政令指定都市
政令指定都市(せいれいしていとし)は日本に存在する地方自治の制度および地方自治体の形態。
概要[編集]
地方自治法の第252条を根拠とし、一定の条件を満たした東京都区部以外の都市に都道府県のほとんどの権限を移譲する制度である。略称は「政令市」だが、地方自治法以外が根拠の指定都市以外の政令市も存在する。
俗に「政令市は8割、中核市は7割、(特例市は3割)」の権限を都道府県より移譲されると言われている。
指定された都市には条例により行政区を設置することが許され[注 1]、後述のように都市計画や教育、福祉など様々な分野の事務を行うことが出来るようになる。ただし法律で都道府県から受け継ぐことが出来ない業務[注 2]も定められており、完全に都道府県から独立しているわけではない。
政令指定都市の多くは同時に県庁所在地であり、県庁所在地という特別扱い、特権がなければ政令指定都市になれなかった都市も少なくないといえる。政令指定都市のうち、県庁所在地ではないのは、合併特例が認められた平成の大合併前では川崎、北九州の2市にすぎず、その後も浜松、堺、相模原、静岡、岡山、熊本、新潟と過半数が県庁所在地である。合併特例による指定は人口70万人以上とされていたが、現在静岡市は其れを割り込んでいる。
政令市を特別市として県から独立させようという動き、つまり戦後直後に構想された特別市への移行が政令指定都市内部から起こっているが、政令指定都市になるにあたって多くの場合、県庁所在地として一般の市以上に特別扱いされることが非常に有利に働いていることは明らかで、県庁所在地ではない政令指定都市は別として、その要求が身勝手なものである印象は拭えず、県庁という他の自治体を支配する機関を所在地で保持したまま、特別市として県から独立するのは自分さえ良ければいいという非常に身勝手で非常識極まりない発想と思われる。
もっとも各県の県庁所在地ではない主要都市において同県の県庁所在地は目の上のたんこぶ的な存在でもあり、早々に県から出て行って欲しいという意見も説得力がある[注 3]。
指定要件[編集]
地方自治法第252条の9では「政令で定める人口50万人以上の市[注 4]」とされているが、もともと人口が特に多い五大市(大阪市、横浜市、名古屋市、神戸市、京都市)を想定した制度だったため、実際には国の裁量によって都市の格などが考慮されて指定されている。「他の指定都市と同規模」というのも条件の一つであり、目安は「おおむね80~100万人以上で将来100万人を超える見込みがある」である。ただし近年平成の大合併の特例として「おおむね70万人以上」の基準に緩和され、指定された都市が100万人を超える見込みがない場合も多い。
委譲される事務[編集]
地方自治法より抜粋する。
(指定都市の権能) 第252条の19 政令で指定する人口50万以上の市(以下「指定都市」という。)は、次に掲げる事務のうち都道府県が法律又はこれに基づく政令の定めるところにより処理することとされているものの全部又は一部で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる。
- 1 児童福祉に関する事務
- 2 民生委員に関する事務
- 3 身体障害者の福祉に関する事務
- 4 生活保護に関する事務
- 5 行旅病人及び行旅死亡人の取扱に関する事務
- 5の2 社会福祉事業に関する事務
- 5の3 知的障害者の福祉に関する事務
- 6 母子家庭及び寡婦の福祉に関する事務
- 6の2 老人福祉に関する事務
- 7 母子保健に関する事務
- 8 障害者の自立支援に関する事務
- 9 食品衛生に関する事務
- 10 墓地、埋葬等の規制に関する事務
- 11 興行場、旅館及び公衆浴場の営業の規制に関する事務
- 11の2 精神保健及び精神障害者の福祉に関する事務
- 12 結核の予防に関する事務
- 13 都市計画に関する事務
- 14 土地区画整理事業に関する事務
- 15 屋外広告物の規制に関する事務
(出典:[1])
指定されている都市[編集]
都道府県 | 政令指定都市 | 指定年(平成の大合併以降) | 人口 | 行政区数 | 備考 | 都道府県庁所在地 |
---|---|---|---|---|---|---|
北海道 | 札幌市 | 1972年4月1日 | 約193万人 | 10区 | ○ | |
宮城県 | 仙台市 | 1989年4月1日 | 約107万人 | 5区 | ○ | |
新潟県 | 新潟市 | 2007年4月1日 | 約81万人 | 8区 | ○ | |
埼玉県 | さいたま市 | 2003年4月1日 | 約126万人 | 10区 | ○ | |
千葉県 | 千葉市 | 1992年4月1日 | 約97万人 | 6区 | ○ | |
神奈川県 | 横浜市 | 1956年9月1日 | 約371万人 | 18区 | 五大都市 | ○ |
川崎市 | 1972年4月1日 | 約150万人 | 7区 | |||
相模原市 | 2010年4月1日 | 約72万人 | 3区 | 初の戦後新規市制施行した市の指定 | ||
静岡県 | 静岡市 | 2005年4月1日 | 約70万人 | 3区 | 初の将来人口が100万人を超える見込みが無い都市の指定 | ○ |
浜松市 | 2007年4月1日 | 約79万人 | 7区 | |||
愛知県 | 名古屋市 | 1956年9月1日 | 約228万人 | 16区 | 五大都市 | ○ |
京都府 | 京都市 | 1956年9月1日 | 約147万人 | 11区 | 五大都市 | ○ |
大阪府 | 大阪市 | 1956年9月1日 | 約269万人 | 24区 | 五大都市 | ○ |
堺市 | 2006年4月1日 | 約84万人 | 7区 | |||
兵庫県 | 神戸市 | 1956年9月1日 | 約154万人 | 9区 | 五大都市 | ○ |
岡山県 | 岡山市 | 2009年4月1日 | 約72万人 | 4区 | 初の人口60万人台での指定 | ○ |
広島県 | 広島市 | 1980年4月1日 | 約119万人 | 8区 | 初の人口100万未満での指定[注 5] | ○ |
福岡県 | 北九州市 | 1963年4月1日 | 約96万人 | 7区 | 初の都道府県庁所在地以外・五大都市以外での指定 | |
福岡市 | 1972年4月1日 | 約153万人 | 7区 | ○ | ||
熊本県 | 熊本市 | 2012年4月1日 | 約74万人 | 5区 | ○ |
その他[編集]
民間では日本郵便が取り扱う荷物や信書を政令市の住所に宛てて発送する際、県外からであっても宛名に都道府県名を書かなくても配送される「特権めいたもの」がある。このことは、政令市より遙かに人口や経済規模が小さい県庁所在地にも当てはまる。しかし、郵便番号は市区町村レベルはもちろんそれ以下の細かな住所にも対応している。また、政令市以外でも受取手が確認できれば一般市や町村であっても配送される。もちろん配送業者の労力を考えれば、郵便番号を正確に書かない、もしくは県外の知名度の少ない自治体から住所を書き出すのは、郵便会社に負荷をかける行為である事は知っておくのがマナーであろう。
関連項目[編集]
脚注[編集]
- 注釈
- 出典