柳家小三治
柳家 小三治(やなぎや こさんじ)は落語家の名跡。現在は空き名跡。この名跡は中堅どころの位置付けであるが、「柳家(柳派)の出世名」といわれる[注釈 1]七代目立川談志が小三治という名を欲しがっていたというエピソードはよく知られるが、談志は襲名せずに後輩の当代(十代目)が襲名した。歴代小三治の全員が小さんになったわけではなく、廃業し落語協会事務員に転じた者もいるため、「実は小さんにも五厘(寄席の事務員)にもなる名前」とのギャグを当代小三治が使っている。七代目・八代目の柳家小三治は併存したことがある。
- 初代柳家小三治 - 後∶三代目柳家小さん
- 二代目柳家小三治 - 後∶二代目談洲楼燕枝
- 三代目柳家小三治 - 後∶三代目古今亭今輔
- 四代目柳家小三治 - 後∶二代目柳家つばめ
- 五代目柳家小三治 - 後∶四代目柳家小さん
- 六代目柳家小三治 - 俗に「留っ子」「坊やの小三治」。(1896年〈明治29年〉8月19日 - 大正半ば頃)は、落語家。本名∶内田 留次郎。1915年に三代目柳家小さん門下で柳家小志ん。1917年2月に柳家小きんを経て、1918年3月に演芸会社で先代が蝶花楼馬楽を襲名したために六代目柳家小三治を襲名。将来を期待されたが、酒に溺れて若くして早逝した。1919年頃までの寄席の出番表などに名が見える。
- 七代目柳家小三治 - 後∶七代目林家正蔵。初名の柳家三平は息子(林家三平)の高座名の由来となった。当代正蔵の父方祖父。
- 八代目柳家小三治 - 当該項目で記述
- 九代目柳家小三治 - 後∶五代目柳家小さん
- 十代目柳家小三治 - 本項にて詳述
十代目 柳家 小三治(昭和14年(1939年)12月17日 - 令和3年(2021年)10月7日)は、東京都新宿区出身の落語家[1]。落語協会顧問。出囃子は『二上りかっこ』[1]。定紋は『変わり羽団扇』[1]。本名∶郡山 剛藏(こおりやま たけぞう)[1]。「高田馬場の師匠」とも呼ばれた。
経歴[編集]
ラジオの素人寄席で注目され、高校卒業後の昭和34年(1959年)に5代目柳家小さんに入門する。昭和44年(1969年)に17人抜きで真打ち昇進を果たし、10代目柳家小三治を襲名した。
柳家はしぐさ、間がうまく、ひょうひょうとした語り口でおかしみにあふれた高座を高く評価された。得意演目も多く、「死神」「青菜」「千早ふる」「初天神」などがそれである。
芸術選奨文部大臣新人賞(1981年)、芸術選奨文部科学大臣賞(2004年)、紫綬褒章(2005年)、旭日小授章(2014年)など受賞も多い。また、師匠の小さんや桂米朝に次いで落語界で3人目となる人間国宝にも選ばれた。平成22年(2010年)から4年間、落語協会会長を務めたり、後進の育成にも尽力した。別名を「まくらの小三治」とも呼ばれたり、多趣味で著書も数多いことで知られている。
令和3年(2021年)10月7日午後8時、心不全のため、東京都内の自宅で死去した。81歳没。自宅で食事をした後、外出して帰宅したところを倒れているのを家族が見つけ、急いで救急車を呼んだが急死したという。最後の仕事は10月2日の東京都府中市の劇場での「猫の皿」の口演であり、その後も落語会の仕事の予定が多く入っている中での急死であった。葬儀は柳家の生前の遺志により、密葬で行われた。
柳家自身は「落語が楽しい。これからも頑張る」などと死ぬ前に語っていたという。
出演[編集]
映画[編集]
- 「可否道」より なんじゃもんじゃ(1963年、松竹、原作:獅子文六、監督:井上和男)
- 十九歳の地図(1979年、プロダクション群狼、原作:中上健次、監督:柳町光男)[注釈 2]
- 火まつり(1985年、シネセゾン、監督:柳町光男)[注釈 3]
- 砂の上のロビンソン(1989年9月、ATG、監督:すずきじゅんいち)[注釈 4]
- ホーホケキョ となりの山田くん(1999年、松竹/スタジオジブリ、監督:高畑勲) - 俳句朗読
- カミュなんて知らない(2006年、ワコー/グアパ・グアポ、監督:柳町光男)[注釈 5]
- そうかもしれない(2006年、「そうかもしれない」製作委員会/シナジー、監督:保坂延彦)
ドキュメンタリー[編集]
テレビ番組[編集]
落語中継[編集]
バラエティ番組[編集]
- 笑点 若手大喜利(1966年 - 1969年、日本テレビ)[注釈 8]
- お好み演芸会(1973年4月 - 1980年4月、NHK) - 大喜利「噺家横丁」司会[注釈 9]
