大谷瑞郎
大谷 瑞郎(おおたに みずお、1926年4月14日 - 1992年1月29日)は、歴史学者。武蔵大学経済学部教授[1]。
経歴[編集]
東京府荏原郡平塚村(現・東京都品川区)生まれ[1]。東京、函館、静岡、富山に住み、富山高等学校尋常科・高等科を経て[2]、1949年東京大学経済学部経済学科卒[1]。学生時代は大内力のゼミに参加[3]。1951年武蔵大学助手、1953年専任講師[4]、1958年助教授、1960年教授[1]。西洋経済史を担当。在職中に死去[4]。
人物[編集]
宇野学派[5]。宇野弘蔵と大内力から大きな影響を受けた[3][6]。宇野の追悼文集で自身の歴史解釈は宇野の示唆に多くを負っていると述べている[7]。鈴木鴻一郎、玉野井昌夫、戸原四郎、長坂聡、日高普とともに宇野編『経済原論』(青林書院[経済学演習講座]、1955年)の分担執筆者、同書に収録された座談会の問い手となっている[8]。
宇野理論的立場から大塚史学批判や「明治維新=絶対主義論」批判を展開した[9][10]。『資本主義発展史論』(有斐閣、1960年)や『経済史学批判』(亜紀書房、1969年)では大塚久雄や大塚史学を批判した[10]。『ブルジョア革命』(御茶の水書房、1966年)ではブルジョア革命論や明治維新論を扱い、石井孝『学説批判明治維新論』(吉川弘文館、1961年)などの明治維新=絶対主義説を批判した[10]。ドイツ経済史に関してユンカー経営のブルジョア性[11]、三月革命のブルジョア革命としての意義を強調する立場をとった[12]。『幕藩体制と明治維新』(亜紀書房、1973年)では徳川期日本の位置と明治維新論批判を二大テーマとして扱い、後者では河野健二『フランス革命と明治維新』(NHKブックス、1966年)、井上清『明治維新』(中央公論社、1966年)、池田敬正司会『シンポジウム日本歴史15 明治維新』(學生社、1969年)、歴史学研究会編『明治維新史研究講座 別巻』(平凡社、1969年)、遠山茂樹『明治維新と現代』(岩波新書、1968年)、後藤靖「近代天皇制論」(歴史学研究会、日本史研究会編『講座日本史9 日本史学論争』東京大学出版会、1971年)、原口清『日本近代国家の形成』(岩波書店、1968年)などを取り上げた[10]。
河野健二、飯沼二郎編『世界資本主義の歴史構造』(岩波書店、1970年)に対しては、大塚史学的通説のように資本主義のインターナショナルな性格を無視するのは非科学的だが、資本主義のもっているナショナルな側面を軽視するのも行き過ぎだと批判した[13]。毛利健三の自由貿易帝国主義論に対しては、帝国主義段階では金融が、自由主義段階では産業資本が資本の支配的な存在形態であると批判した[9]。
著書[編集]
単著[編集]
- 『資本主義発展史論』(有斐閣、1960年)
- 『ブルジョア革命』(御茶の水書房、1966年)
- 『経済史学批判』(亜紀書房、1969年)
- 『幕藩体制と明治維新』(亜紀書房、1973年、新装版1981年)
- 『近代史研究序説』(時潮社、1977年)
- 『世界史のなかの日本史像』(亜紀書房、1981年)
- 『歴史の論理――「封建」から近代へ』(刀水書房[人間科学叢書]、1986年)
- 『戦後歴史学批判――近代史認識の視座』(文献出版、1993年)
編著[編集]
- Rosa Luxemburg『Warenproduktion : aus Einführung in die Nationalökonomie[商品生産(經濟學入門)]』(佐藤新一共編註、南江堂、1954年、第2版1956年)
- 『マルクス経済学――理論と実証』(日高普、斎藤仁、戸原四郎共編、東京大学出版会、1978年)
出典[編集]
- ↑ a b c d 20世紀日本人名事典 「大谷瑞郎」の解説 コトバンク
- ↑ 大谷瑞郎『資本主義発展史論』有斐閣、1960年
- ↑ a b 大谷瑞郎『ブルジョア革命』御茶の水書房、1966年
- ↑ a b 大谷瑞郎教授 武蔵学園百年史
- ↑ 岡本明「ジャコバン国家論」『季刊社会思想』第2巻第1号、1972年5月
- ↑ 大谷瑞郎『経済史学批判』亜紀書房、1969年
- ↑ 大谷瑞郎「宇野先生と歴史学」、宇野マリア編『思い草――宇野弘蔵追悼文集』宇野マリア、1979年
- ↑ 馬場宏二「宇野弘蔵教授を囲む研究会(PDF)」『社會科學研究』第60巻第3・4号、2009年
- ↑ a b 森田桐郎「毛利健三「自由貿易帝国主義--イギリス産業資本の世界展開」(PDF)」『季刊経済理論』第31巻第2号、1980年4月
- ↑ a b c d 矢木明夫「現代の明治維新論――日本経済史の基本問題」『東北学院大学論集』第126号、1994年10月
- ↑ 原田溥「プロイセン・ドイツ農業史研究の新展開――加藤房雄氏の「ドイツ世襲財産と帝国主義」(勁草書房・1990年)を中心とする一連のドイツ農業史研究に寄せて」『社会科学論集 : 九州大学教養部社会科学研究室紀要』第34集、1994年3月
- ↑ 青木孝平「金融資本と会社法のティポロギー――株式所有の法的構制」『早稲田大学大学院法研論集』第50号、1989年7月
- ↑ 大谷瑞郎「河野健二・飯沼二郎編「世界資本主義の歴史構造」を読む(PDF)」『武蔵大学論集』第18巻第1号、1970年8月