コイ

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コイ
分類
コイ目
上科コイ上科
コイ科
亜科コイ亜科
コイ属
コイ
名称
学名Cyprinus carpio
Linnaeus, 1758
和名コイ (鯉)
英名Eurasian carp
European carp
Common carp
保全状況
IUCNレッドリスト危急種 (IUCN 3.1)


コイとは、コイ目コイ科の淡水魚である。成長段階によって名前が変わることはないが、出世魚のひとつ。いわゆる中国四大家魚(ソウギョ、アオウオ、ハクレン、コクレン)には入っていないが、同様に養殖され、よく食されていた。ただし唐代では皇帝の姓である「李」と「鯉」が同音であるため捕獲と売買が禁じられたという。中国四大家魚は大河の上流で産卵し、流れくだる途中で孵化するため、日本ではあまり見られず(ハクレンは利根川で自然繁殖しているが)、養殖されるのはもっぱらコイである。

形状[編集]

全長60cn。

フナに似ているが、体高が高く、4本の口髭があることで見分けがつく。
背部が蒼褐色で、側面から腹部は黄褐色。
ヤマトゴイは、体型が長細く、体高が高い。

生態[編集]

東欧~東アジアのユーラシア大陸に分布する。日本では、本州四国九州に生息する。
食性は雑食で咽頭に歯があり、これで餌となる甲殻類や貝殻を砕く。胃を持たないため、餌を食べても30分程度で消化が終わり空腹になってしまう。肝臓と膵臓が一体化した肝膵臓を持つ。

フナと交雑されることが出来、その雑種は「コイフナ」というそのまんまの名前で呼ばれる。だが、ギンブナと交雑するとコイフナではなく、普通のギンブナになる。

分類[編集]

コイは、1758年カール・フォン・リンネによりCyprinus carpioという学名で、新種記載された。
ユーラシア大陸の東西地域に生息するコイは、シプリヌス・ルブロフスクス(Cyprinus rubrofuscus)として別種とされた。
日本の鯉は、大陸系統の「ヤマトゴイ(飼育型コイ)」と在来系統の「ノゴイ」に分かれる[1]
元々は、同種で、全て中国原産とされていたが、2005年のミトコンドリアDNAを調べた研究により在来型の遺伝子型を持つ個体群が見つかった。この個体群はいわゆるノゴイで、近年、ヤマトゴイとノゴイは、別種とする考えが浸透している。ただし交雑は可能なので、ノゴイを保護しようという運動もある。

人との関わり[編集]

黄河中流域に竜門(竜門峡)という三段の滝がかかり[注 1]、これを乗り越えると神通力を得て龍になるという伝承があり、出世祈願の縁起物とされて「出世魚」とされている。蛋白源としても重用され、「肺病に効く」「乳の出がよくなる」と云われて食材として重用された。
コイは、日本国内のみならずユーラシア大陸においても広く食用とされる。プラハではクリスマス料理として知られるという。
国内では、料理としては鯉こくが有名である。ただし淡水魚であるため、近年では「鯉の洗い」はあまり好まれない。「川の鯉」と「海の鯛」はよく対比される。また、鯉の鱗は膠の原料となり、烏帽子を着けるときに用いられた[注 2]。 また、食いつきが良く、強い引きも楽しめるため、ニジマスなどと共に釣り堀の定番となっている。

調理[編集]

中国では泥を吐かせて臭みを抜いてから、姿揚げにして餡をかけるスタイルも多いが、これは家魚全般にいえることであって鯉に限らない。ただし、こうした料理法は丸揚げができるだけの植物油が一般化されて以降の話であり、それよりも前では生食や「焼き」「蒸し」が多かったようである。
ただし、鯉の胆嚢は単に苦いだけではなく健康被害もあるという話がある(反面、加工して薬としても用いられることもある)ため、鯉を捌くときは「苦玉(胆嚢)を潰すな」と強く指導される。

放流[編集]

コイは、日本を含む世界中に放流されており、「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されている。
コイが放流されると、水質や水草の育成に影響があるとされている。
かつては、「鯉を放流すると川や池が綺麗になる」と云われていたが、実際はその逆で、泥を巻き上げるため水が濁り、水質を浄化する水草やタニシを食べるため、湖沼ではかえって水が汚くなることも多い。
琵琶湖には、沖合にノゴイが生息しているが、繁殖期になると沿岸に移動するため、ヤマトゴイと交雑する可能性があり、心配されている。

飼育[編集]

鯉の観賞用品種である錦鯉は、主に池、あるいは飼育水槽[注 3]で飼育される。
鮮やかな体色が特徴の日本の錦鯉や、欧州のドイツゴイ(鏡鯉や皮鯉)など(本来は食用だが、日本では観賞目的で飼育される)改良品種が作られており、それを飼うことも多い。錦鯉と鏡鯉を交配した観賞用品種としては「金兜」がある。

養殖[編集]

廣島県(現在では食用鯉ではなく錦鯉が多いらしい)や島根県邑南町、長野県諏訪地方などでは、食用鯉の養殖が有名である。長野県佐久市の「佐久鯉」が知られる。
霞ヶ浦でも食用鯉が多く養殖されているが、2003年コイヘルペスウィルスによる大量死が起きて生産量が激減した。

歴史[編集]

  • 中国では紀元前から養殖されていた。前四百五十ごろ、揚子江下流域で呉越が争ったときに、陶朱公が越王に「鯉を養殖すれば富国になる」と進言し、『養魚経』という書が現在も残る。鯉養殖技術書の原点である。
  • 孔子が魯に仕えていたときに、王から鯉を賜った。孔子は名を「鯉」、字(あざな)を「伯魚」と改めた。

関連項目[編集]

  • 鯉のぼり - 5月5日に行われる行事。鯉を模したのぼり(吹き流し)を掲げて端午の節句を祝う。木村重によれば、中国では見られないという。類似のものに「かつおのぼり」がある。
  • 広島城 - 鯉城の別名がある。

関連作品[編集]

  • 「夢応の鯉魚」。『雨月物語』

脚注[編集]

出典
  1. 馬渕浩司、松崎慎一郎「日本の自然水域のコイ: 在来コイの現状と導入コイの脅威」、『魚類学雑誌』第64巻第2号、日本魚類学会、2017年11月25日、 213-218頁、 doi:10.11369/jji.64-213
注釈
  1. とはいえ現在はダムがかかっているという。
  2. 狂言『麻生』による。
  3. 観賞用水槽だと大型魚でもあり、横から鑑賞するより上から鑑賞したほうがよいとされる。
参考文献
  • 木村重『魚紳士録』