大阪都構想
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大阪都構想(おおさかとこうそう)とは、大阪市を特別区に移行させるアイディアのこと。政令指定都市の大阪市を廃止して、東京23区と同様の特別区を設置し、大阪府とともに行政機能を再編する制度改革のことである。橋下徹元大阪市長が初代代表を務めた大阪維新の会の看板政策であった。成長戦略やインフラ整備などは大阪府に一元化し、特別区は保育や教育、生活保護といった基礎自治体としての業務に専念することなどが政策案であった。
長所・短所[編集]
大阪市が特別区に移行した場合、以下のメリット・デメリットが発生する。
- メリット
- 特定都市再生緊急整備地域の対象となる為、国から多額の支援が受けられる様になる[1]
- 大阪市24区が再編され、各区に設置され区域間で重複していた施設等の統廃合が可能になる。
- 府市が一体化されれば、大量の役人が不要になる。とりわけ大阪市役所は全国有数の「役人天国」として知られ、現業部門の給料が特に高い。例を挙げると大阪市交通局が運営する市バスの運転手の平均年収は、民間の2倍近い800万円弱(2009年)。過去には都市環境局で下水道の維持管理などに従事する職員の3割が年収1000万円を超えていたことも批判された[2]。
- 広域行政の一元化の実現例となり、道州制へ向けた、地方分権へのステップとなる。
- デメリット
- 市の職員の仕事量が一時的に増える
賛成派の意見[編集]
- 安倍晋三総理大臣は、「大阪都構想を実現する制度的な枠組みとして、既に、平成二十四年九月に議員立法により大都市地域特別区設置法が成立をしたわけでございまして、私も当然賛成をしているわけでございます。」と述べた[3][4]。
- 濱田剛史(高槻市市長)「大阪ダブル選挙を通じて、大阪府民が改革、変革を求めているということではないか。こういった府民の気持ち、思いをしっかりと市政に反映させていく必要があるのではないか。」と述べた[5]
- 佐竹敬久(秋田県知事)は、「野次馬的視点で言うと感覚で痛快。」「大阪都構想を掲げることは大阪府民には、前向き。」「大阪というのは江戸時代まで日本の政治経済の中心であり、江戸時代になっても、すぐ隣の京都に天皇がお住まいになって、大阪が事実上、経済の中心でありましたが、首都が東京になり、大阪がほかの県と同じような状況ということで、私がもし大阪府民の立場だったら、第二首都の復活など楽しい題材。」と都構想の実現に期待を寄せている[6]。
- 馬場好弘(寝屋川市市長)「二重行政の解消や周辺自治体の活性化、役割分担と責任分担の明確化などにつながる」と述べた[7]。
反対派の意見[編集]
- 「都構想」が大阪市民の暮らしや大都市大阪そのものに及ぼす「危険性」を様々な視点から明らかにしている学者達から、その具体的内容についての所見を、呼びかけ人(京都大学藤井聡教授・立命館大学森裕之教授)から公募したところ、2015年5月5日時点で106名からの所見が供出された。「大阪都構想」すなわち「特別区設置協定書」に基づく大阪市の廃止と五分割については、大阪市民の暮らしや都市の在り方に直結する様々な「危険性」が、行政学、政治学、法律学、社会学、地方財政学、都市経済学、都市計画学等、様々な学術領域の研究者から数多く指摘された[8]。
- 京都大学大学院教授の藤井聡は「大阪市という大きな活力を携えた共同体の解体で、それによって支えられていた大阪、関西、そして日本の活力と強靭性が毀損し、大きく国益が損なわれる」と述べた。
- 立命館大学教授の村上弘は「大阪市なき後の特別区は、中核市はもちろん一般の市よりも弱く、「格下げ」になる」と考察した[9]。
注意点[編集]
移行しても、大阪府という名称が使用される。変更する場合は、法律を改正しなければならない[10]。
その他の論点[編集]
- 地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二条に、「都道府県、市(特別区を含む。以下同じ。)町村及び第二十三条に規定する事務の全部又は一部を処理する地方公共団体の組合に教育委員会を置く」と規定されており、大阪都成立時には現在の大阪市教育委員会は、各特別区ごとに設置される教育委員会に移行し、独自の方針での学校経営が行われることになる[11]。
- 「熟議『学校選択制』について」[12]に基づき大阪市の各行政区が設定した学校選択制とは全く別に、大阪市では公立学校における指定校変更・区域外就学が明確に制度化[13]されており、保護者事情による在宅困難児童や、教員に専門性を要求される弱視学級や難聴学級に通学する障害児童が、行政区境を越えて広域に制度を利用している。
- 大阪市立の各小中学校は現在の「大阪市立○○小学校」「大阪市立△△中学校」から、「大阪都○×区立○○小学校」「大阪都○×区立△△中学校」へ移行すると想定されるが、大阪市独自の経緯で成立している大阪市立長谷川小学校・中学校や大阪市立弘済小学校・中学校、大阪市立弘済小学校分校・中学校分校などについて検討が加えられた形跡はない。
