模索舎
種類 | 合同会社[1] |
---|---|
市場情報 | 非上場 |
本社所在地 | 日本 〒160-0022 東京都新宿区新宿2-4-9[2] |
設立 | 1970年10月(創業) |
業種 | 小売業 |
事業内容 | 書籍・雑誌・新聞の小売販売 |
関係する人物 | 五味正彦(創業者) 戸井十月(創業時協力メンバー)[3] 矢部史郎(元舎員)[1] |
外部リンク | 模索舎ホームページ |
模索舎(もさくしゃ)は、東京都新宿区新宿2丁目にあるミニコミ・小流通出版物の取扱書店。
概要[編集]
新宿御苑前にある小さな新刊書店。出版取次が扱わず一般の流通ルートに乗らない、いわゆるミニコミと呼ばれる自主流通出版物を中心に取り扱っている。新左翼党派の機関紙誌の品揃えは全国随一で、市民団体のパンフレット、自主制作のバッヂ、ポストカード、CD、DVD、Tシャツなども取り扱っている。作り手の表現をそのまま第三者に伝えることを大切にしているために「原則無審査」で納品を受け、売れた際には価格の7割を納品者に支払っている。模索舎で入手できなければ直接の発行元を探してそこからの取り寄せとなる出版物、日本全国中で模索舎でしか入手が事実上不可能な出版物も少なくない。
一般の流通ルートに乗っている人文・社会書も多く取り扱っており、アナーキズム、障害、ジェンダー、天皇制、監獄・死刑、原発、アイヌ、沖縄、部落、在日・朝鮮半島、中国、漫画などのジャンルに区分して並べている。これらの書籍は出版取次を通さず、直接出版社から仕入れている。左翼系書店というイメージが強いが、右翼の機関紙や書籍、サブカル系のミニコミも充実しており、新宿2丁目という場所柄、セクシュアル・マイノリティ関連の本も売れ筋だという[4]。
取り扱っているミニコミを紹介する『模索舎月報』と『定期刊行物リスト』(年度版)を発行しており、通信販売も行っている。1ヶ月に1回程度、店内または近くにある「カフェ・ラバンデリア」でトークライブなどのイベントを開催している[1]。
歴史[編集]
全共闘運動・ベトナム反戦運動をきっかけとして、1970年10月に五味正彦、小林健らがスナック部門の「スナックシコシコ」と書店部門の「情報センターへの模索舎」を創立したのが模索舎の始まりである[5][6]。五味を中心とした学生運動家たちは、自作のパンフレットを書店に置いてもらおうとしたが断られたため、自分たちで書店を開こうと考えた[7]。開店準備の過程で店名は「ズッコケ書房」に内定していたが、これでは営業が出来ないという意見が出たため「情報センターへの模索舎」という店名になったという[1]。併設されていた「スナックシコシコ」は1972年に閉店し、以降は書店部門のみとなっている。1972年に五味、小林は春本「四畳半襖の下張」のコピーを販売したとして「わいせつ文書販売目的所持」で起訴され、1976年に東京地裁で有罪判決を受けた[5]。2010年に経営難で存続の危機に陥り、同年3月に舎外からの有志も含めた模索舎再建実行委員会が結成されてカンパが呼びかけられた[8]。
沿革[編集]
- 1970年夏 - 「ライン出版」総会で”たまり場”とミニコミセンターを創ることを提起。
- 1970年10月 - 経営主体である有限会社コミニケート社を設立。
- 1970年10月28日 - たまり場であるスナック部門の「スナックシコシコ」とともに「情報センターへの模索舎」として営業開始。
- 1971年10月28日 - 『SM戦線』創刊。
- 1972年4月29日 - 「スナックシコシコ」閉店、直後に改装工事となる。
- 1972年5月22日 - 「情報センターへのシコシコ模索舎」リニューアルオープンとなる。以後も「模索舎」として日本全国に知名度を上げる。
- 1972年7月26日 - 模索舎にて取り扱っていた「四畳半襖の下張」掲載の月刊誌「面白半分」が押収される。
- 1972年9月25日 - 『モテック通信』創刊号発行。1980年5月に発行した40号をもって終刊となる。
- 1973年3月23日 - 模索舎も当事者の重要支援者となる「模索舎・四畳半裁判」東京地裁第一回公判が行われる
- 1976年12月23日 - 「模索舎・四畳半裁判」東京地裁での判決公判が下され、関係者に有罪との判決となる。
