伊藤誠 (経済学者)

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伊藤 誠(いとう まこと、1936年4月20日[1] - 2023年2月7日)は、マルクス経済学者。東京大学名誉教授。日本学士院会員。専門領域は理論経済学、経済学史、現代資本主義論、社会主義論[2]

日本を代表するマルクス経済学者の1人[3][4]宇野学派の代表的論客で[5]宇野弘蔵の孫弟子にあたる[6]。宇野に直に接した直弟子としては最年少の部類に属する[7]。主として恐慌論、価値論の分野で業績を挙げた。1974年から75年の在外研究で欧米の「マルクス・ルネッサンス」に遭遇し、欧米マルクス学派を日本に紹介するとともに、日本の宇野経済学を海外に紹介した。6冊の英文著書があり、それらはフランス語・オランダ語・ロシア語・中国語・韓国語・ギリシャ語にも翻訳出版されている[8]

経歴[編集]

東京生まれ。1959年東京大学経済学部卒業。1964年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了[9]。学部・大学院で鈴木鴻一郎のゼミ、東大社研大内力のゼミに参加。1964年東京大学経済学部助手。宇野弘蔵と初対面する[6]。1966年東京大学経済学部助教授[9]。1975年「信用と恐慌」で経済学博士(東京大学)[10]。1980年東京大学経済学部教授。1997年東京大学を定年退官。東京大学名誉教授。國學院大学経済学部教授[9]。2003年日本学士院会員(第1部第3分科)[11]。2007年国士舘大学大学院グローバルアジア研究科教授[12]

1978~1997年ニューヨーク大学ニュースクール・フォー・ソシアルリサーチ各客員助教授[9]ロンドン大学ケンブリッジ大学[1]マニトバ大学タマサート大学ヨーク大学シドニー大学グリニッジ大学[13]上海財経大学各客員教授などを歴任[14]

2023年2月7日、急性心筋梗塞のため死去、86歳[15][16]

受賞等[編集]

  • 2011年秋 - 瑞宝重光章[17]
  • 2012年 - The World Association for Political Economy, Marxian Economics Award[11]
  • 2016年[18] - 経済理論学会ラウトレッジ国際賞[8]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『信用と恐慌』(東京大学出版会[東大社会科学研究叢書]、1973年)
  • 『資本論研究の世界』(新評論[現代社会科学叢書]、1977年)
  • 『価値と資本の理論』(岩波書店、1981年)
  • 『現代の資本主義――その経済危機の理論と現状』(新地書房、1981年、2版1983年)
  • 『現代のマルクス経済学』(ティビーエス・ブリタニカ[Books '80]、1982年/社会評論社、1988年)
  • 『世界経済の中の日本――ポスト・フォーディズムの時代』(社会評論社、1988年)
  • 『資本主義経済の理論』(岩波書店、1989年)
  • 『逆流する資本主義』(東洋経済新報社、1990年)
  • 『現代の社会主義』(講談社[講談社学術文庫]、1992年)
  • 『世界経済の転換を考える』(時事通信社、1993年)
  • 『現代の資本主義』(講談社[講談社学術文庫]、1994年)
  • 『これからの世界史 11 市場経済と社会主義』(平凡社、1995年)
  • 『日本資本主義の岐路』(青木書店、1995年)
  • 『日本経済を考え直す』(岩波書店[岩波セミナーブックス]、1998年)
  • 『幻滅の資本主義』(大月書店、2006年)
  • 『『資本論』を読む』(講談社[講談社学術文庫]、2006年)
  • 『サブプライムから世界恐慌へ――新自由主義の終焉とこれからの世界』(青土社、2009年)
  • 『伊藤誠著作集(全6巻)』(社会評論社、2009-2012年)
  1. 現代のマルクス経済学(2010年)
  2. 価値と資本の理論(2011年)
  3. 信用と恐慌(2009年)
  4. 逆流する資本主義(2010年)
  5. 日本資本主義の岐路(2010年)
  6. 市場経済と社会主義(2012年)
  • 『日本経済はなぜ衰退したのか』(平凡社[平凡社新書]、2013年)
  • 『経済学からなにを学ぶか――その500年の歩み』(平凡社[平凡社新書]、2015年)
  • 『マルクス経済学の方法と現代世界』(桜井書店、2016年)
  • 『資本主義の限界とオルタナティブ』(岩波書店、2017年)
  • 『入門資本主義経済』(平凡社[平凡社新書]、2018年)
  • 『マルクスの思想と理論』(青土社、2021年)
  • 『『資本論』と現代世界――マルクス理論家の追憶から』(青土社、2023年)
  • 『資本主義の多重危機』(岩波書店、2024年)
  • 『価値と恐慌』(江原慶共訳、岩波書店、2024年)

共著[編集]

  • 『経済学の古典 上――古典派とマルクス』(小黒佐和子、小池田富男、桜井毅、平林千牧、馬渡尚憲共著、有斐閣[有斐閣新書]、1978年)
  • 『経済理論と現代資本主義――ノート交換による討論』(置塩信雄共著、岩波書店、1987年)
  • 『現代資本主義をどう視るか』(北原勇山田鋭夫共著、青木書店、1997年)
  • 『貨幣・金融の政治経済学』(C.ラパヴィツァス共著、岩波書店、2002年)

編著[編集]

