鉄
鉄「鐵」(てつ)には複数の意味があり、
- 金属元素としての鉄
- 鉄鋼の一種としての鉄
- “鉄道マニア”の略称としての鉄
があるが、本項においては「金属元素のひとつとしての『鉄』」について述べる。なお、「鉄」の字は「金を失う」と書くため「鐵」の字を使う個人や企業も多い。
概要[編集]
元素記号Fe、英:iron)とは、元素の一つであり、第4周期元素にして、最初の第8族元素であり、また、金属元素でもある。鉄は、全ての元素の中で最も安定性が高いため、金属としては最も豊富に存在し、ゆえに最も頻繁に使われる元素となっている。恒星の中で核融合反応・核分裂反応によって合成される元素も、この鉄までとなっている。ゆえに「鉄は核反応の墓場である」と謂われる。
すなわち、鉄が核反応を起こす場合は、「鉄の光分解反応」と呼ばれる吸熱反応を起こし、その結果超新星爆発を起こす。
いわゆる「第一世代」の恒星が超新星爆発を起こし、第二世代の恒星が生まれたとされる。
重工業において鉄は極めて重要であり、鉄以外の金属を指す非鉄金属という言葉があるほどである。鉄は、固くて頑丈で強く、その上、切ったり曲げたり、穴を開けたりなど加工できるので、最もよく使われる金属である。酸化鉄は、火で溶かされてまた新しい鉄に生まれ変わる。ただし、単体の鉄は鋼材としてはあまり使われず[1]、炭素を混ぜて鋼鉄(鋼)として利用することがほとんどである。
鉄のでき方は、まず高炉で鉄鉱石から鉄分を取り出して銑鉄を作り出す。高炉の中の温度は、最高約2300℃となる。高炉の出銑口から、溶けた鉄分、銑鉄ができる。銑鉄を転炉(キューポラ)に移し、鋼を作る。鋼を押し伸ばして鍛え、色々な形にする。
合金としての鉄[編集]
いわゆる鉄鋼あるいは鋼鉄は、炭素と鉄の合金である。
もっとも炭素が少ないのは針金などの鉄であり、炭素の含量が増えると鋼(鋼。「鋼鉄」ともいう)、さらに炭素の含量を増やすと鋳鉄となる。
炭素の含有量や微少元素の添加、熱処理の方法によって固体化した鉄の特性はさまざまであり、それぞれを「組織」という。組織には、大雑把にいうと「オーステナイト」「マルテンサイト」「パーライト」「セメンタイト」などがある(現在では、さらに細かく分類され、別名称が用いられているらしい)。
性質[編集]
ニッケルやコバルトに並んで、磁石に引き付けられる数少ない元素の一つである。純鉄の融点1535℃、沸点2750℃、密度7.87g/cm3。
歴史[編集]
酸化しやすいため、銅とは違って、金属結晶としてはなかなか得られなかったため、隕鉄や砂鉄などから得られた。
青銅器時代から、たたら製鉄などの技術の普及によって鉄器時代に移行した。製鉄技術をもったヒッタイトは鉄の武器によって周辺諸国を征服し、広大な地域を支配した。
高炉・転炉などの技術が確立してから安定供給されるようになったが、鉄鉱石から銑鉄を製造する高炉に対して屑鉄などを再生する転炉(ミニミル製鉄)が普及してきたため、日本国内では高炉が減りつつある。
血液[編集]
血液中の赤血球に含まれ、酸素と結びつき、体内中に運ばれる。必須元素である。不足すると鉄欠乏性貧血となる。
なぜかイカやタコは鉄ではなく銅である。
用途[編集]
読み方[編集]
- 音読み:テツ、熟語になると「テッ」(「て」+小文字の「つ」)になる。
- 訓読み:くろがね、かね
- 「鉄」の読み方を「てっ(「て」+小文字の「つ」)」と読む場合
- 鉄管(てっかん)
- 鉄器(てっき)
- 鉄橋(てっきょう)
- 鉄筋(てっきん)
- 鉄琴(てっきん)
- 鉄拳(てっけん)
- 鉄工(てっこう)
- 鉄骨(てっこつ)
- 鉄鉱石(てっこうせき)
- 鉄製(てっせい。「てつせい」ともいう)
- 鉄線(てっせん)
- 鉄則(てっそく)
- 鉄塔(てっとう)
- 鉄板(てっぱん)
- 鉄壁(てっぺき)
- 鉄砲(てっぽう)
脚注[編集]
- ↑ 釘や針金などの例はあるが。