戸木田嘉久

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戸木田 嘉久(ときた よしひさ、1924年3月30日[1] - 2013年2月26日[2])は、経済学者。立命館大学名誉教授、労働運動総合研究所顧問、くらしと協同の研究所研究委員。研究テーマは労働問題、労働組合論、協同組合論[3]

経歴[編集]

福岡市生まれ。1943年9月福岡高等商業学校卒業。大学受験に落ちたため、東亜燃料工業に入社。1944年10月九州帝国大学法文学部経済学科に入学したが、同時に陸軍特別幹部候補生として豊橋陸軍予備士官学校に入隊することになったため休職・休学。1945年5月頃に豊橋陸軍予備士官学校を卒業し、愛媛県の部隊に配属。同年10月敗戦による軍需工場の閉鎖で東亜燃料工業を退職。九州帝国大学に復学し、森耕二郎に師事、向坂逸郎のゼミにも参加。1947年9月九州帝国大学法文学部経済学科卒業。同年10月財団法人九州経済調査協会調査部員。1948年11月九州産業労働科学研究所理事、同事務局長となり、失業者問題や炭鉱産業などの調査研究に従事[1][4][5]

1962年4月立命館大学経済学部助教授、1965年4月同教授。1989年3月定年退職。この間、1969年度学生部長、72・73年度人文科学研究所長、76・77年度経済学部長、79年度教学担当常務理事、85-87年度副学長、教学担当常務理事を歴任[1]。1984年3月「現代資本主義と労働者階級」で経済学博士(立命館大学)[6]。1989年12月-2000年7月労働運動総合研究所代表理事[7]流通経済大学教授、大阪経済法科大学客員教授も務めた[3]

杜会政策学会幹事、土地制度史学会(2002年政治経済学・経済史学会)評議員を歴任。経済理論学会日本科学者会議の各会員[1]。労働者教育活動にも従事し、労働者学習協議会常任理事[5]、京都労働者学習協議会副会長を務めた[8]

評価[編集]

共産党系の学者だとされる[9][10]中林賢二郎との企業別労働組合の評価をめぐる論争や代表作の『現代資本主義と労働者階級』(岩波書店、1982年)などで知られる[10][11]高木督夫は『現代資本主義と労働者階級』を「わが国のマルクス経済学的労働問題研究の指導的立場にある著者が「全力投球」した著作である。結論的にいって久方ぶりに労働問題分野での力のこもった労作を読んだという印象である」と述べている[12]芹澤寿良は戸木田の『労働組合はどう変るか――三池闘争をへて』(三一新書、1961年)と中林賢二郎の『学習テキスト・統一と団結』(学習の友社、1961年)を「労働組合運動の実践部隊に働く者の必読書として広く書記や活動家に勧めたものである」と述べている[11]川本和良は「先生の御研究はいずれも貴重なものばかりですが,とくに敗戦から高度成長期に至る過程で筑豊炭鉱とそこでの労働者の辿った運命についての御研究は間違いなく後世にまで残るものと思われます」と述べている[13]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『労働組合はどう変るか――三池闘争をへて』(三一書房[三一新書]、1961年2月)
  • 『学習 現代の合理化読本』(労働旬報社、1964年4月)
  • 『現代の合理化と労働運動』(労働旬報社、1965年3月)
  • 『合理化問題入門』(労働旬報社[労旬新書]、1966年1月)
  • 『「合理化」のはなし』(日本青年出版社[青年のための社会科学]、1972年2月)
  • 『社会変革と労働組合運動』(大月書店、1974年6月)
  • 『働くものと部落問題』(部落問題研究所出版部、1976年2月)
  • 『現代資本主義と労働者階級』(岩波書店[現代資本主義分析]、1982年1月)
  • 『戸木田嘉久著作集(全5巻)』(旬報社、1988年12月-1989年8月)
    • 「第1巻 日本の労働組合運動」(1988年12月)
    • 「第2巻 賃金・合理化と労働運動」(1989年2月)
    • 「第3巻 労働運動と国民生活」(1989年4月)
    • 「第4巻 戦後史における労働組合」(1989年6月)
    • 「第5巻 労働運動の理論的課題」(1989年8月)
  • 『九州炭鉱労働調査集成』(法律文化社、1989年3月)
  • 『現代資本主義とME化』(新日本出版社、1990年1月)
  • 『古典から学ぶ労働組合論』(学習の友社、1990年10月)
  • 『経済民主主義と現代資本主義』(新日本出版社、1993年1月)
  • 『「構造的失業」時代の日本資本主義』(新日本出版社、1997年9月)
  • 『労働組合の原点』(学習の友社、2000年4月)
  • 『労働運動の理論発展史――戦後日本の歴史的教訓(上・下)』(新日本出版社、2003年9月・10月)

