部活動問題

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
部活動 > 部活動問題
本のアイコン.png
全文を読むには 約 15 分 かかります。
独自研究
このページには独自研究が含まれている可能性があります。
エンペディアでは、噂や推測についても有用性があれば掲載可能です。
ぜひ、独自研究の増加にご協力ください

部活動問題(ぶかつどうもんだい)とは、学校部活動における諸問題の総称である。部活問題とも。

根本的な原因は個人の意志を尊重しないで生徒・教員問わずに全員に参加を強制する点、運動部を中心に蔓延る勝利至上主義の2点とされる。部活動問題自体は体罰を中心に以前から散発的に報じられていたが、それ以外の入部強制や顧問教員の長時間労働などが本格的に報じられるようになったのは2010年代末頃からである。

子供から見た問題[編集]

入部と長時間活動の強制[編集]

学習指導要領に部活動は

学校教育活動の一環として、スポーツや文化、学問等に興味と関心を持つ同校の生徒が、教職員の指導の下に、主に放課後などにおいて自発的・自主的に活動するもの

とあるように、本来部活動は生徒の自主的・任意での参加が前提である。2017年にスポーツ庁が行った統計調査では公立中学校の32%が部活動を強制にしていると回答しているが[出典 1]、実態としては殆どの中学校(特に生徒数の少ない地方の公立中)・一部の高等学校が指導要領に従わず、生徒・保護者の同意もなしに校則生徒会会則に明記される、あるいは暗黙の了解に含まれる「原則全員加入」の一言と様々な不利益の示唆・不利益を実際に与えることで長らく加入を強制し、部活動に参加しない自由、早く下校する自由を奪っていた。特に中学校ほど部活強制のルールが厳しく、文化部があっても運動部にしか入れない事が多い。

なお学校が部活動を強制する根拠として

  • 非行・校内暴力が蔓延した時期に行われた管理教育の名残
    • 生徒を教員の目が届く学校内に置いておけば非行に走る確率を下げられる、部活で縛り付けて自由な時間・有り余るエネルギーを減らせば非行に走る時間・気力を無くせる、暇な子供が悪さをするから学校に縛り付けておいてくれという地域からの要望など。本当に非行が減ったかどうかは。
  • かつて学習指導要領に特別活動の一領域として定められ、中学校では2001年まで、高校では2002年まで必修となっていた「クラブ活動」の代替として部活動が使われた名残[注 1]
    • 中学校では2002年、高等学校では2003年に学習指導要領が改訂され、クラブ活動は総合的な学習の時間に吸収・統合される形で廃止された。以後、中高においてクラブ活動は必修ではない。
  • 規律や自己肯定感を高めるなど教育的意義の存在
  • 過疎地の学校では全員入部にしないと人数・金銭面で部活動組織を維持できない

などがあるが、管理教育は既に廃れて久しく、クラブ活動の代替も学習指導要領の改訂から20年以上経過してその必要性は大きく薄れ、部活動で得られる教育的な意義は日々の正規の学習活動の中でも得られ、組織維持が目的に至ってはクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を無視した延命治療とほぼ同じで、何れも根拠薄弱なものばかりである。

部活強制校では帰宅部になるという選択肢がないことは勿論、活動日は全員が活動に参加することを求められる。そのため

  • オーバーワークによる故障を防ぐため、自主的な判断で休養日を設ける
  • 通学経路上の人通りが少なく、日没後に1人で歩くのが好ましくないため日没までに帰宅できるよう、早めに活動を切り上げて下校する
  • 学習面で不安があるので活動を休んで或いは早めに切り上げて下校し、家庭での自主学習に時間を割く
  • 部活動で用意されていない習い事・競技を続ける

といったことが出来ない。更に強制校で特に運動部や運動部に近い性質を持つ吹奏楽・マーチングバンド部は平日遅くまでの練習や早朝練習、土曜日や祝日といった休日の長時間練習が当たり前になり、睡眠不足や休養不足から授業中の居眠りが恒常化して成績不振になる、十分な休養が得られなかった結果、体を壊して長期離脱→競技続行断念となる事例も多い。