- 1980年11月28日 - 「模索舎・四畳半裁判」最高裁で上告が棄却され、関係者への有罪判決が確定する。
- 2010年3月22日 - 模索舎40周年記念イベント「40年目の、シコシコ・模索舎」を、大久保地域センターで開催する。それと前後して、「存続のための支援カンパ」を呼びかける[9]。
- 2010年9月7日 - 書籍の取扱案内も兼ね、案内誌として40年続けてきた「模索舎月報」がフリーペーパーとしてリニューアル。
- 2010年11月30日 - 警視庁流出情報を書籍化した『流出「公安テロ情報」全データ』(第三書館)に対し、東京地裁は個人の権利侵害にあたるとして出版と販売の差し止めの仮処分命令を下す。模索舎は数少ない取扱書店となる[10]。
- 2010年12月8日 - イスラム教徒らが模索舎に対し『流出「公安テロ情報」全データ』の販売差し止めの仮処分を申請していたが、東京地裁は却下する。模索舎は入荷した約500部を完売する[11]。
売れた本・雑誌[編集]
- 中川文人著、外山恒一聞き手 『ポスト学生運動史――法大黒ヘル編 1985~1994』 彩流社、2010年1月
- 第三書館編集部編 『流出「公安テロ情報」全データ――イスラム教徒=「テロリスト」なのか?』 第三書館、2010年11月
- 元中核派・編集局員 黒田・白土・刈谷 『[増補]狂おしく悩ましく 『前進』編集局員の事件録』 白土kamui、2011年6月[12]
- 水谷保孝、岸宏一 『革共同政治局の敗北1975~2014――あるいは中核派の崩壊』 白順社、2015年5月
- 宮崎希沙 『CURRY NOTE 2015』 MESS、2015年、ミニコミ[13]
- 金原みわ 『さいはて紀行』 シカク出版、2016年5月
- 尾形史人 『「革共同五〇年」私史――中核派の内戦戦略=武装闘争路線をめぐって』 社会評論社、2016年9月[14]
- 外山恒一 『全共闘以後』 イーストプレス、2018年9月[15]
新左翼系新聞の販売状況[編集]
2018年現在。筆者調べ。
系列 | 団体名 | 紙名 | 備考 |
---|---|---|---|
革共同系 | 革命的共産主義者同盟全国委員会 | 前進 三里塚 |
通称:中核派 |
日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派 | 解放 | 通称:革マル派 | |
日本革命的共産主義者同盟(JRCL) | かけはし | 国際主義労働者全国協議会と共同で編集・発行 | |
革命的共産主義者同盟再建協議会 | 未来 | ||
婦人民主クラブ全国協議会 | 婦人民主クラブ | 中核派系とされる団体 | |
早稲田大学新聞会 | 早稲田大学新聞 | 革マル派系とされる学生新聞社 | |
共産同系 | 労働の解放をめざす労働者党 | 海つばめ | |
ワーカーズ・ネットワーク | ワーカーズ | ||
自由・平等な協同社会を! 社会主義連盟 | ひらく | ||
共産主義者同盟(統一委員会) | 戦旗 | ||
共産主義者同盟蜂起派 | The Red Stars | ||
共産主義者同盟プロレタリア通信編集委員会 | プロレタリア通信 | 2017年に休刊 | |
労働者共産党 | プロレタリア | ||
革命21 | コモンズ | ||
社青同系 | 革命的労働者協会(社会党・社青同解放派) | 解放 | 通称:革労協現代社派、革労協狭間派 |
革命的労働者協会(解放派) | 解放 | 通称:革労協赤砦社派、革労協木元派 | |
全国労働組合運動交流会 | 全労交通信 | 革労協赤砦社派系とされる団体 | |
構改派系 ソ連派系 |
統一共産同盟 | 現代革命 | |
活動家集団 思想運動 | 思想運動 | ||
研究所テオリア | テオリア | ||
民主主義的社会主義運動 | 週刊MDS | ||
中国派系 | 日本人民戦線 | 人民戦線の旗のもとに! | 日本共産党(行動派)の下部組織 |
長周新聞社 | 長周新聞 | 日本共産党(左派)系とされる地方新聞社 | |
日本労働党 | 労働新聞 | ||
緑の党 | 日本新聞 | ||