共著[編集]

  • 『日本の産業別組合――その生成と運動の展開』(岡崎三郎他著、総合労働研究所、1971年2月)
  • 『明日の社会主義と日本の労働運動』(機関紙共同出版[機関紙共同出版ブックフォーラム]、1991年2月)

編著[編集]

  • 『現代社会政策』(吉村朔夫共編、有斐閣[有斐閣双書]、1977年6月)
  • 『工場調査――巨大工場と労働者階級(上・下)』(向笠良一、木元進一郎、高木督夫共編著、新日本出版社、1980年11月・12月)
  • 『現代の階級構成と所得分配――大橋隆憲先生追悼論文集』(坂寄俊雄、野村良樹、野澤正徳共編、有斐閣、1984年9月)
  • 『基本的人権と労働者』(塩田庄兵衛共編、法律文化社、1985年10月)
  • 『ME「合理化」と労働組合』(編、大月書店、1986年7月)
  • 『リストラクチュアリング・労働と生活』(編、大月書店、1990年4月)
  • 『規制緩和と労働・生活』(三好正巳共編著、法律文化社、1997年5月)
  • 『生協職員論の探求――生協経営と職員のアイデンティティー』(三好正巳共編著、法律文化社、1997年9月)
  • 『生協再生と職員の挑戦――新版・生協職員論の探求』(三好正巳共編著、かもがわ出版、2005年9月)

出典[編集]

  1. a b c d 戸木田嘉久教授の略歴と著作目録PDF」『立命館経済学』第37巻第4・5号、1988年
  2. 芹澤寿良「戸木田嘉久、黒川俊雄、高木督夫先生を偲ぶ――労働組合運動の強化に活動家とともに献身された労働問題研究者PDF」『金属労働研究』第124号、2013年
  3. a b くらしと協同の研究所・研究委員プロフィール 生協インターネット
  4. 戸木田嘉久「私の戦後史――労働運動と私の経済学研究PDF」『立命館経済学』第37巻第4・5号、1988年
  5. a b 研究者群像(第5回)戸木田嘉久先生に聞くPDF」『経済科学通信』第58号、1988年
  6. 現代資本主義と労働者階級 CiNii 博士論文
  7. 労働運動の理論発展史 上 / 戸木田 嘉久【著】 紀伊國屋書店ウェブストア
  8. いげた・りょうじ「京都学習協議会の誕生PDF」京都の民主運動史を語る会会報『燎原』第120号、1999年
  9. 川口武彦塚本健編『日本労働者運動史――反独占国民春闘の発展』河出書房新社、1975年
  10. a b 要宏輝現代企業別労働組合批判と「関生型労働運動」(2)」連帯ユニオン関西地区生コン支部
  11. a b 芹澤寿良「戸木田嘉久先生と私PDF」『戸木田嘉久著作集第1巻』月報
  12. 高木督夫「戸木田嘉久著「現代資本主義と労働者階級」PDF」『立命館経済学』第31巻第2号、1982年
  13. 川本和良「戸木田嘉久教授退任記念論文集の刊行に際してPDF」『立命館経済学』第37巻第4・5号、1988年