- 象印クイズ ヒントでピント(1979年3月4日(第1回) - 1980年3月30日(第53回)、テレビ朝日) - 男性軍初代2枠解答者[注釈 10]
- 笑いがいちばん(1995年4月 - 1998年3月、NHK) - 総合司会
- 開運!なんでも鑑定団(2019年2月12日、テレビ東京)
- 出没!アド街ック天国(2019年2月16日、テレビ東京)
ドキュメンタリー番組[編集]
- NHK特集 小椋佳の世界(1976年11月11日、NHK総合)
- プロフェッショナル 仕事の流儀 第100回記念(2008年10月14日、NHK総合テレビ)[注釈 11]
- 情熱大陸 「柳家三三」(2010年12月19日、毎日放送) - インタビュー出演
- 『密着ドキュメンタリー 人間国宝 柳家小三治』(2019年3月21日、TVh)- テレビ北海道開局30周年特別番組
- ザ・ヒューマン「止まらない男 〜噺(はなし)家 柳家小三治」(2021年3月6日、NHKBS1)[2][3]
- 新型コロナ 命を守る行動を「今できることを 柳家小三治さん」(2021年4月6日、NHK総合)[注釈 12]
- 新 美の巨人たち「新宿・末廣亭」(2021年9月25日、テレビ東京)
テレビドラマ[編集]
- 3年B組貫八先生(1982年 - 1983年、TBS) - 小泉仙吉 役
- 噺家カミサン繁盛記(1991年11月4日 - 12月13日、フジテレビ・全30回)[注釈 13]
- 3年B組金八先生 第4シリーズ 第22話(1995年 - 1996年、TBS) - 藍染職人・岸田 役
ラジオ番組[編集]
web配信[編集]
- 柳家小三治からのメッセージ(テレビ北海道youtube公式チャンネル、2020年4月25日、18:30~)- 同日開催予定の札幌独演会がコロナ禍で中止となったことを受けての無料生配信・無観客高座。演目は「千早ふる」。アーカイブ無し
- 関内寄席 柳家小三治・柳家三三 親子会(・streaming+、2020年10月2日、有料)関内ホール主催公演の配信。
- 柳家小三治一門会(鹿児島テレビ・ローチケライブストリーミング、2020年10月15日・有料)鹿児島・宝山ホールでの公演の同時配信。
- 柳家小三治 初春の会(夢空間・streaming+、2020年1月28日、有料)練馬文化センター大ホールでの会のアーカイブ配信。柳家〆治・柳家三之助共演。
- NBC新春寄席 柳家小三治・柳家喬太郎・柳家三三 三人会(長崎放送・PIA LIVE STREAM、2021年1月24日・有料)長崎・とぎつカナリーホール公演の生配信&アーカイブ。
- 第37回 安比スキー寄席 (ホテル安比グランド・ZAIKO ZERO、2021年2月26日・有料)岩手・ホテル安比グランドでの落語会の生配信&アーカイブ。柳家〆治・柳家三三・柳家三之助共演。
- 柳家小三治 柳家三三 親子会 配信版(サンライズプロモーション東京・streaming+、2021年4月2日~4日・有料)2021年3月26日に大手町三井ホールで開催の会を後日配信予定だったが、小三治の体調不良により会・配信共に中止となった。
CM[編集]
- 夕張石炭の歴史村(北海道向けローカルCM)
- 夕張マウントレースイスキー場(同上)
LP・カセット・CD・DVD[編集]
多数リリースされているが、そのほとんどがソニーミュージックエンタテインメント京須偕充によってプロデュースされたものである。
CD-BOX[編集]
- 『柳家小三治 新選独演会』、ソニー・ミュージックダイレクト DYCW-1013、2005年
- 『柳家小三治 詳選落語』、ソニー・ミュージックダイレクト DYCW-1251-1254、2007年
- 『柳家小三治 詳選落語Ⅱ』、ソニー・ミュージックダイレクト DQCW-1551-1554、2008年
- 『柳家小三治 まくら全集』、ソニー・ミュージックダイレクト DQCW-3183、2015年
- 『柳家小三治 平成・令和の仕事』、ソニー・ミュージックダイレクト DYCS-1234、2021年
- 『柳家小三治 昭和・平成 小三治ばなし』、ソニー・ミュージックダイレクト MHCL-2911、2021年
著書[編集]
写真集[編集]
芸談・エッセイ[編集]
- 『落語家仲間泣き笑い行状記?読むだけで楽しくバイクの腕があがる』(1984年、交通タイムス社)
- 『落語家論』(2001年、新しい芸能研究室、文庫版:ちくま文庫)
- 『どこからお話ししましょうか 柳家小三治自伝』(2019年、岩波書店)
