降旗節雄
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降旗 節雄(ふりはた せつお、1930年6月4日 - 2009年1月28日)は、マルクス経済学者。筑波大学名誉教授、帝京大学名誉教授。
人物[編集]
宇野弘蔵の直弟子で、宇野学派の重鎮。岩田弘とともに鈴木鴻一郎編『経済学原理論(上・下)』(東京大学出版会[経済学大系]、1960-1962年)を実質的に執筆し、宇野『経済原論』を批判して「世界資本主義論の形成にイニシアチブを発揮」した。のちに世界資本主義論を放棄して、宇野の純粋資本主義論へと回帰した[1]。岩田弘の『世界資本主義』(未來社、1964年)と純粋資本主義論の立場をとる大内力の『国家独占資本主義』(東京大学出版会、1970年)の両者を「コミンテルン型の全般的危機論をその前提においていた」と批判し[2]、大島清、榎本正敏とその門下の筑波大学グループとともに覇権国家の基幹産業の生産力によって資本主義の発展段階を特徴付ける現状分析の方法論を考察した[1]。古典的帝国主義はドイツの石炭と鉄鋼業の生産力に基底を置いていたが、現代資本主義はアメリカの自動車・家電を中心とする耐久消費財部門の生産力(アメリカ型生産力=フォーディズム)に基底を置いているとした[1][2]。『著作集(全5巻)』(社会評論社、2001年-05年)や『市場経済と共同体』(編著、社会評論社、2006年)では独自の共同体史観を構想した[1]。門下生に河西勝、山本哲三、青木孝平などがいる。フォーラム90s発起人、トロツキー研究所幹事、社会主義理論学会代表委員なども務めた[3]。
略歴[編集]
- 1930年6月4日、長野県南安曇郡穂高町(現・安曇野市)生まれ[4]。
- 1948年、長野県松本中学校(現・長野県松本深志高等学校)卒業[5]。旧制松本高等学校に入学[4]。
- 1949年、同文科乙類1年次修了[6]。学制改革により信州大学に入学[4]。
- 1953年、同文理学部卒業[7]。信濃毎日新聞記者、長野県木曽山林高等学校(現・長野県木曽清峰高等学校)教師を経て[5][8]、
- 1954年、東京大学大学院に入学[8]。宇野弘蔵ゼミに参加。宇野の定年退官後は鈴木鴻一郎ゼミに参加[5]。
- 1959年、同社会科学研究科に入学。
- 1960年、同研究科博士課程退学。
- 1961年、北海道大学経済学部助手。
- 1962年、同講師。
- 1963年、同助教授[4]。
- 1966年3月、「資本論体系の研究」で経済学博士(北海道大学)[9]。
- 1970年、北海道大学経済学部教授。
- 1974年、筑波大学社会科学系教授。
- 1983年、同大学社会科学類長。
- 1984年、帝京大学経済学部教授[4]。
- 1994年、筑波大学名誉教授[7]。
- 2006年3月、帝京大学を定年退職。
- 2006年、同名誉教授[10]。
- 2009年1月28日、胆管がんのため川崎市中原区の病院で死去、78歳[11]。
著書[編集]
単著[編集]
- 『資本論体系の研究』(青木書店、1965年4月)
- 『科学とイデオロギー――マルクスとウェーバーをめぐって』(青木書店、1968年3月)
- 『歴史と主体性――マルクス主義における社会科学と哲学』(青木書店、1969年7月)
- 『帝国主義論の史的展開』(現代評論社、1972年3月)
- 『宇野理論の解明』(三一書房、1973年3月)
- 『経済学全集 4 マルクス経済学の理論構造』(筑摩書房、1974年6月)
- 『第二版 経済学全集 6 マルクス経済学の理論構造』(筑摩書房、1976年12月)
- 『イギリス 神話と現実』(五月書房、1978年11月)
- 『解体する宇野学派――Zへの手紙』(論創社、1983年4月)
- 『筑波大学――〈開かれた〉大学の実態』(三一書房、1983年5月)
- 『日本経済の神話と現実――高度成長の経済学』(御茶の水書房[あごら叢書]、1987年8月)
- 『「昭和」マルクス理論・軌跡と弁証』(社会評論社、1989年6月)
- 『生きているマルクス』(文眞堂、1993年12月)
- 『日本経済の構造と分析――レクチャー現代資本主義』(社会評論社、1993年4月、新装版1997年3月、増補改訂版2000年9月)
- 『貧しい「経済大国」を撃つ』(BOC出版部、1994年8月)
- 『出口なき日本型不況』(全国労働組合交流センター、1994年11月)
- 『現代資本主義――イラスト版オリジナル』(文、貝原浩絵、現代書館[For beginnersシリーズ]、1997年4月)
- 『貨幣の謎を解く――価値形態論から現代金融まで市場経済の貨幣論的分析』(白順社、1997年12月、新版2020年12月)
- 『金融ビッグバンと崩壊する日本経済――マルクス経済学で斬る危機の構造』(白順社、1998年3月)
