エアポート急行

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エアポート急行(エアポートきゅうこう)は、かつて京浜急行電鉄(京急)で運行されていた列車種別のひとつである。

概要[編集]

2010年(平成22年)5月16日京急蒲田駅付近における上り線高架化に伴うダイヤ改正から設定された種別だった。

北側は羽田空港国内線ターミナル駅 - 泉岳寺駅方面、南側は羽田空港国内線ターミナル駅 - 新逗子駅間の2系統が設定された。このように、ほぼ全てが空港線直通列車であり、過去の急行のように、品川駅方面から新逗子駅まで運行する列車は設定されていない。

しかしながら、インバウンド客等の誤乗防止などの観点から2023年11月25日のダイヤ改正を機に元の「急行」の種別名称へ変更された。

変更前の運行形態[編集]

泉岳寺 - 羽田空港国内線ターミナル間[編集]

2010年(平成22年)5月15日まで運行されていた「急行」から列車種別名を変更したもの。

停車駅は下表を参照。

列車種別名を改称した理由は、京急蒲田駅 - 新逗子駅間においても新たにエアポート急行を設定するにあたり、かつて同区間を運行していた「急行」とは停車駅が異なることから、「急行」と「エアポート急行」は別の種別であることを位置付ける目的があり、既存の羽田空港駅(現名称:羽田空港国内線ターミナル駅 - 京急蒲田駅 - 泉岳寺駅方面の急行と合わせて種別名の統一を図ったものであった。

2012年10月21日に京急蒲田駅周辺が上下線とも高架化されるのに伴うダイヤ改正により、日中と土休日夜間上りのエアポート急行については、快特へ格上げされたため[1]、これらの時間は運行されない。

ラッシュ時間帯においては、品川方面からの電車が増発されたが、2010年5月15日まで空港線内のみの運用である急行が毎時3本運行されていたが廃止され、同時間帯は全ての列車が本線直通列車となった[2]

大多数の列車は、泉岳寺駅から先の都営浅草線京成押上線を介して京成本線成田空港駅および北総線印旛日本医大駅まで相互直通運転を行っている。このため、北側のエアポート急行は乗り入れ先の車両で運用されていることが多い。浅草線内は基本的に「普通」として各駅に停車するが、平日夜間を中心に泉岳寺駅から先の同線内において「エアポート快特」となる列車もある。早朝・深夜には、京急線内のみの運用である品川行や泉岳寺行が存在した。

羽田空港国内線ターミナル行の列車は、都営浅草線内においては従来通り「急行」と案内されている。

日中の羽田空港国内線ターミナル行は、平和島駅で普通列車との接続を行う。泉岳寺方面行きは京急蒲田駅で横浜方面からの快特からの接続をうける。鮫洲駅で普通列車を追い抜くのは朝夕の一部のみとなっていた。

新逗子 - 羽田空港国内線ターミナル間[編集]

横浜方面から羽田空港へのアクセス向上と、新逗子駅 - 京急蒲田駅間の他社線との乗り換え駅において、相互間利用で利便性向上を図るために2010年(平成22年)5月16日に新設された種別であった。

停車駅は下表を参照。

この区間はかつても「急行」が存在したことは前記したが、1999年(平成11年)7月31日に実施された“京急ダイヤ全面改正”により廃止されたため、今回の「エアポート急行」は約10年ぶりとなる事実上の急行の復活であった。ただし、当時の急行とは停車駅が異なっており、かつて急行停車駅であった生麦駅子安駅黄金町駅京急富岡駅は通過となり、逆に急行が通過していた仲木戸・井土ヶ谷・弘明寺・杉田・能見台の各駅がエアポート急行停車駅となった。なお、かつての急行は平日朝ラッシュ時間帯の上り列車が能見台駅と鶴見市場駅に、平日朝夕時間帯には井土ヶ谷・弘明寺両駅に、花月園競輪が開催される日に限り花月園前駅にそれぞれ臨時停車を行っていた[3]