対談・インタビュー[編集]
- 『小三治楽語対談』(1976年、音楽之友社)[注釈 14]
- 『5人の落語家が語るザ・前座修業』(2010年、日本放送出版協会生活人新書)
- 柳家小三治 人間国宝認定についての記者会見(「東京かわら版」平成26年9月号)
速記集[編集]
マクラのみの速記集[編集]
- 『ま・く・ら』(1998年、講談社文庫)
- 『もひとつ ま・く・ら』(2001年、講談社文庫)
- 『バ・イ・ク』(2005年、講談社文庫)
雑誌[編集]
絵本[編集]
いずれも、文・絵:野村たかあき、監修:柳家小三治、教育画劇刊。
- 『しにがみさん』(2004年)
- 『ねこのさら』(2017年)
- 『しばはま』(2018年)
- 『そこつ長屋』(2019年)
寄稿[編集]
- 「志ん生の右手」(2007年、河出文庫、著:矢野誠一) - あとがき
- 小沢昭一的新宿末廣亭十夜(2006年、講談社、著:小沢昭一) - あとがき[注釈 15]
- 日日是好日 - お茶が教えてくれた15のしあわせ - (2008年10月、新潮文庫、著:森下典子)- 文庫版解説
関連書籍[編集]
- 佐渡新発見(1993年、三一新書、著:東京やなぎ句会)
- 噺家カミサン繁盛記(1998年、講談社文庫、著:郡山和世)[注釈 16]
- 友あり駄句あり三十年 恥多き男づきあい春重ね(1999年、日本経済新聞社、編:東京やなぎ句会)
- 師匠噺(2007年、河出書房新社、著:浜美雪)[注釈 17]
- 五・七・五 句宴四十年(2009年、岩波書店、編:東京やなぎ句会)
- 楽し句も、苦し句もあり、五・七・五 五百回、四十二年(2011年、岩波書店、編:東京やなぎ句会)
- 友ありてこそ、五・七・五(2013年、岩波書店、編:東京やなぎ句会)
- なぜ「小三治」の落語は面白いのか?(2014年、講談社、著:広瀬和生)
- 前座失格(2015年、彩流社、著:藤原周壱)[注釈 18]
脚注[編集]
注釈[編集]
- ↑ 初代・五代目・九代が柳派の総帥・留め名である「柳家小さん」を襲名した一つ前の名となるからである。
- ↑ エースデュースエンタテインメントよりDVD発売。
- ↑ ハピネット・ピクチャーズよりDVD発売。
- ↑ VHSビデオテープあり。
- ↑ エスピーオーよりDVD発売。
- ↑ 各地の映画館を廻り上映された。
- ↑ ここでの高座が『落語研究会 柳家小三治全集』(ソニーミュージックエンタテインメント/小学館 MHBL-35-45)としてDVD化されている(ボックスセットのみの発売)。
- ↑ 若手大喜利は正規の大喜利とは別の企画で、不定期に開催された。
- ↑ コーナー司会(小三治)が「横丁の月番」という設定。アシスタントを務めていたのが真打になる前の春風亭小朝で、「横丁の若様」と自称していた。小朝のキャッチフレーズの発祥である。
- ↑ 1994年、番組700回記念大会にもOBチームメンバーとして佐藤陽子とペアで出演した。
- ↑ この放送は『プロフェッショナル 仕事の流儀 第V期 噺家 柳家小三治の仕事』としてNHKエンタープライズよりDVD発売。
- ↑ 上記「ザ・ヒューマン」からの5分番組。
- ↑ 小三治の二つ目昇進から妻との結婚、弟子とのトラブルまでの半生を題材としたもので、朝の連続ドラマとして放送された。ただし、小三治本人は出演していない。
- ↑ 加山雄三、宇崎竜童、鳳蘭、小沢昭一、白石かずこ、三上寛、永六輔、戸川昌子、小島美子との対談集。
- ↑ 末廣亭2005年6月下席の詳細な記録。小三治は『小沢昭一の小沢昭一的こころ』がどれほど自分の落語のマクラに好影響を与えたかを記している。
- ↑ 夫人による著書。
- ↑ 弟子柳家喜多八への小三治に関するインタビューを掲載。
- ↑ 破門された元弟子の柳家小多けが著した暴露本。
出典[編集]
- ↑ a b c d “柳家 小三治|一般社団法人 落語協会”. 一般社団法人 落語協会. 2017年9月12日確認。
- ↑ “止まらない男 柳家小三治”. NHK. 2021年6月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月22日確認。
- ↑ 2021年3月20日、90分拡大版がNHKBS4Kで放送。
参考文献[編集]
- 諸芸懇話会・大阪芸能懇話会共編 『古今東西落語家事典』 平凡社 ISBN 458212612X
外部リンク[編集]