柴垣和夫

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

柴垣 和夫(しばがき かずお、1934年1月21日[1] - )は、マルクス経済学者。東京大学名誉教授、武蔵大学名誉教授、新潟産業大学名誉教授。専攻は日本経済論、現代資本主義論、企業論[2]宇野学派の重鎮[3]

経歴[編集]

東京市淀橋区(現・東京都新宿区)生まれ。父は数学者の柴垣和三雄。1942年9月福岡市に転居。1952年3月福岡県立修猷館高等学校卒業。1956年3月東京大学経済学部経済学科卒業。1961年3月東京大学大学院社会科学研究科応用経済学専門課程博士課程単位取得退学[1]。学部では大内力のゼミ、大学院では大内力と宇野弘蔵のゼミに所属。当初は講座派の理論に傾倒していたが、大学院2年目の大内ゼミで原論を学び宇野理論に立脚するようになる[4]

1961年4月東京大学社会科学研究所助手。1964年3月任期満了退職、4月から1965年3月まで同研究所で研究に従事[1]。1964年東京教育大学お茶の水女子大学非常勤講師[2]。1965年4月東京大学社会科学研究所助教授[1]。1966年2月「日本金融資本分析 : 「財閥」の成立とその構造」で経済学博士(東京大学)[5]。1973年6月東京大学社会科学研究所教授。1994年3月東京大学を停年退官(同年5月名誉教授)[1]

1994年4月武蔵大学経済学部教授、1998年4月同大学経済学部長(1999年3月まで)、1999年4月同大学経済学部特任教授。2004年3月武蔵大学を定年退職(同年6月名誉教授)。同年4月新潟産業大学大学院経済学研究科特任教授。2006年4月同大学院経済学研究科委員長(2008年3月まで)。2008年3月新潟産業大学を退職(同年7月名誉教授)。同年4月ハリウッド大学院大学ビューティビジネス研究科教授、2010年4月同大学ビューティビジネス研究科長(2012年3月まで)、2012年4月同大学ビューティビジネス研究科特任教授。2013年3月ハリウッド大学院大学を退職[1]。この間、日ソ経済学者の会幹事・事務局長(1973~2000年)、日本学術会議第3部会員(第19期、2003年7月~2005年9月)[1]経済理論学会代表幹事(2007年4月~2010年3月)なども務めた[6]

大学院時代に平田煕などと全学大学院生協議会(のちの東大大学院生協議会)の設立運動をしていた。東大社研に助手として入った際、東大社研職員組合に加入し[7]東京大学職員組合(東職)組合執行委員長(1976年10月~1978年10月)、全国大学高専教職員組合(全大教)中央執行委員長(1990年4月~1992年3月)を務めた[1]。「九条科学者の会」呼びかけ人[8]

人物[編集]

現代の福祉国家および日本型経営のもとで労働力商品化の部分的・擬似的な止揚が進行しているとする「クリーピング・ソーシャリズム」論を提唱した[9][10]降旗節雄岩田弘との対談で「ジャパン・アズ・ナンバーワンの左翼版、日本会社主義を提唱した」馬場宏二を批判し、「同時に、柴垣和夫君に至っては、その会社主義によって、労働者も会社の中に完全に巻き込まれてしまって、もはや自己疎外なんてなくなった。労働者は会社で喜んで仕事をしているんだから、会社主義によって、日本はいまや社会主義化しつつあると言い出した。これを聞いたとき僕は柴垣君はブラック・ユーモアで言ってるのかと思ったが、本気で言っていたんですね。」と述べている[11]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『日本金融資本分析――財閥の成立とその構造』(東京大学出版会[東大社会科学研究叢書]、1965年)
  • 『三井・三菱の百年――日本資本主義と財閥』(中央公論社[中公新書]、1968年)
  • 『日本資本主義の論理』(東京大学出版会[UP選書]、1971年)
  • 『社会科学の論理』(東京大学出版会[UP選書]、1979年)
  • 『昭和の歴史9 講和から高度成長へ』(小学館、1983年/小学館[小学館ライブラリー]、1994年)
    • 文庫判『昭和の歴史9 講和から高度成長へ――国際社会への復帰と安保闘争』(小学館、1989年)
  • 『柴垣和夫教授座談会・回顧六〇年――東大での研究生活を中心に』(柴垣和夫教授の還暦を祝う会、1994年)
  • 『知識人の資格としての経済学』(大蔵省印刷局、1995年)
  • 『現代資本主義の論理――過渡期社会の経済学』(日本経済評論社、1997年)
  • 『マルクス=宇野経済学とともに』(日本経済評論社、2011年)

共編著[編集]

  • 『日本経済研究入門』(佐伯尚美共編、東京大学出版会、1972年)
  • 『現代の国家と経済』(大内秀明共編、有斐閣[有斐閣選書]、1979年)
  • 『世界のなかの日本資本主義』(編、東洋経済新報社、1980年)
  • 『日米関係の構図――相互依存と摩擦』(安保哲夫、河合正弘共編著、ミネルヴァ書房[Minerva21世紀ライブラリー]、1992年)
  • 『コーポレート・ガバナンスとCSR』(飫冨順久、辛島睦、小林和子、出見世信之、平田光弘共著、中央経済社、2006年)
  • 『勿忘草――加藤榮一追想集』(編、加藤早杜子、2006年)
  • 『宇野理論の現在と論点――マルクス経済学の展開』(櫻井毅山口重克伊藤誠共編著、社会評論社、2010年)

出典[編集]

  1. a b c d e f g h 生い立ちと履歴 Kazuo Shibagaki
  2. a b 柴垣 和夫 東京大学社会科学研究所
  3. 〈論争〉地球限界時代とマルクスの「生産力」概念 かもがわ出版
  4. 武蔵大学最終講義 Kazuo Shibagaki
  5. CiNii 博士論文
  6. 歴代代表幹事 経済理論学会
  7. 柴垣 和夫 元東職執行委員長の証言PDF 東職を応援するサイト
  8. 「九条科学者の会」呼びかけ人メッセージ (2005.3.13) 九条科学者の会
  9. 柴垣和夫「クリーピング・ソーシャリズムについて——榎本正敏編著『21世紀 社会主義化の時代』を読む——PDF」「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter第2期第1号、2010年
  10. 結城剛志「ポストキャピタリズム論の諸相――貨幣の社会化への射程PDF」『季刊経済理論』第57号第2巻、2020年7月
  11. 降旗節雄岩田弘現代資本主義と宇野経済学」『情況』2001年7月号

関連文献[編集]

  • 重田澄男『社会主義システムの挫折――東欧・ソ連崩壊の意味するもの』(大月書店、1994年)
  • 榎本正敏編著『21世紀 社会主義化の時代――過渡期としての現代』(社会評論社、2006年)

外部リンク[編集]