加藤榮一
加藤 榮一(かとう えいいち、1932年9月 - 2005年1月7日[1])は、財政学者[2]。東京大学名誉教授。専攻はドイツ経済論、現代資本主義、福祉国家論、財政学[3]。
経歴・人物[編集]
東京生まれ。1957年東京大学経済学部卒業、1962年同大学大学院社会科学研究科博士課程単位取得退学。1962年東京大学社会科学研究所助手[1]。1964年東北大学教養部講師、1967年同助教授[1][3]。1973年東京大学社会科学研究所助教授、1978年同教授、1988年同所長(1993年まで)[3]。1993年東京大学停年退官、東京大学名誉教授。信州大学経済学部教授、帝京大学経済学部教授を歴任[1]。2000年法政大学現代福祉学部開設と同時に教授に就任。2003年法政大学定年退職[4]。
林健久と並ぶ宇野派の財政学者、福祉国家財政論の代表。ドイツ経済を中心に現代資本主義の研究をしていたが、1980年代に大内力の国家独占資本主義論と「福祉国家の危機」を媒介にして福祉国家財政論の研究に取り組んだ[5]。近代資本主義の歴史を国家の社会経済政策を基準にして19世紀末までの「純粋資本主義化傾向」とそれ以降の「福祉国家化傾向」の2つの局面に大きく分けた[2]。宇野段階論の修正を図り、新たな段階区分を資本主義、国家、世界システムという3つの系の変化を基準にして大不況期までを前期資本主義、それ以後を中期資本主義、80年代以降を後期資本主義と規定した。70年代以降はプライヴァタイゼーションが進展し、国家は福祉国家から「支援国家」(ニール・ギルバート)に転換したとして、福祉国家解体説の立場をとった。林健久は福祉国家の「柔構造」論を基に福祉国家継続説の立場をとった[5]。加藤の福祉国家研究(『現代資本主義と福祉国家』『福祉国家システム』)はイエスタ・エスピン=アンデルセンの福祉国家の3類型論に全く別の理路からたどり着いているとされる[6]。
著書[編集]
単著[編集]
- 『ワイマル体制の経済構造』(東京大学出版会[東大社会科学研究叢書]、1973年)
- 『現代資本主義と福祉国家』(ミネルヴァ書房[MINERVA 人文・社会科学叢書]、2006年)
- 『福祉国家システム』(ミネルヴァ書房[MINERVA 人文・社会科学叢書]、2007年)
編著[編集]
- 『ドイツ財政統計1872-1913――ライヒとプロイセン』(林健久共編、東京大学出版会、1983年)
- 『現代のドイツ経済――統一への経済過程』(戸原四郎共編、有斐閣、1992年)
- 『福祉国家財政の国際比較』(林健久共編、東京大学出版会、1992年)
- 『ドイツ経済――統一後の10年』(戸原四郎、工藤章共編、有斐閣、2003年)
- 『グローバル化と福祉国家財政の再編』(林健久、金澤史男、持田信樹共編、東京大学出版会、2004年)
- 『資本主義はどこに行くのか――20世紀資本主義の終焉』(馬場宏二、三和良一共編、東京大学出版会、2004年)
訳書[編集]
- フランツ・ノイマン『ビヒモス――ナチズムの構造と実際1933-1944』(岡本友孝、小野英祐共訳、みすず書房、1963年)
- W.フィッシャー『ヴァイマルからナチズムへ――ドイツの経済と政治1918-1945』(みすず書房、1983年)