- 大阪府立大学・大阪市立大学の統合構想がある(大阪都立大学構想)。
- Jリーグではルール上、特別区のみをホームタウンとすることができないとされていた[14][15]。このため、大阪市に本拠地をおくセレッソ大阪のホームタウンの扱いについても議論となった。もしセレッソが大阪府全域をホームタウンと改めた場合、既に吹田市など北摂・北河内地域をホームタウンと定めているガンバ大阪とホームタウンのエリアが重複する可能性があった。
根拠法[編集]
「大都市地域における特別区の設置に関する法律(大都市地域特別区設置法)」
脚注[編集]
- ↑ 佐々木晶 『政策課題別 都市計画制度徹底活用法』 ぎょうせい、2015年、102頁。ISBN 978-4-324-10066-0。
- ↑ “橋下知事の「大阪都構想」高給取りの役人にとって面白くない”. NEWSポストセブン. (2011年11月7日) 2012年8月11日閲覧。
- ↑ 第186回国会 予算委員会 第7号 議事録
- ↑ “大阪都構想「その目的は重要だ」 首相が評価”. 産経新聞. (2014年10月6日) 2017年6月13日閲覧。
- ↑ 平成23年 第5回定例会(第3日12月15日). 高槻市議会. (2012年12月15日)
- ↑ “知事記者会見(平成23年11月28日)”. 美の国あきたネット (2011年11月28日). 2014年2月16日確認。
- ↑ 全首長アンケート”. yomiuri online. (2011年12月31日)
- ↑ “橋下徹氏の大阪都構想に専門家が反対「催眠商法」と揶揄する声も”. Litera. (2015年5月11日) 2017年6月13日閲覧。
- ↑ http://www.ritsumeilaw.jp/column/column201106.html
- ↑ 地方自治法 第3条第2項「都道府県の名称を変更するときは、法律でこれを定める」
- ↑ http://www.city.osaka.lg.jp/toshiseidokaikakushitsu/cmsfiles/contents/0000275/275299/shiryou3.pdf 特別区設置協定書(案)31頁 別表第3‐2 特別区の組織体制(イメージ)
- ↑ http://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000167689.html 大阪市教育委員会「熟議『学校選択制』について」
- ↑ http://www.city.osaka.lg.jp/kyoiku/page/0000010093.html 大阪市教育委員会「指定校変更・区域外就学について」
- ↑ Jリーグ規約第24条。2020年時点では、「Jクラブは、理事会の承認を得て特定の市町村をホームタウンとして定めなければならない。」という定めがあった。なお2021年時点での第24条では、「 (中略) 特定の市町村または特別区をホームタウンとして定めなければならない。」と、特別区の文言が加わったため、現行のルールのもとでは特別区のみをホームタウンとすることは可能ではある。
- ↑ 特別区のある東京都に本拠地をおくFC東京と東京ヴェルディは、どちらも届出上は東京都全域をホームタウンとしている (ただしクラブ内で別途活動重点地域を定めている) 。なおFC町田ゼルビアは町田市のみをホームタウンとしている。
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 特別区制度(いわゆる「都構想」)について (Report). 大阪市 .
- 大阪市市政 特別区設置協定書について (Report). 大阪市. オリジナルの2015年5月6日時点によるアーカイブ。 .
- 特別区設置協定書について - ウェイバックマシン(2015年3月24日アーカイブ分).(Report). 大阪府
- あなたは何区チェッカー (都構想調査委員会による郵便番号で新区名、区役所の場所、経路を判定する特設サイト)
- 住民投票紹介特設サイト (大阪維新の会による特設サイト)
- 大阪都構想特設サイト (大阪維新の会による特設サイト)
- 大阪都構想 二重行政のムダをなくす。豊かな大阪をつくる。 - ウェイバックマシン(2020年2月22日アーカイブ分).(2015年の大阪市特別区設置住民投票実施時の大阪維新の会特設サイトのアーカイブ)
- 今さら聞けない「大阪都構想」| 特別区・総合区 (自由民主党大阪市会議員団による特設サイト)
- 「都構想」ポータル (立憲民主党大阪府連合による特設サイト)
- 大阪都構想特設サイト - 公明党 大阪府本部
- 大阪都構想とは - おおさか未来ラボ
- 『大阪都構想』 - コトバンク