藤子不二雄A
藤子 不二雄Ⓐ(ふじこ・ふじお・エー、1934年〈昭和9年〉3月10日 - 2022年〈令和4年〉4月7日)は、日本の漫画家。
プロフィール[編集]
概要[編集]
本名は安孫子 素雄(あびこ もとお)。
富山県立高岡高等学校卒業。
元藤子不二雄のメンバーで、氷見市から転居した高岡市の国民学校で藤子・F・不二雄こと藤本弘と知り合う。
主な代表作は『オバケのQ太郎』、『忍者ハットリくん』、『怪物くん』、『まんが道』、『プロゴルファー猿』、『魔太郎がくる!!』、『笑ゥせぇるすまん』など。
平成17年(2005年)に日本漫画家協会賞文部科学大臣賞を受賞し、平成20年(2008年)に旭日小綬章を受章。
令和4年(2022年)4月7日午前8時40分頃、川崎市の自宅の庭で1人で倒れているところを発見されて直ちに神奈川県警察に通報されたが、その場で警察によって死亡が確認されたという。88歳没。
作品[編集]
当初は児童漫画に取り組んでいたが、興味のおもむくままに、怪奇趣味的な漫画や、マージャンやギャンブルを題材とした漫画、エッセイ漫画、そしてゴルフ漫画などを手がけ、その結果、ジャンルは幅広い物になった。また、ジャズの即興音楽のようにネームを切らずにそのまま話を描き上げたりもする。
過去に仕事を引き受けすぎ、作品の多くを(二人合わせて8本中6本)落としたことを恥じて、それ以降一度も原稿の締め切りを落としていない。
「ギニャー!」「ンマーイ!」「ギャース!」「ンマー!」…といった独特の叫び声(描き文字)が特徴的である。
作調は1960年代は後期の『怪物くん』あたりまでは『忍者ハットリくん』『フータくん』等の比較的穏やかな作品が多かったが、1970年代前半からはブラックユーモア色の強い『オヤジ坊太郎』、『狂人軍』などの児童ギャグ漫画が増え、『笑ゥせぇるすまん』、『魔太郎がくる!!』等の怪奇物も描くようになった。1970年代後半あたりは『まんが道』、『少年時代』等、ソフトな作品が増え、1980年代以降は毒の強い作調の児童ギャグ漫画は少なくなった。その代り、青年誌にブラックユーモア色の強い作品を多く執筆するようになり、晩年はエッセイを主に執筆していた。
代表作[編集]
- 忍者ハットリくん
- 忍者の里、伊賀から忍術修行のため上京したハットリくんが、様々な騒動を巻き起こすギャグ漫画。居候先の三葉ケン一との友情やギャグも描く一方で、様々な忍術を読者に紹介する教養的要素も盛り込まれている。1964年から1968年まで『少年』にて第1期が連載され、1981年から1988年まで『月刊コロコロコミック』にて第2期が連載された。藤子・F・不二雄が描いた『パーマン』との共演作品もある。
- 二度劇場化もされたほか、2004年には香取慎吾主演で実写映画『NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE』が公開されている。
- 怪物くん
- 様々な怪物が棲む怪物ランドから人間界へやって来た不思議な少年、怪物くんとそのお供であるドラキュラ、オオカミ男、フランケンが巻き起こす騒動を描くモンスターギャグ漫画。友達となったヒロシ少年と共に不思議な力を使って人間界で活躍する。1965年から1969年まで『少年画報』にて連載。また、1967年から1969年まで『週刊少年キング』でも連載された。1991年からはスピンオフ作品としてデーモン族の王子デモキンが主人公の『プリンス・デモキン』も執筆されている。
- 詳しくは藤子不二雄アニメ史の項参照。
- プロゴルファー猿
- 賭けゴルフを生業とする野生児、猿谷猿丸(さるたに さるまる、通称:サル)が様々なゴルファーとの対決を繰り広げた末にプロテストに合格するまでを描く少年漫画初のゴルフ漫画。現実離れした荒唐無稽のキャラクターや技、ゴルフコースが多く登場する。初期の段階ではゴルフ用語を説明しつつ、ゴルフの楽しさを読者に伝えようと意図[1]しており、1990年前後に、テレビドラマ「プロゴルファー祈子」や映画「プロゴルファー織部金次郎」のように本作に影響された作品も作られた。
- 1974年から1980年まで『少年サンデー』(週刊、増刊)で連載された。また、1982年から1988年まで『コロコロコミック』(月刊、別冊)にて内容をより低年齢向けとした『新プロゴルファー猿』が連載された。1999年には『ビッグコミック』で20年振りの新作『サル』が不定期連載された。
- 1985年 - 1988年 テレビ朝日系でアニメ化。
- 1988年 新プロゴルファー猿がテレビ朝日系でアニメ化。
- 詳しくは藤子不二雄アニメ史の項参照。
- 魔太郎がくる!!
