中村菊男

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中村 菊男(なかむら きくお、1919年11月11日 - 1977年5月17日)は、政治学者。慶應義塾大学法学部教授。社会党右派民社党のブレーン[1]

経歴[編集]

三重県志摩郡鳥羽町(現・鳥羽市)生まれ[2]。父は初代鳥羽市長の中村幸吉[3]。1932年三重県立宇治山田中学校(現・三重県立宇治山田高等学校)卒業。1943年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。1945年慶應義塾大学大学院修了、法学部助手。1946年慶應義塾大学法学部助教授[4]。1946年4月の第22回衆議院議員総選挙に三重県から無所属で立候補したが落選[5]。1950年夏に社会党代議士の松本七郎、農民運動家の沼田政次らと民主社会協会を設立[6]、理事。1951年12月民主社会主義連盟(民社連)の設立に参加、理事[4]

1952年慶應義塾大学法学部教授[4]。1953年12月蠟山政道に代わり民社連2代目理事長に就任。1955年の社会党左右両派統一に際し、民社連の関嘉彦和田耕作河上民雄、蠟山政道、藤牧新平らと「統一社会党綱領草案」(右社綱領草案)を作成[7]。1958年12月から1959年6月まで欧米留学。1959年11月民主社会主義新党準備会委員。1960年2月東京政治研究所(1963年4月現代史研究所と改称。1972年10月閉鎖)を設立、所長[4]。1960年2月蠟山政道、猪木正道、関嘉彦、土屋清武藤光朗、和田耕作らと民主社会主義研究会議(民社研)の設立に参加、理事[8](1966年1月〜1976年1月常務理事)[4]。1961年4月民社党内に綱領審議委員会が設置され、大島康正、猪木正道、木下和夫、関嘉彦、野田福雄、武藤光朗、和田耕作とともに諮問委員に委嘱[9]

1960年3月「近代日本の法的形成」で法学博士(慶應義塾大学)[10]。1962年西ドイツ政府の招待で同国を訪問。1964年8月から1972年12月まで第三次から第七次の選挙制度審議会委員。1970年アメリカ政府の招待で同国を訪問[2]

1977年5月17日[4]、慶應大学病院で脳出血のため死去[11]。57歳。正五位、勲三等瑞宝章[4]

人物[編集]

慶應義塾大学教授として政治学、政治心理学、日本政治史などを専攻する一方[11]、戦後いち早く民主社会主義を唱え[12]民主社会主義研究会議(民社研)の主要メンバー[13]民社党の理論的指導者としても活躍した[12]手塚豊によると、中村が慶大予科のときに私淑していた学生主事の井原糺高畠素之国家社会主義運動に従事し、高畠門下の五人男の一人と言われた人物)から思想的な影響を受けたとみられる[14]

日本文化会議の発起人で、1968年6月の設立時の監事[15]。1969年時点で国際勝共連合顧問団[16]。1971年時点で社団法人日本文化フォーラム評議員[17]

慶大での門下生に中村勝範堀江湛須藤眞志曽根泰教などがいる。荒木和博は慶大3年生のときに指導教授の中村菊男が急逝したため、その後は中村勝範の指導を受けた[18]東京政治研究所(現代史研究所)での門下生には小平修上條末夫がいる。

著書[編集]

単著[編集]