  • 『経済学と現代』(宇沢弘文、竹内啓、石井寛治共編、東京大学出版会[東大社会科学研究叢書]、1974年)
  • 『競争と信用』(山口重克侘美光彦共編、有斐閣、1979年)
  • 『経済学I――資本主義経済の基礎理論』(桜井毅、山口重克、侘美光彦共編、有斐閣[有斐閣大学双書]、1980年)
  • 『経済学Ⅱ――資本主義経済の発展』(桜井毅、山口重克、侘美光彦共編、有斐閣[有斐閣大学双書]、1980年)
  • 『価値論の新展開』(桜井毅、山口重克共編、社会評論社[マルクス経済学叢書1]、1983年)
  • 『いまマルクスを問う』(いいだもも共編、幸洋出版、1984年)
  • 『利子論の新展開』(桜井毅、山口重克共編、社会評論社[マルクス経済学叢書2]、1984年)
  • 『恐慌論の新展開』(桜井毅、山口重克共編、社会評論社[マルクス経済学叢書3]、1985年)
  • 『いまマルクスが面白い――現代を読み解く事典』(いいだもも、平田清明共編、有斐閣[有斐閣新書]、1988年)
  • 『市場経済の学史的検討』(小幡道昭共編、社会評論社[マルクス経済学叢書9]、1993年)
  • 『経済学史』(編、有斐閣、1996年)
  • 『情報革命と市場経済システム――企業と産業の構造転換』(岡本義行共編著、富士通経営研修所[富士通ブックス]、1996年)
  • 『マルクスの逆襲――政治経済学の復活』(横川信治野口真共編著、日本評論社、1996年)
  • 『進化する資本主義』(横川信治、野口真共編著、日本評論社、1999年)
  • 『現代資本主義のダイナミズム』(編、御茶の水書房[Marxian political economy]、1999年)
  • 『マルクス理論の再構築――宇野経済学をどう活かすか』(降旗節雄共編、社会評論社、2000年)
  • 『資本主義経済の機構と変動』(編、御茶の水書房[Marxian political economy]、2001年)
  • 『危機からの脱出――変革への提言』(本山美彦共編、御茶の水書房、2010年)
  • 『宇野理論の現在と論点――マルクス経済学の展開』(櫻井毅、山口重克、柴垣和夫共編著、社会評論社、2010年)
  • 『世界と日本の政治経済の混迷――変革への提言』(本山美彦共編、御茶の水書房、2011年)
  • 『21世紀のマルクス――マルクス研究の到達点』(大藪龍介田畑稔共編、新泉社、2019年)

訳書[編集]

  • 『論争・転形問題――価値と生産価格』(桜井毅、山口重克共編訳、東洋経済新報社、1978年)
  • 『欧米マルクス経済学の新展開』(桜井毅、山口重克共編・監訳、東洋経済新報社、1978年)
  • ポール・M・スウィージー『革命後の社会』(ティビーエス・ブリタニカ[Books '80]、1980年/社会評論社、1990年)
  • P.M.スウィージー、H.マグドフ『アメリカ資本主義の危機』(ティビーエス・ブリタニカ、1982年)
  • D.M.ゴードン、R.エドワーズ、M.ライク『アメリカ資本主義と労働――蓄積の社会的構造』(河村哲二共訳、東洋経済新報社、1990年)
  • ジョン・E・ローマー『これからの社会主義――市場社会主義の可能性』(青木書店、1997年)
  • アンドルー・グリン『狂奔する資本主義――格差社会から新たな福祉社会へ』(横川信治共訳、ダイヤモンド社、2007年)
  • エリック・ホブズボーム『いかに世界を変革するか――マルクスとマルクス主義の200年』(水田洋監訳、太田仁樹、中村勝己、千葉伸明訳、作品社、2017年)

英文著書[編集]

  • Value and Crisis, Monthly Review & Pluto, 1980. second expanded edition, 2021.
  • The Basic Theory of Capitalism, Macmillan, 1988.
  • The World Economic Crisis and Japanese Capitalism, Macmillan, and St.Martin's, 1990.
  • Political Economy for Socialism, Macmillan, 1995.
  • Political Economy of Money and Finance, in collaboration with JCostas Lapavitsas, Macmillan and St. Martin's Press, 1999.
  • The Japanese Economy Reconsidered, Palgrave, 2000.

出典[編集]

  1. a b デジタル版 日本人名大辞典+Plus「伊藤誠」の解説 コトバンク
  2. 伊藤誠 平凡社
  3. 松原智雄「資本主義は逆流しているか?PDF」『苫小牧工業高等専門学校紀要』第36号、2001年3月
  4. 行き詰まる資本主義救う? マルクス、生誕200年で脚光 NIKKEI STYLE、2018年5月25日
  5. 「特集 世紀末大不況とマルクス経済学」『月刊状況と主体』第278号、1999年2月
  6. a b 伊藤誠『『資本論』と現代世界――マルクス理論家の追憶から』青土社、2023年
  7. 福留久大「『マルクス理論研究』, 小幡道昭・青才高志・清水敦編, 御茶の水書房, 2007年PDF」『季刊経済理論』第45巻第2号、2008年
  8. a b Makoto Itoh 経済理論学会
  9. a b c d 幻滅の資本主義 紀伊國屋書店
  10. CiNii博士論文
  11. a b 伊藤誠 日本学士院
  12. サブプライムから世界恐慌へ―新自由主義の終焉とこれからの世界 紀伊國屋書店
  13. マルクス経済学の方法と現代世界 紀伊國屋書店
  14. 伊藤誠著作集(全6巻) 社会評論社 社会評論社目録準備室
  15. 伊藤誠氏が死去 東京大名誉教授 日本経済新聞、2023年2月10日
  16. 伊藤誠さん死去 朝日新聞デジタル、2023年2月10日
  17. 受賞・受章/日本学士院会員 東京大学大学院経済学研究科・経済学部
  18. マルクスの思想と理論 紀伊國屋書店

外部リンク[編集]

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