自動車馬力規制

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自動車馬力規制(じどうしゃばりききせい)とは、日本国内で生産・販売される自動車に対して行われたエンジン出力(馬力)を一定以下に抑えることを目的とした規制である。なお、法律的なものではなく、運輸省(現:国土交通省)による業界団体への強い要請によって行われた自主規制である。普通自動車については撤廃されているが、軽自動車については現在も自主規制が行われている。普通自動車の場合は280馬力規制、軽自動車の場合は64馬力規制と呼ばれることがある。

概要[編集]

1980年代後半、日本の自動車は順調に高性能化しており、大排気量車に限らず小排気量や少ない気筒数でもターボチャージャー可変バルブ機構などの実用化によりリッター100馬力の壁[注 1]を超える例がみられるようになっていた。一方で1980年代後半という時代は交通事故での死者が急増しており、第二次交通戦争と呼ばれる時代でもあった。

1989年、日産自動車が新たにフェアレディZスカイラインGT-Rインフィニティ・Q45の3台を開発。300PSをセールスポイントに大々的に売り出す予定であったが、それに運輸省が難色を示したことがきっかけと言われている。前述のように1989年は第二次交通戦争の真っただ中であり、警察・運輸省共に対策に迫られている最中であった。日産はやむなくこれらの車を280PSに抑えたことで型式認定を受けることができた。そのため、自工会においてはこの280PSを自主規制の上限としたものである。以降、280馬力を超える性能のエンジンを持つ自動車は型式認定されなくなったといわれている。

2004年には自工会が国土交通省に280馬力の自主規制撤廃を国交省に申告。同年には自主規制撤廃をうけ、ホンダ4代目レジェンドを300PSで型式認定を受ける。日本で初めて280PS超で型式認定を受けたモデルとなった。

軽自動車においては関係省庁からの通達があったかは定かではないが、製造メーカー間での自主規制馬力(64PS)が定められている。日本の軽自動車規格においては出力に関する定義はない。一方、リッターカー[注 2]と軽自動車の出力に対する差が無くなってきており、税制面で優遇される軽自動車に対してコンパクトカーが著しく不利であることなどから、あえて差別化のために設定しているという説もある[1]。特に近年は軽自動車の進化が目覚ましく、コンパクトカーのほうが安いという逆転現象も起こっていることから、登録車の自主規制が撤廃されたにもかかわらず軽自動車の馬力自主規制が残っている原因ともされる。

適用外[編集]

自主規制はあくまで製造時の規制であるため、輸入車や改造車においては適用されないものである。そのため、STiのように自工会に入っていない会社による自動車も適用されていないものである。スバルや日産などは子会社グループ会社で限定車を仕立て、上限を超えていた車を販売していたこともある[注 3](型式認定を受けた車の改造車扱いの為)。また、ユーザーによるチューニングの結果、上限を超えてしまったとしても直ちに不正改造車となるわけではない(触媒レスや爆音マフラーなど、整備不良に該当しなければ合法である)。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. 排気量1000ccあたり100馬力が自然吸気エンジンの性能の目安となっており、ホンダのVTEC機構を搭載したB16Aエンジンは1.6Lで185PS(過給無し)を実現していた)
  2. 排気量1L付近のコンパクトカー
  3. GC8ベースのS201やR33ベースの400Rなど

参考[編集]