  • 『政治学』(世界書院、1948年/有信堂、1956年)
  • 『名著研究(全3冊)』(慶應通信教育図書、1948年)
  • 『政治学(全4冊)』(慶應通信教育図書、1949年)
  • 『政治心理学』(世界書院、1949年/有信堂[有信堂全書]、1962年)
  • 『日本近代化と福沢諭吉――日本憲政史上における福沢諭吉』(改造社、1949年)
  • 『易しく読める政治学講話』(慶応出版社、1951年)
  • 『民主社会主義の思想』(青山書院、1952年)
  • 『民主社会主義の理論――政治心理学的考察』(青山書院、1952年)
  • 『近代日本と福澤諭吉』(泉文堂、1953年)
  • 『ソ連外交の解剖――ソヴィエト認識の基礎知識』(民主日本協会[民主日本文庫]、1953年)
  • 『民主社会主義の基礎理論――特に実践との關連において』(日本社会党出版部、1954年)
  • 『近代日本の法的形成――条約改正と法典編纂』(有信堂、1956年)
  • 『政治心理学』(有信堂[有信堂選書]、1957年)
  • 『明治的人間像――星亨と近代日本政治』(慶応通信、1957年)
  • 『政治学教材』(慶応通信、1957年)
  • 『昭和政治史』(慶応通信、1958年)
  • 伊藤博文』(時事通信社[三代宰相列伝]、1958年/時事通信社[日本宰相列伝]、1985年)
  • 『現代政治の実態――その理論的背景と現実』(有信堂、1958年)
  • 『国民政党か階級政党か――欧米の政党事情』(民主社会主義連盟編、社会思潮社、1959年)
  • 『民主社会主義の進路』(述、労働文化研究所出版部[労働文化シリーズ]、1960年)
  • 『現代思想としての民主社会主義』(有信堂[文化新書]、1960年)
  • 『政治家の群像』(池田書店、1960年)
  • 『欧米の政党政治』(東京政治研究所編、社会思潮社、1960年)
  • 『議会政治と大衆行動』(有信堂[文化新書]、1960年)
  • 『外国の良さ日本の良さ』(池田書店、1961年)
  • 『戦後日本政党史』(東京政治研究所編、社会思潮社、1961年)
  • 『診断・日本の政治体質』(論争社[ぺりかん新書]、1961年)
  • 『西ドイツの旅から』(東京政治研究所編、社会思潮社、1962年)
  • 『日本の中立は可能か』(論争社[ぺりかん新書]、1962年)
  • 『星亨』(吉川弘文館[人物叢書]、1963年)
  • 松岡駒吉伝』(松岡駒吉伝記刊行会編、経済往来社、1963年)
  • 『民主社会主義に関する五カ条』(現代史研究所、1963年)
  • 『労働運動の思想的背景』(有信堂[文化新書]、1964年)
  • 『戦後民主的労働運動史――同盟会議への歩み』(日刊労働通信社、1964年)
  • 『国際情勢と憲法問題』(有信堂[文化新書]、1964年)
  • 『満州事変』(日本教文社[日本人のための国史叢書]、1965年)
  • 『入門政治学』(東洋経済新報社、1965年)
  • 『選挙戦――勝つ選挙・負ける選挙』(講談社、1965年)
  • 『国際政治読本――戦争と平和のみかた』(野田経済社[野田経済読本シリーズ]、1965年)
  • 『日本政治史読本』(東洋経済新報社[読本シリーズ]、1966年)
  • 『権謀――家康スターリン』(人物往来社、1967年)
  • 『政治学の基礎』(有信堂[Yushindo sosho]、1967年)
  • 『天皇制ファシズム論』(原書房、1967年)
  • 『若い思想の旅路』(根っこ文庫太陽社[太陽選書]、1967年)
  • 『核なき日本の進路』(日本教文社、1968年)
  • 『安保なぜなぜならば』(有信堂[Yushindo sosho]、1969年)
  • 『教科書裁判批判』(現代史研究所、1970年)
  • 『近代日本政治史の展開』(慶応義塾大学法学研究会[慶應義塾大学法学研究会叢書]、1970年)
  • 『体制の選択――現代日本の進路』(原書房、1970年)
  • 『国家への視座』(自由社[自由選書]、1971年)
  • 『日本国益論』(自由社[自由選書]、1972年)
  • 『嵐に耐えて――昭和史と天皇』(PHP研究所、1972年)
  • 『日本人を動かすもの――無私・気と集団エクスタシー』(日本教文社、1973年)
  • 『学生生活方法論 学習・リポート・ゼミ』(慶応通信、1974年)
  • 『政治学を学ぶために』(有信堂[Yushindo sosho]、1974年)
  • 『日本的リーダーの条件』(PHP研究所、1975年)
  • 『伊勢志摩歴史紀行』(秋田書店、1975年)
  • 『政治文化論――政治的個性の探究』(東洋経済新報社、1976年/講談社[講談社学術文庫]、1985年)
  • 『宰相の条件』(PHP研究所、1976年)
  • 『福澤門下の政治家たち』(慶応義塾大学[福澤記念選書]、1984年)
  • 『日本政治史』(慶應通信[慶應義塾大学通信教育教材]、1992年)
  • 『政党なき時代――天皇制ファシズム論と日米戦争』(毎日ワンズ、2009年)

共著[編集]