- 典型的ないじめられっ子中学生、浦見魔太郎(うらみ またろう)が、いじめっ子や傍若無人な連中などから受けた激しい苛めに対してオカルティックで壮絶な復讐を行うホラー漫画。魔太郎は超魔術「うらみ念法」の使い手であり、全国のいじめられっ子のうっぷんを代弁し、それを豪快に晴らしていくカタルシスに満ちた作品。1972年から1975年まで『週刊少年チャンピオン』で連載された。
- せぇるすまんシリーズ
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- 笑ゥせぇるすまん
- 不気味な謎のセールスマン、喪黒福造(もぐろ ふくぞう)を主人公としたブラック・ユーモア漫画。喪黒福造は「ココロの隙間、お埋めします」と称して、毎日の生活に大なり小なり不平不満を抱える人々に、それらを解消する様々な物品やチャンスを与えていく。与えられた人々は暫くの間、幸福(またはそれに準ずるもの)を得るのだが、その甘い一時に欲望を惹起され、結果として不幸のどん底に転落してしまうという、人間のエゴを痛烈に諷刺した物語である。1969年から1971年まで『漫画サンデー』で『黒ィせぇるすまん』として連載されたが、後年TBS系列情報番組『ギミア・ぶれいく』の1コーナー[注 1]としてアニメ化された際に「笑ゥ〜」と改題された。1999年、テレビ朝日系列で伊東四朗主演でテレビ・ドラマ化された際には我孫子自ら演出をつとめた。また2017年には『笑ゥせぇるすまんNEW』のタイトルで再アニメ化され、TOKYO MX他の深夜アニメ枠「あにめのめ」で放送された。
- 他のせぇるすまん
- 帰ッテキタせぇるすまん(1996年 - 2000年)
- 踊ルせぇるすまん(2001年)
- 喪黒福次郎の仕事(1997年 - 1998年) - 喪黒福造の弟が主人公として登場し、兄とは正反対に困った人の手助けをしている。
- まんが道
- 藤子不二雄の自伝的漫画。漫画家を目指す2人の少年、満賀道雄(まが みちお、藤子不二雄Ⓐ自身がモデル)と才野茂(さいの しげる、藤子・F・不二雄がモデル)の成長を描いた長編青春漫画である。1970年から1972年まで『週刊少年チャンピオン』、1977年から1982年まで『週刊少年キング』、1986年から1988年まで『藤子不二雄ランド』にて連載された。続編の『愛…しりそめし頃に… 満賀道雄の青春』が『ビッグコミックオリジナル増刊』で1995年から2013年まで連載され完結し、通算して43年の歴史に幕を下ろした。竹本孝之と長江健次主演で、NHKで2度ドラマ化された[2]。
- オバケのQ太郎
- ごく普通の家庭に住み着いたオバケのQ太郎が引き起こす騒動を面白おかしく描いた生活ギャグ漫画。オバQブームと呼ばれる社会現象を巻き起こした。藤子・F・不二雄との共著だが、この作品が事実上最後の合作作品となった。1964年から1966年まで『週刊少年サンデー』などで連載された。1971年から1974年に連載された『新オバケのQ太郎』は、藤子・F・不二雄が大部分を手がけ、安孫子は一部の作画以外は関与していないとされる。三度にわたってアニメ化された(1965 - 1967年、1971 - 1972年、1985 - 1987年)。
- 少年時代
- 作家柏原兵三の小説『長い道』を漫画化した作品。戦時中に東京から縁故疎開してきた進一が疎開先の少年達と過ごす感動物語。1978年から1979年まで『週刊少年マガジン』で連載された。1990年には自らのプロデュースで東宝系で映画化された。井上陽水の代表曲『少年時代』はこの映画の主題歌であり、安孫子自ら親交のある井上に作曲を依頼した。
- ブラック・ユーモア短編
- 1968年の読切『黒イせぇるすまん』(初出時はこの表記)に始まる、ブラックユーモアを基調とした短編作品群。後に『魔太郎がくる!!』や『シャドウ商会変奇郎』、『笑ゥせぇるすまん』などの連載作品に昇華する。
その他[編集]
※以下は全ての作品を列挙したものではない。
ギャグ[編集]
- どんぐりくん(1954年 - 1955年、清水春雄の代筆)
- どんぐり名探偵(1958年 - 1959年)
- わが名はXくん(1958年 - 1962年)
- フータくん(フータくんNOW!)(1964年 - 1967年、1982年 - 1983年)
- わかとの(サンスケ、怪人わかとの)(1964年 - 1965年、1968年)
- 狂人軍(1969年 - 1970年)
- 仮面太郎(1969年 - 1970年)
- ビリ犬(1969年、1989年)
- マボロシ変太夫(1971年 - 1972年)
