戸原四郎

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戸原 四郎(とはら しろう、1930年1月25日[1] - 2004年10月26日)は、宇野派のマルクス経済学者。東京大学名誉教授。専攻はドイツ経済、景気循環論、現代福祉国家論[2]。妻は農林中金総合研究所の戸原つね子[3]

経歴[編集]

東京生まれ。1952年東京大学経済学部卒業。東京大学社会科学研究所助手(1959年まで)[1]。学部で大内力から指導を受けた[4]。助手になってから宇野弘蔵が主宰する資本論の研究会と地租改正の研究会、翌年から金融資本論の研究会に出席し、宇野から直接指導を受けた[5]。1961年東京大学社会科学研究所助教授、1972年教授。1984-86年所長[2]。1990年東京大学停年退官、東京大学名誉教授[6]。1990年新潟大学経済学部教授[6]。1995年新潟大学定年退官[7]国士舘大学大学院経済学研究科客員教授。2002年国士舘大学定年退職[6]

人物[編集]

宇野理論に立脚して発展段階論の実証的研究を行った[8]。著書に欧州留学中に得た資料を基礎に構成された研究であり[9]ルール地方の重工業と銀行をとりあげ、ドイツ金融資本の成立過程と性格を実証的に分析した『ドイツ金融資本の成立過程』(東京大学出版会、1960年)[10]、宇野弘蔵が原理論として確立した恐慌論を段階論および現状分析論としても取り扱った『経済学全集 7 恐慌論』(筑摩書房、1972年)[11]、戦間期のドイツ経済と恐慌を取り扱った『ドイツ資本主義――戦間期の研究』(工藤章藤澤利治編、桜井書店、2006年)がある[8]。『ドイツ金融資本の成立過程』で1960年度・第3回日経・経済図書文化賞受賞[12]

2006年に桜井書店から同時刊行された戸原の『ドイツ資本主義――戦間期の研究』と玉田美治の『フランス資本主義――戦間期の研究』(戸原四郎、戸原つね子、工藤章編)は『講座 帝国主義の研究――両大戦間におけるその再編成(全6巻)』(青木書店、1972-75年)に収録するために執筆されたものである。1980年に死去した玉田の原稿を友人で講座の共著者であった戸原が編集して完成を目指し、戸原の死去後はその妻のつね子が作業を引き継いだ[3]

2009年に公刊された「宇野弘蔵教授を囲む研究会」(『社会科学研究』第60巻第3・4号、2009年2月/櫻井毅山口重克柴垣和夫伊藤誠編著『宇野理論の現在と論点――マルクス経済学の展開』社会評論社、2010年)は、1958年に宇野弘蔵と門下生の遠藤湘吉(司会)、武田隆夫石崎昭彦長坂聡渡辺寛楊井克巳、戸原四郎、玉野井昌夫宇野博二藤村幸雄徳永重良鈴木鴻一郎森恒夫が出席した研究会の記録である。2005年に戸原つね子が戸原四郎の遺品の中から元原稿である速記録のコピーを発見した[13]。戸原つね子が電子化したものが2009年に東京大学社会科学研究所の紀要に掲載された[14]

ゼミ生に小湊繁[13]加来祥男工藤章などがいる[15]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『ドイツ金融資本の成立過程』(東京大学出版会、1960年)
  • 『経済学全集 7 恐慌論』(筑摩書房、1972年)
  • 『ドイツ資本主義――戦間期の研究』(工藤章、藤澤利治編、桜井書店、2006年)

共編著[編集]

  • 『経済学概論』(大内力大内秀明共著、東京大学出版会、1966年)
  • 『マルクス経済学――理論と実証 大内力還暦記念論文集』(日高普、大谷瑞郎、斎藤仁共編、東京大学出版会、1978年)
  • 『現代のドイツ経済――統一への経済過程』(加藤榮一共編、有斐閣[東京大学社会科学研究所研究報告]、1992年)
  • 『ドイツ経済――統一後の10年』(加藤榮一、工藤章共編、有斐閣、2003年)
  • 『フランス資本主義――戦間期の研究』(玉田美治著、戸原つね子、工藤章共編、桜井書店、2006年)

翻訳[編集]

  • エンゲルス「新ドイツ帝国建設の際の強力と経済」『マルクス・エンゲルス選集 第10巻 フランスの内乱・ドイツ農民戦争』(新潮社、1956年)
  • ベルンシュタイン「社会主義の前提と社会民主党の任務」『世界大思想全集 社会・宗教・科学思想篇 15』(河出書房新社、1960年)
  • エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源――ルイス・H.モーガンの研究に関連して』(岩波書店岩波文庫]、1965年)

出典[編集]

  1. a b 東京大学社会科学研究所編『社会科学研究所の30年――年表・座談会・資料』東京大学社会科学研究所、1977年
  2. a b 戸原 四郎 - 名誉教授 東京大学社会科学研究所
  3. a b フランス資本主義-戦間期の研究 玉田美治著 桜井書店
  4. 戸原四郎『ドイツ金融資本の成立過程』東京大学出版会、1960年
  5. 戸原四郎「宇野先生、研究会、コーヒー」、宇野マリア編『思い草――宇野弘蔵追悼文集』宇野マリア、1979年
  6. a b c ドイツ資本主義-戦間期の研究 戸原四郎著 桜井書店
  7. 『新潟大学経済論集』第58号、1995年3月
  8. a b 吉村信之「第6章 信用論・信用恐慌論の研究潮流PDF」、守健二編『恐慌論の論点と分析』創風社、2014年
  9. 大島通義「戸原四郎著 ドイツ金融資本の成立過程」『三田学会雑誌』第53巻第9号、1960年9月
  10. 熊谷一男「戸原四郎著『ドイツ金融資本の成立過程』PDF」『一橋論叢』第45巻第2号、1961年2月
  11. 大内力戸原四郎『恐慌論』PDF」『経済学論集』第39巻第1号、1973年
  12. 『日経・経済図書文化賞』受賞図書一覧PDF日本経済研究センター
  13. a b 戸原つね子「宇野「経済政策論」研究会記録について」「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter (11)PDF2009年3月17日
  14. 「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter (11) 宇野理論を現代にどう活かすか
  15. 馬場宏二「解説 段階論を巡る研究会記録」「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter (11)PDF2009年3月17日