バス (自動車)
バスとは、OMNIBUS(オムニバス)の略で、もともと乗り合い馬車を意味していた旅客の大量輸送を目的とする自動車。
概要[編集]
一般的には前後に長く高さのある箱型の車体を持ち、車内には多数の座席を備えている。日本では乗車定員11名以上29名以下で、総重量8t未満の車両が中型乗用自動車、30名以上(総重量8t以上の場合、乗車定員30名未満も含む)が大型乗合自動車として扱われる。免許は、中型2種(8t限定解除要)、大型2種免許であり、両方とも21歳以上である。
バスのタイヤ外径は、クロカンSUVの普通車のタイヤより更に大きく、85cm以上~最大100cm弱である。
沿革[編集]
乗り合い馬車を置き換えるために登場した。第一次世界大戦後に各国に普及した。当初はガソリンエンジンを使用し、日本などの戦時中は木炭から発生する一酸化炭素などの木炭ガスも燃料としたが、太平洋戦争後、出力が大きく、燃料の引火点が高くて安全な軽油を使用したディーゼルエンジンの車両が主力となった。
用途による分類[編集]
路線・都市用[編集]
所謂「路線バス」と呼ばれるもの。複数の乗降用ドア、広い立ち席スペースや吊革・手すりを持ち、バス停ごとの乗客の流動を考えたものとなっている。現在は最前部と車両中央部の2箇所にドアを備えるものが多いが、車掌が乗務していた頃は中ドアだけというのもあった。
路線・郊外用[編集]
所謂路線バスと呼ばれるタイプの中でも、座席を増やし着席定員に重きを置いたタイプ。乗車時間が長くなることも考えて、背もたれが高いハイバックシートを装備している車両もある。
路線・高速用[編集]
高速道路を経由し、離れた主要都市を結ぶ高速バスに使われるタイプ。乗車・降車回数が少ないのでドアは最前部1箇所のみで車内での乗客の流動はあまり考えられていない。乗車時間が必然的に長くなるので座席はリクライニングシートを装備しトイレを供えている事が多い。
夜出発し、目的地に朝到着する夜行バスも多く運行されており、夜行バスには座席の幅を広げた3列シート車や乗車定員の多い2階建て車両が使われる。
貸切・観光用[編集]
一つの団体がバスを貸し切り、旅行などに使う。車内のレイアウトは高速バスに近くなるが、トイレがなかったり、補助席を装備していたりする。またエンターテイメント設備として、ビデオの放映設備やカラオケを設置している車両もある。
貸切・送迎用[編集]
学校や企業の送迎用車両。路線バスと車両を兼用している例も多い。
車両サイズによる分類[編集]
特大車[編集]
全長12mを超える車両が該当する。国産車では設定がないので、輸入車のみがある。
大型車[編集]
全長10m~12m、車幅2.5mが該当する。よく見かけるタイプのバスで、国内のバス3メーカー全てが製造している。
中型車[編集]
全長9m、車幅2.3mが該当する。乗客数のあまり多くない路線や、やや狭隘な区間でよく使われる。かつてはこの中型車の全長を10.5mにまで伸ばした「中型ロング車」が製造されていた。日野自動車・いすゞ自動車が製造している。
小型車[編集]
全長7m以下の車両が該当する。狭隘部を通る路線や乗客数が非常に少なく中・大型車での運行を代替した路線で使われる。路線用途では日野自動車のみ、観光・送迎用も含めると、トヨタ自動車、三菱ふそうトラック・バスも製造している。
トランスミッション[編集]
近年までMTが主流だった。これは日あたりの走行距離が長く、動力伝達効率が低く、燃費の悪いATよりも動力伝達効率が高く、燃費の良いMTがバス事業者にとって好まれたためである。しかし技術革新によってATの伝達効率が向上するとMTとの燃費差は小さくなり、2017年9月施行の「ポスト・ポスト新長期規制」以降、MTの設定は日野・セレガ、いすゞ・ガーラを除き消滅した。
バスメーカー[編集]
2004年のジェイ・バス発足まで、バスボディ(車体)のメーカーとバスシャーシ(駆動機構)のメーカーは別々なのが通常だった。
