スバル・インプレッサ

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インプレッサ(IMPREZA)とは、SUBARU(初代~5代目の発売当時は富士重工株式会社)の製造する乗用車である。

概要[編集]

スバルの車種のラインナップのうち、もっともベーシックな車格に位置付けられており、2Lターボで自主規制馬力の280馬力[注 1]を叩き出すハイパワースポーツモデルから1.5Lクラスのコンパクトカーまでを担っていたモデルである。かつてのハイパワーモデルはスバル・WRXとして独立しており、現在は大人しめのミドルサイズの車としてラインナップされている。なお、WRXのほかに派生車種としてスバル・フォレスタースバル・XVが存在しており、それぞれクロスオーバーSUVとして少なくない需要を満たしている。かつてはステーションワゴン以外にもセダンクーペもラインナップされていた。3代目インプレッサのころからステーションワゴンをやめ、ボディサイズを拡大しハッチバックに統一。また、セダンは出しませんと言っていたが結局出していた。2023年発売の6代目になってようやくハッチバックオンリーになった。かつては1.5Lから2Lクラスの間を埋めるモデルとして位置づけられていたが、6代目は2.5Lモデルが予定されているなど、ボディサイズと排気量の拡大に歯止めが効かない状態になっている。

GC/GF型(1992~2000)[編集]

スバル・インプレッサ(GC/GF)
GF8G Side.jpg
インプレッサスポーツワゴンWRX(1999年式)
販売期間1992~2000年
ボディタイプ5ドアステーションワゴン
4ドアセダン
2ドアクーペ
2ドアオープンカー(構想)
エンジンEJ15 SOHC
EJ16 SOHC
EJ18 SOHC
EJ20 SOHC
EJ20 DOHC(AVCS付)
EJ20 DOHCターボ
EJ22改 DOHCターボ
すべて水平対向4気筒。
使用燃料SOHCエンジン 無鉛レギュラーガソリン
DOHCエンジン 無鉛プレミアムガソリン
トランスミッションフロアMT5速/フロアAT4速
駆動方式前輪駆動/四輪駆動
車両寸法
全長
全高
全幅

4,350mm
1,440mm
1,690mm
車両重量1,300kg
サスペンション独立懸架ストラット
ブレーキ前輪:ベンチレーテッドディスク
後輪:ソリッドローターディスク
最高出力240PS/6000rpm
最大トルク31.5kgm/4000rpm
備考車両サイズや重量・ブレーキや出力などは99年式ワゴンWRXのデータを掲載

概要[編集]

レガシィジャスティの中間車種を務めていたレオーネに代わり登場したのが初代インプレッサである。リッターカーのジャスティと2Lのレガシィの穴を埋めるがごとく、1500cc、1600cc、1800cc、2000ccの各クラスの排気量が設定され(限定モデルの22Bは2212cc)、さらに前輪駆動・四輪駆動[注 2]の違いやミッション(AT/MT)、2000cc以上には過給機の有無、さらにはグレードや特別仕様によりその種類は多種多様である。

2022年現在、発売開始から30年、生産終了から22年近くが経過しているためか、タイヤなどの部品の適合を調べるマッチングツールの対象外であることが多い。消耗品やアフターパーツなど、メーカーが関与していないものなので理解はできるが、なんとスバル公式サイトのマニュアルダウンロードの対象外にもなっている。しかし、このころのマニュアルは現代に比べてページ数も少なく、自分の車に該当する箇所を丸暗記してしまえば特に問題ない。

開発[編集]

レオーネやレガシィは水平対向エンジンを搭載していたものの、1980年代末期ですら水平対向エンジン搭載車を生産しているのはスバルだけであった。そのため開発にかかるコストは直列エンジンに比べて高い状況にあった(他社製エンジンが参考になりにくいため)。そのため、当時提携関係にあった日産の影響もあり、当初は1600ccの直4エンジンかつCVT搭載で開発が進められていた。しかし、当時のアメリカ日本の関係により自動車輸出自主規制や円ドル相場の急騰が重なり、スバルの海外拠点であるSOAでは3000万ドル[注 3]の赤字を抱えていた。1988年には試作車も完成しており、テストコースを走りまくっていた最中であったが、先述の北米の不振、既存車種の原価高の影響や開発設備建設など新型車種に投入する余力がスバルには無かった。 そのため新型エンジンやプラットフォームの開発を取りやめ、レガシィのコンポーネントを使うこととなったが当然社内からは反発[注 4]が巻き起こったほどである。反発が起きた理由として、上記で述べたように他社のノウハウを取り込むことが難しい水平対向エンジンであり、開発側も水平対向一辺倒に対して危機感を抱いていたせいといわれている。 しかし、開発が進められると開発陣のモチベーションは高く、ラリー参戦を前提としたハイパワーターボのWRXグレードは開発陣がのめり込む恐れがあるからと半年は極秘にされていたという。今でこそスバルの代名詞の一つとなるボンネットのインテークダクトであるが、空冷式インタークーラーを設置するスペースがなくエンジンの上方に持ってきたものである。[注 5]噂によると役員からインテークの評判が悪く、邪魔だからはずせと言われたという。

紆余曲折を経て完成した初代インプレッサであるが、同一車種による幅広い排気量の展開、セダンクーペワゴンクロスオーバーSUVパイクカーオープンカー(注釈:オペレッタとして東京モーターショーに出展。正式発売はされていない)という様々なボティの豊富さはこういった背景によるものかもしれない。

デザインはスバル内製。当時としても丸みを帯びたデザインで一見すると優しいデザインである。しかしそのフロントマスクはどこか動物的な印象を受け、WRXともなると大きなインテークダクトが目に付く。

年次改良[編集]

1992年に発売され、2000年に生産終了するまで年次改良を受け続けており、92年のA型から99年のG型に分類される。年次改良はアプライドとも呼ばれ、一般にはアプライドAからCが初期型、DとEが中期、FとGが後期型とされている。 C型は唯一2年間製造されているものの、他と同じような区切りで年次改良を受けているため、それぞれC1、C2と区別されることが多い。

98年式(F型)インプレッサスポーツワゴンWRX
アプライドA(92/11~93/9)
初登場。
アプライドB(93/10~94/8)
ワゴンにもWRXが追加される。
アプライドC1(94/9~95/8)
WRX系のタイヤサイズが大きくなる。2ドアクーペのリトナが設定される。
アプライドC2(95/9~96/7)
ワゴンにグラベルEXとHX-20を新設定。
アプライドD(96/9/~97/8)
エンジンがboxer master-4に移行し、最大出力280PSを発揮する。併せて駆動系の強化も行われる。
アプライドE(97/9~98/8)
インテリアを大幅刷新し、フォレスターと共用化する。助手席エアバッグがオプションで設定されるようになる。
アプライドF(98/9~99/8)
新グレードのSRXを設定。エンジンがboxer phase2に刷新。SRXにはインプレッサ初となるAVCS(可変バルブ機構)付きのNAエンジンが搭載される。エアフロも刷新されたが非常に壊れやすくなった。
アプライドG(99/9~00/8)
同年7月に義務化されたクラッチスタートシステムが装備される。

主なグレード・仕様[編集]

CS 
発売当初に一番廉価なグレードとして設定された。1600ccクラス。後に1600ccクラスは消滅することになる。
C'z(CSエクストラ)
1994年にCSの後継ポジションとして設定。1500ccクラス。EJ15を搭載するインプレッサの始祖ともいえるモデルで、街中を走ってる初代のNAインプレッサはだいたいコレ。ワゴンタイプはC'zでセダンタイプはCSエクストラ。
C'zスポルト
C'zをベースに内外装をスポーティにした(スバル広報)というモデルであり、ミニライト製[注 6]の14インチアルミホイールとルーフレールやルーフスポイラーを標準装着し、限定色のソニックブルーマイカが設定される。そのほかにMOも本革巻ステアリングやスポーティシートも採用されている。でもエンジンや駆動系はそのまま。WebCGにも「コンセプトがよくわかりません」と言われるほど[1]であったが、2000年には C'zスポルトIIとなり、STiのエアロパーツを組んだパッケージで販売されていたことも。まさにオオカミの皮をかぶった羊である。
GB
JTCC後輪駆動化されて走ってたインプレッサのベースがこれ。1800ccクラス。フルモデルチェンジの際に1800ccクラスは設定されなかったため、初代でありながらEJ18が搭載された最後のインプレッサとなる。なお最初の1800ccのインプレッサとしてはHXが存在している。
リトナ
元は輸出向けの2ドアクーペを国内販売したもの。もともと女性向けのコンパクトカーとして販売していたものである。MT車はインプレッサで唯一のセレクティブ4WD[注 7]。なお販売は国内でも北米でも低迷した。なお、WRカーとなったインプレッサWRC1997はこのリトナベースであり、WRカーやそのロードカーバージョンともいえる22Bの人気もあったせいか後期型になって2ドアクーペのWRXSTiも販売されるようになった。なお、リトナ自体の中古市場もジワリと上がってきている。
WRX
ターボAWD・ボンネットの穴でおなじみ。ターボモデルのベースグレードであり、DCCDは付いてない。ATの場合はVTD-4WD[注 8]と呼ばれるセンターデフが付いており、なんと後輪側のほうがトルク配分が多め。MTはビスカスLSD付センターデフ方式フルタイム4WDでフロント配分が多めとなっている。後にグレード名が独立して単一車種になる。当初はセダンのみであり、アプライドBくらいからワゴンにもWRXが設定された。セダンは当初220馬力であったものの、最終的にはSTiと同様に自主規制馬力上限の280馬力になった。ワゴンについてはアプライドEの250馬力が最大。最終型は240馬力に落ち着いた。STiやRAと区別するため、「素WRX」と呼ばれることも多い。
WRX STi
WRXをSTiがチューニング (自動車)したコンプリートカーである。STiのiは小文字。Ver.2までは改造車として公認を受ける必要があった。フロントエンブレムがピンク色でおしゃれ。STiはメータにSTiマークが表示されている。ワゴンのSTiも設定されており、専用スポイラーと280馬力を手にする事ができる。なおワゴンのSTiスポイラーはC'zスポルトIIでWRXを差し置いて設定された。
WRX RA
WRXよりもスパルタンにしたもの。たしかエアコンレス。トランスミッションやステアリングのギア比も変更されており、クロスレシオなミッションやよりクイックなステアリングとなっている。なお、こちらにもSTiモデルが存在し、DCCDが装着される。RAリミテッドやVリミテッドなど、さらにはWRX TypeR STi等も存在し、このあたりがさらにややこしさを増している。なおワゴンにはこれらは設定されていない。
22B
初代インプレッサで至高とも称される。WRCで三連覇したモデルのロードカーバージョンとして再現されたもの。排気量は2000ccを越える2212cc。全幅も1770mmに拡大されるなど、名実ともに3ナンバー化。車検証のエンジン形式にはEJ22改と記載される。限定モデルが多いGC型インプレッサの中でも特に希少とされ、中古市場では一千万円を超えることもあるなど、高騰し続けているモデルである。
グラベルEX
グラベルエックスと読む。しかし車体のステッカーには「GRAVEL EXPRESS」の表記が。ワゴンWRXをベースにリフトアップ・カンガルーバー・背面タイヤキャリアという当時のRVブームを反映したようなグレード。当時流行していたツートンカラーもあったが、販売は超低迷しており、限定車以上に見かけることはない。ある意味22B以上に珍しいかもしれない。しかし、海外では売れていたとか。のちのフォレスターやXVの元祖であるともいえる。
SRX
インプレッサ初のAVCSを搭載。外観上のWRXとの違いはリアステッカーとボンネット、ホイールサイズのみ。メーターパネルもWRXと同じ。シートや内装は下位グレードと共通するものの、NAの2000ccスポーツグレードとして軽快な走行が楽しめる。このMT車は中古でもほとんど見ない。地味にハイオク仕様車である。
カサブランカ
レトロな風貌を持つパイクカーのようななにか。ところどころにインプレッサの名残が見て取れる。ある意味STiより珍しい。専用メータを奢られたり専用パーツが豊富。そのためカスタムパーツとして需要があるとか。限定モデルだったはずがちゃっかりカタログモデルになってたりする。ワゴン限定グレード。
HXエアサス
1800ccのグレードであるHXにエアサスが搭載されたもの。唯一の形式名GFAを持つ。94年を最後に消滅。
S201
STiがGC8をオンロード性能に全振りしてチューニングしたといわれているGC8系最後のコンプリートカー。車高調整式サスペンションを標準装備するほか、ホイールもRAYS製の鍛造アルミホイールが採用されている。また、エアロパーツはかなり特異的なデザインをしており、通常のGC8に追加装甲を装備しているような印象を受けるものである。そのほかにもドアミラーが砲弾型になっていたり、フロントのLSDがヘリカルLSDになっていたりするなど細かいところまで手が入れられている。限定300台生産であり、中古市場にはほとんど出回っていない。

