卒業式
卒業式(そつぎょうしき、英:graduation ceremony)とは、学校などの教育機関で、学習課程を修了したことを認める卒業証書を与える際に行う儀式。卒業生になるための式。大学以外では卒業証書授与式、大学では学位記授与式とも呼ばれる。
概要[編集]
最終学年の終期で、日本では毎年3月[注 1]に行われる。学生生活のエンディングを迎える日。春のイベントの一種。学校教育法施行規則に定められ、始業式・終業式・入学式・修了式と並ぶ学校行事。幼稚園・保育園では、「卒園式」と呼ばれる。学習指導要領上、卒業式は学校行事の中の儀式的行事に分類される。
基本的に午前中で終了し、卒業生・在校生共に午後には下校となる。
出欠を記入するための帳簿である出席表上では必須で、小中高では卒業式の出席が義務付けられる[注 2]。お世話になった友達や先生に別れを告げる日。同級生と一緒に写真を撮影することができる。小中学校の義務教育の時は、卒業式の前の日に卒業アルバムが届く。学校を卒業する前の方は「在校生」、学校を卒業した方は「卒業生」と呼ばれる。卒業生は、学生時代の楽しかった過去の校内での思い出が感情に浸り、お互いに夢に向かって次の段階へと歩き出し、新たな旅立ちを迎える。実際には先はまだ見えない。「一期一会」という言葉がぴったりである。
必須な持ち物は、デジタルカメラ・ビデオカメラ(両方とも)、スマホ、各充電器、生徒手帳、かばん、筆箱。
酒は任意であり、大学卒業のみとなる。
卒業式当日の時程の順番は、登校→体育館入場(ここまで在校生)→開式→閉式→体育館退場(ここから卒業生)→教室へ戻る→卒業生の門出。卒業生は卒業式の日が最終登校日となり、少しだけ長い春休みが始まる。
内容[編集]
- 卒業生入場
- 開式の辞
- 国歌斉唱
- 卒業証書授与
- 一人ずつ、卒業生全員の名前が呼ばれ、順に卒業証書を受け取る。一般的な公立小学校を含む厳しい学校だと軍隊式に近い振舞いが求められるが、緩い学校だと壇上で一発芸をやる人もいる。大学や生徒数の多い学校では代表者のみが卒業証書を受け取り、教室に戻ってから一人ずつ卒業証書を受け取ることになる。
- 校長祝辞
- 来賓紹介
- 来賓祝辞
- 祝電披露
- 記念品贈呈
- 在校生送辞
- 卒業生答辞
- 送辞・答辞は代表1人が行うケースもあれば、小学校を中心に全員が一フレーズずつリレー方式で述べるケースもある。後者の場合、答辞の中に歌が入り、教職員お手製の
素人ミュージカルみたいな感じになる。
- 送辞・答辞は代表1人が行うケースもあれば、小学校を中心に全員が一フレーズずつリレー方式で述べるケースもある。後者の場合、答辞の中に歌が入り、教職員お手製の
- 送別の歌
- 在校生が合唱で歌う。
- 校歌斉唱
- 閉式の辞
順番・内容は学校によって異なるが、校長と来賓の祝辞は大体長い。選挙が近くなると、その地域選出の議員や候補者が来賓祝辞を行う傾向が強まる。
卒業式終了後[編集]
卒業生は教室に戻り、教員から卒業証書を受け取り、いろいろ話を聞かされる。その後、多くの在校生に見送られて正門から巣立っていく。卒業生の中には、感極まって涙を流す人もいる一方で、興奮して噴水に飛び込んだり、全裸になったりする人もいる。酒を飲んだり飲まされたりする。一方、原級留置となった学徒は不貞腐れて部室のこたつで不貞寝をする。
服装[編集]
制服のない小学校では服装はいわゆるよそ行きの服の場合もあるが、進学先の中学校の制服を着用して出席する場合や振り袖・袴を着用して出席する場合もある。小学生が卒業式で振り袖・袴を着るようになったのは成人式需要が減少した着物業界が新たな需要と着目したためである。
制服がある中学校・高等学校では当然制服を着用する。制服のない中学・高校、および大学・短大などの高等教育機関では洋装のスーツまたは振り袖・袴の和装だが、芸術系・ファッション系学部では在学中の成果代わりの仮装が主流である。
