳『社会主義――その成長と帰結』(晶文社、2014年)

出典[編集]

  1. a b c 東北大学資料館「著作目録(大内秀明)PDF」東北大学記念資料室(著作目録第485号)、1992年3月
  2. 日本におけるコミュニタリアニズムと宇野理論―土着社会主義の水脈を求めて 紀伊國屋書店
  3. a b c 「表現の自由」研究会編著『現代マスコミ人物事典』二十一世紀書院、1989年、501頁
  4. a b c 賢治とモリスの環境芸術―芸術をもてあの灰色の労働を燃せ 紀伊國屋書店
  5. CiNii博士論文
  6. 山田精吾監修、高梨昌鷲尾悦也、加藤敏幸編『「連合」のすべて』エイデル研究所、1990年
  7. 土着社会主義の水脈を求めて―労農派と宇野弘蔵 紀伊國屋書店
  8. 建設業再生のシナリオ―住民支援型コミュニティ・ビジネスの展開 紀伊國屋書店
  9. 大内秀明さん死去 91歳、マルクス経済学者 東北から地域づくりに関する提言続ける 河北新報、2024年1月10日
  10. 高内俊一日本資本主義の「八〇年代論」PDF」『立命館経済学』第29巻第4号、1980年10月
  11. a b 海野正次「大内秀明」、現代革命運動事典編集委員会編『現代革命運動事典』流動出版、1981年、36頁
  12. 森裕城『日本社会党の研究――路線転換の政治過程』木鐸社、2002年
  13. a b 前田和男「「新宣言」に連合政権論を盛り込む」『図書新聞』No.2909、2009年3月14日
  14. 山口二郎『イギリスの政治 日本の政治』ちくま新書、1998年

関連文献[編集]

  • 村上和光、半田正樹、平本厚編著『転換する資本主義:現状と構想――大内秀明先生古稀記念論文集』(御茶の水書房、2005年)
  • 石河康国『労農派マルクス主義――理論・ひと・歴史(下)』(社会評論社、2008年)

外部リンク[編集]

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