疾風の勇人
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『所得倍増伝説 疾風の勇人』(しょとくばいぞうでんせつ しっぷうのはやと)は、大和田秀樹による日本の漫画作品。週刊モーニングで2016年1月28日号から連載が開始されている。2017年6月15日号のNo27において最終回を迎えた。吉田茂内閣の崩壊までで池田勇人の首相就任は描かれることなく、突然の最終回であった。
概要[編集]
昭和22年(1947年)、太平洋戦争が終戦を迎えて2年たった東京から物語は始まる。主人公は後に日本の第58代総理大臣となる池田勇人で、彼を中心にして戦後世界、政治、選挙など様々な世界が赤裸々に描かれ、その中で池田も成長していき物語は進んでゆく。大平正芳の回想などを交えて史実に近い構成が展開されている点や、池田だけでなく大平、田中角栄、宮沢喜一、佐藤栄作、吉田茂、ダグラス・マッカーサーと歴史に名を残す著名人が登場する点でも注目される。
1巻では大蔵省の次官時代から吉田学校入学、政治家への転身が描かれている。2巻では選挙でトップ当選を果たしたばかりであるにもかかわらず、吉田茂から重要な大蔵大臣のポストを与えられ、アメリカのドッジや他の政敵との闘争や駆け引きが描かれている。第3巻では池田の失言、自らの辛い過去についての回想、アメリカとの講和交渉のため池田が吉田の密命を受けて渡米し、見事に任務を果たして帰国するところまでが描かれている。
登場人物[編集]
日本[編集]
- 池田勇人(いけだ はやと)
- 主人公。後の第58代総理大臣であるが、当時はまだ政治家ではなく大蔵官僚。切れ者であるが非情に直情的。1949年の総選挙でトップ当選を果たして新人議員であるにも関わらず吉田茂から大蔵大臣に起用される。
- 大平正芳(おおひら まさよし)
- 大蔵省官僚。安本(経済安定本部、現在の経済企画庁)の公共事業課長[1]。後に第68代総理大臣となるが、この時は池田の秘書官。
- 吉田茂(よしだ しげる)
- 池田の師匠にして内閣総理大臣。吉田学校の校長。新人政治家である池田を大蔵大臣に起用する。
- 白洲次郎(しらす じろう)
- 吉田茂の懐刀で側近。吉田に的確な助言を行なう。池田と共に渡米する。
- 佐藤栄作(さとう えいさく)
- 後に池田の後を継ぐ内閣総理大臣であるが、この時は池田のライバルでもありよき友人でもあり時には喧嘩もする吉田学校の一員。1949年の総選挙でトップ当選を果たす。
- 前尾繁三郎(まえお しげさぶろう)
- 池田と税務署長時代からの親友で生涯の盟友でもあるが、のんびりした一面をにおわせ、語尾を常に伸ばす癖がある。
- 田中角栄(たなか かくえい)
- 佐藤の後を継ぐ総理大臣だが、この時はまだ新米の政治家。しかも1949年の総選挙前に炭管疑惑で逮捕され、保釈で出てから2位当選を果たした。
- 宮島清次郎(みやじま せいじろう)
- 日清坊の元会長で財界の巨魁。吉田茂の大学時代の同期で親友であり、政権を左右できるだけの実力を持っている。
- 宮沢喜一(みやざわ きいち)
- 平成時代に入ってからの総理大臣だが、この時は大平と並ぶ池田の秘書官。大蔵省きっての秀才[2]。英語力に優れ、池田に随行して渡米する。
- 大野伴睦(おおの ばんぼく)
- 自由党創設に関与した党人政治家の重鎮。官僚嫌いの酒好きで政界三酒仙の1人。池田に酒を懐に入られて大いに気に入る仲となる[3]。
- 川北幸子(かわきた さちこ)
- 帝都新聞記者。1949年の総選挙における池田勇人の取材をする。
- 広川弘禅(ひろかわ こうぜん)
- 民自党幹事長。新人の池田の持ち出した事案に反対するが、池田の胆力に驚き怯える[4]。
- 松永安左エ門(まつなが やすざえもん)
- 電気事業再編成審議会委員長。仇名は「電力の鬼」。官僚嫌いで命を狙われた経験もあるが、鬼同士ということで池田と意気投合する。
- 三木隆(みき たかし)
- 電気事業再編成審議会の委員。弟の孫に芸人の出川哲朗がいる。
- 片山哲(かたやま てつ)
- 第46代内閣総理大臣。内閣で内部抗争が起こり短期間で内閣総辞職する。
