鎌倉孝夫
鎌倉 孝夫(かまくら たかお、1934年2月23日 - )は、マルクス経済学者[1]。埼玉大学名誉教授、東日本国際大学名誉教授。
経歴[編集]
東京生まれ[2]。埼玉県出身[3]。1952年埼玉県立川口高等学校卒業[4]。1956年3月埼玉大学文理学部卒業。1961年3月東京大学大学院社会科学研究科博士課程修了[5]。大学院で宇野弘蔵ゼミ、宇野の定年退官後は鈴木鴻一郎ゼミに所属[6]。1961年4月埼玉大学助手、のち講師[5]、1967年助教授[2]。1968年3月「「資本論」の方法に関する若干の研究 : 流通と生産との関連を中心として」で経済学博士(東京大学)[7]。1979年埼玉大学教授[2]。1989年11月から3年間、経済学部長[3][8]。1992~1994年大学入試センター教科専門委員会委員。1999年3月埼玉大学を定年退官。1999年4月埼玉大学名誉教授[3]。1999年12月東日本国際大学教授[8]。2000年4月~2006年3月東日本国際大学学長[5]。2005年東日本国際大学名誉教授[9]。法政大学、東京教育大学、茨城大学、広島大学、武蔵大学などの非常勤講師も務めた[3]。
人物[編集]
向坂逸郎、宇野弘蔵に師事[10]。宇野学派の代表的論客で[11]、社会主義協会の理論的指導者の1人であったが、1982年11月に福田豊と『現代資本主義と社会主義像』(河出書房新社)を刊行して左派の激しい反発を買い、1984年3月に理論研究部会運営委員を辞任した[2][12][13]。その後も協会の機関誌『社会主義』に寄稿している。また進歩と改革研究会(旧社会主義協会太田派)の機関誌『進歩と改革』、新左翼系の『破防法研究』『序局』『長周新聞』、金日成・金正日主義研究会の理論誌『金日成・金正日主義研究』(旧題『キムイルソン主義研究』)などにも寄稿している。国鉄闘争全国運動の呼びかけ人となったり[14]、三里塚芝山連合空港反対同盟(北原派)の裁判で証人となったりもしている[15]。
チュチェ思想研究家でもあり、その研究と普及に取り組んでいる[16]。1979年に初訪朝し、1992年までに6回訪朝している[17]。チュチェ思想国際研究所理事を務め、2002年4月にチュチェ思想の研究と普及に貢献したとして朝鮮民主主義人民共和国から親善勲章第1級を授与された[18]。2014年に金日成・金正日主義研究全国連絡会が結成されるとその代表世話人となった[19]。2017年時点で日朝友好連帯埼玉県民会議議長も務めている[20]。
主著に『資本論体系の方法』(日本評論社、1970年)、『日本帝国主義と資本輸出』(現代評論社、1976年)、『資本論とマルクス主義』(河出書房新社、1971年)などがある[21]。2020年11月に『資本論』研究70年の集大成として『『資本論』エッセンス』を時潮社から刊行した。A5版上製箱入り全2巻、定価12,000円+税(分売不可)、限定500部[22]。
著書[編集]
単著[編集]
- 『資本論体系の方法』(日本評論社、1970年9月)
- 『日本帝国主義の現段階』(現代評論社、1970年9月)
- 『現代の日本資本主義』(労働大学[労大ハンドブック]、1971年1月)
- 『資本論とマルクス主義』(河出書房新社、1971年4月)
- 『経済学方法論序説』(弘文堂、1974年7月)
- 『日本帝国主義と資本輸出』(現代評論社、1976年7月)
- 『「スタグフレーション」――日本資本主義体制の終末』(河出書房新社、1978年8月)
- 『経済学説と現代』(現代評論社、1979年10月)
- 『日本帝国主義と軍需産業』(ありえす書房、1979年11月)
- 『経済学入門』(労働教育センター[労働運動実践叢書]、1980年6月)
- 『スタグフレーション――日本資本主義体制の終末』(新版、河出書房新社、1980年2月)
- 『日本の軍事化と兵器産業』(日本社会党中央本部機関紙局[社会新書]、1981年11月)
