高木郁朗
高木 郁朗(たかぎ いくろう、1939年3月10日[1] - )は、労働社会学者[2]、労働経済学者。日本女子大学名誉教授。元・日本女子大学家政学部家政経済学科教授[3]。専門は労使関係論・社会政策[1]。
略歴[編集]
岐阜市生まれ。1957年岐阜県立岐阜高等学校から東京大学文科Ⅰ類に入学[4]。1961年同大学経済学部経済学科卒業[3]。在学中から総評長期政策委員会に嘱託として勤務[1][5]。1961年から社会党政策審議会に勤務[5]。1969年末に9年間務めてきた社会党書記局を離脱[6]。1970年から労働問題や革新勢力の政策論を中心とする執筆活動に専念[1]。1971年-1979年武蔵野美術大学講師[3]、1975年法政大学兼任講師[1]。1976年-1984年山形大学助教授、教授[3]、1984年日本女子大学教授[1]。
2007年時点で日本女子大学名誉教授[7]。2008年時点で山口福祉文化大学教授[8]。社団法人教育文化協会理事(~2013年)[9][10]、Rengoアカデミー副校長[11]、連合大学院設立準備委員[12]、山形県経済社会研究所(連合山形総研)所長[13]、同顧問を歴任[14]。2013年公益社団法人教育文化協会名誉会員[10]。
人物[編集]
旧社会党系の学者[15]。大学2年時に社会主義協会の理論的指導者・向坂逸郎主宰の「資本論研究会」に出席して以来、向坂に師事。1960年の日本社会主義青年同盟(社青同)の結成に先立ち、社会党青年部の仲井富や国際基督教大学の初岡昌一郎らとともに社青同学生班協議会を結成した[4]。1961年大学卒業後は社会党書記局に勤務。1964年2月の第23回党大会後、1年間のブランクを挟んで8年間、成田知巳書記長のスピーチライターも務めた[5]。1968年のチェコ事件で向坂がソ連を公然と擁護したことから社会主義協会と距離を取り始め、1969年末に社会党を離脱、3年後に社会主義協会を正式に脱会した[6]。その後、社会党の理論・政策アドバイザーとして、社会党を「社会主義革命政党」から「よりまし政権」をめざす「社会民主主義の党」へと変えることに取り組んだ[16]。詳細は前田和男『民主党政権への伏流』(ポット出版、2010年)を参照。
ものがたり戦後労働運動史刊行委員会編『ものがたり戦後労働運動史(全10巻)』(教育文化協会、発売:第一書林、1997-2000年)の執筆者。
著書[編集]
単著[編集]
- 『国際労働運動――ナショナリズムの克服をめざして』(日本経済新聞社[日経新書]、1973年)
- 『春闘論――その分析・展開と課題』(労働旬報社、1976年)
- 『山川均――日本の社会主義への道』(すくらむ社[すくらむ文庫]、1980年)
- 『臨調行革から国民的行革へ』(労働経済社、1982年)
- 『労働組合の進路――常識からの脱却』(第一書林、1987年)
- 『社会民主主義の挑戦!――資本主義はほんとうに勝ったのか?』(JICC出版局[JICCブックレット]、1990年)
- 『新・社会民主主義の挑戦!――政権交代可能な政治勢力の結集』(労働経済社、1992年)
- 『労働経済と労使関係』(教育文化協会[連合新書]、発売:第一書林、2002年)
- 『労働者福祉の新しい展開をめざして――「労働者のため」と「労働者による」の結合』(全労済協会[調査研究シリーズ]、2004年)
- 『労働者福祉論――社会政策の原理と現代的課題〈総論〉』(教育文化協会[連合新書]、発売:第一書林、2005年)
- 『ものがたり 現代労働運動史1 1989~1993――世界と日本の激動の中で』(明石書店[連合新書]、2018年)
- 『戦後革新の墓碑銘』(中北浩爾編、旬報社、2021年)
共著[編集]
- 『現代の労働組合主義 第1 機能と思想』(山岸章共著、教育社、1980年)
- 『80年代の構想――新しい革新の選択』(富塚三夫、大内秀明共著、毎日新聞社、1980年)
- 『自立への熱望――ポーランド1980年』(富塚三夫、大内秀明、新田俊三共著、国際文化出版社、1981年)
- 『ヨーロッパの政権と労働組合』(真柄栄吉、大内秀明、新田俊三、福田豊共著、第一書林、1984年)
- 『概説日本の社会政策』(木村武司、ダグフィン・ガト共著、第一書林[ナール・ブックス]、1986年)
- 『土井社会党――政権を担うとき』(大内秀明、田中愼一郎、福田豊、新田俊三共著、明石書店、1989年)
- 『転換と新しい構想――ヨーロッパの政権と労働組合』(総評センター編、大内秀明、住沢博紀共著、第一書林、1992年)
編著[編集]
- 『東京地方本部20年史――国鉄労働組合』(編纂、国鉄労働組合東京地方本部編、清水慎三監修、労働旬報社、1971年)
- 『総評労働運動三〇年の軌跡』(村上寛治、小野道浩、山田宏二共編著、労働教育センター、1980年)
- 『21世紀を展望した労働組合――労働組合ニューリーダーが語る』(編、労働経済社、1998年)
- 『ニューウェーブの社会民主主義』(ニューウェーブの会共編、労働教育センター、1991年)
