アメリカザリガニ
アメリカザリガニ | |
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分類 | |
界 | 動物界 |
門 | 節足動物門 |
綱 | 軟甲綱 |
目 | 十脚目(エビ目) |
下目 | ザリガニ下目 |
科 | アメリカザリガニ科 |
属 | アメリカザリガニ属 |
種 | アメリカザリガニ |
名称 | |
学名 | Procambarus clarkii Girard, 1852 |
和名 | アメリカザリガニ (亜米利加蝲蛄) |
英名 | red swamp crayfish Louisiana crawfish mudbug |
保全状況 | |
IUCNレッドリスト | 低危険種 (IUCN 3.1) |
アメリカザリガニとは、アメリカザリガニ科に属するザリガニの一種である。
概要[編集]
大きさは8~12cmほどで、中には15cmの個体もいる[1]。
ハサミ脚は、顕著に大きく、つぶつぶした突起があり、内側の突起は棘状になる。額角は長い。
アメリカザリガニは、赤いイメージがあるが、若い個体は茶色で、成熟すると赤くなる[2]。サバなどを与えると赤い色素がなくなるため青くなる。また突然変異で、青色や金色の個体もいたりする。
オスは、第1腹肢が交尾器になっているが、メスは第2胸脚の根元の節に生殖孔が開いている[3]。
Areolaは、閉じる。
生態[編集]
アメリカ南東部からメキシコ北東部に生息する。河川や湖沼、池、小川、用水路、水田で見られる。水深が浅くて流れがない、泥底のところに多い[4]。
寿命は4~5年で、12年近く生きた事例も報告されている。
雑食で、藻類や水草、子魚、ミミズ、巻き貝、魚卵、両生類、昆虫、動物の死骸などを食べる[4]。夏季は植物を食べる量が増える。デトリタスの摂食量は一年中、同じ。幼体の時は動物食性が強いが、成長と共により植物を食べる様になる。
冬になると泥の中に穴を掘りそこで冬眠する[5]。
餌を捕獲しやすくするため、水草を刈り開放的な空間にする。また水草がある環境で、個体数が多いと大きく成長する傾向になる[5]。
陸上でも数時間生きることが出来て、数キロも歩くこともある[6]。
本種がいる場所はヤゴが居なく、蚊の幼生が多い。逆に本種が居なくヤゴがいる場所では蚊の幼体は少ない[7]。
ジストマ類の中間宿主である[8]。
天敵は、オオクチバスやカワウソ、カピバラ、アオサギ、ナマズ、ウナギ、コイ、カムルチー、ウシガエル、カワウなど。
繁殖[編集]
抱卵するメスは一年中見られる。産卵するのは水温が18〜25℃の時期が多く、6月と9月になると抱卵したメスが多くなる。秋に抱卵したメスは、抱卵したまま越冬し、翌春に卵がふ化する。1回の産卵で200〜1000個の卵を産む。繁殖する回数は1年に1度だけで、交尾した1〜3カ月後に産卵する。
卵は約2mmで、1ヵ月後に成体と同じ形で約5mmで孵化する[8]。1回脱皮すると尾節糸でメスの腹肢と繋がり、2回目の脱皮で母親と離れて、3回目の脱皮までは母に守られる[3]。1年で、9回脱皮をし4.5~5cmとなって、1年半後には約6cmになって成熟する[8]。
人間との関係[編集]
アメリカザリガニは、アクアリウムでよく飼育される生き物である。畦に穴を開け水を抜いたりしたり、稲をはさみで切ることがあるため、農家には嫌われている[1]。
ザリガニ釣り[編集]
詳細は「ザリガニ釣り」を参照
ザリガニ釣りの対象になるのは本種が多い。
やり方は、糸に餌をつけ、ザリガニがいる水路や池などで、上下に揺する。餌は、スルメや煮干しなどを使う。またザリガニの尾ひれを切って、それ使って釣ることもできる。糸は、持ちやすいように竹棒や木の棒に結んでもよい。
漫画家の水口幸広は、「よっちゃんイカ」がザリガニの好物だと力説していた。