日中を中心に10分間隔(毎時6本)8両編成または6両編成での運行であり、ほとんどの列車が新逗子駅 - 羽田空港国内線ターミナル駅間を運行するが、一部列車は途中駅である京急川崎駅・神奈川新町駅・金沢文庫駅始発・終着列車も存在する。運行時間帯は平日ダイヤでは数本を除き全列車が日中と夕ラッシュ時、土休日ダイヤではほぼ終日である。エアポート急行が運行されていない時間帯には、羽田空港国内線ターミナル駅発着の快特・特急・普通が運行され、平日の夜間においては羽田空港国内線ターミナル駅始発の特急が4両編成で運行されていたが、2012年の京急ダイヤ改正で消滅した。ダイヤ改正前は4本のみで、全て新逗子行きで運転されていた。この特急は、京急川崎駅で品川方面からの8両編成の快特に併合され12両編成となり、同駅 - 金沢文庫駅間は快特として運行した後、金沢文庫駅で切り離される。そして、金沢文庫駅から新逗子駅間は普通列車に種別を変更する。以前は浦賀行や、金沢文庫止まりもあった。

2010年5月15日まで運行していた羽田空港(現・羽田空港国内線ターミナル)駅発着の快特の増結車[4]と普通を統廃合した性質の列車であるため、エアポート急行の運行開始に伴い京急川崎駅 - 金沢文庫駅間の普通電車は毎時12本から9本に減便され、金沢文庫駅 - 京急川崎駅間の快特・特急で実施されていた品川方面発着列車(8両)への羽田空港発着列車(4両)の増結は平日夕方ラッシュ時を除き廃止された。その後2011年4月に東北地方太平洋沖地震東日本大震災)並びに福島第一原発事故の影響により実施された臨時ダイヤでは普通列車は毎時6本運行となり、日中に運行する一部の「エアポート急行」は4両編成に減車している。

2011年9月23日のダイヤ改正より、普通電車との接続・追い抜きは、羽田空港国内線ターミナル行が金沢文庫駅で普通と接続、子安駅で追い抜き、京急鶴見駅での接続(実質は、普通の到着待ち)、新逗子方面行が生麦駅で普通を追い抜き、上大岡駅で接続する。加えて、土休日の朝夕は、羽田空港国内線ターミナル行が、上大岡駅で普通に接続する。新逗子方面行が京急川崎駅で始発の普通に、神奈川新町駅でも普通に接続する。さらに、土休日の朝の羽田空港国内線ターミナル行が、神奈川新町駅と京急川崎駅で普通に接続する。南太田駅で普通列車を追い抜くのは、平日の下り2本(906D、908D)および土休日の上り1本(803D)のみ。

快特・特急との接続・通過待ちに関しては、新逗子方面行は上大岡で快特・特急の待ち合わせまたは神奈川新町で退避を行う。基本的に羽田空港国内線ターミナル行が神奈川新町駅で(ただし、土休日の朝は京急鶴見駅で)、新逗子方面行は京急川崎駅と金沢文庫駅での待避であるが、加えて平日ダイヤの朝方下りには神奈川新町駅と金沢文庫駅で待避、土休日ダイヤの朝方には京急川崎駅のみ、または神奈川新町駅のみで待避する列車も存在する。羽田空港国内線ターミナル行は、土休日ダイヤの朝は京急鶴見駅で特急の通過待ち、それ以外の時間帯と平日の全列車は神奈川新町駅で後続の快特の通過待ち行うが、この後続の快特または特急へ乗車し、京急蒲田駅で乗り換えた場合でも羽田空港方面の接続電車がないため、結局はこの「エアポート急行」が空港線内各駅への先着列車となる。また、新逗子から羽田空港国内線ターミナルまで、1回も後続電車に抜かれないエアポート急行が土休日の朝に1本だけある。2012年10月21日ダイヤ改正後は、上大岡(下りは金沢文庫も)でエアポート急行は一部を除き上下線ともに快特・特急の待ち合わせを行う。

南側のエアポート急行は、とりわけJR線からの乗り換え客を意識している。

エアポート急行の新設により、新たに優等列車が停車する駅のうちJR線との乗り換えが可能な駅は次の通りである。

なお、京急新子安駅も京浜東北線新子安駅に隣接しているが、こちらはエアポート急行停車駅ではない。

しかしながら、一部の普通列車をエアポート急行に格上げ(普通の減便)しただけであり、それまでのダイヤを大きく変更しなかったため、普通列車とエアポート急行との接続ができず、かつ普通列車のみの停車駅からの利便性はそれほど考慮されていないケースがある[5]。さらに、普通列車を格上げした種別(下位優等種別)であり、停車駅も比較的多いにも関わらず、普通列車を通過で追い抜いたり、上位優等種別である快特や特急を待避したりするケースが多いため、必ずしも速達性・利便性のある種別とは言えない。しかし、2011年9月23日のダイヤ改正で接続パターンが大幅に変更され、普通とエアポート急行の接続が増えた。

