覇風林火山

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覇風林火山(はふうりんかざん)とは、工藤章興原作の歴史シミュレーション小説である。全10巻に単行本化された。

あらすじ[編集]

元亀4年(1573年)4月12日、甲斐国戦国大名武田信玄が死なずに西上作戦を続行するという架空歴史小説である。

武田信玄は野田城を落とした後、三河吉田城を包囲し、美濃国から織田信長が出て来るのを待った。徳川家康からの度重なる救援要請に遂に信長は大軍を率いて家康の支援に現れる。

織田信長・徳川家康連合軍と武田信玄軍は三河国小豆坂で激突する。信長の仕掛けた謀略にかかった武田勝頼の暴走と、巧みな鉄砲戦術により、武田軍は大敗する。しかし、武田信玄は西上をあきらめず、再起を図る。

信玄の大敗を見て、越後国から宿命のライバルである上杉謙信が動いた。謙信は信玄が留守の間に上野国を制圧しようとする。信玄はやむなく西上を中止し、北条氏政と連合して謙信を迎え撃つ。両者睨み合いの末、この龍虎の戦いは痛み分けに終わった。

信玄が西上を中止した隙に、信長は畿内における反対勢力を次々と潰してゆく。浅井長政は信長に降伏し、朝倉義景三好義継松永久秀らは滅ぼされた。そして遂に室町幕府征夷大将軍足利義昭京都から追放されて信玄を頼って落ち延びる。これにより室町幕府は滅び、畿内は石山本願寺を除いて織田信長に制圧された。

武田信玄は石山本願寺のほか、毛利輝元や宿敵の上杉謙信も足利義昭を通じて抱き込んだ上で新たな信長包囲網を画策する。そして信長が石山本願寺を攻めるために摂津国に出陣した隙をついて三河国に侵攻し、信長の同盟者であった徳川家康を謀殺。嫡男の信康を新たな徳川氏の当主に擁立して徳川家を事実上乗っ取った。さらに信玄は尾張国に侵攻し、清洲城を守っていた織田信雄とその軍勢を壊滅させる。そして、信雄の後詰に駆けつけた信長本隊をも小牧で半壊させ、柴田勝家池田恒興らを討ち取る大戦果を挙げ、尾張を奪った。

信玄はさらに軍を進めようとするが、ここで長年小康状態を保っていた病魔が再発。さらに謙信が急死を遂げて越後国で御館の乱が開始され、やむなく進軍を停止する。その間に信長の反攻が行なわれるも、これを何とか凌いだ武田勝頼は、御館の乱を抑えて謙信の後継者となった上杉景勝と同盟を結び、上杉軍と連合して西上を再開する。

信長は抗戦するも、岐阜城安土城も武田・上杉連合軍に落とされて窮地に追い込まれる。だがここで、西国に派遣していた羽柴秀吉から、毛利輝元との同盟、援軍要請に成功したとの報せが入り、信長は喜んで自ら援軍を迎えるために畿内に赴く。だが、これは秀吉の謀略だった。密かに天下を狙う秀吉は、信長を始末するために前々から信長に不満を抱いていた佐久間信盛に手を伸ばしており、信長の護衛役を務めていた佐久間は天王寺で信長、信忠父子を奇襲して暗殺する。こうして織田家は滅亡した。

秀吉は信長に代わって天下に号令する。だが、秀吉の謀略や思惑を信玄は見抜き、後ろ盾になっていた毛利輝元を調略する。信玄を恐れる輝元は所領安堵を引き替えに秀吉から離反。毛利の後ろ盾を失った秀吉は最早信玄の敵ではなく、あっさり大敗して自害した。

そして遂に、信玄は念願の上洛を果たすのだが……。

主な登場人物[編集]

武田家[編集]

武田信玄
本作の主人公。甲斐国の戦国大名で伝説的な名将。病を患いながらも上洛の野望を果たそうとする。
武田勝頼
信玄の4男で後継者。猪武者で、小豆坂で信長の謀略に引っかかって大敗。しかしこの敗戦で人間的に大きく成長し、以後は冷静沈着で穏やかな人物として家臣団から厚い信頼を得ることになる。
山県昌景
武田四天王のひとり。赤備えを率いる名将。
馬場信春
武田四天王のひとり。信玄より年上の名将。
高坂昌信
武田四天王のひとり。
内藤昌豊
武田四天王のひとり。
真田昌幸
信玄に将来を嘱望される若手有望株。頭が切れ、一向一揆の煽動など諜報を任される。
小山田信茂
武田家臣。勇猛さで知られるが、信長との戦いで森長可に討ち取られた。
穴山信君
信玄の外戚。戦は苦手な官僚タイプで、信玄の命令で強力な鉄砲隊の創設を任される。