2023年6月1日より輸入や飼育個体の放流が規制されたが、キャッチ&リリースは許可されている[9]。
飼育[編集]
本種の飼育はとても簡単である。日本国内では65万世帯が飼育している[10]。
飼い方は、フィルターがある場合は、水をしっかり張り、無い場合は水深を5・6cmにする。
水槽の水は、水道の水を直接使うのではなく、カルキを抜くために1日汲み置きしたり、カルキ抜きを使い、水道水に入っているカルキを抜く。
フィルターが無いと、水が汚れやすいため、2・3日に1回水替えをし、フィルターがある場合は、1週間に1度水を変える水替えは一度に全部抜くのではなく、水槽内の3分の1の水を抜き、抜いた分と同じ分の水を入れる。
餌は、ホームセンターなどで売っている「ザリガニの餌」やほうれん草、煮干しなど。
水槽内には、半分に割れた植木鉢や石などの隠れ場を入れる。水草を入れると餌にも、隠れ場にもなる。ザリガニはよく隙間から逃げるため蓋をする。
なおアメリカザリガニを逃がすと生態系に影響を与える可能性があるため、飼えなくなったら逃がすのではなく、譲渡や殺処分をすることが望ましい。
名前[編集]
「エビガニ」「マッチカン」「アメザリ」「ザリガニ」と呼ばれる。
かつては、ニホンザリガニがザリガニと呼ばれていたが、現在はアメリカザリガニを指す事が多くなっている[11]。
ザリガニ料理[編集]
アメリカでは、本種は食用になり、フランス料理にも使われる。
中国では、アメリカザリガニ料理の「
中国は、1990年初頭から発売されており、当時はザリガニ捕獲業者が外食業者に直接販売していた[12]。
アメリカザリガニには、寄生虫がいるため、生で食べるのは危険である。食用にする際は十分に加熱した方がよい。
移入[編集]
日本[編集]
日本では、食用ウシガエルの餌として、1927年[注 1]5月12日に米ニューオリンズ市から神奈川県大船町[注 2]に輸入された。約100匹が贈られたが、殆どが死んでしまい生き残ったのは20匹[注 3]のみであった。
そしてウシガエル養殖場から、アメリカザリガニが逃げ出し、大船町附近の河川や水田などで繁殖していった[12]。
1930年代に、東京都や埼玉県、千葉県へ生息地が拡大していき、荒川や元荒川から群馬県南部でも生息するようになって、1960年代には北海道を除く日本各地で見られるようになった[12]。北海道では暖かい温泉排水が流入する所で繁殖している[13]。
アメリカザリガニにより日本在来の昆虫や子魚、水草を食べてしまい、日本の生態系を脅かす事態になっている。
飼育下に置いてヤマトサンショウウオやフタスジサナエが本種により攻撃され、死亡した事例がある[14][15]。
愛知県では、本種の影響でベッコウトンボが、ほぼ絶滅し、ドジョウの養殖場では、本種が侵入して、ドジョウを食べるという被害も出ている。
またザリガニが水草を切ってしまい、湖沼が濁ることもある[7]。
規制[編集]
2003年に日本生態学会によって「日本の侵略的外来種ワースト100」に指定された。
2020年11月2日に本種とニホンザリガニを除くザリガニ類全種が特定外来生物に指定された。本種が指定されなかった理由は、多くの人々が本種を飼っており、指定されると野外に放流される可能性があったためである[16]。
2022年5月11日に改正法が成立され、2023年6月1日より、「条件付き特定外来生物」に指定され、輸入・野外に放流・販売・譲渡目的の飼育が禁止された[9][17]。
アフリカ[編集]
1970年代にケニアと南アフリカで養殖が行われ始めた。 また寄生虫を運ぶカタツムリの駆除するため、ケニアの都市であるナイロビ、キアンブ、リムル周辺のダムにも持ち込まれた[6]。
ザリガニの影響でナイバシャ湖の漁業に影響を与える可能性が高いとされており、河川や湖沼の岸辺に巣穴をほり、用水路の水が漏れたり、ダムが崩壊したりして、アフリカでも色々被害が出ている。