なお、震災及び原発事故による電力不足に伴って実施された第1次節電特別ダイヤでは、金沢文庫始発羽田空港行きの「エアポート急行」1本が京急久里浜駅 - 金沢文庫駅間で「特急」として運転された[6]。これ以外にも、節電ダイヤとして待避内容が変更となっている場合がある。

また、2012年10月21日のダイヤ改正以降は、日中・平日夕ラッシュに増発され、10分間隔の運行となった[1]

停車駅[編集]

凡例:●停車、|経由せず

駅名







逗子・葉山駅  
神武寺駅  
六浦駅  
金沢八景駅  
金沢文庫駅  
能見台駅  
杉田駅  
上大岡駅  
弘明寺駅  
井土ヶ谷駅  
日ノ出町駅
横浜駅





京急東神奈川駅
神奈川新町駅
京急鶴見駅
京急川崎駅
泉岳寺駅
品川駅
青物横丁駅
立会川駅
平和島駅
京急蒲田駅
糀谷駅
大鳥居駅
穴守稲荷駅
天空橋駅
羽田空港国際線ターミナル駅
羽田空港国内線ターミナル駅

車両[編集]

逗子・葉山駅 - 羽田空港駅間の「エアポート急行」は京急車による運用が原則で、8両固定編成や4両編成を2本連結した8両編成、6両固定編成で運行される。登場当初は特に京急2100形の登場以降に余剰となっていた京急2000形8両編成が多く充当されていた。一部には6両編成で運転されている列車も存在する。なお、一部に東京都交通局5500形によって運行される列車が存在すていた[7]

南側系統の「エアポート急行」で運用される車両形式は次の通りである。

  • 京急600形 4両編成2本で組成された8両編成や8両固定編成が使用される。
前者は基本的に三菱製と東洋製で混結にならないように組成される。
  • 京急新1000形 4両編成2本で組成された8両編成もしくは6、8両固定編成が使用される。最近では増結編成は1890番台などが中心的に使用されている。
  • 京急1500形 6、8両固定編成が基本的に使用される。稀に4両固定編成が1500形や新1000形の4両編成などとの連結で使用されることもある。
  • 京急2100形 過去にダイヤ改正により消滅していたものの現在は平日朝運行番号1Aとして羽田空港6時1分発泉岳寺行きのみ運転されている。
  • 都営5500形 8両固定編成。5300形を置き換えるために製造された車両で、2018年9月3日から京急線での運用を開始している。

京急蒲田以北は京浜急行電鉄・東京都交通局京成電鉄北総鉄道の各事業者に所属する8両編成で運行されていた。

過去の運用車両

脚注[編集]

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  1. a b “10月21日(日)から京急線 ダイヤ改正” (PDF) (プレスリリース), 京浜急行電鉄, (2012年7月31日, http://www.keikyu.co.jp/company/20120731HP%E3%80%8010月21日ダイヤ改正.pdf 2012年8月1日閲覧。 
  2. このため、空港線内のエアポート急行だけで見ると毎時12本から9本に減少した。
  3. ただし花月園駅はホームが6両編成分しかなかったため、臨時停車する急行は6両編成の列車に限られた。
  4. 12両編成の快特が京急川崎駅で分割・併合をし、付属編成4両編成が京急川崎駅 - 羽田空港駅間において「特急」として運行していた
  5. 神奈川新町 - 京急鶴見間では4連続通過となる。
  6. 特別ダイヤによる電車の運転について 京浜急行電鉄
  7. 列車末尾がTになっている列車。
  8. しかしながら2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による東京電力計画停電実施の影響により京急全線が特別ダイヤでの運行となり、朝ラッシュ時において著しい遅延が発生したため、一部列車の金沢文庫駅 - 新逗子間を代走した実績がある。

参考文献[編集]

関連項目[編集]