織田家[編集]

織田信長
濃尾から畿内を制覇した事実上の天下人であったが、信玄により勢力を失い、最期は嫡子の信忠と共に家臣の佐久間信盛に殺された。
明智光秀
信長の家臣。信長の配下として活躍する。信玄の侵攻により危機が迫ると信長に畿内へ退避するように進言。だが、そのために信長が佐久間信盛に殺害されると、責任を感じて自害した。
佐久間信盛
信長の家臣。三方ヶ原での醜態をはじめ、様々な落ち度から信長から責められる。それが次第に怨みとなり、秀吉の調略に応じて遂に信長を暗殺した。
柴田勝家
信長の家臣。その武勇で活躍するが、小牧で武田軍に敗れた際に本多忠勝との一騎討ちに敗れて重傷を負い、自害した。
羽柴秀吉
信長の家臣。信長が信玄に追い詰められだすと、参謀の竹中重治黒田孝高らの進言に乗り、信長から天下を奪うために暗躍する。そして信長が暗殺されると天下に号令しようとするが、信玄に全て見抜かれて夢破れて自害した。
浅井長政
近江の戦国大名。信長の妹・お市を妻とする。はじめは信長と敵対していたが、お市の仲介により和睦、信長に臣従する。北陸方面攻略を任されたが上杉軍に敗れ、お市と共に自害した。

上杉家[編集]

上杉謙信
武田信玄の好敵手。信玄の西上を防ぐために当初は織田信長と同盟を結んで戦う。しかし次第に信長のやり方から同盟を破棄。信長との決戦を決意するが、その直前に急死した。
直江景綱
謙信の腹心。
柿崎景家
謙信配下の勇将。真田昌幸と一騎討ちの末に討ち取られた。
上杉景勝
謙信の甥で養子。謙信の死後、御館の乱で武田勝頼の助力を得て跡を継いだ。
直江兼続
景勝の腹心。冷酷で傲慢、傲岸な人物として描かれている。景虎方や織田の武将相手に自軍が優位になると、たちまち過酷な条件を敵に対して出したりしている。

徳川家[編集]

徳川家康
三河の戦国大名で信長の同盟者。武田信玄と戦うが負け続け、最期は信玄と通じた正室の築山殿と嫡子の信康によって謀殺された。
徳川信康
家康と築山殿の嫡子。家康の謀殺後、徳川家の当主となり、信長との同盟を破棄して信玄に服従し、信玄の娘を正室に迎えた。
本多忠勝
家康の家臣。家康の死後は信康に仕えた。

北条家[編集]

北条氏政
関東に覇を唱える北条家の第4代当主。信玄と協力して謙信と戦う。
北条氏照
氏政の弟。北条家を支える武将のひとり。
北条氏邦
氏政、氏照の弟。氏照と共に北条家を支える武将。

毛利家[編集]

毛利輝元
安芸国の戦国大名。無能なため、叔父が支えている。
小早川隆景
輝元の叔父。輝元を補佐して織田と戦う。
吉川元春
隆景の兄。輝元の叔父。
安国寺恵瓊
毛利家の外交僧。信長や秀吉との取次を担当し、密かに秀吉に通じる。

室町幕府など[編集]

足利義昭
室町幕府第15代将軍。信長に奉じられて将軍となるが、次第に信長と対立。信長が朝倉義景を攻めた隙に挙兵するもすぐに反撃されて、武田信玄を頼って落ち延びた。
細川藤孝
室町幕府幕臣だが、義昭を見限り信長についた。
荒木村重
室町幕府幕臣だったが、信長について摂津守護となる。後に秀吉の思惑を知ると、黒田孝高を監禁した。
朝倉義景
越前の戦国大名。信玄の滞陣要請を無視した。信長と戦うも敗れ、最後は家臣にも見捨てられて自害した。
松永久秀
大和国の戦国大名。信長に反逆するが許される。後に再度反逆するが、信長の追討を受けて自殺した。
三好義継
河内の戦国大名。信長との戦いに敗れて、一族と共に自害した。