またケニアや南アフリカ以外にも、ルワンダやウガンダ、エジプト、ザンビア、セーシェル、モーリシャスでも生息しているのが確認されている。
脚注[編集]
- 注釈
- 出典
- ↑ a b “アメリカザリガニ”. 神奈川. 2020年1月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月16日確認。
- ↑ a b “アメリカザリガニ”. 国立環境研究所 侵入生物DB. 2023年2月17日確認。
- ↑ a b 武田正倫. “ザリガニ”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2023年10月28日確認。
- ↑ a b “アメリカザリガニ”. 大阪府立環境農林水産総合研究所. 2022年4月16日確認。
- ↑ a b 石田雅彦 (2018年1月2日). “「アメリカザリガニ」は水草を刈って獲物を狩る”. news.yahoo.co.jp 2022年4月16日閲覧。
- ↑ a b Ochieng'Ogodo (2012年1月9日). “アフリカでザリガニ繁殖、固有種に危機”. natgeo.nikkeibp.co.jp 2022年4月16日閲覧。
- ↑ a b JAKE BUEHLER (2018年8月27日). “アメリカザリガニで蚊が増加、感染症拡大の恐れも”. natgeo.nikkeibp.co.jp 2022年4月16日閲覧。
- ↑ a b c “アメリカザリガニ”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2023年10月28日確認。
- ↑ a b 川本 大吾 (2022年2月13日). “アメリカザリガニの放流・譲渡禁止:釣りや料理はこれまで通り、豊洲では1キロ3000円の高級食”. www.nippon.com 2022年4月16日閲覧。
- ↑ “アメリカザリガニ 今後“釣り禁止”も…”. news.ntv.co.jp. (2021年7月12日) 2022年4月16日閲覧。
- ↑ 一寸木肇「ザリガニ類の和名における問題」、『CANCER』第10巻、日本甲殻類学会、2001年、 35-37頁、 。
- ↑ a b c 如月隼人 (2017年8月23日). “ザリガニ料理、中国で爆発的ブーム 「マクドナルドを超えた」の報道も”. www.huffingtonpost.jp 2022年4月16日閲覧。
- ↑ 前田有里「札幌で増えているアメリカザリガニ Procambarus clarkii の現状と普及事業の取組み (シンポジウム報告 観賞用として扱われている甲殻類の現状)」、『Cancer』23,、2014年、 91-93頁。
- ↑ 水井颯麻、勝原光希、中田和義「アメリカザリガニによる2種のトンボ類幼虫に対する捕食」、『CANCER』第32巻、日本甲殻類学会、2023年、 19-27頁、 。
- ↑ 市岡幸雄、瀧川正子、山田律子、三輪謙太朗「名古屋市で発生したアメリカザリガニによるヤマトサンショウウオの被害例」、『なごやの生物多様』第8巻、なごや生物多様性センター、2021年、 65-69頁、 。
- ↑ 共同通信 (2020年10月15日). “アメリカザリガニ「特定外来」見送り、効果に疑問の声”. www.nikkei.com 2024年1月2日閲覧。
- ↑ a b “ミドリガメやアメリカザリガニの販売など禁止へ 改正法が成立”. www3.nhk.or.jp. (2022年5月11日) 2023年9月15日閲覧。
- ↑ “アメリカザリガニ規制へ 販売・放出禁止、飼育容認”. nordot.app. (2021年12月23日). オリジナルの2021年11月22日時点によるアーカイブ。 2022年4月16日閲覧。