部活強制校で部活に入らない生徒、部活動と距離を置いた生徒が受ける不利益としては

  • 教員からのパワーハラスメント
  • 希望する進学先が求める学力水準を十分満たしているのに、内申書に不利なことを書かれて不合格になる
  • 希望する進学先が求める学力水準を十分満たしているのに、推薦入試を受験するのに必要な学校の推薦が受けられない

などがある。

一方高校では全員加入を義務付けているが、幽霊部員・退部・転部は仕方のない事と認め、最初から緩い雰囲気の文化部に入ることも出来る場合が多い。[注 2]幽霊部員を希望する生徒の駆け込み寺となっている緩い部に加入して幽霊部員のまま卒業、所属更新時に部員名簿から除籍されて帰宅部になったという事例を見聞きしたことある人も多いだろう。

学習活動との不整合[編集]

入部強制の項でも触れたが、部活動と学習活動の整合が取れなくなる事例もある。部活動を学校の広告塔・魅力として重視するあまり、学習活動を軽視する事例である。まず私立学校は生徒数を確保できない事には定期的な収入となる授業料が得られなくなるため、生徒数確保に躍起になる。空調完備や綺麗な設備、自習室などが私立学校ほど整っているのはこのためである。

特定の競技の強豪校では地域のスポーツ少年団の大会を学校のスカウトマンが観戦しており、優勝チームや決勝進出チームで光る活躍を見せた子供を勧誘して規定の入学試験または編入試験を受けさせる。合格水準も当然他の生徒と同水準なのが原則だが、スカウトマンが連れてきた子供については、学力を測定するペーパーテストを行ってもほぼ重視せず、面接も形式的なものだけ行うという事実上の無試験で合格判定を出し、子供の学力より学校の学力水準が高い状態で入学。授業を疎かにして競技漬けの生活をさせる学校も見られた。そういった学校は学業成績が振るわなくても部活で活躍していればお咎めなしな事も多く、卒業後の進路に苦労する事例が相次いだという。また故障やレベルの高さなどで部活を辞める事になり、そこから学業に専念しようにも学力不足で落ちこぼれてしまい、非行に走る子供も決して少なくない。

なお生徒数確保に躍起になる必要のない公立学校でも一部では夏など大きな大会が集中する時期に練習時間確保の名目で本来50分の授業時間を45分に短縮し、捻出された時間で部活動の時間を延長する所定6時間授業のところを6時間目をカットしてその時間に部活を行う部活動の活動時間確保のために授業を削る[出典 2]といったことを行っている。課外活動に過ぎない部活のために正課である授業を犠牲にするというあってはならないことを学校が平気で行うのは本来糾弾されるべき行為である。また運動部を特別扱いする余り、本来部活を行わず学習に専念させるはずの定期考査直前の期間であっても大会が近いからと部活をやる、選抜で選ばれたからと授業を公欠して練習会に行ってしまうことを主任クラスの教員が咎めないといった事例も見受けられる。[出典 3]

部内でのいじめ・シゴキの存在[編集]

部活動に関する不利益は学校に由来するものだけでない。本当は部活をやりたくないのに幽霊部員になることも許されず、緩い雰囲気の文化部に入ることも出来ない学校では、嫌でも運動部或いは緩い雰囲気のない文化部に入らざるを得なくなる。そのような状況ではただこの時間が終わるのを待つだけでありたい部員と真面目に活動して大会・コンクールで好成績を収めたい他の部員との間で軋轢を招き、「こいつが気に食わない」という負の感情が暴走していじめに発展することがある。

モチベーションの高低に由来する軋轢からのいじめ以外にも、部活動内でのいじめは十分起き得る。部のエースがストレス発散などを目的にいじめの加害者となるケースがその例の一つで、被害を顧問教員に訴えてもエースを部から追い出す訳には行かないからと見て見ぬふりをされる場合も。

自称強豪校を中心に前時代的なシゴキが行われている事や身体に悪影響を及ぼす非科学的な過負荷のトレーニングを部員に課している事があり、これが気に食わない相手に対するいじめに利用される。