- 『現代社会とマルクス――マルクスの論理はいかに生きるか』(河出書房新社、1984年12月)
- 『「国鉄改革」を撃つ――公共交通の再生』(緑風出版、1986年)
- 『教育と国家 1 「教育改革」を撃つ』(緑風出版、1987年6月)
- 『教育と国家 2 自由と統制』(緑風出版、1988年1月)
- 『信用理論の形成と展開』(有斐閣、1990年9月)
- 『国家論のプロブレマテイク』(社会評論社、1991年1月)
- 『社会主義と労働運動』(全国労働組合交流センター編、全国労組交流センター[交流センター・ブックレット]、1992年7月)
- 『「生活大国」論を批判する』(全国労働組合交流センター編、全国労組交流センター[交流センター・ブックレット]、1994年1月)
- 『資本主義の経済理論――法則と発展の原理論』(有斐閣、1996年3月)
- 『働くものの経済学――「労働」と「生活」の主体となるために』(労働大学[労大ハンドブック]、1996年12月)
- 『世界経済危機の構造』(長周新聞社、1998年2月)
- 『究極の“擬制”経済――世界金融恐慌の危機』(長周新聞社、1999年7月)
- 『経済危機・その根源――現代金融帝国主義』(新読書社、2001年7月)
- 『戦後60年と日本経済の現状』(長周新聞社、2005年11月)
- 『株価至上主義経済――その下で人間社会はどうなるか』(御茶の水書房、2005年12月)
- 『国家論の科学』(時潮社、2008年1月)
- 『“擬制”経済下の人間・人間関係の破壊――それをいかに克服するか』(長周新聞社、2008年6月)
- 『『資本論』で読む金融・経済危機――オバマ版ニューディールのゆくえ』(時潮社、2009年6月)
- 『朝鮮半島 戦争の危機を読む――朝鮮を知り平和を創る 「韓国併合」100年』(白峰社、発売:星雲社、2010年12月)
- 『資本主義の国家破綻――その下での戦争の危機』(長周新聞社、 2011年4月)
- 『帝国主義支配を平和だという倒錯――新自由主義の破綻と国家の危機』(社会評論社、2015年8月)
- 『トランプ政権で進む戦争の危機――新自由主義の世界的破綻・その解決はいかに』(長周新聞社、2017年6月)
- 『『資本論』エッセンス――全三巻徹底読解(2分冊)』(時潮社、2020年11月)
共著[編集]
- 『宇野弘蔵をどうとらえるか』(清水正徳・海原凛・岩田弘・山口重克・桜井毅・大内秀明・降旗節雄・山口勇共著、芳賀書店、1972年11月)
- 『宇野弘蔵 著作と思想』(大内秀明・林健久・佐伯尚美共著、有斐閣[有斐閣新書]、1979年4月)
- 『対談集 敵よりも一日ながく――総評解散と国鉄労働運動』(六本木敏・中野洋・佐藤芳夫・村上寛治・高島喜久男共著、社会評論社、1988年12月)
- 『天皇学事始め』(古田武彦・藤田友治共著、論創社、1990年2月)
- 『人間らしく生きる』(共著、白峰社編、キムイルソン主席著作研究会、1992年2月)
- 『「廣松哲学」の解剖――「関係の第一次性論」の意味』(中村健三共著、社会評論社、1999年6月)
- 『はじめてのマルクス』(佐藤優共著、金曜日、2013年11月)
- 『21世紀に『資本論』をどう生かすか』(佐藤優共著、金曜日、2017年11月)
- 『資本論を読破する』(佐藤優共著、文藝春秋、2023年9月)
編著[編集]
- 『続大系国家独占資本主義 3 日本資本主義の現段階 上』(編、河出書房新社、1977年10月)
- 『続大系国家独占資本主義 4 日本資本主義の現段階 下』(編、河出書房新社、1977年11月)
- 『行政改革資料集』(編著、ありえす書房、1982年12月)
- 『『資本論』を超える資本論――危機・理論・主体』(編著、社会評論社、2014年3月)