- 『市場・公共・人間――社会的共通資本の政治経済学』(宇沢弘文共編、第一書林、1992年)
- 『連合NOW――21世紀労働運動の展望』(芦村庸介共編、労働教育センター、1994年)
- 『自立と選択の福祉ビジョン』(編著、平原社、1994年)
- 『生活を豊かにする労働の発見――社会サービス労働論』(堀越栄子共編、第一書林、1994年)
- 『清水慎三著作集――戦後革新を超えて』(編、清水慎三著、日本経済評論社、1999年)
- 『グローバル化と政治のイノベーション――「公正」の再構築をめざしての対話』(住沢博紀、T.マイヤー共編著、ミネルヴァ書房[Minerva人文・社会科学叢書]、2003年)
- 『良い社会を創る――21世紀のアジェンダ』(生活経済政策研究所共編、御茶の水書房、2003年)
- 『女性と労働組合――男女平等参画の実践』(連合総合男女平等局共編、明石書店、2004年)
- 『共助と連帯――労働者自主福祉の課題と展望』(教育文化協会[連合新書]、発売:第一書林、2010年)
訳書[編集]
- 『ペンタゴン・キャピタリズム――軍産複合から国家経営体へ』(セイモア・メルマン著、朝日新聞社、1972年)
- 『ウィガン波止場への道――イギリスの労働者階級と社会主義運動』(ジョージ・オーウェル著、土屋宏之共訳、ありえす書房[現代史叢書]、1978年)
- 『戦後の社会民主主義――そのイデオロギーと政策』(J.W.ゴエンビオフスキー著、国際労働運動研究協会、1979年)
- 『ジェンダー主流化と雇用戦略――ヨーロッパ諸国の事例』(ユテ・ベーニング、アンパロ・セラーノ・パスキュアル編、麻生裕子共訳、明石書店、2003年)
監訳[編集]
- OECD編著『国際比較 : 仕事と家族生活の両立――日本・オーストリア・アイルランド』(麻生裕子、久保田貴美、松信ひろみ訳、明石書店、2005年)
- OECD編著『図表でみる世界の社会問題 OECD社会政策指標――貧困・不平等・社会的排除の国際比較(全4巻)』(麻生裕子訳、明石書店、2006年)
- OECD編著『国際比較 : 仕事と家族生活の両立――OECDベイビー&ボス総合報告書』(熊倉瑞恵、関谷みのぶ、永由裕美訳、明石書店、2009年)
- OECD編著『子どもの福祉を改善する――より良い未来に向けた比較実証分析』(熊倉瑞恵、関谷みのぶ、永由裕美訳、明石書店、2011年)
監修[編集]
- 日本労働組合総評議会企画・編集『写真でつづる総評30年史』(総評資料頒布会、1982年)
- AFSCME編、東京自治研究センター訳『民間活力の「証明」――アメリカにみる民間委託の実態』(第一書林、1987年)
- 自治労地域活性化プロジェクト編『住民参加のまちづくり――自治体労働者の地域活性化』(第一書林、1989年)
- シャウナ L.オルニィ著、教育文化協会訳『変化する世界と労働組合――先進各国の課題と展望』(教育文化協会、販売:第一書林、1999年)
- 教育文化協会編『日本労働運動史事典』(明石書店、2015年)
- 教育文化協会、労働者福祉中央協議会編『共助と連帯――労働者自主福祉の意義と課題』(明石書店[連合新書]、2016年)
出典[編集]
- ↑ a b c d e f 日外アソシエーツ編『新訂 現代日本人名録2002 3.そ~ひれ』日外アソシエーツ、2002年、59頁
- ↑ 労働時評/連合が部門共闘強化を提起/どうなる相場のけん引役 連合通信社(2018年6月27日)
- ↑ a b c d 高木 郁朗 - 研究者 - researchmap
- ↑ a b 前田和男「高木郁朗の巻 「社会党・総評ブロックと政治再編」 社会党・総評ブロックは政治再編にどう関わったか」『図書新聞』No.2904(2009年2月7日)
- ↑ a b c 前田和男「成田知巳のスピーチライターに」『図書新聞』No.2905(2009年2月14日)
- ↑ a b 前田和男「踏みにじられた「プラハの春」」『図書新聞』No.2907(2009年2月28日)
- ↑ 4. 講義科目・講師一覧(調整中含む) 教育文化協会
- ↑ 図表でみる世界の社会問題 2 / OECD【編著】/高木 郁朗【監訳】/麻生 裕子【訳】 紀伊國屋書店ウェブストア
- ↑ 『ILEC通信』No.3 教育文化協会、2003年8月22日
- ↑ a b 『ILEC通信』No.36(PDF) 教育文化協会、2013年10月21日
- ↑ Rengoアカデミー第12回マスターコース概要 教育文化協会
- ↑ 連帯社会ブックレット 連帯社会研究交流センター
- ↑ “『やまがた労福協ニュース』No.11(PDF)”. 社団法人山形県労働者福祉協議会 (2012年1月1日). 2019年12月6日確認。
- ↑ 一社・山形県経済社会研究所(連合山形シンクタンク)第42回総会・年報発表会 連合山形
- ↑ 「表現の自由」研究会編著『現代マスコミ人物事典』二十一世紀書院、1989年、513頁
- ↑ 前田和男「第50回 情熱的主体の継承を」『図書新聞』No.2923(2009年6月27日)