エクステリア[編集]

2ドアクーペなどの一部例外はあるものの、基本的には4ドアセダン5ドアステーションワゴンが基本である。それぞれ「スポーツセダン」、「スポーツワゴン」と命名されている。スポーツワゴンはクールに去るぜ。WRXなどのハイパワーモデルは当初発売されず、セダンWRXの馬力が280馬力に引き上げられた後もワゴンWRX240馬力のまま据え置きである(E型は250馬力、STiモデルは280馬力)。 レオーネから続くサッシュレスドアであり、より洗練されたデザインになっている。半面、長く乗り続ける場合はウェザーストリップ等の劣化により気密性の低下は避けられず、高圧洗浄を不用意に充てると車内にすんなり水が飛んでいく(4敗)。 車体形状の違いのほか、ステーションワゴンにはルーフレールが付く[注 9](取扱説明書においては見た目だけのパーツであり、強度はない旨の注意書きが書かれている)。また、ラジオアンテナの種類も違い、ワゴンはルーフ上に固定式のアンテナ(着脱可能)が、セダンはトランク付近に伸縮タイプのアンテナが装着される。オプションでサンルーフ仕様車も選ぶ事ができた[注 10]。 なお、後期WRXのフロントバンパーを加工して7代目カローラに取りつけるカスタムがある。前期型のNAにはグリルカバーがついており、カローラ感をより一層高めている。大径フォグランプを装着することができ、WRX系はだいたいついているがSTiなどはフォグランプカバーをしていることが多い。この大径フォグランプは明るく、大雨や対向車も来ないような山道の心細さにとても効果的である。セダンのリアウイングは当初こそ控えめだったものの、のちに大型化していき、ボンネットのインテークと併せてインプレッサの上位グレードの代名詞となった。

フロントグリルには車種専用エンブレムである「i」をモチーフにしたデザインのものが取り付けられている。このエンブレムはスバルのCIマークである六連星のマークと外形が同じであり、デザイン当時から交換を前提にして作られていたという[2]。なお、輸出用は最初からスバルマークであったという。パーツリスト上ではスバルマークのエンブレムは「91053FA000」、車種専用エンブレムは「91053FA010」である。チェリーレッドのスバルマークエンブレムはSTi部品である。なお、車種専用エンブレムでもチェリーレッドは存在している。

インテリア[編集]

A~D型、E~G型で内装が大きく異なる。ハンドルメーター、インパネ、センターコンソール、パワーウィンドウスイッチ等がそれぞれ異なるなど、流用できるパーツが極端に少ない。ミラー調整スイッチの位置もキースイッチ付近からセンターコンソール付近へと大きく移動している。後期型はエアバッグを前提としたデザインになっており、助手席エアバッグを格納できるスペースがある。エアバッグレス車は収納スペースになっている。なお、E型とF・G型ではハンドル中央のデザインが異なっている。基本的にNA車は分割式ヘッドレストのシート、ターボ車はセミバケットシート風であり、ホールド性が良くなっている[注 11]。STiの限定車などはアクセントカラーが入っていたり[注 12]、シリアルナンバー(限定生産車のみ)が灰皿下に設置されていることもある。後期型と前期型の場合、前期型のほうが車内が少しだけ広い。 なお、F~G型の内装は初代フォレスタ―とほぼ共通となっており、エアコンパネルやドリンクホルダーの移植が定番の流用カスタムとなっている[注 13]。そうでなくとも純正のドリンクホルダーは使いづらく、ホールド性も良くないため後付けのドリンクホルターを設置を考えるべきである。

メーターデザイン[編集]

前期・後期でデザインが異なり、前期は質素な二眼式メーターである。ターボ車は9000回転まで表示され、レッドゾーンの表記がグレードによって異なる[注 14]。また、前期のスピードメーターはメーターケーブルと呼ばれる回転するケーブルを差し込むタイプであるほか、付随する距離計も昔ながらのアナログ式である。また、現在の乗用車ではまず見られなくなった「排気温度警告灯」がついているのも懐かしポイント。なお、後期型にも一応排気温度警告灯の表示は存在する。点かないけど。 後期型はデザインが異なり、NAの下位グレードは盤面が黒い。ターボモデルやカサブランカは盤面が白であり、カサブランカは専用デザインの盤面である。後期型の場合、NAモデルは中央に速度計、右にタコメーターであるが、ターボモデルは中央に大きくタコメーターが、右側に一回り小さい速度計という配置になっており、よりレーシーな感じに仕上がっている。なお、速度計はECUからの車速パルスを受けて表示する電子式アナログメーターになった。また、燃料の残量警告灯が表示されるようになった[注 15]。 後期モデルからメーター内に時計が内蔵されている。なお、時計が壊れた場合はメーターAssy交換しか正規の修理方法が無い[注 16]。後期のメーターは距離計がデジタル化されている。 後期メーターは薄暮時などは色の都合上(白背景にライムグリーン)とても見辛い。メーターの電球をLEDに打ち換えると若干見やすくなる。電球に使用されているのはT5ソケットであり、燃料計裏のみT10ソケットである。LEDを使用する際は拡散光タイプを利用すれば色ムラが若干抑えられるためお勧めである。しかし、もともとがメーター裏を数か所から照らすタイプなのでどうしても色ムラは出てしまう。本格的に色ムラを均したい場合はメーター裏のカバーを加工する方法もあるが難しいので容易にお勧めすることはできない。なお、メーター内の時計も裏から電球で照らしている構造のため、LEDに置き換えるとものすごく視認性が良くなる。また、ウインカーやハイビーム、エアバック警告灯は交換しやすいので切れる前に交換しておくと後が楽である[注 17]。なお、純正交換品はソケットごと交換できる。もっとも、LEDで打ち換えたほうが寿命、明るさ、価格の点で有利ではあるが。 DCCDのインジケータは前期も後期もATのシフトインジケータと同じ位置にあるため、AT車と勘違いする人もいる[注 18]。後期モデルはフォレスターと内装が共通化されているが、メーターはそれぞれが車種専用品を装備している。

エンジン[編集]

搭載されるエンジンはスバル・EJ型エンジンである。1989年にレガシィに搭載されたことを皮切りに20年以上にわたって改良され続けていた水平対向エンジンである。

ターボチャージャーが搭載されるEJ20について、レガシィのツインターボとは違いシングルターボ仕様が新たに開発された。最高回転数は7,000回転と控えめながら、240馬力と31.5kgmのスペックを持つ。このモデルはGC/GF型インプレッサWRXの基本形であり、基本スペックを継承しつつ各部の改良が繰り返されており、同じエンジンではあるが補機類を始め互換性のないパーツもあるほどである。セダンは途中からWRXを含む全モデルが280馬力に引き上げられたが、ワゴンのWRXは240馬力で据え置きとなった。レガシィのツインターボと比べ、低速トルクが細く過給が始まるまではかったるい感じがあるものの、過給が始まればそれがわかりやすいほどの特性を持っている。ドッカンターボ程ではないにしろ、運転席からもはっきり聞こえる吸気音と吹け上がるエンジンは現代のエンジンで味わう事の出来ない一種の楽しさを感じさせてくれるものである。ツインターボはこのような急激な変化は抑えられるものの、当時は制御が未熟であったこともあり「トルクの谷」と呼ばれる現象がみられることも多かった。その点やこの車のキャラクター性を考えるとシングルタービンで高出力に踏み切った当時の開発陣の判断は正しかったといえる。

SRXに搭載されていたAVCS仕様のEJ20は同エンジンのNAスポーツモデルに位置付けられており、派手で人気のあるWRXやSTiの影に隠れて地味なモデルであった。しかし、NAならではの軽快なエンジンはコンパクトなスポーツカーにふさわしいモデルであり、2Lクラスのエンジンと軽量なボディはドライブを楽しむのにちょうどいいパッケージングであった。本エンジンはその2Lエンジンに可変バルブ機構を組み込んだものである。スバルのAVCSはカムプロフィールの切り替え時の出力変化が緩やかであり、ホンダVTECのような過激さはないもののスムースなフィーリングが得られた。なお、地味すぎたためかあまり搭載例は少なく、インプレッサ自体3代目以降搭載されなくなってしまった。NAインプレッサといえば1.5Lモデルが多く、2Lモデルはあまり注目されないことが多い。しかし、インプレッサオーナーで普通で飽き足らなくなってしまった人はこれらのNAスポーツモデルも注視しており、時たま中古市場に現れる極上車をみてはため息をついていることも。

なお、純正のスパークプラグはプラチナプラグであるため、100,000km程度であれば無交換でも問題ないが、水平対向エンジンのためエンジンの側面にプラグホールが存在する。後述するが、これが厄介であり、普通の直列エンジンであれば上部からたやすく交換できるものの、このエンジンはたかだかプラグ交換でエアクリーナーやウォッシャータンクまで外す必要があるという仕様である。さらに厄介なのがフレームやほかのパーツの都合もあり、プラグの脱着に必要な工具は長すぎても短すぎてもダメというイヤらしい仕様になっている。そのためプラグソケットにはめるエクステンションは75mmの物を、ラチェット本体はできるだけ薄いものを使うと作業がやりやすくなる。

タイヤ[編集]

タイヤサイズはC'zの175/70R14が最も小径で細く、次いでGBが187/70R14となっており、どちらもスチールホイールが標準となっている。SRXは195/60R15が標準サイズとなっており、アルミホイールも標準装備となっている。WRX以上は205/50R16となり、SRX同様にアルミホイールが標準装備されるほか、よりオンロード性能を重視したタイヤが装着されている[注 19]

トランスミッション[編集]

