村田宏雄
村田 宏雄(むらた ひろお、1919年4月9日[1] - 2002年11月[2])は、社会心理学者。
経歴[編集]
大阪府生まれ。1943年東京帝国大学文学部社会学科卒業[2]。1949年法務府技官。横浜少年鑑別所に勤務。1951年最高裁判所事務官。人事局、家庭局に勤務[3]。1952年東京大学非常勤講師[4][注 1]。1955年警察庁科学警察研究所環境研究室長[5]。1958年東洋大学社会学部助教授。この間、東京学芸大学、東京教育大学[6]、東京都立大学の講師を歴任[7]。1961年東洋大学社会学部教授[6]。社会学部長[8]、社会学研究所長を歴任[9]。1989年名誉教授[2]。常磐大学教授[10]。1995年勲三等瑞宝章叙勲[2]。
社会工学研究所主宰[8][11][12]。全国文化運動協会(全文協)初代副会長(1963~1964年、1965~1971年)[13][14]、事務局長(1964~1965年)[15][16]、民主社会主義研究会議(民社研)理事[17]、富士社会教育センター理事[18]、矯正保護審議会委員も務めた[19]。1994年に民社研が政策研究フォーラムに改組されると顧問に就任した[20]。
人物[編集]
東大社会学部で戸田貞三[21]、林惠海に師事し[22]、同じく戸田に師事した米林富男の招きで東洋大学社会学部教授に就任した[21]。玉野和志は「村田は青少年犯罪に関する社会心理学的な調査研究の技法にたけ、その後はマーケティング・リサーチなどの研究・調査に従事し、最終的には数理計量モデルを用いた組織管理学を担当する教員として常盤大学で教鞭をとった。つまり徐々に社会学からは離れていったわけだが、その当時から最先端の社会調査法に通じていた希有な人物であった」と述べている[21]。
同盟のインテリジェント・スタッフ[23]。民社党の中央党学校を第1期から指導し、行動科学・社会心理学的な研修内容を取り入れた[24]。ファナティックな反共教育で知られる富士政治大学校の「行動学習」の基本型を考案した[25]。富士政治大学校では「全郵政ッ」「躍進ッ」または「全逓ッ」「粉砕ッ」といった掛け声を繰り返す「カケアイコール」や、もたれかかってくる女性講師を胸で支えたり、女性講師と抱き合って風船を割ったりする「エンカウンティング・トレーニング」などが行われていた。村田が「カケアイコール」を考案し[25]、「エンカウンティング・トレーニング」の指導に当たっていた[26]。青木慧は村田について「専門は社会工学を治安科学として活用し、反共ヒステリーをとくに青年層にうえつけるため社会心理学を駆使していくことです。『勇気ある選択――民主社会主義青年運動史』によれば、反共青年行動隊の民社党青年隊は《〔民社〕党直結の青年活動家集団》であって、その名称も《村田宏雄教授を中心に知恵をしぼった》ものです。富士政治大学校の集団反共ヒステリー教育も《村田宏雄教授を中心に知恵をしぼった》ものであり、同大学校の理事も長年つとめていました。彼は新式の「心技拳」なるものをあみだし、同盟の教宣担当者などにそれを教え込んでいます」と述べている[12]。
ゼンセン同盟の労働大学[27]や全郵政の中央労働学校[28]、日特金属工業が日本生産性本部に委託して日本生産性本部労働部が事務局となって行われていた秘密労務研修などでも講師を務めた[29]。
1982年に勁草書房から刊行した『オルグ学入門』は修辞学者の香西秀信[30]や評論家の呉智英[31]が奇書として紹介したことで知られる。2018年東海道新幹線車内殺傷事件の犯人が所持していたことが一部で話題になった。
著書[編集]
単著[編集]
- 『異常社会』(大日本雄弁会講談社[ミリオン・ブックス]、1956)
- 『恋愛の盲点』(高文社[ベストセラーズ双書]、1956年)
- 『犯罪と探偵』(河出書房[河出新書]、1956年)
- 『推理小説の謎』(高文社[Best sellers series]、1956年)
- 『青少年犯罪の社会心理』(刀江書院、1958年)
- 『岐路にたつ子ら――危険期の心理』(刀江書院、1958年)
- 『新・サラリーマン論』(ダイヤモンド社、1958年)
- 『SEXテスト――あなたにマッチする異性』(六興出版部、1959年)
- 『裁判科学』(勁草書房、1959年)
- 『全書 捜査・鑑識の科学 第5巻 少年犯罪鑑識』(日本評論新社、1960年)
- 『恋愛の条件――異性を得る法』(青春出版社[青春新書]、1961年)
- 『性生活の技術と心理』(桜桃社、1962年、増補版1963年)
- 『結婚の心理技法』(青春出版社、1962年)
- 『政治と社会工学』(浅井清編集、1963年)
- 『成功術――逆をいく12のルール』(ダイヤモンド社[エグゼクティブ・ブックス]、1965年)
- 『パワー――人を思うままに動かす技術』(日本生産性本部、1971年)
- 『出世における″実力″以外の研究――だからうまくいく59のポイント』(ダイヤモンド社、1977年)
- 『オルグ学入門』(勁草書房、1982年、新装版2011年)
