高等専門学校

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高等専門学校(こうとうせんもんがっこう)とは、日本学校教育法第1条に規定された学校(一条校)の1種である。高専と略する。

概要[編集]

深く専門の学芸を教授し、義務教育修了者を対象に職業に必要な能力を育成することを目的とすることが学校教育法第70条の2で規定されている。卒業後は準学士の称号が得られる。
長らく日本独自の学校制度だったが、2010年代後半に日本国外への制度導入が進められている(後述)。

対象分野は、工学系、商船系が主で、看護系[注 1]、文理探究系、商学系などへの拡大の予定は無い。

中学校卒業もしくは卒業見込を入学資格とし[注 2]、修業年限は5年で、前半の3年間は後期中等教育、後半は高等教育に相当するが、3年次後半は通常の大学1年相当の授業が行われる。なお、商船に関する学科については半年の遠洋航海実習を行うために5年6ヶ月と学校教育法第70条の4で規定されている。

ちなみに、卒業した者は大学に編入学することができることが学校教育法第70条の9で、3年次を修了した者は大学入学資格を有する[注 3]ことが学校教育法第90条に規定されている[注 4]

殆どが1960年代の新設国立学校奈良県のように国公立大工学部の無い県への設置もあるが、山梨、滋賀、佐賀の各県に設置されたことはない(ちなみに神奈川、埼玉には過去私立高専が存在〔後述〕した)。
公立は東京都立、大阪府立[注 5]、神戸市立の他、1990年代に札幌市立の芸術系高専が新設されたが、2006年に四年制大学に転換された。
2004年(平成16年)4月開学[注 6]の国立沖縄工業高専を最後に国立高専の新設は無い。公立は高専未設置だった滋賀県2027年開校目標で高専新設構想がある。

私立は、2023年に起業家集団によって徳島県神山町に技術デザイン融合型の神山まるごと高等専門学校が新設されたが、それでも現在サレジオ工業高等専門学校など僅か4校しかない。近畿大学工業高等専門学校国際高等専門学校(旧・金沢工業高等専門学校)のように四年制大学工学部を運営しつつ、工業高専に独自性を持たせている学校法人がある一方、(私立)大阪工高専聖橋工高専(埼玉)、幾徳工高専桐蔭学園工高専(以上、神奈川)のように四年制大学に転換された学校もある。

歴史と創設の背景[編集]

工業高等専門学校[編集]

旧学制において、製造業は、旧大学工学部卒(23歳新卒)=幹部候補社員、旧工専卒(20歳新卒)=中堅社員、旧工業学校卒(17歳新卒)=下級社員というキャリア制度が固まっており、大学工学部も京城、台北を含む九帝大以外は東京工業大学、旅順工科大学、早稲田大学日本大学、藤原工業大学→慶應義塾大学、興亜工業大学→千葉工業大学、大阪理工科大学→近畿大学と限られていて、合理的なキャリアピラミッドが形成されていた。

ところが、学制改革で旧制工業専門学校の大勢が大学工学部に昇格すると、22歳新卒の「大卒」者が増加の一方、暫定制度として法制化された短期大学もしくは大学短期大学部[注 7]の工学科は全国的に数が少なかったため、旧学制下にあった20歳新卒者が著しく減少することになり、財界のメーカー首脳から、大学卒と工業高校卒の中間の旧制工業専門学校相当の学校を要望する声が高まり、財界首脳の要望を汲んで創設されたのが工業高等専門学校である。教養は高卒レベル、専門は大卒レベルという位置づけである。

工業高専は、昭和36年(1961年)に創設され、1950年代に定着した単線型学校制度に分岐を設ける点で論争がなされた[注 8]。工業分野の高専には、長岡、宇部、久留米のように国立工業短期大学から高専に転換した学校や高知工高専のように私立学校として創立の翌年に国立移管した学校もあった。

商船高等専門学校・電波高等専門学校[編集]

商船・電波工業の高専は少し背景が異なり、戦前の商船学校の系譜として海運従事者の養成が行われた国立の商船高等学校、無線電信講習所の系譜を引き無線技術者養成が行われた国立の電波高等学校およびそれらの専攻科において、資格取得に要する所要時間数が引き上げられたことで、従来の教育課程では立ち行かなくなったため、その対応として、工業高専制度に遅れて、1967年に商船高等専門学校、1971年に電波工業高等専門学校を発足させた。

特色[編集]

特色として、5年間の一貫教育、および専門教育の充実が挙げられる。一般教養が大学と比べて少ないものの、大学入試がないため[注 9]、大卒レベルの専門性が5年間と早い期間で身につくことを特徴としている。当初は、卒業生に対する需要が大きかった。
しかし高校の進学率が高まり、大学が拡充されていくにつれて、生徒にとって魅力のある学校づくり[注 2]や未来持続可能な学校づくりが求められるようになり、以下の施策が行われている。

  1. 上位学校として、編入枠が多い豊橋長岡の国立技術科学大学の設置
  2. 学士学位を取得可能で、大学院進学が可能な2年制専攻科の設置
  3. 工業高校生などを対象とした4年次編入枠の創設
  4. 電波工業高専の近隣高専への統合と、無線従事者から無線機器のIT技術者育成への転換
  5. 商船高専の5年制機械、電気系学科の設置
  6. 富山高等専門学校宇部工業高等専門学校福島工業高等専門学校における経済・国際系学科の設置
  7. 高専ロボコンなど高専学生対象の行事の後援
  8. オリジナル色の強い高専の開校
    • 英語標準語化や海外留学カリキュラムへの組み替えを実施した国際高等専門学校への改組(旧・金沢工業高専)
    • 起業家育成教育重視の高専新設(神山まるごと高専)

日本国外への制度導入[編集]

国立高専機構は、タイモンゴルベトナムへ「日本型高専」と銘打って日本国外への高専制度導入を進めている[1]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

脚注[編集]

  1. 看護は高等学校本科と専攻科の5年一貫教育で対処する学校が多い。
  2. a b 学校教育法の義務教育の就学期間の制約から15歳未満生徒への飛び入学は高専では実施されておらず、浮きこぼれ生徒に早期にアカデミックな教育に触れる場になっていない。
  3. 野球協約でも2009年の鬼屋敷正人(元・巨人、当時・近畿大学工業高専に在学)の指名対象に伴い、高専3年修了見込者は高卒見込者同様に扱われるように改正され、ドラフトの対象になる。なお、鬼屋敷に続いて石井大智が高専出身者として2020年に阪神に指名されたが既卒であり、高専3修見込者や高専卒業見込者のNPBドラフト指名は鬼屋敷以降まだ無い。
  4. 3年次に進級できずに退学した生徒は高等学校卒業程度認定試験の対象となり高専での修得単位による科目免除もある。
  5. 大阪府は、神奈川、埼玉、山梨、滋賀、佐賀の各県と共に国立高専が設置されていない。
  6. 2004年には全国の国立高専を総括する国立高等専門学校機構が発足した。
  7. 現存の日本大学の他、明治大学にも設置されたが1956年(昭和31年)に廃止。
  8. 中等教育学校創設でも同様の論争があった。
  9. 線形代数、ベクトル力学など高3後期相当で繰り上げて学ぶものもある。
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