5速マニュアルトランスミッションと4速オートマチックトランスミッションとなる。AT車には加速重視のPOWERモードと2速発進が可能なSNOW ATモードが搭載されている。POWERモードをオンにした場合、2LクラスのNAであるSRXでもいい感じに加速感が増え軽快でパワフルな走行を楽しめる。当然燃費は悪くなるものの、爽快感は抜群である。シフトパターンはMT車は左上が1速となるHパターン。なお、5速からバックギアに入らないような構造になっており、その場合は1速に入れないとバックギアに入らない。AT車はオーバードライブスイッチは無く、P・R・N・D・3・2・Lとなる。車の性質上、MT車のほうが中古市場で高値が付く傾向があるが、ATでも車の楽しさ・走る喜びは変わらないためこちらは少しお得である。 MT車のギア比について、アプライドG型においてはNAエンジンのグレードはすべて同じギア比になっている。2.0Lターボ車においてはRA系とワゴンWRX、それ以外で異なるギア比を採用しており、RA系は最もクロスしたギア比となっており、NA系がもっともワイドなギア比となっている。これらはターボの有無やエンジン出力の特性の違いにより設定されていると思われる。

特徴的な装備[編集]

DCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ
センターデフのロック率を運転席から変更できる機構。前後のトルク配分を変更したような挙動にできる。50:50の直結からロックしないデフフリーまでを選択できる。ロック率を設定していてもサイドブレーキを引けば即座にデフフリーになる仕様。インプレッサの代名詞といわれる装備だが、上位グレードの一部のみに採用。
インタークーラースプレー
ランエボにも搭載される、インタークーラーに直接水を噴射し、吸気温度をさらに下げることを目的とした装置。
ルーフベンチレータ―
車内に空気を供給するためにルーフ(天井)に取り付けられる吸気口。ラリーなどは砂塵などを吸い込みやすいため、極力影響の少ないルーフに取り付けられることが多い。エアコン搭載車などには不要の装備であるが、初代と2代目の一部グレードは市販車で、しかも純正で装着されていた。
駐車灯
インプレッサに限らず、当時のスバル車の多くに装備されていた。この当時のスバル車はエンジンオフでヘッドライトもオフになるため、夜間駐車時の視認性向上のため、2009年の4代目レガシィまで残っていた装備である。多くはハンドルコラム上にあり、スイッチを入れると車幅等とテールランプが点灯する。車内を拭き掃除している際に誤ってスイッチを入れ、バッテリー上がりの原因になったケースもあったとか。

評価[編集]

5ナンバー枠に収まるコンパクトなサイズであり、最廉価グレードでは定価が100万円未満であるなど、使い勝手の良い自動車である。さらにAWDを備えることで安定した走行を助けている。2Lクラスになると軽量ボディが効いてくるのか心地よい加速感を得ることができる。車両の狭さやあまり良くないメンテナンス性というデメリットはあるものの、それを打ち消してくれるほどのドライバリティは魅力である。特に2LスポーツモデルであるSRXはノンターボながら軽快な乗り心地であり、扱いきれる馬力であることも相まって「車を操る楽しさ」を味わうには十分すぎるほどのポテンシャルを秘めている。WRXやそれ以上のグレードはターボによる高出力を味わうことができる。高速の合流時、インターチェンジの制限速度が解除される瞬間にアクセルを踏み込めばシートに押し付けられるような加速を味わうことができる。自分の行きたい方向へと答えてくれるハンドリングは、まるで自分の運転技能が上手くなったかのような錯覚さえ覚えさせてくれる。エンジンの回転も滑らかであり、乾燥路においても四輪駆動による安定性は素晴らしく、いつまでも乗っていたいと思うほど。90年代後半の車のため、2020年代のハイパフォーマンスカーに比べれば性能面では劣るところは当然多い。しかし、自分で整備する楽しさや車で駆け抜ける喜びを感じることのできるこのクルマには唯一無二の魅力が宿っているといっても過言ではないだろう。

その他[編集]

  • D型の説明書には誤植があり、雪道のチェーンに関する項目で「チェーン」が「チェー」になっている箇所がある。
  • マニュアルトランスミッションにおいて、ガラスのミッションとよく言われるほどミッションが弱いとされている。しかし通常走行ではそうそう壊れるものではなく、特に96年の年次改良で出力を強化したD型からは強化トランスミッションを、98年の年次改良(F型)からは破損しやすかったハウジングも形状を変更するなど対策を取っている。なお、チューニングや競技使用については当然保証外の使い方であるため、なぜリコールしないのかとスバルを責めるのはお門違いである。なおほぼ確実に壊れるのはシフトリンケージ周りのブッシュ関連である。だいたい砕け散る。砕け散るとシフトのぐらつきが異様なレベルとなり、Nに入ってると思ってセルを回したら実はギア入ってるということも。目視では何速に入ってるかわからないレベルになる。
  • 8年にわたり年次改良を受けたため構造やパーツの変更点がとても多く、特にD型とF型ではインテリアを始め補機類についてもISCVやインタークーラー、パワステポンプ形状などが大きく異なる。ヘッドライトなども互換性が無く、流用には加工が必要。なお、同年式・同アプライドであればセダンとワゴンでもポン付け流用が可能な場合が多い。
  • ジムカーナなどで高速旋回する際、ガソリンタンクの底面の形状がよくなく旋回Gの影響で燃料の供給が追い付かなくなることがある。そのため競技用として使用する場合はフューエルキャッチコレクタなどを取り付けるケースが多い。なお、場合によってはリーンバーンからのエンジン焼き付きにつながり、エンジンブローにつながる可能性があるトラブルである。
  • 純正ハンドルは経年劣化が著しく、前期型のナルディの場合は純正ボス部分の接着剤がはがれて垂れ下がってくる。後期型のモモの場合はハンドル部分の皮がはがれ、手が真っ黒になる。対策としては同型車の程度のいい純正ハンドルに変えるか社外ハンドルに変えるのがおすすめ。
  • ミラー調整スイッチには日産の刻印がある。これは当時の富士重工が日産と連携していたためと思われる。
  • ワイパーについて、同時期のスバル車の多くがPULL(手前に引く)とMIST(一回作動)という配置になっていた。しかし現在の多くの自動車のPULLはウォッシャー液の噴射であり、外車のワイパー取り違えよろしくウォッシャー液を盛大に噴射するドライバーがいたとか。
  • センターコンソール上の小物入れを1DINサイズのブラケットにできるものがあり、1DINサイズのコンビメーターやカーオーディオカーナビゲーション(インダッシュナビ)を装着することができる。なお、オンダッシュナビの絶滅に伴い、インダッシュナビを装着できるこのパーツは需要が高く、中古市場では初代フォレスタ―のパーツともども高騰している。
  • ターボ車の場合、インタークーラーで虫が蒸し焼きになっていることが多い。エンジンルームでも特に目立つ部分のため気になりやすい(この車に限ったことではないが。虫以外にも枯草やゴミなども多く入ってくるため、定期的に取り除くのが吉である)。
  • オプションやパーツリストには存在しないものの、説明書には「速度警報装置」の存在が示唆されている。
  • 後期型において、エンジンがオフの時にウインカーレバーを倒し、ハザードスイッチをゆっくり押し込んでいくとハザードではなくウインカーが点灯する。当然、最後まで押し込むとハザードが点灯する。
  • 後期型において、ハザードスイッチとリアデフォッガスイッチが隣接しているため間違えて押しやすい(特に夜間)。前期型はそれぞれメーターの右と左に分かれていたため間違えにくかった。
  • WRX以上のグレードにはインテークダクトのほかに排熱用として左右に2つ穴が開いている。ホモロゲーション獲得のためにラリーカーと市販車の見た目を同じにする必要があった名残である。市販車には雨水避けの裏蓋がしてあり、外した場合はエアフロセンサ(運転席側)とバッテリ(助手席側)を雨水が直撃する。特にエアフロセンサは敏感なため、端末がショートしたりすると悪影響が想定されるのでよほどカツカツなチューンをしていて全開走行するような場面でなければ素直に裏蓋をしておこう。
  • F型とG型にはOBD2ポートがついており、OBD2を使った多機能メーターの一部に対応していることがある[注 20]。なお、E型にも同規格のコネクタがついているが、内部の通信規格は独自規格のためこのような機器は使用することができない。そのため、初代インプレッサにはOBD2は装備されていないと誤解される原因となっている。
  • 年式やグレードにもよるが、純正の水温センサとは別に水温センサを後付けできるサービスホールが設けられているエンジンもある。付近には純正の油圧センサもあり、油温や油圧もこのエリアからまとめて配線しているユーザもいる。
  • 水平対向エンジンという都合上、エンジン本体にアクセスしにくいという欠点も持つ。頻繁にアクセスするような場所でないため影響は少ないが、ノックセンサの不調にはインタークーラーを外す必要があったり、点火プラグにアクセスするためにエアクリーナーボックスやウォッシャータンクを外す必要があり、少々面倒である。そのため、プラグ交換などを断るカー用品店もあったとか。
  • 古い車故か、警告音の類がキー抜き忘れ警告とAT車のバック音しかない。しかし、WRX以上は遮音材が少ないためか外部の音が非常によく聞こえる。過給時の吸気音がはっきり聞こえるのもこのためかもしれない。
  • 比較的エンジン警告灯[注 21]が点灯しやすく、長年乗り続けているオーナーはすぐさま運転席足元の黒のコネクタを用いてダイアグノーシスのチェックに入る。特にノックセンサは経年劣化で壊れやすかったり、エアフロセンサやISCVなどのエラーも吐き出しやすいためオーナーが危機感を感じにくくなっている傾向がある。
  • サイドウィンドウのモールが経年劣化により密着が緩み、その隙間から砂や塵などが入り込んでしまうことがある。こうなってしまうとガラスとそれを押さえつけるスタビライザーの間に異物が噛みこみ、傷となってしまうことが多い。なお、傷にならなくても水のはじき具合が変わったりするため、よくあるトラブルともいえる。
  • この時期のスバル車特有の症状であるブースト0.5病が多発しやすい車でもある。デューティソレノイドが怪しいといわれているが、エアフロセンサーの故障による例も少なくない。特にF型とG型の後期型に装備されているエアフロセンサーは壊れやすいことで有名であり、エンジンの息つきやアイドリングの不調の症状も併発していれば清掃や交換も視野に入れるべきである。
  • 上記のエアフロセンサであるが、あまりに壊れやすかったため対策品に交換されているケースも多い。対策品には緑のマーカーが入っており、区別できるようになっている。なお、それでも壊れる模様。
  • クーラント(冷却水)の消耗が多い車でもある。普通に揮発するほか、ジムカーナなどで左側に強い荷重がかかるような場合にあふれ出ることもあるとか。なお、全容量は7.2Lであり、特段多くも少なくもない。
  • エンジンノックを検知するノックセンサーが経年劣化で壊れることがある。純正で1万円だが、その他のメーカーから数千円で売られているものもある。しかし、ノックセンサーは大体アクセスの悪いところに取り付けられており、GC/GFの場合はインタークーラーを外したその先にある。インタークーラーを外すだけでアクセスが可能になるだけ温情という感想も聞かれるが、ターボ車のタワーバー装着率は高く、インタークーラーの取り外しにはそれも外さなければならないのでなんだかんだ手間ではある。しかも肝心のセンサが取り付けにくいというおまけつき。高いが一度取り付ければ壊れにくい純正品か、安いけど壊れる可能性もある互換品を取り付けるかはユーザー次第である。なお、ノックセンサの品番は「22060AA070」である。
  • バッテリーがよく水浸しになる車でもある。それによりショートするような致命的な症状は出ないものの、雨上がりや洗車後にボンネットを開けてバッテリの底面が水に浸かっているのは心理的に不安になるオーナーは多い。そのため三菱のギャランフォルティス用のバッテリーカバー(8206A109)を流用するカスタムがよく行われる。なお、ギャランフォルティスはあのランエボXとプラットフォームを共有しており、インプレッサとランエボの関係を踏まえるとなかなか背徳的なカスタムといえる。
  • 助手席足元の内張を剥がすとECUがある。薄い鉄板で保護されているが、この鉄板の切れ味がなかなかに良く、油断すると痛い思いをする。手袋を忘れずに。
  • ウィキペディア日本語版における方向指示器のイラストがおそらく前期型のスポーツワゴンである。コンビネーションスイッチとインジケーターの写真もおそらく同じ車か同時期のスバル車であることは間違いない。