保護者から見た問題[編集]

保護者への負担[編集]

子供が部活動に入る以上、保護者も負担を強いられる。用具の購入費、修理費、大会に向かう際の交通費、合宿の費用といった金銭的なものから、早朝練習に合わせて登校する子供に朝食を用意する、昼食の弁当を早朝の登校時間に合わせて用意する、練習試合・大会へ向かう際の送迎など多岐に渡る。

特に練習試合・大会へ向かう際に保護者が持つ車で送迎する車出しは自治体単位で禁止している所もあるが、自治体での統一ルールが整備されておらず、学校単位では禁止されていない所も多い。責任の所在が曖昧なまま車を出せて時間に余裕のある保護者の好意に頼り続け、保護者間でトラブルに発展するに留まらず[出典 4]、部員の保護者が運転する車で送迎中に交通事故に遭い、部員が死亡する事故も起きている。[出典 5]

不正な越境通学[編集]

公立中学校は殆どの場合、子供の居住地によって入学先を決める学区を敷いている。例えばA地区とB地区の子供はA中学校へ、C地区とD地区の子供はB中学校という具合。

だが部活動の実績が高校への進学を左右すると考える保護者が多く、環境が良い・優秀な指導者の居る校区外の学校へ越境通学を希望する事例が数多い。しかし越境通学は一部を除いてよっぽどのこと[注 3]がない限り認められず、部活動で活躍させたいという理由だけで越境通学をすることは出来ない。

しかし一部の保護者は我が子可愛さなどで住民票をその学校の通学区域内に移動させるが、実際に引っ越しをせずに元の住所のまま通い続ける不正な越境通学に手を染める事案も起き、不正な越境をしている子供のせいで学区内にきちんと居住している子供が大会に出場できないなどの不利益を被っている。[出典 6][出典 7]

教員から見た問題[編集]

長時間労働の温床[編集]

まず公立中学校教員の正規の労働時間は1日あたりで7時間45分、1週間で38時間45分となっている。朝の打ち合わせ、日中の授業や授業準備、放課後に行う業務、休憩時間も加味すると16時半から17時頃には正規の勤務時間が終わる。そして公立学校の教員は公務員であり残業や休日出勤といった時間外勤務は存在しない。そのため、公立校の教員は時間外手当や休日出勤手当は受け取れないと「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)に定められている。[注 4]

ただし「公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令」に規定されている超勤4項目に関してのみ校長教頭を筆頭とする管理職は時間外勤務を命じることが出来る。超勤4項目とは

  1. 児童・生徒の校外実習に関連する業務
  2. 学校行事に関連する業務
  3. 職員会議
  4. 災害などの緊急時

の4項目で、これの対価として教職調整額が存在する。教職調整額の金額は月給の4%で固定で、時間外勤務をしなければならないような校外実習や学校行事は毎月行っているわけではないし、時間外を使ってすぐに対応しなければならない緊急事態もそう毎月起きていたらたまったものではないし、職員会議もあまり長引くことはないため、部活の顧問業務がなければ金額が若干少ないもののある程度は釣り合う。

しかし部活動を行っているのは正規の勤務時間外である。朝練習は朝の打ち合わせ開始のおよそ1時間前となる7時頃から、放課後練習は18時台前半まで。明らかに正規の勤務時間をはみ出している。運動部は週末の学校休業日もほぼ活動しており、その指導・監督のために出勤すれば休日出勤となる。立派な時間外勤務だが、前述の通り公務員である以上時間外手当や休日手当は1円も貰えず、月給の4%という教職調整額のみが貰える。顧問業務があると平日は職員会議開催日以外毎日部活の指導監督の必要が生じ、週末の大会や練習試合の引率をしていればあっという間に最低賃金を割る。[出典 8]
しかも超勤4項目に部活動の顧問は含まれていないため、教員は部活顧問業務に関して個人の意志で時間外労働をしているということになる。たとえそれが管理職からの命令であっても。

