ジュール熱

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ジュール熱(ジュールねつ、Joule's heat)は熱エネルギーの一つで、導体に流れる電流が、電気抵抗によって熱へと変換されることで発生する。

概要[編集]

熱力学第二法則によって電気エネルギーが熱エネルギーへと変換されている点が表される。

古典的な電熱線などは、このジュール熱によって加熱を実現している。しかし、ジュール熱によって、エネルギーの損失が不都合な場合(送電線など)、ジュール熱をいかに削減するかが重要である。

ジュールの法則[編集]

発生する熱量は、導体の電気抵抗と、流れる電流量の二乗に比例する。これはジュールの法則として知られる。電圧E(V)、抵抗R(Ω)の導線を電流I(A)がt(s)間流れるとき、導線に発生する熱量Q(J)は次のように表される。

Q=I×I×R×t=IEt

ジュール熱の利用[編集]

電熱器、ヒューズ電気溶接電気炉熱線電流計等に応用されている。電気エネルギーから熱エネルギーを取り出すことで、加熱作用を利用しようというものである。

これらの機器では、電気抵抗の大きな導線に電気を流すことで、より大きな熱エネルギーを得ようとしている。よく使われる導線はニクロムを巻いた線やタングステンを用いたものなどで、総称して電熱線と呼ばれる。

ジュール熱の抑制[編集]

送電をはじめ、熱エネルギーを利用しない場面では、むしろジュール熱を削減し、電気エネルギーの消費を抑える工夫がなされる。これは、エネルギーの浪費を抑えるためだけでなく、ジュール熱に起因する火災を防止するためにも重要である。

広く用いられている方法のひとつに、十分な太さの電線を用意することが挙げられる。導体の電気抵抗は、その太さに反比例するため(抵抗率)、 想定される電流量に対して十分な太さが確保できれば、ジュール熱が削減できるという算段である。[1]

いっぽう、非常に大きな電気エネルギーを扱う送電線の幹線などでは、際限なく太い電線を用意することは現実的に難しい。そのため、電流量を減らす取り組みがなされる。電圧を上げれば、少ない電流であっても十分な電気エネルギーを送れるので、これを利用するのが、高圧送電線である。(架線を参照。)

今日の日本では、家庭に送電される電気は単相交流100Vないし200Vである。しかし、電力会社は、最寄りの柱上トランスまで三相交流660Vで送電し、電気エネルギーの損失を抑えている。また発電所から伸びる幹線では更に高電圧で送電しているものもあり、高い送電効率を達成している。
また、半導体回路でも熱暴走を防ぐため、ジュール熱の抑制は欠かせない。

ジュール熱による火災[編集]

このジュール熱に起因する火災も発生している。電気火災の一種であり、水を掛けると露出した電線から感電の危険があるため、消火器の使用が確実である。

火災の原因は、定格電流値以上の器具を使ったための場合と、電線が損傷し許容電流値が下がっていた場合に大別される。

前者は大電流を要する機器を複数同時に利用した場合、想定以上の電流が電線に流れることで、ジュール熱が許容範囲を超えて発生するものである。一般的な配線器具の定格容量は1500W(100Vで15A)であるので、これに収まっているか計算して使用することで回避できる。また、ヒューズは一定以上の電流が流れた時に、電流を止める機能を持つ。

後者は設備面の問題である。施工時・使用時の、器具の吊り下げなど不適切な負荷や、ずさんな修理によって、有効な導線の断面が小さくなると、電気抵抗が増加、ジュール熱が発生しやすくなる。破損した配線器具やケーブルを用いないようにするべきである。

その他[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

力武常次、都築嘉弘『チャート式シリーズ新物理ⅠB・Ⅱ』数研出版株式会社新制第11刷1998年4月1日発行

脚注[編集]

  1. オームの法則、 E=IR (Eは電圧V、Iは電流A、Rは電気抵抗Ω)で表される。 抵抗は、導線の長さlに比例し、断面積Sに反比例する。すなわちR(Ω)、ρ(m・Ω)、l(m)、S(m2)とすると、 が成り立つ。 比例定数ρをその導線の材質の抵抗率という。ρは導線の長さが1m、その断面積が1m2あたりの電気抵抗となる。