市
市(し)とは、規模の大きな地方公共団体に与えられる行政区分名である。
概要[編集]
人口3万人以上の自治体につけられる行政区分名。現在、日本の面積の半数以上が市に属している。
市名の重複回避[編集]
現在、日本の同名の市名は府中市と伊達市のみである。
これは、府中市市制施行とほぼ同時期の自治省通達で市名の重複回避が奨励されたためであり、先行市制自治体に市名の先取権は無いが、後発で市制施行した自治体は殆ど現存する先行市制市の名称を回避している。なお、合併で消滅した守山市、八幡市については、後発市制の自治体が市名を付けている。また、明治期に市制を敷いた若松市 (福島県)や宇治山田市は、改名に伴い事実上後発市に市名を譲っている。
歴史[編集]
1889年(明治22年)の市制により、全国の大商業地や大身大名の城下町といった主要都市が「市」という行政区分となり、郡より離脱した。
1889年に市制が施行されたのは全国40市で、市が1つのみの県が大部分であった他、埼玉県、長野県、滋賀県、奈良県、宮崎県のように市の無い県や青森県、福島県、山口県のように県庁所在地以外での市制が先行した県もあった。また市の範囲も、現在よりずっと狭く、ほぼ市街地に限られていた。
その後徐々に市の数は増えていき、1924年(大正13年)に宮崎市、都城市が誕生したことにより、全ての県に市が存在する様になり、昭和になると市を複数持つ県の方が多くなったが、山梨、奈良、徳島、高知の4県は太平洋戦争終結時まで県庁所在地のみの1県1市だった。また戦前に東京市のように大合併で市域を拡大した市も出てきた[注 1]。
その後、昭和の大インフレ合併[注 2]により、状況は一変。急行が停車するレベルの中規模クラスの都市が、周辺農村を合併して軒並み市に昇格した。従来の市も隣接する農村を次々に合併したため[注 3]、この頃から市内だからといって都市部とは限らない現象が全国各地で発生した。
平成の大インフレ合併後は、どんな田舎でも大規模合併して人口3万人に達したところが「市」となった[注 4]。既に、面積ベースでも、日本の半分以上が市になっている。「市内」であるというのは都会であることを全く意味しなくなり、現在は実質「市町村合併を大規模に行った地域」という意味でしか無い。
規模感[編集]
人口5万から10万人、面積150km2から300km2(端から端まで10-20km相当)が一般的なサイズ。大部分が農山村地域となっている市の方が多い。
大きな市の例[編集]
普通に大都市だったり、単なる東京のベッドタウンだったり、市町村合併の結果巨大な面積を持つ様になったり、背景は様々。
- 北海道北見市
- オホーツク総合振興局管内最大の都市でもあるが、平成の大合併で西は大雪山系の麓から、東はオホーツク海沿岸まで東西100kmに亘る日本で4番目に広大な市となった。
- 北海道釧路市
- 北海道道東の主力都市だが、平成の大合併で阿寒町、音別町を合併し、地味に日本で6番目に広大な市となった。
- 岩手県宮古市
- 岩手県沿岸の有力都市だが、平成期の2度の合併で1町2村を合併し、東北地方では鶴岡市に次ぐ広大な市となった。
- 秋田県北秋田市
- 人口の少ない地域を大規模に合併してできた市。約1200km2の広大な市だが、人口は3万人に満たない。
- 山形県鶴岡市
- 酒田と張り合う山形県庄内地域の主力都市だが、平成大合併で4町1村を合併し、下記のいわき市を抜いて東北地方最大の面積の市となった。
- 福島県いわき市
- かつて日本一大きい市であったが、平成の大合併によって現在は12位へ転落している。なお、ひらがなの市としては日本一大きい市であることに変わりはない。中核市であり、ひらがなの市で唯一の中核市である。地味に東北で2番目に人口が多い市町村である。
- 栃木県日光市
- 国際的に知名度の高い日光の市名だが、実際は平成合併時に今市市主導で大規模に合併してできた市。その結果、約1450km2と日本で3番目に広大な市となった。
- 千葉県船橋市
- 90km2ほどの狭い市だが、ほぼ全域が東京のベッドタウンで、人口が60万人を越えている。
- 神奈川県横浜市
- 400万人近い人口を誇る、日本一人口の多い市。戦前にいち早く農村地帯を大規模に合併したため面積が400km2を越え、戦後に農村地帯が東京・横浜両都市のベッドタウン化したので、全国一の人口を持つ市となった。
- 静岡県静岡市
- 静岡県浜松市
- 人口80万人の全国有数の大都市なのに加え、浜名湖の沿岸や愛知県境の弓張山地・南アルプスの山間部を大量に合併したので、面積が1600km2近く、広さが全国2位の市となった。
- 岐阜県高山市
- 岐阜県の東端から西端まで、北アルプスから両白山地付近まで大規模に合併して、2000km2を越える日本一広い市となった。
- 大阪府大阪市
- 東京に次ぐ日本第二の都市とされてはいるが、1950年代の大阪府に大規模な市町村合併を牽制されたために面積が広くないため、人口は270万人程度であり、横浜市より少ない。
- 広島県庄原市
- 平成大合併で比婆郡全町と甲奴郡1町を合併し、中国地方で最も広い市となった。尤も合併前から旧庄原市は人口が2万人近くまで減少傾向にあり、合併しても3万人を少し超えるに過ぎない。
小さな市の例[編集]
人口の減った炭鉱都市や、東京のベッドタウンなど。
- 北海道歌志内市
- 旧炭鉱都市。日本一人口が少なく、4000人に満たない。面積も60km2ほほで小さいが、砂川市に併合されず独立を保っている。
- 北海道赤平市
- 旧炭鉱都市。人口約9000人で、上記の歌志内市同様、砂川市や滝川市などへの併合もままならず独立を保っている。
- 北海道三笠市
- 旧炭鉱都市。人口約9000人で、日本で三番目に少ない市。
- 北海道夕張市
- 旧炭鉱都市。人口が9000人に満たない一方で、大量の山間部を抱えるため、800km2近い広大な面積を持つ。
- 埼玉県蕨市
- 5km2しか無い、日本一面積の小さい市。東京のベッドタウンとして人口が増え、狭いながらも独立を保っている。
- 東京都武蔵野市
- 東京のベッドタウン。面積は11km2しか無いが蕨市よりは広く、人口は14万人をこえている。
- 山梨県中央市
- 面積は30km2、人口3万人の小さな市。平成の大合併において山梨県は全体で他県より小規模の面積の合併[注 5]が多く、市に昇格するぎりぎりのラインで合併した感じ。