- 無名くん(1971年 - 1976年)
- かっぱのカッポ(1972年 - 1974年)
- 添乗さん(1973年 - 1974年)
- さすらいくん(1973年 - 1981年)
- 旦ベエ(1974年)
- オヤジ坊太郎(1975年‐1976年)
- ゲゲゲのゲー(1975年)
- ミス・ドラキュラ(1975年 - 1980年)
- オレ係長補佐(1975年)
- ウルトラB(1984年 - 1989年)
- パラソルヘンべえ(1989年 - 1991年)
- プリンスデモキン(1991年 - 1999年)(99年は再録。)
- ホアー!! 小池さん(1998年 - 2001年)
ブラック[編集]
- 黒ベエ(1969年 - 1970年)
- 夢魔子(1970年)
- 喝揚丸ユスリ商会(1973年)
- 戯れ男(1973年)
- 番外社員(1973年)
- ブラック商会変奇郎(一部の出版物では「シャドウ商会変奇郎」に改題)(1976年 - 1977年)
- 憂夢(1991年 - 1995年)
- 切人がきた!!(1994年 - 1996年)
劇画[編集]
- 怪人二十面相(1959年 - 1960年、原作:江戸川乱歩)
- シルバークロス(1960年 - 1963年)
- コルト45(1960年 - 1961年)
- くまんばち作戦(1962年)
- シスコン王子(1963年 - 1964年)
- きえる快速車(1963年、原作:久米みのる)
- スリーZメン(1964年 - 1965年)
- 忍法十番勝負・二番勝負(1964年)
- 劇画 毛沢東伝(1971年)
- 愛ぬすびと(1973年)
- 番外社員(1973年)
- 戯れ師(1974年)
- 愛たずねびと(1974年)
- 夢トンネル(1983年 - 1984年)
- プロジェクトPOS-ある事業部の挑戦(1988年)
- タカモリが走る(1988年 - 1991年)
- 愛…しりそめし頃に… 満賀道雄の青春(1989年、1990年、1995年 - 2013年)
- 用心棒(黒澤明映画の漫画化)(1998年)
SF[編集]
- ロケットくん(1956年 - 1957年)
コミックエッセイ[編集]
- パーマンの日々(1978年 - 1980年)
- 藤子不二雄AのパーマンGOLF LAND(1989年 - 1991年)
- PARMANの日々(1991年 - 1992年)
- PARマンの情熱的な日々(2007年 - ) ※2015年12月号をもって休載
イラスト提供[編集]
作者によるイラスト提供。
イメージキャラクター[編集]
- ウォー太郎 - 富山県黒部市のゆるキャラ
- サカナ紳士録たち - 富山県氷見市のゆるキャラ
- 立山くん - 富山県警察のシンボルマスコット
- ハニーくんとニハちゃん - 富山県こどもみらい館のシンボルマスコット
- ひみぼうずくん - 氷見フィッシャーマンズワーフ海鮮館のシンボルマスコット
- みどりちゃん - 愛知県西尾市のゆるキャラ
- U馬くん - 北海道日高振興局ホースシューズ普及啓発実行委員会のシンボルマスコット
表紙イラスト・挿絵[編集]
- 復刊ドットコム奮戦記-マニアの熱意がつくる新しいネットビジネス(左田野渉著)- 表紙イラスト
- マンガホニャララ(ブルボン小林著)- 表紙イラスト
- 株のケータイ電話トレードで週10万円儲ける!(実業之日本社編)- 表紙イラスト
- 白く染まれ―ホワイトという場所と人々(宮崎三枝子著)- 中表紙イラスト
- ゴルフこれで開眼!―ラクして「飛ばす」「寄せる」「入れる」(三好徹著)- 表紙イラスト・挿絵
- 熱血ポンちゃんから騒ぎ(山田詠美著)- 表紙イラスト
- 長嶋有漫画化計画(長嶋有)- 表紙イラスト
ジャケットイラスト[編集]
- ハロー・サッチモ!~ミレニアム・ベスト - ルイ・アームストロングの生誕100年を記念したベスト盤CD
- ハロー・サッチモ、アゲイン! - 上記CDアルバムの第2弾
- 兄弟喧嘩 - 中川家のライブDVD
その他[編集]
出演[編集]
テレビ[編集]
登場する作品[編集]
テレビドラマ[編集]
テレビアニメ[編集]
- ぼくらマンガ家 トキワ荘物語 - CX「日生ファミリースペシャル」1981年(昭和56年)。声優:井上真樹夫。
映画[編集]
脚注[編集]
- 注
- 出典
- ↑ 『中公文庫コミック版「プロゴルファー猿」1巻』 中央公論新社、1994年9月1日。ISBN 978-4122021501。 あとがきより
- ↑ a b 番組エピソード 銀河テレビ小説「まんが道」 -NHKアーカイブス