適合情報[編集]

ここでは各種消耗品や個人でも交換が容易な部品の適合情報について記述していく。

灯火類

前期と後期でヘッドライトの形状や構造が若干変わるものの、基本的にはほとんど変化がない。また、ヘッドライトやフォグランプはHIDではなくハロゲンである。

アプライドF・G型の場合の灯火類
場所 形状 定格 その他
ヘッドライト H4 12V100W/80W Hi/Lo
ポジション T10 12V5W
フォグランプ H3 12V55W
ウインカー
(フロント)
S25シングル 12V21W
ウインカー
(サイド)
T10 12V5W
ウインカー
(サイド)
S25ピン角違い アンバー
尾灯 S25ダブル 12V21W/5W ストップ/テール
ハイマウントストップ T16 12V16W
バックランプ S25シングル 12V21W
ナンバー灯 T10 12V5W
マップランプ T10×31 12V8W
ルームランプ T10×31 12V8W
カーゴランプ T10 12V5W セダンタイプは設定なし
メーター球
(照明)
T5 12V1.2W 青色ソケットのもの
3個使用
メーター球
(照明)
T10 12V5W 黒色ソケットのもの
1個使用
メーター球
(ハイビーム)
T5 12V1.2W
メーター球
(ウインカー)
T5 12V1.2W
メーター球
(エアバッグ警告灯)
T5 12V1.2W
エアコンパネル
(照明)
T4.7 12V
エアコンパネル
(A/C・循環インジケータ)
T4.7 12V
スパークプラグ

E型までとF型以降、つまりE-GC/GFとGF-GC/GFによる違いはない。一方で同じ2000ccでもE-GC/GFの場合はターボ車と異なるプラグを採用している。これは2000ccのNAがF型以降はスポーツ志向を強めたモデルとして再設定されているためである。そのため、E-GC/GFのターボ車以外、つまり2000ccを含むNA車はすべて同じスパークプラグを採用している。 なお、F型以降の1800cc以下のスパークプラグもE-GC/GFのNAモデルと同じスパークプラグである。

NGKにおける適合情報
排気量 過給 年式 プレミアムRXプラグ 標準プラグ 純正品番
~1800cc NA H4.11~H12.8 BKR6ERX-11P(94915) BKR6E-11(2756) 22401AA310
2000cc NA H10.9~H12.8 BKR6ERX-PS(92220) PFR6G(3479) 22401AA530
2000cc NA H10.9~H12.8 BKR6ERX-PS(92220) PFR6G(3479) 22401AA530
2000cc TB H4.11~H12.8 BKR6ERX-PS(92220) PFR6B(3500) 22401AA400
プラグコード

GC8の初期は現在主流のダイレクトイグニッションコイル方式であったが、あまりにも時代の先を行き過ぎて素材が耐え切れず不具合が発生することもあった。改良型の交換品をリリースするもD型からは集合方式のイグニッションコイルに戻している。 なおF型以降の2000ccNAモデル、つまりSRXは再びダイレクトイグニッション方式を採用した。2代目インプレッサはダイレクトイグニッションになっていることを考えるとAVCSの採用といい、実験的で先進的なグレードであったといえる。

NGKにおける適合情報
排気量 過給 年式 プラグコード パワーコード 備考
~1800cc NA H4.11~H6.8 RC-FE39(1634) 16F
~1800cc NA H6.9~H10.9 RC-FE49(8355) 05F(8417)
~1800cc NA H10.8~H12.8 RC-FE59(8715) 10F(8834)
2000cc NA H8.1~H10.9 RC-FX41(8371) 14F
2000cc NA H10.9~H12.8 - - ダイレクトIG
2000cc TB H4.11~H8.9 - - ダイレクトIG
2000cc TB H8.9~H10.9 RC-FX47(8243) 03F(8925)
2000cc TB H10.9~H12.8 - 07F(9976)

自己診断機能[編集]

この時期のスバル車は運転席足元のカプラ同士を接続するだけで特別な機械を用意せずとも車両の自己診断機能を利用してエラーコードを読むことが可能である。その接続方法により「リードメモリモード」、「Dチェックモード」、「クリアメモリモード」を利用することができる。なお、「ダイアグ」とも呼ばれることもあり、「ダイアグを確認」と言った場合は「ダイアグノーシス(自己診断機能による)確認」の意味である。

リードメモリモード
リードメモリモードはキーを抜いた状態で運転席足元の黒のカプラ同士を接続し、イグニッションをONにした時のエンジン警告灯の点滅でエラーコードを確認できるモードである。店頭パターンは点灯時間の長短で判別し、長い点灯が十の位を、短い点滅が1の位を表す。
エラーコードと内容
エラーコード 内容 エラーコード 内容
11 クランク角センサ異常 31 スロットルポジションセンサ異常
12 スタータ信号系異常 32 O2センサ異常
13 カム角センサ異常 33 車速センサ異常
14 1番インジェクタ異常 37 第2O2センサ異常(2LのAT車のみ)
15 2番インジェクタ異常 42 アイドルスイッチ信号異常
16 3番インジェクタ異常 43 アクセルスイッチ信号異常
17 4番インジェクタ異常 44 ブースト圧制御異常
21 水温センサ異常 45 圧力センサ異常または
大気圧/絶対圧切替ソレノイド異常
22 ノックセンサ異常 51 ニュートラルスイッチ信号異常
23 エアフロセンサ異常 52 パーキングスイッチ信号異常
(AT車はインヒビタスイッチ異常)
24 ISCV異常
年式により異なる可能性はあるものの、凡そこのようになっている。また、同時期のスバル車において共通であることも多く、6気筒エンジンであれば「18 5番インジェクタ異常」というものもある。
なお、整備手順書などにおいては異常を「オープンorショート」などと表記している場合もある。本稿ではわかりやすくオープンorショートと書くのがめんどくさいので「異常」と表記した。
同じ長さで点滅し続けている場合はエラーなしである。
Dチェックモード
リードメモリモードと同様の手順であるが、接続するカプラは緑同士である。このモードはエンジンがかかっていない状態での燃料ポンプの動作チェックとソレノイドバルブ、電動ファンなどの動作確認をした後、車速パルスやO2センサなどをチェックし、改めて故障コードを確認するモードである。
  1. 車両の暖気を済ませておく
  2. エンジンを切り、キーを抜いた状態で緑色のカプラを接続
  3. キーをONの位置へ(エンジンは掛けない)
  4. 電動ファンや燃料ポンプの動作を確認
  5. アクセルペダルをゆっくり踏み抜き、ゆっくりと戻す
  6. エンジン始動
  7. 車両を走らせ、10km以上の速度で走行する(車速パルステスト)
  8. 車両を停止し、3000rpm付近を維持して1分程度アイドリングする(O2センサテスト)
  9. 全てのテストが終了するとエンジン警告灯が点滅し始めるため、エラーコードを確認する
クリアメモリモード
リードメモリモードとDチェックモードのカプラを両方接続し、Dチェックモードの手順を自国することでECUのエラー履歴の消去とセーフモードからの復帰を行うモードである。Dチェックモードではなくこちらを利用する場合もあるとかないとか。


GD/GG型(2000~2007)[編集]

スバル・インプレッサ(GD/GG)
販売期間2000~2007年
ボディタイプ5ドアステーションワゴン
4ドアセダン
エンジンEJ15 SOHC
EJ20 DOHC
EJ20 DOHCターボ
EJ25 DOHC
EJ25 DOHCターボ
すべて水平対向4気筒。
※2.0Lは原則AVCS付
使用燃料SOHCエンジン 無鉛レギュラーガソリン
DOHCエンジン 無鉛プレミアムガソリン
トランスミッションフロアMT5速/フロアMT6速
フロアAT4速
駆動方式前輪駆動/四輪駆動
車両寸法
全長
全高
全幅

4,465mm
1,455mm
1,695mm
車両重量1,380kg
サスペンション独立懸架ストラット
ブレーキベンチレーテッドディスク
最高出力250PS/6000rpm
最大トルク34.0kgm/3600rpm
備考車両サイズや重量・ブレーキや出力などは2006年式ワゴンWRXのデータを掲載

GC/GF系の後継として開発された2代目となるインプレッサ。先代に引き続きセダンとステーションワゴンを持つ。Wikipediaにおいてはなぜかこの代だけ単独記事が存在している。 フェイスリフトが2度行われており、愛好家の間では初登場時を「丸目」、1度目のフェイスリフトを「涙目」、2度目のフェイスリフトを「鷹目」と呼ぶ。丸目インプレッサは初登場時こそ不評だったものの、現在では愛嬌がある、と再評価する声も多い。RS200とかのラリーカーっぽさがあってカッコいいと思う。涙目はこの代のインプレッサの「顔」ともいえるモデルであり、2代目インプレッサと言ったらこの顔という印象を持つ人は少なくない。GC系はグリルやフロントバンパーで顔のバリエーションがいくつかあったが、顔をここまでコロコロ変えたインプレッサはこのGD系のみである。なお、GD系に無理やりGC系のフロントフェイスを移植したり、その逆を試みる人が少なからずいる。

定番のSTiであるが、2005年から社名表記をSTIに改めたため本モデル中後期あたりのハイパフォーマンスモデルはSTI表記に統一されている。

ワゴンは5ナンバー枠に収めるために全幅を5mm増える程度にとどまったが、セダンはラリー出場を念頭に置いていたため、安定性のために全幅を3ナンバー枠まで広げている。ホイールトレッドも延長され、より操作性が向上したとか。シャーシも手を加えられており、200kg近く軽量化を果たしながら剛性はGC以上となった。この剛性強化は安全面にも寄与しており、新環状力骨構造と呼ばれる構造により乗員を保護する能力は先代に比べてはるかに高い。海外での事故の際、レスキューが使うピラーカッターでBピラーが切れず、やむを得ず天井を切った話は有名である。

WRXだからといってターボモデルというわけではなく、WRX-NB(ターボ)とWRX-NA(NA)が設定された[注 22]。また、GCで競技ベース車として重宝されたRAもSpec-Cとして続投。エアコンや集中ドアロックなどの快適装備がすべてオプションとなり、ガラスも軽量ガラスが採用されるなど市販状態でかなりの軽量化が施されたスパルタン仕様であり、ラリーベース車として評判が良かった。一方で快適装備を備えたパッケージのリミテッドモデルも発売された。 この代にはA-Lineというハイパワーながら落ち着いた外観をもつグレードが設定され、このグレードは3代目となるインプレッサにも続投。STIかつAT仕様という貴重なグレードとなった。

ギリシャにおいては1.6Lターボモデルが存在していたという。[3]このほかにもこの代のインプレッサは各国における特別仕様が多く、日本のほかにも北米、オーストラリア、イギリスなどでその存在が確認されている。