三菱ふそうトラック・バス[編集]
名門三菱自動車工業から分離してできた会社。三菱の名を冠するが、資本的にはドイツのダイムラーの影響が強い外資系企業。外資が強いためか、外国でも売れる車種に力を入れている他、全ての車種でATを標準化している。
製造工場は呉羽自動車工業の伝統を引く富山県にある。かつては中型路線バスも製造していたが、2017年9月のポスト・ポスト新長期規制適合開始時に設定が消された。
製造している車種
- エアロエース・エアロクィーン(貸切・高速路線用)
- エアロスター(大型路線用)
- ローザ(マイクロバス)
日野自動車[編集]
商用車のヒノノニトンやチームスガワラなどが有名なメーカーだが、バスとしてはシャーシメーカーから始まり、金産自動車工業や帝国自動車工業のボディを主に架装していた。バスの製造は後述のいすゞ自動車と合弁で設立したジェイ・バスが行っており、ディーゼル路線車はいすゞ自動車から供給されている。日野が管理する工場はボディメーカーの金産自動車工業の伝統を引く石川県にある。
製造・販売している車種
- セレガ(貸切・高速路線用)
- ブルーリボン ハイブリッド(大型路線用・ハイブリッド)
- ポンチョ(小型路線用)
- メルファ(中型貸切・送迎用)
いすゞ自動車[編集]
商用車のいすゞのトラックが有名なメーカーだが、バスとしては日野自動車同様、シャーシメーカーが起源。日野自動車と合弁で設立したジェイ・バスでバスの製造を行っており、日野からは観光バスの供給を受け、大型・中型路線車は日野へ供給している。工場はいすゞとボディメーカーだった川崎重工業が合弁したいすゞバス製造が新設した栃木県にある。
製造・販売している車種
トヨタ自動車[編集]
乗用車メーカー大手のトヨタもバスの製造を行っている。マイクロバスは系列の日野自動車へも供給している。
製造している車種
UDトラックス(撤退)[編集]
かつての日産ディーゼル。スゥエーデンのボルボグループ。シャーシメーカーで、自社ではボディ(車体)の製造を行わず、資本的に繋がりのない富士重工業や西日本車体工業(西日本鉄道グループ)といったボディメーカーにシャーシを供給していた。2012年にバス事業より撤退。末期は自社のオリジナルではなく、三菱ふそうトラック・バスから供給された車種を自社のブランドで販売していた。
製造していた車種
- スペースアロー・スペースウィング(貸切・高速路線用)
- スペースランナーRA(大型路線用)
- スペースランナーRM(中型路線用)
- スペースランナーJP(中型ロング路線用)
富士重工業(撤退)[編集]
現在は、SUBARUの関連企業の桐生工業。群馬県にバスボディの工場があった。2002年に撤退。
北村製作所(撤退)[編集]
新潟県に所在したバスボディメーカー。シャーシはいすゞ自動車から供給を受けていた。1995年にバスボディ事業から撤退。
西日本車体工業(撤退)[編集]
北九州市に所在した西日本鉄道系のバスボディメーカー。シャーシは各メーカーを採用したが、晩年は主に日産ディーゼルから供給を受けており、日産ディーゼルの事業撤退と共にボディ製造を撤退した。
帝国自動車工業(過去)[編集]
横浜鶴見区に所在したバスボディメーカー。シャーシは主に日野自動車から供給を受けていた。ジェイ・バスの起源の一つで後に金産自動車工業と合併して日野自動車工業となった。現在、帝国の工場はマンション等に転用されている。
川崎重工業(過去)[編集]
各務原市に所在したバスボディメーカー。シャーシは主にいすゞ自動車から供給を受けていた。ジェイ・バスの起源の一つで後にいすゞと合弁していすゞバス製造となり、各務原市から撤退した。
ボルボ(過去)[編集]
世界的な自動車メーカーだが、日本でも過去に富士重工業のボディを架装した高速バス用シャーシを販売していた。