- 芦田均(あしだ ひとし)
- 第47代内閣総理大臣。GHQ民政局により擁立された傀儡の首相。昭電疑獄で内閣総辞職を余儀なくされる。
- 徳川宗敬(とくがわ むねよし)
- 参議院の無所属議員が集まって編成された会派・緑風会の議員総会議長。
- 一万田尚登(いちまだ ひさと)
- 日銀総裁。
- 浅沼稲次郎(あさぬま いねじろう)
- 社会党書記長。カツ丼が大の好物。
- 苫米地義三(とまべち ぎぞう)
- 国民民主党最高委員長。
- 増田甲子七(ますだ かねしち)
- 自由党幹事長。
- 三木武夫(みき たけお)
- 後の内閣総理大臣であるが、国民民主党幹事長として登場。実質的に苫米地に代わり党の実権を握っている。1948年に芦田内閣が総辞職した際、マッカーサーから後継首相に推されたが憲政の常道を理由に辞退した。
- 麻生太賀吉(あそう たがきち)
- 吉田茂の娘婿で衆議院議員。後の内閣総理大臣・麻生太郎の実父。
アメリカ[編集]
- ダグラス・マッカーサー
- 連合国軍総司令部(GHQ)の最高司令官。常に己を戦いの中に置く武人。アメリカ大統領選挙でハリー・S・トルーマンに敗北する。
- ジョゼフ・ドッジ
- GHQの経済顧問。別名は「金の悪魔」(マネー・デビル)。池田の提出した1949年度の大蔵省予算原案のやり直しを命じる[5]。金を粗末にする事を決して許さない一面がある[6]
- ウィリアム・マーカット
- 経済科学局局長。
- チャールズ・L・ケーディス
- 民政局次長。
- ハリー・S・トルーマン
- アメリカの第33代大統領。器が小さく、マッカーサーの作戦を不許可にしたり更迭したりした。そのため支持率は28.3パーセントまで落ち込んだ(歴代大統領では初の最低支持率)。
- マシュー・リッジウェイ
- マッカーサーの後任の最高司令官。日本に降り立った日は戦闘服に身を包んで胸には手榴弾を付けたままだったという。
各話タイトル[編集]
第1巻[編集]
- 第1話 一千億を集めた男
- 第2話 池田と佐藤
- 第3話 “学校”説明会
- 第4話 最高司令官の野望
- 第5話 吉田学校入学
- 第6話 政局(いくさ)のはじまり
- 第7話 刻(とき)を止める男
- 第8話 諸刃の大疑獄
- 第9話 首班指名
第2巻[編集]
- 第10話 雄弁と沈黙
- 第11話 一年生の大仕事
- 第12話 元官僚 vs. 党人派
- 第13話 “金の悪魔(マネーデビル)”ジョゼフ・ドッジ
- 第14話 占領下の大蔵大臣
- 第15話 劇薬
- 第16話 タフネゴシエイター
- 第17話 真の理由
- 第18話 敵なし罠あり
第3巻[編集]
- 第19話 失言
- 第20話 地獄を見た男
- 第21話 幼なじみ
- 第22話 電力の鬼
- 第23話 極秘指令
- 第24話 マッカーサーの真意
- 第25話 託されたもの
- 第26話 ペンタゴンの夜
- 第27話 密書
第4巻[編集]
- 第28話 シリアス ブリーチ オブ エチケット
- 第29話 選挙対策 雀卓会議
- 第30話 戦争と特需と
- 第31話 75000
- 第32話 インフレ一直線
- 第33話 経済の原則
- 第34話 放言に学べ
- 第35話 特需の本質
- 第36話 講和をかけた大博打(バクチ)
第5巻[編集]
- 第37話 さらば好敵手
- 第38話 大臣のイス
- 第39話 全権団編成
- 第40話 講和にかける思い
- 第41話 安保条約
- 第42話 全権委員
- 第43話 講和の影
- 第44話 サンフランシスコ講和会議
- 第45話 独立の味
第6巻[編集]
- 第46話 過去からの訪問者!
- 第47話 密約の中味
- 第48話 財政論争
- 第49話 衝突
- 第50話 池田の奇襲
- 第51話 戦慄、三木武吉
- 第52話 魚のホネ
- 第53話 尋常ならざるバカ
- 外伝 大蔵大臣 田中角栄
第7巻[編集]
- 第54話 禁断の肴
- 第55話 懲罰動議
- 第56話 計略
- 第57話 佐藤栄作の兄
- 第58話 消耗戦
- 第59話 池田・ロバートソン会談
- 第60話 疑獄
- 第61話 最後のつとめ
- 第62話 新たな世界