JR東海キハ85系気動車

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高山本線を走るキハ85系

JR東海キハ85系気動車(じぇいあーるとうかいキハ85けいきどうしゃ)は、JR東海の保有する特急型気動車の1形式。

登場の経緯[編集]

名古屋地区の非電化区間では1985年3月以降キハ80系が高山本線で飛騨古川以北の運用を止めて、走行キロを抑えながらも定期特急として使われ、全国で最後まで運用に就いていたが、流石に老朽化も進行し、新車への置き換え時期に差し掛かっていた。
そこで、JR化3年目の1989年から本系列を投入して、キハ80系の置き換えを図り、同時に路盤やY字ポイント整備をして最高速度向上も図ろうとした。

構造[編集]

貫通型先頭車

保守コスト削減のため、軽量ステンレス車体を採用したが、先頭部のみ踏切事故対策のため普通鋼に白塗装とされた。

先頭車にはパノラミックウィンドウが搭載され、車内のハイデッカー仕様と相まって前面展望が良く、いわゆるワイドビューの眺望が実現した。

機器類については当時の日本としては画期的な、数十年ぶりとなる輸入エンジンのカミンズ製DMF14系を1両に2基搭載。出力は1基で350psを確保した。変速機も新潟コンバータ製のC-DW14系を採用し、直結段の多段化を図った。ブレーキ方式は電気指令式ブレーキを採用している。

台車はキハ185系由来の円錐積層ゴム式ボルスタレス台車C-DT57系を採用。1軸駆動だが、牽引装置の改良が図られている。

形式別概説[編集]

キハ85形[編集]

基幹形式。運転台付きの先頭車で、全部で42両が製造されたが、1両が事故廃車の後に代替新造されたため、全車が同時に在籍したことはない。

0番台
1 - 14の14両が在籍。非貫通型先頭車で、定員は60名。
100番台・1100番台
101 - 118の18両が製造されたが、107は落石事故により廃車。その後、119が代替新造されている。貫通型の先頭車で、定員は60名。後に107を除く全車がバリアフリー化工事を施工され、番号を+1000されて1100番台に区分され、定員も10名減少し50名となった。
200番台・1200番台
201 - 209の9両が在籍。貫通型の先頭車だが、男性用小便器を備え、定員は4名減少し56名となった。209についてはバリアフリー化を施工され、1200番台の1209に区分されている。

キハ84形[編集]

運転台のない中間車で、全部で24両が在籍。

0番台
1 - 14の14両が在籍。1と2は量産先行車両で、キハ84形フラノエクスプレスと番号が一時的に重複していた。3以降はドア配置が変更され、行先表示器も字幕式とされた。
200番台
201 - 205の5両が在籍。当初よりバリアフリーに対応する。
300番台
301 - 305の5両が在籍。車いす非対応、車販準備室なしのため、定員は72名を確保した。

キロハ84形[編集]

運転台のない中間車だが、グリーン車と普通車の合造車となっている。1 - 14の14両が在籍。

キロ85形[編集]

運転台付きの非貫通先頭車で、グリーン車となっている。1 - 5の5両在籍。

定期運用[編集]

特急南紀で運用されるキハ85系

まず、特急ひだに試験投入されて実績を重ね、1990年の増備と共に、キハ58系使用の急行「のりくら」を統合して、飛騨古川以北の急行を総格上げした。1991年に名鉄で狭幅限界対応のキハ8500系が登場した。
1992年には、特急南紀に全面置き換えで投入され、キハ80系をすべて淘汰し、1999年の急行「たかやま」格上げで高山本線の優等列車を当系列で総特急化した。

2001年の北アルプス廃止まで、名鉄8500系との併結運用もあった。
2012年まではホームライナーにも使用され、特急設定のない太多線での運用もあったが、2022年時点ですべて廃止されていた。

特急ひだは3または4両編成を基本とし、高山 - 富山間ではキロ85組み込みの3両で、岐阜 - 大阪間ではモノクラス3両で原則運用されていた。

特急南紀はキハ85-1100組み込みの2両編成を基本とし、グリーン車の併結は実施されなかった。

HC85系の投入により、2022年7月以降、車齢30年以上の本系列の代替が行われて廃車が進み、2023年3月ダイヤ改正で特急ひだは臨時運用のみとなり、2023年6月末にすべての定期運用を終えた[1][2]

臨時運用[編集]

お召し列車として身延線の甲斐岩間〜甲府を走行した他、団臨として以下の路線への入線歴がある。

また、樽見鉄道へ試運転で入線したことがあるが、営業運転はしていない。

廃車後の動向[編集]

運用終了後、4両が京都丹後鉄道譲渡されることとなり、2023年3月6日にキハ85-3と12の2両[3]が、3月24日はキハ85-6と7が西舞鶴運転所へと回送され、うち3と12の2両はKTR8500形として再起することになった。

また、キハ85-1は美濃太田車両区の構内で保存されている。

それ以外は2023年11月27日までに西浜松に廃車回送され、JR東海からは廃系列となった。

近い世代の車両[編集]

脚注[編集]

  1. 佐藤正晃 (2023年5月10日). “JR東海「キハ85系」、6月で引退へ 先頭車8両の10両編成でさよなら運転”. TRAICY. 2023年5月12日確認。
  2. キハ85系が7月1日に定期運行から完全撤退…6・7月に引退記念ツアー”. Response (2023年5月10日). 2023年5月12日確認。
  3. この2両は2月23日から3月5日まで京都鉄道博物館で展示されていた。

関連項目[編集]


東海旅客鉄道のロゴ.png JR東海の鉄道車両
客車
特急型 14系*
急行型 12系*
近郊客車 50系(救援車)*
気動車
特急型 キハ80 - キハ85 - HC85
急行型 キハ58・キハ28*・キハ65*
一般型 キハ40・キハ47・キハ48*(・2代目*)キハ11 - キハ25 - キハ75 - キハ30*
電車
特急型 381系* - 371系 - 373系 - 383系 - 285系3000番台 - 385系予定
急行型 165系・167系*
近郊型 111系・113系* - 115系* - 117系* - 119系* - 123系* - 211系0番台*0番台のみ廃車 - 213系 - 311系 - 313系
通勤型 103系* - 315系
事業用車
機関車 EF64* - EF65* - DD51*
電車・気動車 145系* - キヤ95(ドクター東海) - キヤ97
新幹線
旅客 0系* - 100系* - 300系 - 700系 - N700系(N700A・N700A・N700S)
検測車 923系(ドクターイエロー)
「*」がある形式は国鉄から継承。右上に「廃」と書かれた形式はJR東海には書類上存在しない。なお、JR東海内が保有する国鉄車は全廃している。385系は製造予定。
データは2022年9月1日現在のもの。