- 『新自由主義の展開と破綻――『資本論』による分析と実践課題』(編著、社会評論社、2018年12月)
共編[編集]
- 『講座 現代資本主義――戦後体制の崩壊と再編(全6巻)』(大内秀明・新田俊三共編著、日本評論社、1975年4月-1976年8月)
- 『日本労働者運動史 4 ファシズム下の労働運動』(田中勝之共編、河出書房新社、1975年7月)
- 『経済原論』(大内秀明共編、有斐閣[有斐閣新書]、1976年11月)
- 『現代資本主義と社会主義像』(福田豊共編著、河出書房新社、1982年11月)
- 『参加・創造・社会改革――労働組合の制度・政策闘争』(福田豊共編、ありえす書房、1985年8月)
- 『'90年代日本の教育』(小川利夫・海老原治善・増田祐司共編、エイデル研究所、1990年3月)
- 『教育総研理論講座・21世紀を拓く教育 第3巻 教育の未来をつくる』(黒沢惟昭共編、明石書店、1996年6月)
- 『入門 朝鮮民主主義人民共和国』(大内憲昭・呉圭祥共編、雄山閣出版、1998年9月)
- 『成田空港の「公共性」を問う――取られてたまるか!農地と命』(石原健二共編著、社会評論社、2014年3月)
監修[編集]
- 社会科学研究所編著『現代と朝鮮 上 ソ連崩壊後の朝鮮社会主義』(緑風出版、1993年11月)
訳書[編集]
- ワシーリー・ザイチコフ『ソビエトの労働組合』(田辺克彦共訳、ありえす書房、1979年3月)
出典[編集]
- ↑ 平凡社教育産業センター編『現代人名情報事典』平凡社、1987年、271頁
- ↑ a b c d 日外アソシエーツ編『20世紀日本人名事典 あ-せ』日外アソシエーツ、2004年、738頁
- ↑ a b c d 「東日本国際大学 学長 鎌倉孝夫氏」『とうほく財界』第26巻第4号(通巻159号)、2000年7月
- ↑ 全学年で進路行事 埼玉県立川口高等学校(2013年3月21日)
- ↑ a b c 『資本論』で読む金融・経済危機 時潮社
- ↑ 櫻井毅「伊藤誠君を偲ぶ」『「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter』(第2期第30号通巻第41号)、2023年10月31日
- ↑ CiNii 博士論文 - 「資本論」の方法に関する若干の研究 : 流通と生産との関連を中心として
- ↑ a b 鈴木晴彦「この人――(学)昌平黌東日本国際大学長 鎌倉孝夫」『財界ふくしま』第29巻第11号、2000年10月
- ↑ 歴史・沿革・名誉教授・黌歌 東日本国際大学
- ↑ 21世紀に『資本論』をどう生かすか / 鎌倉 孝夫/佐藤 優【著】 紀伊國屋書店ウェブストア
- ↑ 「特集 世紀末大不況とマルクス経済学」『月刊状況と主体』第278号、1999年2月
- ↑ 「表現の自由」研究会編著『現代マスコミ人物事典』二十一世紀書院、1989年、501-502頁
- ↑ 国民政治年鑑編集委員会編『国民政治年鑑 1984年版』日本社会党中央本部機関紙局、1984年
- ↑ 呼びかけ 国鉄闘争全国運動
- ↑ 機能強化は地獄の道 三里塚団結街道裁判 鎌倉孝夫教授が証言 週刊『前進』02頁(2904号02面06)(2017/12/21)
- ↑ 金正日総書記生誕80周年記念インタビュー/鎌倉孝夫・埼玉大学名誉教授 朝鮮新報、2022年2月16日
- ↑ 林建彦「抱腹絶倒!金日成八十歳記念 日本人名士の「朝貢」と「祝辞」」『諸君!』1992年6月号
- ↑ 鎌倉孝夫氏らに親善勲章 朝鮮新報日本語版
- ↑ 金日成・金正日主義研究全国連絡会が結成される チュチェ思想研究
- ↑ トランプ政権で進む戦争の危機 / 鎌倉 孝夫【著】 紀伊國屋書店ウェブストア
- ↑ 海野正次「鎌倉孝夫」、現代革命運動事典編集委員会編『現代革命運動事典』流動出版、1981年、60頁
- ↑ 時潮社のツイート
外部リンク[編集]
- 鎌倉孝夫 - researchmap