富士政治大学校

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富士政治大学校(ふじせいじだいがっこう)は、公益財団法人富士社会教育センターが運営する教育機関。1969年に西村栄一が設立した財団法人富士社会教育センター内に労働組合員向けの研修機関として設置された[1]富士山麓の静岡県御殿場市に本校、岡山県岡山市ゼンセン中央教育センター内に西部本校が置かれ、同盟中立労連・純中立・一部総評系の労組から派遣された若手組合員に対し、「二泊三日を標準としたカリキュラムで、民主社会主義の理論と実践活動についての集中教育」を行った[2]。教育期間中に民社党関係者が入党勧誘を行い、ここで入党した青年党員は「民社党青年隊」の中核メンバーとなった[2]。「同盟・JC系の組合の青年労働者を集めて猛烈な特訓をおこない、反共活動家を養成する学校として有名」だった[3]。同校の研修を取材した貴重な体験ルポである宇治芳雄『洗脳の時代』(汐文社、1981年)および同書を紹介した斎藤貴男『「東京電力」研究 排除の系譜』(講談社、2012年)によれば、「全郵政ッ」「躍進ッ」または「全逓ッ」「粉砕ッ」といった掛け声を繰り返す「カケアイコール」、もたれかかってくる女性講師を胸で支えたり、女性講師と抱き合って風船を割ったりする「エンカウンティング・トレーニング」(社会心理学者の村田宏雄が指導)、講師が敵対する労組の組合員や民青などに扮して受講者を質問攻めにする「信念強化訓練」や「行動強化訓練」などといったファナティックな訓練が行われていたという[4]神奈川県座間市の松橋淳郎市議によれば、旧海軍江田島教育が取り入れられているという[5]

労働アナリストの早川行雄は「[民社党は]富士政治大学の設置を契機に民主社会主義を担う活動家を養成することで、泥臭い組合ボス中心の議員政党から脱皮して、西欧型社会民主主義の受け皿となるような大衆政党への転換が図られるべきであったが、そうはならなかった」「富士政治大学では、職場で共産党(民青)や社会党社青同)の活動家と渡り合うための論争技術の習得や精神の鍛練に重きが置かれたため(当時の研修実体は、宇治芳雄「洗脳の時代」1981)、西欧型社会民主主義の受け入れよりも、安直な反共主義に依存した「理論武装」が重視されたのであろう」としている[1]

1994年の民社党解党後も存続しており、旧同盟系の労組や民主党の地方議員らに研修の機会を提供している[4]。2003年7月より地方議員向けの教育課程を開始し[6]、2016年時点では主に新人の地方議員を対象とした「政治専科」と、主に政治専科卒業者または2期目以上の地方議員を対象とした「政策研究科」の2科を開講している[7]。事務局は東京都千代田区神田和泉町1-12-15 O・Sビル3階 公益財団法人富士社会教育センター。機関誌は『自治レポート』。同窓会は「高志会」[6]

出典[編集]

  1. a b 芳野友子新体制で危機に立つ連合 現代の理論第30号、2022年5月3日
  2. a b 石上大和『民社党――中道連合の旗を振る「責任政党」』教育社、1978年、83頁
  3. 高橋祐吉「労働組合運動のガン=インフォーマル組織とどうたたかうか」、日本の労働組合運動編集委員会編『日本の労働組合運動 5 労働組合組織論』大月書店、1985年、157頁
  4. a b 斎藤貴男『「東京電力」研究 排除の系譜』講談社、2012年、304-308頁
  5. 富士政治大学校 講習会 座間市市議会議員 松橋じゅんろう、2016年11月16日
  6. a b 富士政治大学校 公益財団法人富士社会教育センター
  7. 地方議員志望者は要チェック!バカヤロー解散の仕掛け人がつくった、富士政治大学校とは? 選挙ドットコム

関連文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]