電気回路

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電気回路 (でんきかいろ)とは、電源導線負荷によって構成される電流が回る路のことである。

直流回路[編集]

数学的手法が必要な交流に比べて直流回路の計算は簡単である。ただし、直流では変圧器が使えず、また、直流発電機はその構造上、高電圧の発電が出来ないので電力輸送が経済的に不利となる欠点がある。

直流電源には電池の表し方を用いる。電池の電圧は時間的に変化しない。つまり直流電圧である。このとき、電気抵抗を流れる電流も不変で直流電流である。

電池から流れる電流[編集]

電流を流していない電池の両極間の電位差を電池の起電力という。この電池に抵抗を接続すると電池の内部で抵抗を生ずる。これを内部抵抗rという。電流Iが流れると電池内部で電圧降下rI[V]が起き、電池の両極間の電位差は起電力よりも低くなる。この低くなった電圧V[V]を端子電圧という。EとVの関係は次の式で表される。

V=E-rI または E=V+rI 

これをオームの法則、V=IRに代入すると

E=(R+r)I

となり、Rとrは抵抗の直列接続として働く。

抵抗[編集]

熱、光、仕事などの形でエネルギーを消費する。直流、交流、いずれも役割は変わらない。

インダクタンス[編集]

エネルギーを磁界のかたちで蓄える(電磁石)。直流電流に対しては端子間に電圧を生じないので単なる導線として短絡していると考えて良い。例えば、電球とコイルを直列に接続した場合、直流電圧では電球の明るさは変わらないが、それに大きさの等しい交流電圧(実効値)を加えたときでは交流電圧の場合の方が暗くなる。

キャパシタンス[編集]

エネルギーを電界のかたちで蓄える(蓄電池)。コンデンサーについては単なる絶縁体で開放していると考えれば良い。例えば、コンデンサーと電球を直列に接続し、これに直流電圧を加えると、電球は一瞬点灯するだけである。直流はコンデンサーを充電するときだけ電流が流れ、その後は流れない。

交流回路[編集]

直列回路[編集]

抵抗値R[Ω]の抵抗、自己インダクタンスL[H]のコイル、電気容量C[F]のコンデンサーの直列回路に、周波数f[Hz]の交流電源を入れると、回路を流れる電流の最大値Io[A]はオームの法則より

ただし、


上の式で、抵抗R、コイルC、コンデンサCの中でないものがあれば、インピーダンスZの式の中から不要なものを除去すればいい。すなわち

①抵抗RとコンデンサーCのみの回路の場合

②抵抗RとコイルLのみの回路の場合



となる。z[Ω]は交流回路で全体の抵抗の働きをする量として複素数で表せる。これを複素インピーダンス、もしくは単にインピーダンスといい、この逆数をアドミタンスという。このアドミタンスはYで表される。また、


  [Ω]

はインピーダンスの虚数部であり、回路全体の(抵抗に対して)リアクタンスと呼ばれ、一般にXで表される。


名称 意味   記号
インピーダンス 交流回路の抵抗を複素数で表した
アドミタンス  インピーダンスの逆数  
リアクタンス  インピーダンスの虚数部 

並列回路[編集]

  • ①.抵抗とコイルの並列回路
  • 抵抗値R[Ω]の抵抗と自己インダクタンスL[H]のコイルを並列に接続し、電圧V[V]、周波数f[Hz]の交流電源につなぐ。回路全体を流れる電流をI[A](実効値)とし、抵抗及びコイルに流れる電流をそれぞれIR、IL[A](実効値)とする。

抵抗とコイルの両端に加わる電圧はいつでも等しく、電圧Vに対する抵抗を流れる電流ILはπ/2だけ遅れる。したがって、全電流IはIRとILのベクトル和になる(このとき、IRは平面上x軸プラス(実数軸)に、ILはy軸マイナス(虚数軸)となり、Iはこの二つの合成する絶対値であるベクトルとなる。)。三平方の定理より

ここに、V=RIR=ωLIL ゆえに(並列に接続したコイルとコンデンサーにかかる電圧Vは同じ値)

ただし


  • ②.コイルとコンデンサーの並列回路
  • 自己インダクタンスL[H]のコイルと電気容量C[F]のコンデンサーを並列に接続し、電圧V[V]、周波数f[Hz]の交流電源につなぐ回路。電圧Vに対するコイルを流れる電流ILの位相はπ/2遅れるが、コンデンサーを流れる電流ICは位相はπ/2進む。したがって回路全体を流れる電流Iはベクトル和で表される。(このとき、ICは平面上y軸プラスに(虚数軸)、ILはy軸マイナスとなり(虚数軸)、Iはこの二つの合成する絶対値であるベクトルとなる。この場合、抵抗Rはないので実数軸はない)

電流Iは電圧Vに対して位相がπ/2進む(IC>IL)か、または遅れる(IC<IL)。

共振[編集]

抵抗値R[Ω]の抵抗、自己インダクタンスL[H]のコイル、電気容量C[F]にコンデンサーの直列回路に、周波数f[Hz]の交流電源を入れると、回路を流れる電流I[A]は

ただし、

で与えられる。したがって、R=一定のときは回路のリアクタンス(インピーダンスの虚数部)

のとき、Iは最大となる。このような現象を回路の共振という。すなわちR、L、Cの直列回路でL、Cの間に上式を変形して、

またはω=2πfより

の関係があると、この回路は周波数fの交流電源に共振するといい、このような回路を共振回路という。LとCの値を調節してこのような状態にすることを「同調をとる」といい、そのための共振回路を同調回路ともいう。また、このときの周波数f=f0と周期T[s]は上式を変形して次の式になる。

このときの周波数f0を共振周波数という。この共振回路でRが小さいとき共振すると流れる電流は非常に大きくなるから、これを利用してコイル、またはコンデンサーの両端に大きな電圧を作ることができる。(=ωLI=I/ωC)


関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 堀孝正『パワーエレクトロニクス』オーム社出版局2002年2月25日第1版第7刷発行
  • 酒井善雄『電気電子工学概論』丸善株式会社1997年5月15日第4刷発行。
  • 力武常次、都築嘉弘『チャート式シリーズ新物理ⅠB・Ⅱ』数研出版株式会社新制第11刷1998年4月1日発行
  • 矢野隆、大石隼人『発変電工学入門』森北出版株式会社2000年9月13日第1版第4刷発行
  • 西巻正郎・森武昭・荒井俊彦『電気回路の基礎』森北出版株式会社1998年3月18日第1版第12刷発行