遠野市
遠野市(とおのし)は、岩手県中南部に位置する市である。東は釜石市、西は江刺市に接し、遠野三山といわれる早池峰山、六角牛山、石上山に囲まれた遠野盆地に位置する。
概要[編集]
歴史[編集]
遠野盆地を中心とした一帯は気仙郡・釜石市・上閉伊郡・下閉伊郡に通じる交通の要衝であった。そのため、古くから集落が存在して発展し、当地は遠閉伊と呼ばれていた。
歴史上においては、平安時代末期の文治5年(1189年)、源頼朝が藤原泰衡を討伐した際、戦功を挙げた阿曽沼広綱に閉伊12郷を与えたのが、遠野の起源と言われている。阿曽沼氏はおよそ440年にわたって遠野を支配するが、江戸時代前期の寛永4年(1627年)に南部氏の所領となり、陸奥国八戸から南部直栄が移封されて1万2000石を与えられ、以後は南部家の支配を経て明治維新を迎えることになる。ちなみに江戸時代、この遠野は花巻・日詰・岩谷堂の内陸部と海岸部の中間に位置することから、海陸物資の集散地として繁栄した。馬産を中心にした農業も発達し、「遠野の馬市」は日本全国で有名であった。
昭和29年(1954年)12月1日、遠野町が青笹村・綾織村・小友村・上郷村・附馬牛村・土淵村・松崎村の7村と合併して市制を施行したことにより、遠野市が発足する。平成17年(2005年)10月1日、遠野市が上閉伊郡宮守村と合併し、新制の遠野市が発足した。
遠野の地名については、民俗学史上において重要な文献である柳田国男の『遠野物語』で有名であるが、これは遠野周辺の農村の伝説、口碑を収集あるいは編纂したものであり、『遠野物語』にひかれて遠野を訪れる人も多い。遠野は郷土芸能の宝庫でもあり、早池峰しし踊り、青笹しし踊りなどは岩手県の無形民俗文化財に指定されている。その他にも南部ばやし、田植踊り、大神楽、虎舞、剣舞、さんさ踊りなど、郷土色の豊かな民俗芸能が多く存在する。
この遠野の中心産業は農業であり、酪農や工芸作物、野菜の栽培が盛んである。また、豊富な森林資源を生かした木工団地、乗用馬の調教、生産を行う馬の里整備などの生産加工都市化が進められ、企業導入の促進と地場産業の振興が進められている。
遠野市の見どころとしては、早池峰神社をはじめとする由緒ある古社寺や南部曲り家の千葉家住宅、文化施設としては遠野市立博物館、伝承園、とおの昔話村のほか、6万平方メートルの敷地内に上水道の浄水場を母体として、遠野の美しい自然を再現したたかむろ水光園、農村体験ができる遠野ふるさと村などがある。なお、遠野市には『河童伝説』があり、遠野駅前や市立博物館付近、たかむろ水光園などには河童の像がある。駅前にある交番は建物自体が河童の形をしており、常堅寺境内には河童の狛犬がある。常堅寺の裏を流れる小川には河童伝説があり、河童淵と呼ばれている。『遠野物語』にも河童の話が収録されている。
地域[編集]
金融機関[編集]
郵便[編集]
- 上宮守簡易郵便局
- 鱒沢簡易郵便局
- 二日町簡易郵便局
教育[編集]
小学校[編集]
- 遠野市立遠野小学校
- 遠野市立遠野北小学校
- 遠野市立綾織小学校
- 遠野市立小友小学校
- 遠野市立附馬牛小学校
- 遠野市立土淵小学校
- 遠野市立青笹小学校
- 遠野市立上郷小学校
- 遠野市立宮守小学校
- 遠野市立達曽部小学校
- 遠野市立鱒沢小学校
中学校[編集]
- 遠野市立遠野中学校
- 遠野市立遠野東中学校
- 遠野市立遠野西中学校
※以下は廃校。
- 遠野市立遠野中学校〈旧〉(2013年・遠野中学校〈新〉を統合新設)
- 遠野市立綾織中学校(同上)
- 遠野市立附馬牛中学校(同上)