初代は不等長エキマニのために聞こえていたボクサーサウンドであるが、この代から等長エキマニになったためボクサーサウンドは聞けなくなってしまった。しかし、その分排気効率は上昇した。

涙目インプレッサ(GDB)のインテークダクトは特に大きく、門型自動洗車機が使用できない車種に指定されていることもある。

2006年の改良の際、1.5Lに新たに設定されたグレードである「1.5R」に対し、新たにEL型エンジンが採用された。このグレードと次代の1.5Lモデルにのみ採用されるEL15エンジンであるが。同社のEJ15をベースにDOHC化し、上位グレードで採用されているAVCSを採用したものである。なお、新開発エンジンというよりは派生型であり、EJエンジンのバリエーションの一つとみることもできる。そのためかEJ型エンジンの採用縮小の影響をもろに受け、4代目インプレッサにはELエンジンは採用されずに新開発のFBエンジンが搭載された。

DCCD[編集]

インプレッサの秘密兵器とまで呼ばれたDCCDであるが、2代目インプレッサにおいては3度のバージョンアップがされており、フェイスリフトに合わせてさまざまな改良がなされたモデルである。

フルモデルチェンジ直後、所謂丸目になった際には初代よりもフロントのトルク配分が増え、顕著なアンダーステア傾向がみられたとされている。なお、DCCDが搭載されたのは「WRX STi TypeRA spec C」の16インチ仕様というスパルタンな競技ベースを前提としたモデルのみであり[4]、インプレッサをあまり知らない人は丸目にDCCDが搭載されていないと思ってしまう人も少なくない。

フェイスリフトを受け、所謂涙目と呼ばれるようになったインプレッサにおいては不評であったトルク配分を初代同様のリア寄りのトルク配分に戻している。また、この代からオートモードが追加され、車体の状況に合わせてセンターデフのロック率を自動で可変させるシステムとなった。この代から採用グレードも増え、DCCDの認知上昇に一役買った。

2度目のフェイスリフトを受け鷹目と呼ばれるようになったインプレッサでは構造に大幅な改良が加えられ、従来のプラネタリーギアと電磁式LSDに加え、機械式LSDが新たに組み合わせられた。また、車両のアンダーステア傾向が改善されたため、以前よりもフロントへのトルク配分が増えている。

ヘッドライトユニット[編集]

フルモデルチェンジにともない、ヘッドライトユニットの素材がガラスから樹脂へと変更された。そのため経年劣化で黄変するようになってしまったため、マメな手入れ[注 23]が必要になった。

ヘッドライトや車幅灯の交換について、丸目インプレッサの頃は先代同様エンジンルームからアクセスできるものであった(運転席側のインテークと助手席側のバッテリを外す必要はある)[5]。ヘッドライトバルブは総じて同様なものの、問題はポジションバルブとウインカーバルブである。まずポジションバルブについて、マイナーチェンジ後の涙目インプレッサからはバンパー脱着が標準仕様になる[6]など作業性が極悪化した。そのうえでヘッドライトユニットを動かして作業スペースを用意する必要があるという仕様である。一応グリルを外せばバンパーの脱着は必要でなくなるものの、先代に比べるとはるかに面倒である。最後の鷹目インプレッサからは若干改良され、ヘッドライトユニットを外さなくても交換ができるようになっている[7]。一方、素手で突っ込むと手を怪我しやすく、軍手などを装着したほうが良い。

サーブ・9-2X[編集]

サーブ・9-2X(ナイン・ツー・エックス)として、本代のスポーツワゴンをベースに外観の意匠変更を施した車両が販売されていたことがある。これは当時ゼネラルモーターズがスバルと資本提携の関係にあり、サーブ社が2000年にゼネラルモーターズの完全子会社化になったことによるものである。2.0Lターボと2.5L自然吸気のエンジンが用意され、駆動方式はAWDのみであった。なお、トランスミッションは4ATと5MTである。素性はGG系インプレッサそのものである。2005年に8,000台ほどが販売されたというが、年内にGMとスバルが資本提携を解消したため9-2Xの生産・販売も終了となった。なお、当然のように日本では発売されていない。

同様の経緯でゼネラルモーターズ傘下のオペルが開発・生産していたザフィーラOEMとしてスバル・トラヴィックが存在している。

GE/GH/GR/GV型(2007~2011)[編集]

スバル・インプレッサ
(GE/GH/GR/GV)
2007インプレッサSGT.JPG
2007年式インプレッサ5ドアS-GT
販売期間2007~2017年
ボディタイプ5ドアハッチバック
4ドアセダン
エンジンEL15 DOHC
EJ203 SOHC
EJ20X DOHCターボ
EJ207 DOHCターボ
EJ257 DOHCターボ
すべて水平対向4気筒。
※EJ203以外AVCS付
使用燃料EL15・EJ203 無鉛レギュラーガソリン
それ以外 無鉛プレミアムガソリン
トランスミッションフロアMT5速/フロアMT6速
フロアAT4速/フロアAT5速
駆動方式前輪駆動/四輪駆動
車両寸法
全長
全高
全幅

4,415mm
1,475mm
1,740mm
車両重量1,390kg
サスペンション(F)独立懸架ストラット
(R)ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(F)ベンチレーテッドディスク
(R)ソリッドディスク
最高出力250PS/6000rpm
最大トルク34.0kgm/2400rpm
備考車両サイズや重量・ブレーキや出力などは2007年式GH8(S-GT)のデータを掲載

3代目となるインプレッサで、「インプレッサWRX」が存在した最後のインプレッサである。フロントのデザインは2代目の最終型である「鷹目」を想起させるデザインとなっており、インプレッサのデザインのキモである「キープコンセプト」を維持しつつ、よりワイドでダイナミックなデザインとなっている。ドアについてはサッシュレスドアからサッシュドアになり、剛性面でより性能が向上したといわれている[注 24]。なお、全モデルで全幅を拡大したため3ナンバーモデルとなっている。このため、スバルにおける自社生産モデルでの5ナンバーサイズがラインナップから消えることとなった。

ボディスタイルはハッチバックセダンの展開となっているが、当初はハッチバックのみの展開であった。もっとも、北米市場では販売当初より4ドアセダンを販売しており、2.5LのWRXとして発売していたものもある。日本市場の4ドアセダン投入はハッチバックの発売から半年が過ぎたあたりに行われ、「インプレッサアネシス」として発売された。

インプレッサアネシスは2Lターボモデルは設定されていないため「スペック」だけを気にするタイプからは見向きもされないことが多い。一方でハッチバックよりも落ち着いた雰囲気を醸し出しており、流麗なデザインも相まってセダンタイプの車としてみたときに高い評価を出す人も多い。特に2Lモデルについては実用的であり普段使いに過不足なく、トランクの収納も420Lと日常生活に問題のない容量を持つ。それでありながらハッチバックよりも高い剛性があり、ハッチバックからの乗り換えの際はストラットタワーバーを追加したような印象を受けるという。また、テールランプなどの意匠はセダンとハッチバックで異なっており、それぞれ違った車のような印象を受けるほどである。

中古市場ではハッチバックのほうが若干高めであり、セダンのアネシスは若干安価傾向にある。

サスペンションについても手を加えられており、リアサスペンションは従来の独立懸架ストラットからダブルウィッシュボーンに変更されている。一方でラリーカーであるインプレッサWRC2008は前後ともに独立懸架ストラットに戻されている[注 25]

今までWRXのグレードであった2Lターボ車には「S-GT」というグレートが与えられ、S-GTは従来のWRX[注 26]の延長線上にあるものとして位置づけられている。先代まではSTIなどのスポーツモデルと大部分を共有しており、外見的にもスポーツモデルとしての性格が強いものであったが、インプレッサ=2L水平対向ターボ+AWDスポーツモデルというイメージが強くなりすぎてしまっていた。そこで「逆方面」へのテコ入れとしてWRXというグレードを一時休止し、S-GTとしておとなしいクルーズ向けの車として設定されたのがS-GTである。一方で250PSを発揮するターボエンジン、タコメータを中心にレイアウトしたコンビネーションメータ、ちょっとスポーツチックなシート、スポーツユースではないのにちょっと堅めの乗り心地など、なぜかスポーツテイストを随所に残しているのがスバルらしいといったところか。サイズが広がったことにより車内空間も大きくなり、セダンのアネシス同様に普段使いからそこそこの長距離クルーズまでこなせる優等生である。一方、優等生過ぎて評価点も少ない(面白味の少ない)車との見方も多い。なお、2L自然吸気モデルとして、2.0iや20Sが設定された。一方で先代までのようにスポーツモデルではないため、2Lの自然吸気DOHCエンジンのEJ204ではなく、140PS程度のSOHCエンジン(EJ203)が設定されている。

WRXSTI[編集]

先代までのSTIやRAに相当するグレードとしてWRXSTIというグレードが存在し、S-GTの発売当初からSTIモデルが開発中であると公言されていたものである。WRXSTIに搭載されるEJ207は形式名こそ初代インプレッサの後期に搭載されたものと同じであるが、AVCSが吸排気に対応しデュアルAVCS化、EJ20X同様にツインスクロールターボ化するなど全くの別物と言っても差し支えなく、インプレッサとしては初めて280馬力の自主規制を突破したモデルである。公式的にはこれが「WRX系の後継」とされているが、どちらかというとDCCD搭載やブレーキ系統などからSTI系の延長であるように思われる。初代のWRXもスペック上は優れていたが、STiやRA以外のWRXは追加装備などがあまりなく、地味な優等生ポジションにあるグレードであったため、所謂「素WRX」の後継はS-GTがふさわしいと思われる。2007年10月に発売されたWRXSTIについてはベース車のインプレッサとは形式名が異なり、GRとGVの型式となった(あくまで車名はインプレッサWRXSTIのままであるほか、形式名のGはインプレッサを表す記号でもある)[注 27]。このことからもインプレッサは一般用途として継続、スポーツカーとしてのインプレッサは別のものとして独立させるという構想であったと思われる。なお、前述のとおり海外においては当初よりWRXが発売されており、2.5LターボのEJ255エンジンが搭載されていたという。

インプレッサXV[編集]

2010年6月には派生車種としてクロスオーバーSUVである「XV」が設定された。かつてのグラベルEXを知るものからは驚きと不安が広がったが、予想以上の売れ行きとなったようだ。この当時はインプレッサXVであり、あくまでインプレッサの仕様の一つであり、差別化されているポイントも少なかった。XVはのちにSUBARU XVとして独立車種となり、インプレッサと外観上のデザインを共通化しながら車高を抑えた使い勝手のいいクロスオーバーSUVとしての需要を満たしている。

エンジン[編集]

搭載されるエンジンも多種にわたっており、EJ20系だけでもEJ204(NA)、EJ20X(ツインスクロールターボ)、EJ207(シングルターボ280PS)、WRXSTIのEJ207(ツインスクロールターボで308PS)が展開されており、そのほか1.5LのEL15やディーゼルのEE20、2.5LのEJ25系など初代インプレッサ並みに多種多様なグレード展開がなされている。日本国内は基本的に2Lまでのモデルが主流であるが、2007年10月に追加された「WRX STI A-Line」には2.5Lターボと5速オートマチックトランスミッションが組み合わされている。輸出向けのEJ25を国内向けに改良し300PSを発揮するモデルであり、日本国内市場におけるインプレッサの排気量で最大のモデルである。また、先代に引き続き1.5Lモデルに設定されたEL15エンジンであるが、本モデルの販売終了に伴い展開を終了している。同時にスバルが自社製造する1.5Lエンジンを搭載するモデルも途絶えることになる。

