チャーハン
チャーハン(炒飯)とは中華料理の一種。チャオファンという[1]。
概要[編集]
漢字で書けば一目瞭然。炒めた飯のことである。日本では焼飯(やきめし)、炒飯(いりめし・いためし・いりいい)、炒めご飯(いためごはん)といった名前で呼ばれることも多いが、基本的にはヤキメシではない。焼飯だとシューハンである。インドネシアでは類似のものをナシゴレンという。
家庭料理ともされており、また加熱するだけで調理が完了する冷凍食品・インスタント食品など、幅広い製品が出回っている。なお、本来は米飯ではなく生米を炒めてから煮るパエリアや炒めた生米を炊くピラフとの混同も見られる。日本では惣菜や大衆的料理店のメニューのうちに洋風の味付けで調理したチャーハンをピラフと称している場合もあるが、「ピラフ」「ピラウ」は炊き込みご飯である。
日本の中華料理屋では、箸ではなく中国スタイルでレンゲ(散蓮華あるいはチリリンゲ)などのスプーンを用いて食されることも多い。中華スープとセットで供されることもある。その延長としてラーメンとセットで提供されたりすることも多く、その際は中華スープは省かれる。「ラーメン・餃子・チャーハンのセットは街中華の鉄板」という意見もあり、その隣で「チャーシューワンタンメンとミニ餃子と半チャーハン」とか注文されると「このブルジョアジーめが!」みたいな話もある。
作り方の一例[編集]
基本となる材料は米飯・卵・食用油・塩・胡椒とされるが、地域によっては卵を入れない、塩ではなく醤油やソースを用いる、などの場合もある。北陸地方・近畿地方・沖縄県などの地域により独特の味付けを施したものが存在する。具材を変化させることにより多くの種類が生まれる。
また、より香味をつけるためにネギ、チャーシュー、ナルトの切れ端、もしくは海老、カニなども追加される(家庭ではハム、ベーコン、魚肉ソーセージなども用いられる)。レタスもときに用いられる。そのとき具材はできるだけ小さなみじん切りにする。あまり大きいと、具が偏り易く飯と混ざらないためである。
彩りをよくするためにコーンやグリーンピース・ピーマン(人によってはパプリカ)などを加えることが多い。また、最近では納豆やキムチ、高菜、レタスなどを入れるレシピが散見される。朝鮮半島では、キムチを入れた「キムチポックンパプ」の人気が高い。とろみをつけた餡をかけるとまた食感に違いが生まれる。本格的な物では中華スープを加えるなどバリエーションも多く、ピラフとの差異が曖昧になるが固形スープ(コンソメ)を砕いた物を加えたりしても良い。粉末状の各種香辛料も好んで加えられる。
あらかじめ米は炊いておく。米飯は固まっているよりもパラパラしていた方が食感がよいため、ジャポニカ米の場合は普通の白ご飯を炊く時よりも水加減を少なめにして炊くと良い。アジア圏の多くではインディカ米が用いられるが、この方がチャーハンにはよく合う。熱いご飯を使って炒めた方が短時間で仕上がるため中華料理の炒飯のように香ばしく仕上げることが出来る。実際にインディカ米で作る場合、日本では輸入米に極めて高額の関税がかかるため、高価になることは避けられない。
また自動炊飯器(ご飯の保温も兼ねる)普及以前から、冷めてしまった残りご飯の利用法としても用いられる。とりわけ家庭料理としてのチャーハンでは前日の残りご飯が使用される事も多い。これは、近年の炊飯器では標準機能となっている保温機能を使っても時間が経ったご飯は匂いがついてしまうが、炒めて調味料や香辛料を加えるチャーハンはこの点が比較的気になりにくいからである。また、長く保温していたご飯は水分がいくらか飛んでいるため、炒めたときにべたつきにくいという理由もある。しかしながら、チャーハンを作るときは炊き立てのご飯が好ましいとされる。冷や飯は水分が多く、米同士がくっつきやすいためである。家庭用の火力の弱い焜炉で冷やご飯を使うと鍋の温度が下がり調理に時間がかかるため、べちゃべちゃになってしまうので注意。冷蔵庫で保存していたような冷やご飯を使う場合は、電子レンジでほんのり加熱してから使用したり、平皿に広げて水分を軽く飛ばしたりする[2]方が、飯がほぐれやすくてよい。余計な水分を飛ばせるので、冷凍させたご飯を使う方法もある。
