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オーストリア連邦鉄道
オーストリア連邦鉄道(ドイツ語:Österreichischen Bundesbahnen、略称:ÖBB(読みエー・ベー・ベー))とはオーストリアを中心に鉄道事業を行う鉄道事業者である。
概要[編集]
オーストリア最大の鉄道事業者で、2004年の構造改革以降、インフラ部門、旅客輸送部門、貨物輸送部門、およびその他の子会社で構成されている。
ÖBBグループ[編集]
ÖBBは1992年に制定された連邦鉄道法に従って組織されており、2003年および2009年の連邦鉄道構造改革法によって大幅に改革された。2005年1月1日以降ÖBBはオーストリア共和国が全額出費するÖBBホールディングスを筆頭とする4つの子会社に分割された。この改革の目的はインフラ部門と鉄道事業を分離することであった。
グループの構造[編集]
現在のÖBBは以下の子会社に分かれて事業を行っている。
- ÖBB-Personenverkehr Aktiengesellschaft(ÖBB旅客輸送):旅客輸送
- Österreichische Postbus Aktiengesellschaft:バスサービス
- ČSAD Autobusy České Budějovice a.s.
- ÖBB-Produktion Gesellschaft mbH:車両サービス
- ÖBB-Technische Services-Gesellschaft mbH:車両の製造・検査
- Rail Tours Touristik Gesellschaft m.b.H;
- iMobility GmbH:モバイルアプリwegfinderの開発
- ÖV Ticketshop GmbH
- City Air Terminal Betriebsgesellschaft m.b.H.
- Allegra Deutschland GmbH
- Arverio Deutschland GmbH
- Arverio Baden-Württemberg GmbH
- Arverio Bayern GmbH
- Rail Cargo Austria Aktiengesellschaft(レールカーゴ・オーストリア):貨物輸送とロジスティクスサービス
- Rail Cargo Logistics – Austria GmbH
- ÖBB-Produktion Gesellschaft mbH
- ÖBB-Technische Services-Gesellschaft mbH
- Rail Cargo Hungaria Zrt. (vormals MÁV Cargo):ハンガリーの貨物輸送部門。
- ÖBB-Infrastruktur Aktiengesellschaft(ÖBBインフラストラクチャー):鉄道インフラの建設、検査、運営、列車運行の管理
- ÖBB-Immobilienmanagement Gesellschaft mbH
- ÖBB-Operative Services GmbH & Co KG
- Rail Equipment GmbH
- Galleria di Base del Brennero – Brenner Basistunnel BBT SE
- Österreichische Postbus Aktiengesellschaft:バスサービス
- ÖBBホールディングスのその他の子会社は以下の通りである。
- ÖBB-Business Competence Center GmbH
- ÖBB-Werbung GmbH
- ÖBB-Finanzierungsservice GmbH
- European Contract Logistics- Austria GmbH
ÖBBホールディングス[編集]
インフラ[編集]
ÖBBホールディングスが出費するÖBBインフラストラクチャーは鉄道インフラ全体の建設と運営を担っている。ÖBBは現在、鉄道路線は全長4965㎞で、そのうち3650㎞が電化されている。オーストリア国内の路線に加え、1870年8月27日の国家条約に基づきリヒテンシュタイン全て、スイスの一部の路線でも鉄道路線を運営している。