  • 『ドイツ社会民主党新綱領の背景』(堀江湛共著、社会思潮社、1960年)
  • 『日本社会主義政党史』(中村勝範共著、経済往来社、1966年)
  • 『西尾末広想い出の人――対談』(西尾末広共著、民主社会主義研究会議、1968年)
  • 『大国日本の進路』(衛藤瀋吉、坂本二郎ほか共著、自由社[自由選書]、1971年)
  • 『中国の現実と日本の国益』(桑原寿二林三郎漆山成美、柴田穂、前田寿夫、小谷秀二郎、入江通雅共著、自由社[自由選書]、1971年)
  • 『国家と教育――教科書裁判に関連して』(利光三津夫共著、第一法規出版、1972年)
  • 『現代の政治学』(飯坂良明、井出嘉憲共著、学陽書房、1972年)
  • 『戦後日本政治史』(上條末夫共著、有信堂、1973年)

編著[編集]

  • 『新党への道』(編、西尾末広著、論争社、1960年)
  • 『松岡駒吉伝』(編纂、松岡駒吉伝記刊行会、1963年)
  • 『日米安保肯定論』(有信堂[Yushindo sosho]、1967年)
  • 『自衛隊と憲法の解釈』(林修三共編著、有信堂[Yushindo sosho]、1967年)
  • 『日本の選挙構造』(編、原書房、1968年)
  • 『昭和陸軍秘史』(編、番町書房、1968年)
  • 『昭和海軍秘史』(編、番町書房、1969年)
  • 『日本における政党と政治意識』(編、慶応義塾大学法学研究会[慶應義塾大学法学研究会叢書]、1971年)
  • 『現代日本の政治文化』(編、ミネルヴァ書房、1975年)
  • 西村栄一伝――激動の生涯』(高橋正則共編著、富士社会教育センター、1980年)

訳書[編集]

  • W・マトゥール『ドイツ社会民主党――その発展と本質』(田中次郎共訳、論争社[論争叢書]、1960年)
  • フェルジナンド・ペルートカ『民主主義宣言』(論争社[ぺりかん新書]1961年)
  • ジョン・マンダー『ベルリン――世界の焦点』(監訳、宮坂出版社、1963年)
  • ダグラス・H・メンデル『日本・世論と外交』(堀江湛共訳、時事通信社、1963年)

出典[編集]

  1. 研究会「民主社会主義者・中村菊男の学問と実践」を開催、9月11日! 友愛労働歴史館、2019年9月12日
  2. a b 「中村菊男先生略歴」『法學研究』Vol.51、No5、1978年
  3. 中村菊男『伊勢志摩歴史紀行』秋田書店、1975年
  4. a b c d e f g 「中村菊男略歴」『改革者』第18巻第3・4号(通巻207・208号)、1977年7月
  5. 『衆議院議員総選挙一覽 第22回』衆議院事務局、1950年
  6. 中村菊男「夢多き政治家――西村栄一氏の死を悼む」『改革者』第137号、1971年11月
  7. 小山弘健清水慎三編著『日本社会党史』芳賀書店、1965年、149頁
  8. 佐藤寛行「民社研三十年小史――高く掲げた「民主社会主義」――「民社連」八年の実績の上に三十年」『改革者』第30巻第8号(通巻352号)、1989年11月
  9. 佐藤寛行「政党綱領物語(5)民社党篇(中)"最小限の自衛措置"が論議の的」『改革者』第189号、1975年12月
  10. CiNii Dissertations - 日本の博士論文をさがす
  11. a b 「中村菊男先生を追悼する」『改革者』第18巻第3・4号(通巻207・208号)、1977年7月
  12. a b 20世紀日本人名事典の解説 コトバンク
  13. 藤生明生きていた民社党、保守運動をオルグする」論座、2019年5月5日、3ページ
  14. 手塚豊「中村菊男君を憶う」『法學研究』Vol.50、No8、1977年
  15. 国民政治年鑑編集委員会編『国民政治年鑑 1969年版』日本社会党機関紙局、1969年、854-855頁
  16. 国民政治年鑑編集委員会編『国民政治年鑑 1970年版』日本社会党機関紙局、1970年、881頁
  17. 「〈資料と解説〉「体制派文化人」の組織と人脈」『月刊社会党』第235号、1976年7月
  18. 2015年1月 6日 荒木和博BLOG

関連文献[編集]

  • 中村菊男先生追悼論文集刊行会編『現代社会主義論――中村菊男先生追悼論文集』(新有堂、1978年)
  • 城島了『オーウェルと中村菊男――共産主義と闘った民主社会主義者』(自由社、2002年)
  • 清滝仁志『中村菊男――政治の非合理性に挑んだ改革者』(‎啓文社書房、2023年)