国土交通省立山砂防工事専用軌道

出典: 謎の百科事典もどき『エンペディア(Enpedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

国土交通省立山砂防工事専用軌道(こくどこうつうしょうたてやまさぼうこうじせんようきどう)とは、富山県上新川郡立山町にある国土交通省の所有する鉄道(軌道)。原則一般人は乗車できないが、立山カルデラ砂防博物館が主催する砂防工事の見学会に参加することで、乗車することが可能である。路線内に日本最多の18段スイッチバックがある。

鉄道事業法軌道法の適用を受けず、労働安全衛生法に基き運行される工事用軌道である。また、保存鉄道を除けば日本で唯一軌間が610mmである。

概要[編集]

下流域に災害をもたらす、日本有数の急流である常願寺川防災に役立てるため、1929年に開通した軽便トロッコ。沿線に18段スイッチバックが存在し、国土交通省北陸地方整備局が砂防工事に使用する専用線として夏場を中心に運行される。

2006年に文化財保護法に基づく登録記念物に登録された。

歴史[編集]

国土交通省立山砂防工事専用軌道は、砂防工事の人員と物資を最前線の工事現場である立山カルデラに輸送する最適かつ先端的な方法として、1926年(大正15年)に発案・計画されたもので、難工事の末、1929年(昭和4年)に千寿ヶ原から樺平までの11.7㎞が開通、樺平から白岩までの間、インクラインをはさんで1931年(昭和6年)に開通した。

戦後、幾多の変遷を経て1965年(昭和40年)には、樺平の連続18段スイッチバックを含め、水谷平までの延長18㎞が完成した。

また、スイッチバックポイント(転轍機)切り替えは、軌道敷設当初は人力であったが安全と省力化を図るため1980年(昭和55年)から自動化を進め、1986年(昭和61年)に全面自動化となっている。しかし、安全面の観点から運転助手による点検をしながらの運行は変更していない。

軌道を運行する機関車も時代の流れとともにその型式を変え現在に至っている。過酷な条件の中、現在も砂防工事に活躍しているトロッコ列車は、立山砂防のシンボルの一つである。

本軌道を解説、取り上げた文献[編集]

  • レールガイ別冊 知られざるナローたち (斎藤保高・真弓裕之・大西靖・青森恒憲編著、丸善出版、1981年)
  • 夢の山岳鉄道 (宮脇俊三新潮社、1995年) ISBN 4101268126
  • 知られざる鉄道 (けいてつ協會編著、JTB、1997年) ISBN 4533026605
  • 別冊歴史読本11 「列島縦断 消えた軽便鉄道を行く」 (軽便倶楽部編、新人物往来社、1999年) ISBN 4404027117
  • 女子と鉄道 (酒井順子光文社、2006年) ISBN 9784334975098
  • 鉄道ファン 1971年12月号 「こっそり ひっそり めだたずに (4) 立山砂防用軌道」
  • 蒸気機関車 1976年11月号 「立山の小さな走者たち 立山砂防軌道」
  • Rail Magazine 1984年8月号 「THE トロッコ (7) 神隠しの立山」
  • Rail Magazine 1984年9月号 「THE トロッコ (8) 名もなく貧しく美しくなく」
  • 週刊朝日 1994年7月29日号 「ガイドブックのない旅 (24) 標高差640メートルをよじ登る 絶景を行く立山砂防軌道」
  • FOCUS 1998年6月24日号 「源流探検 人と暴れ川の『戦場』を行くトロッコ列車の車窓」
  • ほっと 北陸 2004年11月号 「暮らしを守る舞台裏 砂防工事専用トロッコ」  (オンライン版PDF
  • 日本鉄道旅行地図帳(6)「北信越」(新潮社)

脚注[編集]

関連項目[編集]