建設や検査に加え、その他鉄道インフラ会社と同様に列車の運行の管理を行っている。総括管理はウィーンにある管制センターが行い、運行管理はインスブルック、リンツ、ザルツブルク、フィラッハ、ウィーンにある5つの運行管理センター(OMC)が行う。ÖBBインフラストラクチャーは657の信号設備を管理しており、そのうち324個が電子式信号である。
電化[編集]
ÖBBの電化鉄道路線は単相交流15㎸16.7㎐で電化されている。変電所からは110㎸で供給されている。ÖBBインフラストラクチャーはブラツ、ヴァルト・アム・アールベルク、フルプメス、オーベルフェラッハの水力発電所とエンツィンガーボーデン、シュナイデラウ、ウッテンドルフ1、ウッテンドルフ2の発電所を運営している。
旅客輸送[編集]
ÖBB旅客輸送はÖBBホールディングス社の100%子会社でSバーンえを含め長距離輸送と地域輸送の両方を担当している。
ÖBB旅客輸送の地域列車及び長距離列車の運賃は統合されており、割引切符も利用できる。
ÖBB旅客輸送が全額出資するÖsterreichische Postbus AGは定期バス輸送でオーストリア最大のバス会社であり、ほとんどの地域でバス路線えを運行している。バスの運賃形態は旅客輸送からは独立しており、鉄道とバスで普通の切符などは併用できないのでネットワーク切符が必要である。
貨物輸送[編集]
貨物輸送はÖBBホールディングスが全額出費するレールカーゴ・オーストリアが行う。レールカーゴ・オーストリアは海外の子会社とともにレールカーゴグループを形成しており、主幹会社として運営している。2021年には9410万トンの貨物が輸送された。
車両[編集]
ÖBBグループの保有車両は(2022年現在)1100両の機関車、2726両の客車、24357両の貨車で構成されている。2000年代以降の機関車はシーメンス製のタウルスである。
貨物列車の他、中欧を中心に走る高速旅客列車レイルジェットの運行も行っている。ÖBBグループの列車運転士はÖBB-Produktion GmbHに所属している。
長距離輸送ではドイツ鉄道(DB)やハンガリー国鉄(MÁV)の機関車に牽引されることもある。新型型機関車タウルスⅢの導入以来イタリアやスロバキアへの乗り入れが可能となった。理論上はアムステルダムまで走ることもできる。またタウルスⅡはパリやコペンハーゲンへの乗り入れも理論上は可能である。
→詳しくはÖBBの車両一覧を参照。
歴史[編集]
名前の変遷[編集]
- 1884年8月1日:オーストリア帝国国有鉄道(kkStB)
- 1918年11月12日:ドイツ=オーストリア国有鉄道(BÖStB)
- 1919年10月21日:オーストリア国有鉄道(ÖStB)
- 1921年4月1日:オーストリア連邦鉄道(BBÖ)
- 1938年3月18日:ドイツ帝国鉄道(DR)
- 1945年4月27日:オーストリア国有鉄道(ÖStB)
- 1947年8月5日:オーストリア連邦鉄道(ÖBB)
初期[編集]
オーストリア=ハンガリー帝国のオーストリアにおける鉄道網の段階的な国有化は1882年に始まり、オーストリア国有鉄道(kkStB)が誕生した。1896年から1918年まではオーストリア鉄道省の管理下にあった。
オーストリア=ハンガリー帝国の解体[編集]
1918年、第一次世界大戦の敗戦によりオーストリア=ハンガリー帝国は解体され、オーストリア国有鉄道は消滅した。鉄道網のそれぞれの部分と車両はチェコスロバキア、ドイツ領オーストリア、ユーゴスラビア(セルビア人・クロアチア人・スロベニア人王国)、ポーランド、イタリア、ルーマニアに譲渡した。
国有鉄道の設立[編集]
