丸尾直美
丸尾 直美(まるお なおみ、1932年4月21日 - 2020年11月21日)は、経済学者。元・慶應義塾大学教授。尚美学園大学名誉教授[1]。専攻は経済政策論。
経歴[編集]
静岡県小笠郡浜岡町(現・御前崎市)生まれ[2]。静岡県立池新田高等学校卒業。池田潔の『自由と規律』や小泉信三の『マルクス死後50年』の影響で慶應義塾大学に進学[3]。気賀健三、加藤寛に師事。1955年慶應義塾大学経済学部卒業[2]。1960年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了[4][注釈 1]。
1963年中央大学経済学部専任講師[5]、1965年助教授[9]、1972年教授[5]。1972年~1973年ケンブリッジ大学に留学、のちスウェーデンに留学[8]。1974年「福祉経済政策の原理 : 経済成長と福祉の関係についての研究試論」で経済学博士(慶應義塾大学)[10]。1989年慶應義塾大学総合政策学部教授、1998年日本大学総合科学研究所教授、2002年尚美学園大学総合政策学部教授[5]。2006年退職[11]、尚美学園大学客員教授[12]。
この間、日本フェビアン研究所研究員[13][14]、社団法人スウェーデン社会研究所監事[15]、同理事[16]、社団法人社会経済国民会議常任理事、同福祉政策問題特別委員長、経済政策特別委員、医療制度専門部会長[17]、慶應義塾大学講師、早稲田大学講師[18]、株式会社ライフデザイン研究所副所長(1988年~2002年)[19][20]、国際医療福祉研究所副所長(1998年~)[21]、北京大学講師(集中講義)、同志社大学大学院講師などを兼任。2005年時点で慶應義塾大学非常勤講師、日本大学大学院非常勤講師、財団法人社会経済生産性本部理事・福祉政策特別委員会委員長を兼任[5]。2010年時点で日本社会事業大学客員教授を兼任[7]。
民社党のブレーンの1人であり、民主社会主義研究会議(民社研)理事[22]、民社研労働学校講師、財団法人富士社会教育センター理事、富士通信教育協会理事[17]、日本労働教育センター監事[23]、政策研究フォーラム理事[24]、同顧問[25]、核兵器禁止平和建設国民会議(核禁会議)第4代議長(2008年2月~2012年1月)も務めた[26]。
2020年11月21日、誤嚥性肺炎のため死去、88歳[27][28]。
人物[編集]
気賀健三の門下生で、同門の加藤寛、原豊とともに福祉国家政策論トリオとして知られた[29]。1963年に民主社会主義研究会議(民社研)の「北欧福祉国家研究視察団」の一員としてスウェーデン、ノルウェー、デンマークを訪問した[30]。
政策研究フォーラムの機関誌『改革者』2021年2月号に「追悼 丸尾直美先生を偲ぶ」として、駒村康平「恩師 丸尾直美先生の学恩に報いる」、飯島大邦「丸尾直美先生から受け継ぐべきこと」が掲載された[31]。
著書[編集]
単著[編集]
- 『入門・現代の賃金問題――賃金交渉に応用できる賃金論』(民主社会主義研究会議[学習ライブラリー]、1964年)
- 『英国経済における成長・安定・分配――英国経済停滞の原因の分析』(慶應義塾大学産業研究所[産業研究所シリーズ]、1964年)
- 『福祉国家の経済政策――混合経済の政策原理』(中央経済社、1965年)
- 『福祉国家の話』(日本経済新聞社[日経文庫]、1967年、新版1979年)
- 『経済政策新講』(中央経済社、1968年、増補1972年、全訂1980年)
- 『高成長・高福祉の経済学――日本の課題と英国の教訓』(日本経済新聞社、1970年)
- 『脱GNP次代――人間の復権を求めて』(ダイヤモンド社[ダイヤモンド現代選書]、1971年)
- 『生産性と福祉』(日本生産性本部[生産性全書]、1974年)
- 『福祉の経済政策』(日本経済新聞社、1975年)
- 『福祉国家と民主社会主義』(民社党教宣局、1977年)
- 『民主社会主義の経済学――福祉の政治経済学のために』(富士社会教育センター出版局[富士選書]、1977年)
- 『福祉国家は破産するか――先進国病克服のために』(日本経済新聞社[日経新書]、1978年)
- 『日本型福祉社会』(日本放送出版協会[NHKブックス]、1984年)
- 『スウェーデン労働者基金――その背景と影響』(スウェーデン社会研究所[スウェーデン社会研究所資料]、1985年)
- 『入門経済政策』(中央経済社、1988年、改訂版1993年)
- 『豊かさ創造――「ゆとりうるおい」の福祉展望』(社会経済国民会議[セクジェ・マネジメントブック]、1990年)
- 『スウェーデンの経済と福祉――現状と福祉国家の将来』(中央経済社、1992年)
- 『総合政策論――日本の経済・福祉・環境』(有斐閣、1993年)
- 『市場指向の福祉改革』(日本経済新聞社、1996年)
- 『経済学の巨匠――26人の華麗なる学説入門』(渡邉由希編、生活情報センター、2005年)