一方で同調圧力を嫌う学生で、変な服装の人もいないとは限らない。デーモン閣下は、早稲田大学の卒業式に悪魔の姿で出席しようとしたら職員にとめられ、その際に閣下は、「ここにいる諸君は明日からの正装を着てここに出席している、我が輩はこれが明日からの正装だ」と言って譲らず、押し問答になっていると、これを見ていた顔の知らない教授が「君のような骨のある学生は久しぶりに見た」と言って悪魔の姿で卒業式に出席させてもらった[注 3]。
教職員の服装は校長は正礼装であるモーニング(男性)または袴(女性)を着用し、教頭以下の教職員は準礼装のスーツを着用する。
練習[編集]
卒業式は儀礼的な要素が非常に強い上、学校生活の締めくくりをみっともないものにしてはいけないという意識の強さから、在校生・卒業生の送辞、答辞、呼びかけや校歌、送別の歌の練習にとどまらず、起立・礼・着席の所作など多岐に渡る練習が卒業式前日まで毎日のように行われる。練習時間は学活・ホームルームや総合的な学習の時間だけでは到底足りず、音楽の授業は全て卒業式の歌の練習、授業進行に余裕のある教科の授業まで歌の練習+所作の練習・式当日の動きの練習などに充てられる。
所作の練習の中で
- 欠伸をしてはいけない
- 痒みが出ても掻いてはいけない
と厳しく指摘されたのを覚えている人も居るのではないだろうか。
所作の練習は小学校や証書を全員授与する中学校では徹底して行われ、証書授与が総代のみの中学校や高等学校では練習量は減っていくものの、卒業式の練習が大変だったという思い出を持つ人は数多い。短大・大学等の高等教育機関では卒業式の練習はほとんど行われない。
卒業式の簡略化[編集]
新型コロナウイルスの流行で大勢の人間を1箇所に集めることが憚られ、卒業式を簡素化して行う学校も出てきた。
小中高では、
- 出席するのは卒業生とその保護者1名、校長・教頭・卒業生の担任教員のみ。在校生は休みまたは、教室でライブ配信される様子を見る。
- 来賓祝辞・送辞・答辞・送別の歌の簡素化あるいは省略。
- 体育館に人を集めず、各ホームルームで担任から卒業証書を渡し、校内放送を通じて校長の祝辞を聞く。
などが簡略化の事例として挙げられる。
学校は卒業生に対して卒業証書を授与することのみが義務化されているため、祝辞や送辞・答辞・送別の歌を省略しても法的に問題はない。むしろ、事実上の国際標準である6月学年末(後述)・9月新学期への移行が日本で実施される場合、卒業式が高温多湿シーズンになるため、簡素化が欠かせなくなると思われる。
またコロナ禍とは別に学校における働き方改革の一環として、内容の簡略化、出席する来賓の精選なども求められているという。
日本国外[編集]
アメリカでは、ハイスクールや大学で毎年5月下旬から6月に卒業式が実施される。州により教育課程が異なるため、小中では卒業式は実施しない傾向がある。
アメリカの高、大の卒業式は日本と同様、校長、生徒総代、著名人のスピーチのあと卒業証書の授与が行われ、その後、角帽等の帽子を投げる慣習がある。卒業シーズンに行われる卒業パーティーも盛大に行われる。
その他[編集]
- 保健室登校児童・生徒など、多勢との接触を避けることを希望する児童生徒や高校で謹慎等の処分を受け卒業式に処分明けできない生徒に向け、別日、別時間の卒業式が行われることがある。
- 大学や単位制高等学校では、通常の学年末以外に前期で卒業単位を満たした学生・生徒を対象に、校長室などでひっそり「前期卒業者卒業証書授与式」が行われる。そうした学生・生徒は前述のような感慨には浸れない。
- 大学では、中退・満期除籍後の社会的な実績が認められたOB、OGに特別卒業認定証(名誉学位)を授与する授与式が行われている。
関連項目[編集]
脚注[編集]
- 注