トランスミッション[編集]

トランスミッションは基本的に5速マニュアルと4速オートマチックである[注 28]。一方、WRXSTIの6速マニュアルモデルや前述のA-Line5速ATを搭載したモデルも存在している。4代目からMTは1.6Lのみとなり、ATは廃止されCVT(リニアトロニック)に統一されたため、最後の5速(6速)ターボモデル、ATモデルが存在するモデルとなっている。

なお、トランスミッションであるが、S-GTのATのギア比[8]と初代インプレッサの後期型SRXのギア比[9]は最終減速比まで全く同じである。なお、更に遡れば90年式のレガシィ(TiタイプS)の4ATと同じギア比であることがわかる[10]。というか同時期のスバル車でほぼ同じである[11]。CVTの開発に注力しすぎてしまったのが原因かどうかは不明であるが、マニュアルのTY75と同様にこのE-4AT(Electro 4-SpeedAutomatic)も長く使われることになったミッションとなった。なお、スバルがCVTに舵を切った後もマニュアルトランスミッションとしてTY75は令和になっても使われ続けることになる。

DCCD[編集]

WRXSTIのみに搭載され、構造は先代の鷹目を踏襲している。前後の基本トルク配分等は変わっていないが自動制御系を更新しており、トラクション重視の「AUTO+」と旋回性重視の「AUTO-」というモード(マルチモードDCCD)が新たに設定された。また、通常のVDCを高度化したマルチモードVDCも搭載されており、車両制御系のハイテク装備が充実されている。なお、2023年の時点でDCCDが搭載されている最後のインプレッサでもある。

自己診断機能[編集]

自己診断機能が従来のカプラー接続(からのエンジン警告灯の表示パターン読み取り)タイプからDTCコードの表示に変わった。そのため窮屈な思いをしながらカプラーの脱着をしたり、点灯パターンを念入りに確認しなくても良くなった。DTC表示モードは以下の手順で呼び出すことができる。

  1. イグニッションスイッチをオフからオンにする。
  2. 1.から3秒以内にライティングスイッチをオンにする。
  3. トリップ切替ノブを4回押す。
  4. ライティングスイッチをオフにする。
  5. トリップ切替ノブを4回押す。
  6. ライティングスイッチをオンにする。
  7. トリップ切替ノブを4回押す
  8. 以上の操作を10秒以内に行う

成功すればDTC表示モードに入る。DTC表示モードに入った後はECU→TCU→ABSの順で表示され、故障がない場合は「P - - - -」などのように表示される。DTCの内容は左側のアルファベットと4桁の数字(それとトリップAorBの表示)で確認することができ、従来の2桁コード以上の情報を取得することができる。

DTC表示モードは車速を検知するかイグニッションをオフにすることで解除される。

GP/GJ型(2011~2016)[編集]

スバル・インプレッサ(GP/GJ/GPE[注 29])
販売期間2011~2016年
ボディタイプ5ドアハッチバック
4ドアセダン
エンジンFB16
FB20
FB20(HV)
使用燃料無鉛レギュラーガソリン
トランスミッションフロアMT5速/CVT
駆動方式前輪駆動/四輪駆動
車両寸法
全長
全高
全幅

4,420mm
1,465mm
1,740mm
車両重量1,360kg
サスペンション(F)独立懸架ストラット
(R)ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前輪:ベンチレーテッドディスク
後輪:ソリッドローターディスク
最高出力150PS/6200rpm
最大トルク20.0kgm/4200rpm
備考車両サイズや重量・ブレーキや出力などは2015年式GP7(プラウドエディション)のデータを掲載

4代目となるインプレッサ。この代より「スポーツ」というサブネームが与えられ、ステーションワゴン風の「インプレッサスポーツ」(GP)とセダンタイプの「インプレッサG4」(GJ)となる。若干大きくなったように見えるものの、先代とほぼ変わらない大きさである。インプレッサとしては広い室内空間もあり、日常からレジャーまでオールマイティに使用できる一品である[注 30][12]。エンジンはFB20とFB16が設定され、EJ型エンジンから完全に脱却した初のモデルでもある。2Lターボのホットモデルは消滅した。スバル曰く、新開発のFBエンジンは1.6Lモデルでも従前の2L自然吸気エンジンと遜色のない運動性能を持っているらしい。2.0Lモデルにおいても燃費向上と低中速域でのトルク向上を達成。ターボモデルには及ばないものの優れた加速感を味わえるという。トランスミッションはマニュアルトランスミッションとCVTであるリニアトロニックの2種類。ついに4ATを脱却した[注 31]。リニアトロニック搭載車にはパドルシフトも装備され、マニュアルモードで6段切り替えが可能になっている。[注 32]走行性能に加えてアイサイトや衝突安全ボディなど、安全性がさらに向上した。2022年時点でMTが搭載される最後のインプレッサ。

省燃費性が求められるトレンドに追従し、水平対向エンジンとアイドリングストップの組合せをスバルで初めて実現した結果FFの1.6LモデルではJC08モード燃費で17.6km/Lを達成。2015年にはXVに搭載されていたハイブリッドシステムを5ドアのスポーツに搭載。ハイブリッドスポーツとしてインプレッサ初のハイブリッドモデルが誕生する。が、燃費はさほど変わらない。かつてのスバルのコンセプトカーのように、当時のスバルはハイブリッドシステムをあくまでスポーツ性のためのシステムとして売り込みたかったのかもしれない。なお、ハイブリッドモデルのエンジン性能などは先に発売されたXV HYBRIDと同様であるが、ハイブリッド制御はハイブリッドスポーツの設定と同時に変更されており、よりEV領域を利用するようになったとか[13]。なお、マニュアル車にはヒルスタートアシストが装備される。坂道発進も安心である。

なお、この代から派生車種だったインプレッサXVとインプレッサWRXはそれぞれスバル・XVスバル・WRXとして独立車種となる[注 33]

GT/GK型(2016~2022)[編集]

スバル・インプレッサ(GT/GK)
販売期間2016~2022年
ボディタイプ5ドアハッチバック
4ドアセダン
エンジンFB16
FB20
FB20 e-BOXER(HV)
2Lエンジンはガソリン直噴エンジン
使用燃料無鉛レギュラーガソリン
トランスミッションCVT
駆動方式前輪駆動/四輪駆動
車両寸法
全長
全高
全幅

4,475mm
1,480mm
1,775mm
車両重量1,400kg
サスペンション(F)独立懸架ストラット
(R)ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前輪:ベンチレーテッドディスク
後輪:ベンチレーテッドディスク
最高出力154PS/6000rpm
最大トルク20.0kgm/4000rpm
備考車両サイズや重量・ブレーキや出力などは2021年式GT7(STIスポーツ)のデータを掲載

5代目となるインプレッサ。インプレッサスポーツとインプレッサG4の2モデル体制は継承している。より安全に、より快適に運転を楽しめる車に成熟しつつある。エクステリアも4代目のずんぐりとしたデザインではなく、シャープで流麗なデザインが美しい。今までのインプレッサの中でも最もメリハリが効いたデザインともいわれており、サイドから見たシャープなフロントラインとなだらかなリアエンドのデザインは伸びやかでスタイリッシュなデザインとなっている。また、先代より鋭くなったヘッドライトはボディの横幅を強調しており、よりワイド&ローな安定感の演出に一役買っている。一見するとスバルっぽくないデザインであるが、スバルのデザインのアイデンティティともいえる六角形をモチーフにしたフロントグリルや昔より増えたCIマーク[注 34]、テールランプのカクつき具合でスバルっぽさが滲みだしている。

なお大きさは先代より一回り大きくなっている。プラットフォームの更新もなされ、「スバルグローバルプラットフォーム」により安定性と応答性を向上しているとされる。エンジンは先代に引き続きFB20とFB16であるが、エンジン本体の軽量化や直噴エンジン化、設計見直しなど、各種の改良が加えられている。EJ20の経歴を考えればまだまだ改良されていくだろう。組み合わせられる変速機はスバルのCVTであるリニアトロニックである。内装は同世代のフォレスターやXVと共通であるが、X-MODEスイッチは存在しない。遮音性は比較的高く、不快な音や不安になるようなノイズも感じにくいほどである。広くなったボディサイズは車内空間の広さにも寄与しており、大きくなってしまったデメリット分のメリットは確保している模様である。

全グレードにアイサイトを標準装備するほか、歩行者保護エアバッグを全車に標準装備しており、万が一の際の歩行者への安全性も高めている。なお、この歩行者エアバッグの標準装備は日本車としてはこのインプレッサが初となる。

2019年にビッグマイナーチェンジを受け、新デザインのフロントフェイスやヘLEDヘッドライト、アルミホイールなどに変更された。また、シートポジションやドアミラー位置のメモリー機能やドアミラーの自動格納、リバースギアでドアミラーが自動で調整される機能が追加された。[注 35]。また、自動ドアロック・アンロック機能付きの集中ドアロックも全車標準装備となった。

2020年の秋にスバル車で共通のグレードであるSTI Sportが設定された。このグレードはFF/AWDのどちらにも設定され、STIを関するグレードの中でFFはこのインプレッサのみと言われているほど珍しい[14]。SHOWAのSFRD[注 36]をフロントサスペンションに採用している。リアダンパーは純正であるものの、フロント同様STIによるチューニングが施されており、既存グレード以上の乗り心地の良さがあるといわれている[15]。エンジンは既存グレードの2.0i-L EyeSightと同様のFB20であり、出力に違いはない。また、ハイブリッドのe-BOXERのようにハイブリッドの電力によるアシストもないため、少々物足りなさを感じることもある。しかし、STI Sportのコンセプトが従来のSTIとは異なり、スポーツドライビングだけではなくコンフォート性も高めたコンセプトであることから、ベース車の性格をそのままに質感を高めた本グレードはコンセプトに沿った一台であることに間違いはないだろう。

2022年にはインプレッサ生誕30周年となる記念モデルも発表され、1.6Lモデルをベースに専用アルミホイールや加飾付きのフロントグリルなどを装備した特別仕様車が「1.6i-S EyeSight AccentBlack」として設定された。

2022年内で販売が終了され、6代目へとモデルチェンジを果たす。

GU型(2023~現行)[編集]

スバル・インプレッサ(GU)
販売期間2023年~
ボディタイプ5ドアハッチバック
エンジンFB20
FB20 e-BOXER(HV)
すべてガソリン直噴エンジン
使用燃料無鉛レギュラーガソリン
トランスミッションCVT
駆動方式前輪駆動/四輪駆動
車両寸法
全長
全高
全幅

4,475mm
1,515mm
1,780mm
車両重量1,580kg
サスペンション(F)独立懸架ストラット
(R)ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前輪:ベンチレーテッドディスク
後輪:ベンチレーテッドディスク
最高出力145PS/6000rpm
最大トルク19.2kgm/4000rpm
備考車両サイズや重量・ブレーキや出力などは2023年式GUE(ST-H)のデータを掲載

2022年11月18日に発表された。先代のセダンであるG4などはラインナップされず、ハッチバックのみとなっている。また、スポーツモデルとして新たに「RS」グレードが用意された。2.5Lのエンジンを搭載し、WRXと同様のステアリングラックを装備するなど、ベースグレードより走行性能を強化している。

本格的に北米市場重視が表れており、発表がアメリカの自動車イベントでおこなわれ、当初は北米市場が先とアナウンスされていた}。そのせいか全長・全幅・全高ともにサイズアップを果たしている[注 37]。フロントのデザインも2代目レヴォーグWRXのようにグリルを大きく、灯火類を小さくするようなデザインに変化した。サイズはレヴォーグに迫り、大きくなってしまったが、2代目レヴォーグのデザインに比べれば随分マシである。また、2.5Lクラスのエンジンを搭載するグレードがあることからレヴォーグがさらなる大型化と大排気量化に至る布石の可能性もある。行きつく先が80年代末期の北米偏重による倒産騒ぎにならないとよいのだが...