- 『パソコン情報処理学――調査・実験のためのBASIC』(勁草書房、1984年)
共著[編集]
- 『少年問題と科學』(牛島義友、吉益脩夫、樋口幸吉、土井正德、本田文夫、日高六郎、安平政吉、井坂行男、山下俊郎、谷川貞夫共著、有斐閣、1951年)
- 『職場管理の心理と技術――経営者・監督者のための心理学』(松井賚夫共著、紫生書院、1954年/誠信書房、1954年)
- 『事例調査法』(土井正徳、山根清道共著、朝倉書店、1955年)
- 『十代の社会診断――娘ごころを分析する』(阪本泉、村田昭敏共著、誠信書房、1955年)
- 『社会調査の技術』(日高英行、松井賚夫、石毛長雄共著、誠信書房、1955年)
- 『社会心理学』(外林大作、遠藤辰雄共著、誠信書房、1955年)
- 『人格の測定と診断』(沢田慶輔、中西信男共著、誠信書房、1956年)
- 『市場操作の心理と技術――経営の人間戦略』(大川信明共著、誠信書房、1962年)
編著[編集]
- 『現代道徳講座(全7巻)』(古川哲史、勝部眞長、佐藤俊夫、波多野述麿共編、和辻哲郎監修、河出書房、1954-1955年)
- 『社会調査の戦略と技術――市場調査・広告調査・行政能率調査の方法』(編、誠信書房、1961年)
- 『韓非子とマキアベリ』(神子侃共編、百泉書房[現代人の古典叢書]、1969年)
- 『社会調査』(編、勁草書房、1981年)
- 『民主社会主義と日本文化』(編、民主社会主義研究会議[民社研叢書]、1981年)
訳書[編集]
- 『孫子』(北川衛、村山孚共訳、経営思潮研究会、1962年)
監修[編集]
- 『よく遊びよく学べ――ゲームの民社事典』(民主社会主義研究会議[学習ライブラリー]、1967年)
脚注[編集]
注釈[編集]
- ↑ 『恋愛の盲点』(1956年)、『推理小説の謎』(1956年)によれば、1954年東京大学文学部講師。
出典[編集]
- ↑ 村田宏雄『増補版 性生活の技術と心理』桜桃社、1963年
- ↑ a b c d オルグ学入門 紀伊國屋書店
- ↑ 松井賚夫、村田宏雄『職場管理の心理と技術――経営者・監督者のための心理学 第3版』誠信書房、1956年
- ↑ 村田宏雄「茶の湯の心理学」『研修』No.405、1982年3月
- ↑ 村田宏雄『全書 捜査・鑑識の科学 第5巻 少年犯罪鑑識』日本評論新社、1960年
- ↑ a b 村田宏雄『出世における″実力″以外の研究――だからうまくいく59のポイント』ダイヤモンド社、1977年
- ↑ 大和厚編『選挙ポスターの作り方』日本印刷新聞社、1968年
- ↑ a b 村田宏雄、神子侃編『韓非子とマキアベリ』百泉書房、1969年
- ↑ 村田宏雄「団体交渉の心理戦術」『官公労働』第28巻第8号、1974年8月
- ↑ 「民社党に注文する(二)」『Kakushin』第226号、1989年6月
- ↑ 民主社会主義研究会議編『大系民主社会主義 第5巻 福祉』文藝春秋、1980年
- ↑ a b 青木慧『ユニオンジャック――国家ぐるみの犯罪』学習の友社、1984年、168頁
- ↑ 脇田由郎「教宣人生雑記-15-」『同盟』第252号、1979年7月
- ↑ 「資料・全文協の一九七一年度活動方針」『同盟』第152号、1971年3月
- ↑ 「意欲をみせる全文協」『同盟』第69号、1964年4月
- ↑ 佐藤航人「全文協活動に期待」『海員』第17巻第3号(通巻187号)、1965年3月
- ↑ 『改革者』第147号、1972年6月
- ↑ 「赤旗」日曜版特別取材班「密着レポート 富士政治大学校のすべて」『今日の民社党――大企業擁護・軍事ファシズムの先兵』日本共産党中央委員会出版局、1980年、118頁
- ↑ 青木慧『政労使秘団――組織と人脈』汐文社、1983年、142頁
- ↑ 『改革者』第35巻第2・3号(通巻406・407号)、1994年6月
- ↑ a b c 森岡清志、倉沢進、玉野和志「特殊飲食店女子組合員調査(いわゆる「磯村調査データ」)(PDF)」『日本都市社会学会年報』第19号、2001年
- ↑ 磯村英一『私の昭和史』中央法規出版、1985年
- ↑ 磯村英一「友愛運動への回帰」『どうめい』第351号、1987年10月
- ↑ 中央党学校「発展、定着する御殿場教育――民社党中央党学校のあゆみ」『革新』第123号、1980年10月
- ↑ a b 宇治芳雄『洗脳の時代』汐文社、1981年、51頁
- ↑ 宇治芳雄『洗脳の時代』汐文社、1981年、61頁
- ↑ ゼンセン同盟地方繊維部会「三十年のあゆみ」編集委員会編『三十年のあゆみ』ゼンセン同盟地方繊維部会、1979年、384頁
- ↑ 全日本郵政労働組合結成20周年記念写真集編纂委員会編『目で見る全郵政のあゆみ――全郵政結成20周年記念写真』全日本郵政労働組合、1985年、46頁
- ↑ 青木慧『ユニオンジャック――国家ぐるみの犯罪』学習の友社、1984年、184頁
- ↑ 香西秀信『反論の技術――その意義と訓練方法』明治図書出版、1995年
- ↑ 呉智英『マンガ狂につける薬 二天一流篇』メディアファクトリー、2010年