赤血球
赤血球(せっけっきゅう、red blood cell、erythrocyte)は、動物の血液に含まれる細胞成分の一種。 骨髄中に存在する造血幹細胞由来の細胞である。細胞内にヘモグロビンを有することで酸素と結合し、血流に乗って酸素を体中の組織に運搬する。なお、二酸化炭素も運搬できるが、酸素と違いほとんどの二酸化炭素は血漿に溶けて運搬される。
概要[編集]
赤血球は骨髄で赤芽球から作られ、血管に入り活動を始める。役目を終えたあとは肝臓・脾臓で壊される。
赤血球を低張液にさらすと赤血球は浸透圧崩壊を起こし、赤血球内容物(ヘモグロビン等)が水溶液中に漏出する。この現象を溶血という。その後、浸透圧を回復し赤血球膜を再封すると赤血球ゴーストができる。
細胞内のヘモグロビンが酸素と結合し、各細胞へ酸素を運搬する。ただし酸素より一酸化炭素と強く結合する為、体外から一酸化炭素を取り込んだ時、一酸化炭素中毒を生み出す原因となる。
大量出血などで赤血球が失われると、脳へ酸素が上手く運搬されない為、脳死などを引き起こす。 そうしたことから、出血時に対する代替赤血球の研究開発が日本でも進められている。
細胞核を持つ赤血球は持たない動物より比較的大きい、など生物によってその大きさは異なる。例えばラットでは直径5.9μm、ヒトでは約8μmである。イヌはヒトの約80%、ネコは約50%の大きさで、共にヒトより多くの数をもつ。最大の赤血球を有する動物はゾウであると考えられており、その大きさは9μmである。一般に赤血球の大きい動物ほど血液1μlあたりの赤血球数が少なくなる傾向がある。
脊椎動物の赤血球[編集]
赤血球は主にヘモグロビンを含んでいる。ヘモグロビンはヘムを持つ金属タンパク質である。肺や鰓の中では、ヘム中の鉄原子が酸素と結合し、身体の他の部分では酸素を放出する。酸素は赤血球の細胞膜を容易に透過できる。呼吸の結果出る二酸化炭素は、一部は赤血球によって回収されるが、その殆どは重炭酸として、血漿中に溶けて回収される。
脊椎動物の進化において、酸素が血漿ではなく、細胞によって運ばれるようになったことは非常に重要である。このお陰で、血液の粘性は下がり、より高濃度の酸素を運ぶことができるようになり、血液から組織への酸素の拡散の効率が上がる。
寿命[編集]
ヒトについては長命説が優勢で120日間とされている。ラットでは約60日である。哺乳類において最長の寿命を持つものはラクダの赤血球であり約225日である。また酸素不足となると寿命は大幅に減少する。
鳥類以下の赤血球は細胞核を持っており、そうした赤血球の寿命は哺乳類のそれにくらべて長い。
哺乳類の赤血球[編集]
成熟途中で細胞核が失われ(脱核という)、さらにミトコンドリア等の細胞器官を失っている。そのため、エネルギーは全て解糖系でまかなっている。ただし、髄外造血が行われると、核を持つ未熟な赤血球(有核赤血球,NRBC)が出現する。
形は真ん中のわずかにくぼんだ円盤状の形状(例外としてラクダ科では楕円形)である。円盤状の形状をとることにより、球形の形状に比べ表面積を拡大している。色は赤。赤色は呼吸色素ヘモグロビンに由来する。
ヒトの赤血球[編集]
1658年、オランダの昆虫学者ヤン・スワンメルダムの顕微鏡観察により発見され、1673年、レーウェンフックによっても観察された。
ヒトの場合、正常数は、男性で約500万個/mm³、女性で約450万個/mm³。寿命は約120日。大きさは7-8μmである。血液を1000G, 10分ほど遠心すると上層に血漿、中層にBuffycoat、下層に赤血球の層が沈殿するが、その比率は大凡55:1:44である。
赤血球は、多くの血液型をもつ。中でもABO式血液型(1900年オーストリア・ウィーン大学カール・ラントシュタイナーにより発見)は、赤血球の表面に発現している抗原によって定まる、最も主要な分類の一つである。
哺乳類以外の脊椎動物の赤血球[編集]
哺乳類以外の脊椎動物では赤血球に細胞核を持っている。例外はアメリカサンショウウオ科のBatrachoseps。これは、1823年にフランツ・バウエルがジョン・ハンターの標本を研究し魚類の赤血球中核があることをスケッチし、核 (nucleus) と命名した。