中華料理店における業務用コンロでは火力が強い上に熱量の大きい液化石油ガス(いわゆるプロパンガス)などを使う関係で、「炒る」に近い料理となるチャーハンであるが、一般の家庭で利用されている家庭向けガスコンロでは「炒める」がやっとであるため、中華料理店のチャーハンと家庭料理としてのチャーハンでは、似て異なる料理となっている。更には、電熱器や型の古いIHクッキングヒーターなどでは、鍋を前後にゆすってご飯を混ぜる「振り鍋」ができない。また、店によっては予め下味をつけると共にご飯粒をパラパラにした状態で冷凍したチャーハン用ご飯を製造し、店舗ではそれを具と共に炒めると言う方法を取っているところもある。
これらの調理環境の違いから、家庭料理では料理店で提供される本格的なチャーハンのようなご飯のパラパラ感、炒り卵のふっくら感を出すのは難しい。そのため、そのような環境でも美味しく作るコツなどが多くの家庭料理本で解説され、またテレビの料理番組でもチャーハンの作り方の特集が組まれるなどしている。この情報量の多さや、新型のIHクッキングヒーターの売り文句として、美味しいチャーハンを作れる事が強調されるなど、人気の高さを示している。最近は「ご飯と卵を混ぜて卵かけご飯のようにした上で炒める」、あるいは「ご飯とマヨネーズを絡めて炒める」という方法もある。共に、ご飯粒を卵でコーティングし、炒めた後のパラパラ感を出す効果がある。
食用油は新しいものを使わないと風味が悪くなる。油として無塩バターやラード・胡麻油・ネギ油などといった味の強い物を使うと風味が増す。
食材の準備が出来てからの調理法はおおよそ以下の通り。
- まずネギやハムなどといった具のみじん切りを十分に炒めいったん皿に取る。
- 充分に熱した中華鍋(フライパンで代用可だが、テフロン加工の場合は加工が傷むのでほどほどに)に食用油を入れ、溶き卵を入れる。
- 卵を使った料理の常として、卵が固まるに十分な、かつ火が通り過ぎない程度の時間で卵を加熱しなければならない。卵が完全に固まらない10秒程度のうちに米飯を入れて炒め、飯粒に卵の皮膜を作らせることで油の吸収を防ぎご飯がベタベタの団子状になるのを防ぐ場合もある。ご飯を炒めるほどパラパラになると誤解する人がいるが、炒めるほどご飯の水分が外に出てしまうので手早く炒めた方が良い。卵についてはこのほかにも炒める前に白飯と混ぜ合わせる、卵だけをあらかじめ炒めておき白飯を炒め始めた後で具材と一緒に混ぜ合わせるという方法もある。
- 塩・胡椒、醤油等で味を調える。炒めたみじん切り具材を鍋に入れて米飯と混ぜ合わせる。
- 丸い形容器の中に入れて皿に伏せて完成。
炒める際にカレー粉を混ぜるとドライカレーに、ニョクマムやナンプラーを加えるとナシゴレンなどの東南アジア風チャーハンに、ケチャップ主体で味付けするとチキンライスになる。粉末状のチャーハンの素や専用の調味料も市販されている。
いろいろなチャーハン[編集]
最もポピュラーなチャーハンのひとつがレタスをチャーハンに入れる「レタスチャーハン」である。1980年代初頭に熊本県八代地方で流行し始めたものである。発明の経緯は「若い独身男性がチャーハンの具材にたまたまあったサラダの余り物のレタスを入れてみたのが始まり」と言われる。ただし香港などでは、レタスが入っているチャーハンはこれ以前から存在している。
近畿地方にはお好み焼き、あるいは焼きそばを商う店で焼き飯を供している場合がある。これはチャーハンとは異なる料理で、粉モノの延長線上にある料理である。焼きそばと同様に、鉄板で具を炒めた後にご飯を焼き、最後に玉子を絡める(玉子を入れない店もある)。ソースで味付けをすることが多い。