当たり前だが教員の時間外労働は部活の顧問ばかりではない。授業で使う教材の準備、テストの作問と採点、宿題やノートなど提出物のチェック、保護者への連絡文書の作成など学級運営や日々の授業に必要な業務、校務分掌として割り振られた業務が正規の時間内で終わらなければ退勤時間後も残ってこなす必要がある。そして顧問として部活を見ている間これらの業務を行うことは事実上不可能であり、部活の指導監督をして部員全員の下校を見届けてからこれらの業務を行うことになり、最終退勤時刻が午後9時を過ぎるなど学校にいる時間が10時間を超え、過労死ラインに余裕で到達する長時間勤務を強いられる。[出典 9]

部活未亡人と部活孤児[編集]

部活の顧問を受け持つ男性教員が部活指導に時間を取られ、夫が居なくなったような状態に陥った教員の配偶者が部活未亡人、部活に休日を取られてしまい、自宅で寂しい思いをさせられる教員夫婦の子供を部活孤児と呼ぶ。

部活に時間を取られて家庭を顧みる機会が減り、離婚に発展する事例も数多く存在するという。

未経験の種目の顧問を任命させられる[編集]

人材不足や部活動の数と常勤教員の人数が釣り合ってしまう、教員全員が部活動の顧問を務めるという暗黙の了解の存在などの理由から経験のない種目の顧問を無理矢理任命させられる事例も数多い。少し古いデータだが、2014年1月から2月に日本体育協会が行った調査によると、中学校の運動部顧問の52.1%、高校の運動部顧問の45%が顧問を務める部の種目の経験がないと答えている。[出典 10]

例えばテニスに関する知識はテニスの王子様ぐらいで競技は完全に未経験な国語教師がテニス部の顧問をさせられる、剣道は子供の時に体育でちょっとやっただけの理科教師が剣道部の顧問をさせられる、アーチェリーの経験はあるが弓道は未経験な社会科教師が弓道部の顧問をさせられるなど。

素人では試合に勝つための適切な指導はおろか、各競技において発生しやすい事故やその内容、故障時の適切な対処法など安全管理に関する知識も不十分。そんな状態で顧問を任せられ、活動中に事故が起きてもその責任は顧問教員が負わなければならず、大会での敗退に関する保護者からの理不尽なクレームを受けることになるのも当該顧問教員である。更に審判など大会の運営に出場校の顧問教員が関わることも多く、種目未経験だとルールも覚えなければならない。審判講習会への参加や解説書の購入費用など全て教員の自腹である。

なお上記に挙げたのは運動部の例ばかりだが、文化部もこういった問題とは無縁ではない。楽譜が読めない吹奏楽部の顧問が実際にいるのだから。

部活問題解消に向けて[編集]

2010年代末頃から教員の過重労働問題の観点から部活動のあり方についてメスが入り始め、20年代に入ると生徒への部活動強制に関する問題が多く報道されるようになり、朝練習の廃止、毎週の休養日の設定、大会で好成績を狙う所謂ガチ勢中心の部と日々楽しみながら気軽に参加できる部に分ける、外部指導員を入れて顧問教員の負担を減らす、入部強制ルールの撤廃などの動きも出始めているが、まだまだ不十分と言われる。

2018年3月にスポーツ庁が運動部の活動の在り方について[出典 11]、12月には文化庁が文化部の活動の在り方について[出典 12]それぞれガイドラインを策定し、その双方で部活動を生徒に強制しないよう留意しなければならないことが明記された[出典 13]が、それをちゃんと守っている学校の割合は未知数である。

[編集]

注釈
  1. 2023年現在も小学校には全員必修のクラブ活動が存在する。
  2. 尤も、転部が可能でも選択肢が用意されていなければ意味のない事だが。
  3. 例:卒業・進級まで残り僅かな時期に別の学区へ引っ越したが、引き続き同じ学校に通学することを希望・身体障害や病気などで設備の整った学校でないと通学できない・居住地の関係上、隣の学区の学校へ通う方が安全に登下校できる・いじめや登校拒否などの教育的配慮の必要など
  4. (教育職員の教職調整額の支給等)第三条二項 「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。」
出典