- 遠野市立青笹中学校(2013年・遠野東中学校を統合新設)
- 遠野市立土淵中学校(同上)
- 遠野市立上郷中学校 (同上)
- 遠野市立小友中学校(2013年・遠野西中学校を統合新設)
- 遠野市立宮守中学校(同上)
高等学校[編集]
交通[編集]
鉄道[編集]
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)
バス[編集]
- 高速バス・急行バス
- 路線バス
- 早池峰バス:旧・遠野市内を中心に各方面へ運行。岩手県交通やJRバス東北から引き継いだ路線を主とする。2017年(平成29年)4月1日付けで親会社である岩手県交通に統合された。
- 住田町コミュニティバス:遠野駅〜岩手八日町(旧・JRバス遠野本線→住田交運遠野線)の運行。住田交運に委託。
- 遠野市営バス:旧・宮守村内の運行。以前は岩手県交通→早池峰バスの路線が大半。
道路[編集]
- E46 釜石自動車道
- 主要地方道
- 一般県道
名所・旧跡・観光スポット[編集]
- カッパ淵
- 常堅寺
- 伝承園
- 鍋倉公園(鍋倉城址)
- 南部神社
- 荒神神社
- 遠野市立博物館
- とおの昔話村
- 遠野蔵の道ギャラリー
- 遠野城下町資料館
- 卯子酉様
- 五百羅漢
- 福泉寺
- 善明寺
- 千葉家住宅(千葉家の曲り家)
- 遠野ふるさと村
- 金取遺跡(日本最古の遺跡)
- 山崎のコンセイサマ
- 程洞のコンセイサマ
- 早池峰山
- 早池峰神社
- 宮守川橋梁
- 高清水展望台
- 続石[1]
文化[編集]
祭り[編集]
- 日本のふるさと遠野まつり(毎年9月)
- 遠野納涼花火まつり(毎年8月)
- 遠野ホップ収穫祭(2015年より毎年8月開催)
スポーツチーム[編集]
- 遠野クラブ(東北社会人サッカーリーグ2部所属)
遠野を舞台にした作品[編集]
- 小説
- 遠野物語(柳田國男)
- 遠野へ(水野葉舟)
- 聴耳草紙(佐々木喜善)
- 新釈遠野物語(井上ひさし)
- 遠野殺人事件(内田康夫)
- 遠野伝説殺人事件(「遠野わらべ唄殺人事件」を改題、西村京太郎)
- ヤマユリワラシ -遠野供養絵異聞-(澤見彰)
- 僕らのネクロマンシー(佐々木大輔)
- 漫画・アニメ
- 魔法遣いに大切なこと(原作:山田典枝、作画:よしづきくみち)
- 河童のクゥと夏休み(原作:木暮正夫、監督:原恵一)
- 水木しげるの遠野物語(水木しげる)
- 遠野モノがたり(小坂俊史)
- ぬらりひょんの孫(椎橋寛)
- ゲーム
著名な出身者[編集]
- 伊藤博英 - アナウンサー
- 伊能嘉矩 - 人類学者
- 奥友志津子 - 漫画家
- 六華亭遊花 - アナウンサー
- 菊池新吉 - サッカー選手
- 菊池利三 - サッカー選手(菊池新吉の弟)
- 菊池直喜 - サッカー選手
- 菊池弥生 - 博物館学者(岸田袈裟の姪)
- 菊池幸見 - アナウンサー
- 岸田袈裟 - 栄養学者、少年ケニヤの友副理事長
- 行田邦子 - 参議院議員
- 佐々木喜善(佐々木鏡石) - 民俗学者
- 船越由佳 - シンガーソングライター、Yuka & Chronoship
- 山奈宗真 - 自由民権運動家
- 伊藤一三 - 口腔解剖学
- 多田重美 – 埼玉県八潮市前市長
- 北湯口舞 - 歌手、シンガーソングライター
- 若竹千佐子 - 作家
脚注[編集]
- ↑ アスペクト 『巨石巡礼 見ておきたい日本の巨石22』 アスペクト、2011年、8-13頁。ISBN 9784757218734。