日本国内においては2023年3月から先行予約が始まっており、4月20日に価格が発表されて正式発売が開始されている。先だって発表された際に話題となった「RS」は設定されず[注 38]、エントリーグレードとなる純ガソリンエンジン仕様のSTとe-BOXER[注 39]のST-G、ST-Gの装備を充実させたST-Hの3グレードを投入している。すべて2.0L直噴エンジンであるFB20を搭載し、駆動方式はAWDとFWDとなっている。FWDは前輪駆動となっており、安定感こそAWDモデルに劣るもののハンドリングの軽快さや燃費性能においては優れている。もっとも、FFでも低μ路における安定性は後輪駆動よりも優れており、一般的な使用において特に問題になることはないといわれている。フルタイムAWDに拘ったスバルの安定感を享受したいユーザーにおいてはAWD一択であるが、FFでも素性の良さは変わらず、初めてのスバル車としておすすめな一台でもある。

先代に設定されていた1.6Lモデルは今回設定されておらず、ある程度グレード体系を絞った形になっている。ボディカラーは9色が設定され、そのうちホライゾン・ブルーパールはST-GかST-Hのみ選択できる限定色(e-BOXER限定色)になっている。なお、燃費はSTが14.7km/L、ST-GとST-Hが18.9km/Lとなっており[注 40]、燃費の差はわずか4km/L強といったところである。良くも悪くもスバルらしい(誉め言葉)。

インパネ周りについて、ST-GとST-Hのグレードではレヴォーグなどと同様にエアコンやインフォメーションとオーディオが一体となったセンターディスプレイが装備される。STについてはオーディオレス仕様が標準となっており、エアコンとインフォメーションモニターのみが設置され、上部にオーディオスペースが設けられている。ここは好みが分かれるところであるが、後述の全方位ビューを使用したい場合はセンターディスプレイが必須となる。 ST-Hには全方位カメラビューが採用されており、その他のグレードはメーカーオプションで追加できるものである。なお、3Dビュー表示というものがあり、「Pレンジの時に限り」選択でき、自車を斜め上から見たような映像を映し出すことができる。

アイサイトについてはACC[注 41]を含むほとんどの機能が全グレード共通しており、グレードによる差異は前述の全方位カメラビューのほかに車線変更時のアシスト[注 42]と自動ハイビーム、スバルのコネクティッドサービスであるSTARLINK程度である[注 43]。歩行者用エアバッグやドライバーの異常を検知して自動減速からの自動停止を行うようなシステム[注 44]、まで標準であり、スバルの安全に対する取り組みや意識を垣間見ることができる内容といえる。

メーターについてはオーソドックスな2眼アナログメーターとなっており、近年のスバル車に共通の水平0指針メーター[注 45]を採用している。自発光メーターのためどんな状況でも視認性はよく、中央にはマルチインフォメーションディスプレイが配置され、走行中の自車に関する情報を表示することが可能である。なお、タコメーターについては8,000回転スケールである、

カーゴルームは開口部が広く、容量も315L(ST-H)を確保する。なお、STはガソリンエンジンのため、後部にバッテリーを搭載しない都合上荷室容量は大きくなっている。リアゲートランプはST-Hのみの設定であるが、開口部上部にあるため荷室全体を照らすことができる。

なお、発売当初にSTIグレードは存在していなかったものの、STIによるパフォーマンスパーツは早い段階から発売されており、3代目インプレッサあたりから多用され始めた「フレキシブルパーツ」は今回も設定されている。2代目までは通常のタワーバーであったものの、3代目以降はフロントにフレキシブルタワーバーを、リアにフレキシブルドロースティフナーを入れるのが定番化しており[注 46]、これらを装備した場合はAWDモデルでも明確にステアリングの応答性が向上するといわれている。本来であれば標準装備してほしいレベルのものであるが、タワーバーはともかくドロースティフナーの組付けは工数増加にもつながりかねず、品質管理の面から難しいところであろう。そもそもほとんどの人はこれらの補強パーツを付けずに乗っているのであり、一部の硬派な走り心地が好きなもの好きだけが満足するようではいけないといわれたのが3代目インプレッサである。逆に考えれば、補強するだけで乗り味を好みにカスタマイズできる懐の広さがある(補強しても破綻しない)と考えれば十分メリットか。もっとも、STIなどの限定版においてはSTI製のエアロも組み込まれたパッケージとして 販売される可能性はある。派手過ぎず、それでいて眠い走りではない「普通に」いいクルマとしてあり続けてほしいものである。

名前の由来[編集]

車名の「インプレッサ(Impreza)」は英語で紋章を意味する「Impresa」や印象を意味する「Impression」などから命名された。また、WRXはレオーネのRXとWRC(世界ラリー選手権)の組合せとするのが通説。なお、世界ラリークロス選手権大会(WRX)とは関係がない。

3代目セダンの「アネシス(ANESIS)」はギリシア語で安心を意味するανεσις(アネシスまたはアネシースとも)に由来しているといわれており、安全性向上を目標としているスバルらしいネーミングである。決して「姉死す」ではない。なお、4代目以降のセダンにおける「G4」は英語で「真の」や「本物の」を意味する「Genuine」と4ドアセダンの頭文字を組み合わせてG4としたものとされている。最も、レガシィB4の例を見るに、インプレッサ(スバルにおける車両記号で「G」)の4ドアでG4という説もなくはない。なぜならレガシィの車両記号も「B」だからである[注 47]

笹子トンネル崩落事故[編集]

2012年12月に発生した、中央自動車道上り線の笹子トンネル天井板崩落事故の際、NHK甲府放送局の男性記者が運転するGC8が崩落の中を走り抜け生還したことが話題となった。車両は後部から助手席側にかけて大きな損傷を受け、落下してきた瓦礫によりリアガラスやサイドガラスは粉砕され、ルーフも上部からの衝撃で大きく変状したものである。また、衝撃はクォーターパネルにまでおよび、通常ではありえない変状を引き起こしたとされている。サスペンションも衝撃で歪んだものの、リアの助手席側が大きく変状しただけで済んだことで走行することができたと推定されている。また、構造が簡素な独立懸架ストラットであったことなどがほかのサスペンションへの影響を最小限に抑えた可能性もある。

修復は外見だけの修復にとどまらず、フルレストアに近い作業が行われた。ブッシュやホースなども新品に交換され、修復後の走行に問題がないレベルにまで整備が行われた。一方で使える部品はそのまま引き継いで使用され、座席類はもとより天井のトリムもそのまま再利用された。そのため、天井には大きな傷跡が生々しく残っているものとなる。

モータースポーツ[編集]

ラリー競技において
初代インプレッサのころから世界ラリー選手権(WRC)に参戦しており、インプレッサだけでなくスバル自体のイメージ・ブランディングにもつながっている。
インプレッサ555(GC型・グループA)
1993年にレガシィの後継として開発されたラリーカーであり、レガシィよりもコンパクトな車体と短いホイールベースにより優れた回頭性を発揮した。また、DCCDのようなロック率を任意に変更できるセンターデフをラリーカーとして初めて搭載した。このころから煙草の広告規制が始まっており、メインスポンサーのタバコブランドである「ステートエクスプレス・555」の名前の一部を車名に冠している。インプレッサの希望ナンバーに「・555」が多いのはこのため。
デビュー戦となる1993年のWRC・1000湖ラリーで2位を飾る。翌年の1994年には第6戦となるアクロポリス・ラリーで初優勝、マニュファクチャラーズポイントも2位となる。1995年にはリストラクターの装着が義務付けられるものの5戦に渡って優勝し、マニュファクチャラーズタイトルとドライバーズタイトルの二冠を達成する。スバルがラリーに本格的に参入してから6年目にして頂点に立った瞬間である。1996年もマニュファクチャラーズタイトルを獲得し、[注 48]日本におけるWRCの知名度向上やスバルのブランディングにつながった。
このインプレッサ555が参戦したグループAは市販車からの改造点が比較的少なく、ベース車となるインプレッサの面影を強く残したものになっている。そのため、ラリーが公道を使った競技であることと併せて「当時の公道で世界一速いクルマ」であるとする意見もある。
インプレッサWRC(GC型・WR)
1997年に導入されたワールドラリーカー(WRカー)[注 49]や規定に沿って開発されたラリーカーである。ベース車は2ドアのリトナ。ベース車とも既存のWRXとも違うワイド&ローなスタイルになっており、これをイメージしたものが22Bとして限定販売されることになる。なお、ベース車から全幅を拡大したといっても1770mmである。現行のレガシィよりも細い。
デビュー年の1997年もマニュファクチャラーズタイトルを獲得。1995年から3年連続のタイトル獲得であり、日本メーカーでは唯一となっている。
1998年と1999年は改良を続け参戦するものの、タイトル獲得には至っていない。しかし、ラリーでセミオートマチックトランスミッションを初めて採用するなど、技術的意義は大きい車である。なお、1999年のフィンランドラリーで1位を獲得していたり、スポット的な活躍はしている。
なお、本車にも装備され、EJ20+ターボの象徴ともいえるエアダクト類であるが、ベースとなったリトナにはこれらが存在しないため特例で承認を受けて設置した経緯がある。なお、前置きインタークーラーに移設したため、上部のエアダクトは本来不要である。
インプレッサWRC2001(GD型・WR)
ベースとなるインプレッサが2000年にGD型へとモデルチェンジしたことから開発されたラリーカーである。先代と違い4ドアボディを採用している。デビュー年の2001年にドライバーズタイトルを獲得。
インプレッサWRC2003(GD型・WR)
ベースのインプレッサがフェイスリフトを受けたため、ラリーカーも同様の変更を実施。先代のWRC2001とWRC2002のパワートレインはGC型のWRC99をベースにしていた[注 50]が、セッティング等によりさらに戦闘力が増したといわれている。2003年にドライバーズタイトルを獲得したほか、WRC初の日本開催となる2004年のラリージャパンでもペター・ソルベルグが優勝している[注 51]
なお、2005年にはボディを拡大し、エンジンやターボを改良したWRC2005やベース車のさらなるフェイスリフトに合わせ、レギュレーションに適合するように改良したWRC2006、2006年に登場したWRC2006を改善したWRC2007を投入するものの、目立った戦績は挙げられていない。
インプレッサWRC2008(GRB型・WR)
ベース車両のフルモデルチェンジに伴い投入されたハッチバックボディのインプレッサラリーカー。欧州メーカーに比べ資金不足である点や短いテスト期間、プロドライブ社による開発現場の混乱などにより決して十分な開発を経ておらず、WR規定による恩恵が受けにくいベース車であった事も災いしている。それでもデビュー戦のアクロポリスラリーで2位、ラリー・フィンランドにおいて3位を飾っている。2008年にスバルのワークス活動終了に伴い14年にわたるインプレッサのワークス参戦は幕を閉じた[注 52]

