ウチダザリガニ

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ウチダザリガニ
分類
動物界
節足動物門
軟甲綱
十脚目 (エビ目)
ザリガニ科
ウチダザリガニ属
ウチダザリガニ
名称
学名Pacifastacus leniusculus
(Dana, 1852)
和名ウチダザリガニ (内田蝲蛄)
英名Signal crayfish
保全状況
IUCNレッドリスト低危険種 (IUCN 3.1)

ウチダザリガニとは、ザリガニ科に属するザリガニの一種である。

形状[編集]

普通は6~9cmだが、15~20㎝のものもいる。体色は、青褐色からあずき色

はさみが大きく、付け根に青白い紋がある。額角は細長い。

Areolaは広い。

生態[編集]

カナダ南西部からアメリカ北西部に自然分布する。

10~11月に交尾し、数週間後に産卵し、翌年の夏に孵化する。

孵化後2~3年で成熟して、5~6年ほど生きる。

名前[編集]

ウチダザリガニは、「シグナルザリガニ」や「シグナルクレイフィッシュ」とも呼ばれ、淡海湖のものは「タンカイザリガニ」と呼ばれる。

ウチダザリガニ」という和名は、1957年三宅貞祥により提唱された。和名の「ウチダ」は、標本を持っていた「内田亨教授」に由来する[1]

ハサミの紋が「シグナル」に見えることから「シグナルザリガニ」「シグナルクレイフィッシュ」という別名が付けられた。

Pacifastacus leniusculusは「ウチダザリガニ」と呼ばれる事が多いが、P. l. trowbridgiiと混同する恐れがあるため「シグナルザリガニ」と呼ぶ事もある。

分類[編集]

1852年、DanaによりAstacus leniusculus という名で記載された。

本種は3亜種に別れるとされるが、全部同じという意見もある。日本国内の個体群は、複数の亜種の特徴を持ち、区別出来ないとされる。

狭義のウチダザリガニは、Pacifastacus leniusculus trowbridgiiとされ、タンカイザリガニはP. l. leniusculusであるとされてきた。

人間との関わり[編集]

移入[編集]

欧州日本カリフォルニア州に移入されている。

IUCNが規定した「世界のワースト 100 外来生物」に指定されているファノマイシス菌を媒介する危険性がある。

ヨーロッパではウチダザリガニが移入されてから約100年の間に、各地でヨーロッパザリガニが局所絶滅している。

日本[編集]

日本では、特定外来生物に指定されているため、移動や飼育が禁止されている。

ニホンザリガニとの競合が心配されており、ザリガニペストを媒介して、在来種に感染させる可能性もある。

日本では、1926年~1930年にかけて5回、アメリカコロンビア川から、当時の農林省水産局が輸入した[2]

輸入されたウチダザリガニは、29の都道府県[注 1]の水産試験場に配布された。

放流されたウチダザリガニ[2]
道府県名 場所 日付 個体数 備考
滋賀県 石寺内湖 1926年
10月30日
65個体 定着せず消滅
淡海湖 1926年
11月4日
30個体 タンカイザリガニ
大正池 1927年
2月10日
25個体 定着せず消滅
北海道 摩周湖 1930年
7月28日
476個体
福井県 猪ヶ池 1933年 不明 定着せず消滅
東京府 不明

長野県や栃木県にもウチダザリガニが発見されていることからこれ以外にも放流された可能性があるが、飼育された個体が逃がされた可能性もある。

1970年代に、阿寒湖釧路川下流域、1980年代釧路川中流域の湖沼と斜里川支流・札弦川緑池、1990年代には屈斜路湖然別湖に広がっていて、北海道東部を中心として分布が拡大しており、本州でも福島県裏磐梯秋元湖小野川湖桧原湖にも分布するようになって、2000年代になると天塩川シュンクシタカラ湖支笏湖洞爺湖石狩川など北海道東部でも確認されるようになっている[2]

2011年には福井県新潟県でも確認された[3]

日本のウチダザリガニは、寄生しているヒルミミズにより何処を経由して移植されたのかが分かる。シグナルヒルミミズが付いているものは北海道などから移植された個体で、福島県、千葉県、新潟県や松川湖で確認されている[4][5]。ヘラガタヒルミミズが付いている個体は長野県の明科に由来するとされており、同県の軽井沢町、木祖村、松川町、喬木村で確認されている [6]

[編集]

本種は、フランス料理の食材として使われる事がある。

味はエビとカニの中間。ツメの部分まで身が詰まっている[7]

日本国内でも駆除目的で食される場合も存在する。日本では5月中旬~12月中旬に出回る[8]

阿寒湖では、ウチダザリガニを「レイクロブスター」として全国に出荷している。当初は余り関心を持たれなかったが、札幌のホテルで出されたのを切っ掛けに、日本各地で注文が来るようになった[7]

脚注[編集]

注釈
出典
  1. 三宅貞祥「輸入種アメリカザリガニ・ウチダザリカニ(新称)2種の学名」、『動物分類学会会務報告』第16巻、動物分類学会、1957年、 1-2頁、 doi:10.19004/jsszkaimu.16.0_1
  2. a b c Usio. N、中田和義、川井唯史、北野聡「特定外来生物シグナルザリガニ†(Pacifastacus leniusculus) の分布状況と防除の現状」、『陸水学雑誌』第68巻第3号、日本陸水学会、2003年、 471-482頁、 doi:10.3739/rikusui.68.471
  3. 保科英人「ウチダザリガニの福井県からの記録」、『福井大学地域環境研究教育センター研究紀要』第8巻、福井大学地域環境研究教育センター、2011年、 19-24頁、 ISSN 1343-084X
  4. 志田嘉幸、川井唯史「新潟県で新しく採集された外来ザリガニの種名と由来の推定」、『伊豆沼・内沼研究報告』第16巻、宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団、2022年、 21-32頁、 doi:10.20745/izu.16.0_21
  5. 石塚徹、北野聡、村上賢英、西川潮、大高明史「長野県における特定外来生物シグナルザリガニの新産地および移入起源推定」、『保全生態学研究』第27巻第1号、日本生態学会、2022年、 43-53頁、 doi:10.18960/hozen.2126
  6. 北野聡、石塚徹、村上賢英、澤本良宏、西川潮、大高明史「長野県における特定外来生物シグナルザリガニの新産地および移入起源推定」、『保全生態学研究』第27巻第2号、日本生態学会、2022年doi:10.18960/hozen.2126
  7. a b “ザリガニが期待の星に 阿寒湖の「レイクロブスター」”. www.nikkei.com. (2021年10月22日. https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC118OK0R11C21A0000000/ 2023年12月30日閲覧。 
  8. 野中俊文「外来ザリガニの食用利用(一般公開シンポジウム「外来ザリガニ類のシンポジウム-環境省指定の特定外来生物,ウチダザリガニを中心に-」」、『CENTER』第21巻、日本甲殻類学会、2012年、 101-102頁、 doi:10.18988/cancer.21.0_101