その他 | 人民新聞社 | 人民新聞 | 日本共産党(解放戦線)の流れを汲む政治新聞 |
救援連絡センター | 救援 | ||
部落解放同盟全国連合会 | 部落解放新聞 狭山闘争ニュース |
アクセス等[編集]
- 所在地:東京都新宿区新宿2-4-9 中江ビル1F
- アクセス:JR新宿駅東南口から徒歩8分。地下鉄丸ノ内線、副都心線、都営新宿線・新宿三丁目駅、地下鉄丸ノ内線・新宿御苑駅から徒歩5分。
- 営業時間:12時から12時半の間に開店、21時に閉店(日曜・祝日は20時、定休日なし)[16]
- 入居しているビルの2Fには「curry 草枕」というカレー屋がある。模索舎のレシートを持参するとトッピング1点サービスになる[17][18]。
同種の書店[編集]
- 芳賀書店(神田神保町) - 模索舎、ウニタなどと共に新左翼系の機関紙誌を置く書店として知られた。現在はアダルトショップ。
- ウニタ書舗(神田神保町) - 新左翼系系の出版物を扱っていた書店。1982年に閉店。
- 書肆アクセス(神田神保町) - 「地方・小出版流通センター」のアンテナショップ。2007年に閉店。
- タコシェ(中野ブロードウェイ3F) - サブカルチャー系の自費出版物を扱っている書店。
- ヴィレッジヴァンガード - 「ビレッジバンガードは魂を抜かれた模索だ」[19]。
- 美和書店(代々木) - 一般書店ではあまり流通していない日本共産党系の出版物を扱っている書店。
脚注[編集]
- ↑ a b c d 『模索舎取扱い定期刊行物リスト 2013改訂版』模索舎、2013年6月
- ↑ 合同会社模索舎の情報|国税庁法人番号公表サイト
- ↑ https://twitter.com/mosakusha/status/927912534362832896
- ↑ 左翼系から童貞ミニコミ誌まで ほぼ無審査で何でも置く書店 日刊SPA!(2011年11月19日)
- ↑ a b 松村良一「模索舎」戦後革命運動事典編集委員会編『戦後革命運動事典』新泉社、1985年、281頁
- ↑ NR出版会連載企画 書店員の仕事23 設立四五年、模索舎の可能性への思いがあるから 榎本智至さん(模索舎・東京都新宿区) NR出版会(2015年3月2日)
- ↑ 書店調査「模索舎」|研究レポート 本づくり研究所(2018年2月5日)
- ↑ 「設立40年・新宿「模索舎」が経営危機」『朝日新聞』2010年8月17日付朝刊28面
- ↑ レイバーネット~存続のためのカンパを!~模索舎から皆さまへのお願い
- ↑ 続~『流出・公安テロ情報』発禁と知る権利 田中龍作ジャーナル(2010年12月1日)
- ↑ 東京地裁、模索舎に対する販売差し止め仮処分を却下 新文化通信社(2010年12月9日)
- ↑ https://twitter.com/mosakusha/status/205310073587769346
- ↑ https://twitter.com/mosakusha/status/682139800678215680
- ↑ https://twitter.com/mosakusha/status/814792544957542400
- ↑ https://twitter.com/toyamakoichi/status/1040162265314410498
- ↑ 地図・案内 模索舎
- ↑ https://twitter.com/momononaka/status/1029742991634661377
- ↑ https://twitter.com/mosakusha/status/1011906196540833792
- ↑ 模索舎40周年記念イベントに行ってきました 新宿 curry草枕(2010年3月22日)
外部リンク[編集]
- 模索舎ホームページ
- 模索舎 (@mosakusha) - Twitter
- news646五味正彦さん死去 - 旧「ベ平連」運動の情報ページ(2013年10月13日)
- 左翼・過激派系書店「模索舎」が選ぶ、絶対に読んでおきたい「テロ」関連文献6選 - TOCANA(2015年10月26日)
- 第29回 模索舎 榎本智至さん - マガジンハウス(2016年1月9日)