- 『降旗節雄著作集(全5巻)』(社会評論社、2001年4月-2005年5月)
- 「第1巻 科学とイデオロギー」(社会評論社、2001年4月)
- 「第2巻 宇野経済学の論理体系」(社会評論社、2002年10月)
- 「第3巻 帝国主義論の系譜と論理構造」(社会評論社、2003年7月)
- 「第4巻 左翼イデオロギー批判」(社会評論社、2004年4月)
- 「第5巻 現代資本主義論の展開」(社会評論社、2005年5月)
共著[編集]
- 『日本のマルクス経済学――その歴史と論理(上・下)』(日高普・林健久・桜井毅・渡辺寛・鈴木博共著、青木書店、1967年9月-1968年1月)
- 『黒田寛一をどうとらえるか』(大久保そりや・高知聰・喜里山博之・長崎浩・富岡裕・成岡庸治共著、芳賀書店、1971年7月)
- 『宇野弘蔵をどうとらえるか』(清水正徳・海原凛・岩田弘・山口重克・桜井毅・鎌倉孝夫・大内秀明・山口勇共著、芳賀書店、1972年11月)
- 『対論・革命運動史の深層』(寺尾五郎共著、谷沢書房、1991年7月)
- 『国際体制論――激動の世界を解読するために』(土井泰彦編著、川中子真・左治木吾郎共著、文眞堂、1992年5月)
- 新装版『国際体制論――パクス・アングロアメリカーナからパクス・コンソーシアムへ』(土井泰彦編著、川中子真・左治木吾郎共著、文眞堂、1994年4月)
- 『廣松渉を読む』(吉田憲夫・吉本隆明・小林昌人・山本耕一・星野智・田畑稔・木前利秋共著、情況出版、1996年7月)
編著[編集]
- 『宇野理論の現段階〈1〉経済学原理論――論争史的解明』(編、社会評論社、1979年12月)
- 『宇野理論の現段階〈3〉現代資本主義論――方法と分析』(編、社会評論社、1983年4月)
- 『日本経済・危険な話』(編、御茶の水書房、1988年9月)
- 『戦時下の抵抗と挫折――創造的戦後への胎動』(編著、社会評論社[思想の海へ「解放と変革」]、1989年12月)
- 『クリティーク経済学論争――天皇制国家からハイテク社会まで』(編、社会評論社、1990年5月)
- 『マルクス主義改造講座』(編著、社会評論社、1995年3月)
- 『『資本論』と社会主義』(宇野弘蔵著、編・解説、こぶし書房[こぶし文庫 戦後日本思想の原点]、1995年6月)
- 『価値論』(宇野弘蔵著、編・解説、こぶし書房[こぶし文庫 戦後日本思想の原点]、1996年12月)
- 『世界経済の読み方』(編著、御茶の水書房、1997年4月)
- 『現代資本主義の原型』(宇野弘蔵・藤井洋著、編、こぶし書房、1997年12月)
- 『弁証法の探究』(加藤正著、編・解説、こぶし書房[こぶし文庫 戦後日本思想の原点]、2006年7月)
- 『市場経済と共同体――ポスト資本主義をめぐって』(編著、社会評論社、2006年6月)
共編著[編集]
- 『資本論を学ぶ(全5巻)』(佐藤金三郎・岡崎栄松・山口重克共編、有斐閣[有斐閣選書]、1977年6月-12月)
- 『宇野弘蔵の世界――マルクス理論の現代的再生』(清水正徳共編、有斐閣、1983年8月)
- 『裁かれる成田空港』(一瀬敬一郎共編、社会評論社、1991年11月)
- 『エンゲルスと現代』(杉原四郎・大藪龍介共編、御茶の水書房、1995年7月)
- 『マルクス理論の再構築――宇野経済学をどう活かすか』(伊藤誠共編、社会評論社、2000年3月)
出典[編集]
- ↑ a b c d 青木孝平「2014年4月26日(土) 第283回現代史研究会 「降旗節雄先生」没後5年記念研究会 降旗理論の展開――唯物史観から共同体史観へ レジュメ 」ちきゅう座、2014年4月13日
- ↑ a b 伊藤誠「4/26降旗節雄没後五周年記念研究会(現代史研究会レジュメ) 資本主義の構造原理をどう考えるか―社会主義再考にむけて― 」ちきゅう座、2014年4月13日
- ↑ 降旗節雄さんの思い出 大藪龍介ホームページ
- ↑ a b c d e 「降旗節雄・略歴および著作目録(PDF)」」『帝京経済学研究』第40巻第1号、2006年12月
- ↑ a b c 「研究生活を振り返る―武井邦夫教授に聞く―」『茨城大学政経学会雑誌』第63巻、1995年3月
- ↑ 寺尾五郎、降旗節雄『対論・革命運動史の深層』谷沢書店、1991年、252頁
- ↑ a b ふ行 社会評論社
- ↑ a b 寺尾五郎、降旗節雄『対論・革命運動史の深層』谷沢書店、1991年、294頁
- ↑ CiNii 博士論文 - 資本論体系の研究
- ↑ 田邉裕「送る言葉(PDF)」『帝京経済学研究』第40巻第1号、2006年12月
- ↑ 降旗節雄氏死去/筑波大名誉教授 四国新聞社(2009年1月28日)
外部リンク[編集]
- 降旗 節雄 - researchmap