このようにラリーのイメージが強いインプレッサであるが、サーキットにも参戦しており、SUPER GTにおいてもクスコ・レーシングが1997年(当時はJGTC)から2008年まで参戦していた。また、かつて開催されていた全日本ツーリンガー選手権において、ワゴンの1.8LがFR化し、2Lにボアアップして参戦していたことがある。 国内の草レースなどでもドライバーは多く、ラリーやダートトライアルはもちろん、ジムカーナでも活用されることがある。特にSTiに搭載されるDCCDはサイドターンと相性が良かったとされる。 センターデフの改造で後輪駆動化するアフターパーツが初期のころから出回っており、ドリフト愛好者を中心に装着されることが多い。同様の手法でレガシィを改造する場合もある。中には四駆のままドリフトをする者も存在しており、前輪にハイグリップタイヤ、後輪に摩耗したスタッドレスタイヤを装着することで意図的にバランスを崩すセッティングにするとよりドリフトしやすくなるとの事。

同じWRCのホモロゲーション取得用としては三菱ランサーエボリューション、通称ランエボがライバルとして有名である。なおランエボは限定販売だったのに対し、インプレッサWRXはカタログモデルである(STiやS201などは限定車)。

パトカーへの採用[編集]

パトカーとして警ら用や交通取締用への採用実績もあり、捜査用車も含めればほぼ全世代が採用されている[注 53]

初代(GC/GF)

セダンについては1.5Lモデルが北海道警に採用されていた(白黒のみ)[16]。また、ワゴンについては1.8Lのモデルが私服用ステーションワゴン型無線車としてごく少数が配備されていた[17]。また、用途も公害特科車などの特殊用途車として導入されていたためかなり希少であったらっしい。

2代目(GD/GG)

1.5Lモデルの他、WRX STiについても複数の県警に配備されており、こちらは交通取締用や高速隊として利用されていた。なお覆面パトカーについても交通取締用としての他、機動捜査隊の捜査車両としても配備されていた。

3代目(GE/GH)

セダンのアネシスが白黒パトカーとして静岡県警で配備された実績があるほか、ハッチバックとアネシス両方が捜査車両(覆面)として配備されたほか、一部の県警で幹部車両として配備された実績もある。いずれも2.0LのNAモデルが採用されている。

4代目(GP/GJ)

セダンのG4が白黒パトカーと覆面車両として、ハッチバックのスポーツが覆面車両として配備されていた。いずれも2.0Lモデルであり、AWDモデルが配備されていた。なお、皇宮警察用としてもG4が採用されている[18]

5代目(GJ)

セダンのG4のみ覆面パトカーとして採用例がある。

玩具[編集]

WRCのイメージもあり、プラモデルトミカなど盛んにモデル化されている。 頭文字Dの主要人物である藤原文太が搭乗していることもあり、そちらのシリーズとしての発売も多い。 2022年秋には初代のスポーツワゴンがトミカリミテッドヴィンテージNEOでモデル化された。

ゲーム[編集]

WRCなどのラリーのイメージもあり、セガラリーDirtなどのラリーを題材にしたレースゲームのシリーズで様々なインプレッサが収録されていることが多い。
頭文字Dのゲームにおいて、文太のGC8(TypeR STi Ver5)のほか、Ver6が収録されたほか、2代目インプレッサが収録されている。
グランツーリスモシリーズにおいては初代から収録されており、特にGT・GT2ではSTiじゃないWRXも収録されており、さらには年式違いや22Bも収録されている。GT3からワゴンはSTiのみ収録となっている。もちろんラリーカー仕様もレーシングカー枠で収録されている。

その他[編集]

中古市場
スポーツモデルである「WRX」や「STi」グレードを中心に高騰が続いており、特に初代の22Bなどは希少性も相まって1,000万円を超えることも珍しくない。
限定モデルの再販
2022年、英国のプロドライブが初代22Bをレストア・チューニングしP25として限定発売された。お値段なんと552,000スターリング・ポンド=91,632,000日本円(1ポンド=166円として)というお値段。中古のGC8買う方が賢い気がする。
NAグレード
ホットモデルが有名な3代目までにおいても、NAの1.5Lクラスは広く普及している。価格も高くなく、ある程度雪道にも強いAWDなこともあるためか、高齢者マークが貼られているインプレッサは多くみられる。また、全車NA化した4代目は北海道における新車販売の9割以上がAWDであったという。
WRブルーについて
WRCに参戦していたインプレッサのベースカラーと同色であるWRブルーであるが、2014年に色味と名称が変わった。2014年以前のWRブルー・マイカはWRCのステージで映える色として開発された色である。一方で2014年以降のWRブルー・パールでは赤みも有しており、サーキットなどターマックなステージで映える色として開発されている。WRブルー・マイカより鮮やかかつ濃色のブルーであり、スバルのモータースポーツを象徴する色でもあると同時に、主戦場をグラベルからターマックへと変化させていることも表している。
なお、このWRブルーと金ホイールの組合せはWRCのイメージだけでなく、青と黄色の補色に近いため互いの色を引き立て合う相乗効果もある。レプリカガチ勢はこれに加えて黄色のステッカーを張りまくる。
WRブルーと金ホイールはスバル車の定番ともいえるカラーリングであるが、あまりに王道すぎる点とドライバーの容姿を揶揄して「キモオタブルー」という蔑称で呼ばれてしまうことも珍しくない。

なお、スバル車全般に言えることかもしれないが、スポーツグレードほど乗り心地が不評になることがある(硬めの足回りになるため)。また、(初代GC/GFだけかもしれないが)ターボモデルは車内の防音材も心なしか少ない気もする[注 54][注 55]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

注釈[編集]

  1. 一部は自主規制馬力を超えていたとも
  2. 基本的にはフルタイムAWDだが、一部にパートタイム式が存在する
  3. 1987年のレート(144円/USD)で43億ほど
  4. 一般的な直列4気筒エンジンへの転換を求めてストライキまで行われた
  5. 初代レガシィは水冷式インタークーラーを採用している。しかし水冷式は重量があり、運動性能への影響が懸念されていた
  6. ミニなどにホイールを供給していたメーカー
  7. いわゆるパートタイム式AWD
  8. 当時の表記。現在はVTD-AWDと表記している
  9. SRX以上のグレードや特別使用者においては標準装備となるが、GBなどはオプション装備となっている。風切り音などの理由で取り外すオーナーも少なくはない
  10. ガラスルーフではなく、跳ね上げ式のもの
  11. なお、運転席側はシートの上下と座面の角度調整機能が付いている
  12. ステアリングホイールに赤色のステッチが施されたり、インパネのフレームやメーターパネルが青色になったりする
  13. インプレッサのドリンクホルダーはドリンク1個分だが、フォレスターのドリンクホルダーはなぜかドリンクが二つ置ける。また、インプレッサのエアコンがダイヤル式(一応フルオートエアコン)なのに対してフォレスターは液晶とボタンによる操作であるなどの違いがある
  14. SRXやWRXよりもSTiなどはレッドゾーン開始の回転数が高めである。また、一部のフルスケールメーターにおいては10,000回転までのスケールのメーターも存在している
  15. およそ10L未満になったら点灯する
  16. なお、WRXのメーターASSYでさえ中古でも数万円と高騰している。STiの280km/hフルスケールメーターであればメーターだけで10万円ほど
  17. メーターの取外しはステアリングハンドルを取り外したりするほか、知恵の輪みたいにずらしながら引っ張らないとメーターAssyを取り出せないため
  18. なお、こちらは各種カバーを外してメーター基盤まで出さないと交換できない曲者
  19. 純正装着はブリヂストンのEXPEDIA S-01(すでに廃盤)であったとされる。なお、途中からPOTENZA S-01(中身はEXPEDIA S-01と同じ。こちらもすでに廃盤)に変更になった
  20. レーダー探知機PivotなどのOBD2メーターであれば対応している。しかし、中華性の怪しいOBD2メーターには対応していないことが多く、そういった製品は適合情報も少ないため無駄な出費になってしまうこともある
  21. この時期のスバル車では「チェックエンジン」ともいわれる
  22. WRX-NAは先代のSRXの流れを汲むスポーツNAモデルともいえる
  23. ヘッドライト研磨やコーティング等
  24. ドアを閉めたときの質感も良くなった気がする
  25. サスペンションごと破損することが珍しくないラリーにおいては修理や整備の観点からその面で優れるストラットが採用されることも多い
  26. STIやRAではない所謂「素WRX」
  27. そのためか、ベース車のインプレッサが2011年に4代目にフルモデルチェンジした後も、2014年まで継続生産されていた
  28. ATにはマニュアルモードが装備されているものの、S-GTが250馬力で4ATのため、ギア比的に少々使いづらいという意見も
  29. GPEはインプレッサスポーツハイブリッドのみ
  30. 先代のレガシィ並みの室内空間を確保
  31. 一応先代の2.5LターボATモデルであるA-Lineは5ATであったが
  32. 250PSの先代AT車に欲しかった装備である
  33. 尤も、XVとはプラットフォームを共有しているのでかなりの部品共有性があるが
  34. 近年は純正ホイールにもついている。GCはグレードによってはSUBARUの表記すらないこともあるのに
  35. 一部のグレードでメーカーオプション扱いとなる
  36. Sensitive Frequency Response Damper、周波数応答式可変ダンパー
  37. アメリカは広い室内空間とゆとりのあるエンジン性能を求めるため、大型化と大排気量化の傾向がとても強い
  38. 今までのインプレッサの販売形態を見ていれば後になってSTIバージョンとか特別仕様車がいっぱい出てくるのは容易に想像できる
  39. スバルのハイブリットシステムの名称
  40. どちらもAWDでJC08モードによるもの
  41. アダプティブ・クルーズ・コントロール
  42. 付近に車がいる場合に警告などを行う
  43. なお、STARLINKのすべての機能を使用するためにはメーカーオプションとは別に有料プランへの加入が必要とのこと
  44. ハザードとホーンが自動で作動し、レーン内での減速から停止まで自動で行い、停止後は全席のドアロックを解除する。ただし、現時点では高速道路限定となっている
  45. 個人的にこれは日産・スカイラインの印象が強い
  46. 3代目からリアがダブルウィッシュボーンになったことも影響していると思われる
  47. 一応ボクサー(Boxer)エンジンの4ドアという意味でB4らしい
  48. 同年のドライバーズタイトルは三菱のトミ・マキネンが獲得
  49. グループAの臨時規定であるが、最も長い規定となっている。スバルや三菱、トヨタなどのAWD勢がタイトルを席巻していたため、それが面白くない欧州車メーカーがFIAに掛けあって規定されたF2カテゴリーをベースとしている
  50. WRC99の時点で次世代へのモデルチェンジを想定し、エンジンなどをあらかじめ強化していることに注意
  51. ミッションやエンジンに改良がくわえられたマイナーチェンジ版のWRC2004を使用
  52. なお、同一車種によるワークスエントリーではWRC史上最長となっているらしい
  53. 執筆時の2024年現在ではGU型の採用例はない
  54. ドアをたたいた時の音が異様に軽い
  55. 3代目のS-GTはマイルドGTカーを目指したためか静粛性や乗り心地は改善されているように思える

参考[編集]