オーストリアの国有鉄道は1919年11月21日からはオーストリア国有鉄道(ÖStB)という名前で運行が開始された。新連邦憲法の施工後、1921年4月1日にオーストリア連邦鉄道と改称された。ただし当初は運輸省の一部として国の直接管理下に置かれた。 1923年7月19日、議会は連邦政府の提案により連邦鉄道法を可決させ、オーストリア連邦鉄道は有限会社や有限責任会社ではなく、法人として独立した事業者として設立された。同日に連邦政府はオーストリア連邦鉄道の規約を政令で公布し、1896年に公布された国有鉄道の規約を廃止した。
ちなみに現在のオーストリア連邦鉄道(ÖBB)と略称(BBÖ)が異なるのはスイスのエーンジンゲン=バルシュタール鉄道の略称が「OeBB」(スイスのドイツ語ではÖはOeと用いられることが多い)であり先に使われていたのでBundesbahnen Österreich(BBÖ)という社名が用いられた。
また戦後のインフレから世界恐慌までの数年間、BBÖはオーストリアの観光の成功に貢献した。
ドイツ帝国鉄道への合併と第二次世界大戦[編集]
1938年にオーストリアがナチス・ドイツに併合されるとBBÖは1938年3月18日にドイツ帝国鉄道に合併された。1938年の間に、BBÖの組織は既存のドイツ帝国鉄道の組織と順次統合され、ウィーン、リンツ、フィラッハ、インスブルックにドイツ帝国鉄道の管理局が置かれた。路線と営業所は既存のアウクスブルク、ミュンヘン、ザルツブルクの各管理局に分割された。
ドイツ帝国鉄道時代は新型のE18.2型電気機関車とE94型電気機関車が発注され、これにより電化された山岳路線においての牽引力が大きく強化された。ただしこれらの機関車は当時はオーストリアの山岳路線向けではなかったが改造によりこれらの路線に適し、ÖBB1020型として戦後数十年はオーストリアの山岳路線で使われ続けた。
その反面、ナチス・ドイツのユダヤ人に対する政策がオーストリアの鉄道にも影響を与えた。オーストリア併合直後、ユダヤ人鉄道労働者としてユダヤ人を強制労働させた。これらのユダヤ人は第二次世界大戦中は戦争兵站の最も重要な支えでもあった。
またオーストリアの鉄道網はドイツ国防軍の兵器輸送やユダヤ人などの強制移送された。そこで多くのオーストリア人がナチス支配下で、ドイツ帝国鉄道の社員として加害者側に関与した。
終戦前、連合国によって1945年4月までにオーストリアの鉄道網の41%が破壊された。
鉄道の復興[編集]
ÖBBはオーストリア共和国が連合国占領下から独立した際、国有鉄道として再出発し、1945年7月20日に業務を再開した。
終戦直後、インフラの復興工事が始まった。復興に加えて、電化も同時に進められた。
独立した事業者への転換[編集]
1969年に新しく公布された連邦鉄道法1969によってÖBBは独自の法人格を持たない経済事業体となった。主権的な業務は運輸大臣に残され、運行行政と鉄道当局は組織的に分離した。
自動車の普及[編集]
1960年代以降、ÖBBの重要性は低下した。オーストリアの人口が増えるにつれ自動車が第一の交通手段となった。そこで鉄道への補助金は、非鉄道利用者からは「不必要なものだ」と批判された。
新オーストロタクト[編集]
1991年にÖBBは「Neuen Austrotakt」(NATO'91)というによってはじめて全国的に定時ダイヤを導入した。NAT'91は「新たな鉄道の未来への第一歩」と宣伝されることがお起こった。これには列車を新しい塗装のデザインにしたり新しい運転台にすることも含まれていた。
ÖBBグループの設立 (2004年)[編集]
2004年にÖBBはÖBBホールディングスとその子会社を傘下とするグループとして再編された。 ÖBBの組織は2003年の連邦鉄道構造法に基づいており1992年の連邦鉄道法を改正したものである。ÖBBの企業形態の再編は一度に行われたのではなく、2004年から2005年にかけて段階的に行われた。
駅[編集]
1997年から実施されている「Bahnhofsoffensive」はオーストリアの主要駅におけるÖBBの投資プロジェクトである。オーストリアの重要な駅を近代的かつ魅力的な中心駅へ再建するという計画である。
オーストリアの12の主要駅、グラーツ中央駅、インスブルック中央駅、リンツ中央駅、クラーゲンフルト中央駅、レオーベン中央駅、ヴェルグル中央駅などがすでに再建されている。