- 『どうなる?どうする!年金と福祉――丸尾直美インタビュー・論文』(著・講話、宮崎緑インタビュアー、エイドリバー出版事業部、2009年)
共著[編集]
- 『社会化と経済計画――イギリスとソ連の社会主義』(加藤寛共著、理想社、1960年)
- 『現代資本主義入門』(加藤寛、原豊共著、論争社[論争新書]、1961年)
- 『現代経済政策の理論――成長・安定・平等』(加藤寛、原豊共著、東洋経済新報社、1962年)
- 『資本係数と分配率の趨勢変動』(加藤寛共著、慶應義塾大学産業研究所[産業研究所シリーズ]、1962年)
- 『現代の経済はどう変るか――転型期の日本経済入門』(加藤寛、原豊共著、講談社[ミリオンブックス]、1963年)
- 『賃金分配の新しい在り方――経済成長・生産性・物価』(藤田至孝共著、ダイヤモンド社、1964年)
- 『福祉国家のビジョン――明日の日本を考える』(関嘉彦共著、講談社[ミリオンブックス]、1964年)
- 『支払能力と適正賃金』(藤田至孝共著、林書店、1966年)
- 『所得政策』(楠田丘共著、日本生産性本部、1967年)
- 『日本経済 その障害を超えて――成長と福祉をめざす』(加藤寛、原豊共著、好学社、1971年)
- 『現代経済政策論』(小松雅雄、加藤寛、原豊、赤沢昭三共著、東洋経済新報社、1972年)
- 『人間と環境の経済学』(加藤寛共著、ダイヤモンド社、1972年)
- 『世界の経営参加はここまで進んだ』(永山泰彦共著、ダイヤモンド社、1975年)
- 『福祉経済学』(武藤忠義、住谷磬共著、青林書院新社[青林双書]、1975年)
- 『総合福祉経済学』(赤沢昭三、桜井等至共著、好学社、1979年)
- 『新しい経済学』(加藤寛共著、ダイヤモンド社[Diamond International Academy]、1980年)
- 『演習経済学双書⑦経済政策』(鈴木守共著、法学書院、1981年、改訂版1987年)
- 『次代を拓く経済政策――経済政策論の新しいパラダイムを求めて』(野間俊威、郡嶌孝、横山彰、清川義友共著、好学社、1985年)
- 『総合福祉政策――新しい政治経済学』(赤沢昭三、桜井等至共著、好学社、1986年)
- 『経済構造の転換は可能か』(加藤寛、藤田至孝、原豊共著、八千代出版、1986年)
- 『エコサイクル社会』(西ヶ谷信雄、落合由紀子共著、有斐閣、1997年)
- 『公共政策の分析視角』(大木啓介編、上條末夫、安章浩、荘発盛、堀之内敬共著、東信堂、2007年)
編著[編集]
- 『経済政策』(編著、日本評論社[セミナー経済学教室]、1974年)
- 『経済学の要点整理――公務員試験』(編、法学書院、1986年、改訂版1988年)
共編著[編集]
- 『経営参加とは何か――世界の新しい潮流』(加藤寛共編、日本生産性本部、1971年)
- 『福祉生活の指標を求めて――「生活の質」の研究』(村田昭治共編、有斐閣、1973年)
- 『演習経済学双書⑦経済政策』(改訂版、鈴木守共編著、法学書院、1973年)
- 『現代経済学の事典』(島野卓爾共編、有斐閣、1976年)
- 『職場組織の改善と能率』(高須裕三、坪井珍彦共編著、ダイヤモンド社、1976年)
- 『福祉志向の論理――続『福祉政策の指標を求めて』』(村田昭治、井関利明共編著、有斐閣、1976年)
- 『民主主義の経済学――紛争解決の理論と現実』(加藤寛共編、千曲秀版社、1976年)
- 『ワークブック経済政策』(柏崎利之輔共編、有斐閣、1976年、増補版1984年)
- 『福祉・環境の経済学――生活の質的改善を求めて』(五井一雄、熊谷彰矩共編、千曲秀版社、1977年)
- 『質の経済学――アメニティ社会の実現』(熊谷彰矩共編著、同文館出版、1980年)
- 『ゆたかな生活と日本経済』(清水嘉治共編著、中央経済社[成熟の日本経済]、1982年)
- 『都市と住宅――経済学の提言』(五井一雄共編、三嶺書房、1984年)
- 『Economic growth, welfare and industrial relations : a comparative study of Japan and Sweden』(Björn Thalberg共著、Japanese Institute for Social Studies on Sweden、1984年)
- 『マクロ経済政策』(土屋六郎、吉村二郎共編著、中央大学出版部、1985年)
- 『福祉サービスと財政』(隅谷三喜男共編著、中央法規出版[明日の福祉]、1987年)
- 『福祉ミックス社会への挑戦――少子・高齢時代を迎えて』(加藤寛共編著、中央経済社、1998年)
- 『先進諸国の社会保障5 スウェーデン』(塩野谷祐一共編、東京大学出版会、1999年)
- 『ポスト福祉国家の総合政策――経済・福祉・環境への対応』(益村真知子、吉田雅彦、飯島大邦共編著、ミネルヴァ書房[Minerva社会福祉叢書]、2001年)
- 『福祉ミックスの設計――「第三の道」を求めて』(加藤寛共編、有斐閣、2002年)
- 『医療制度改革の論点』(藤井良治共編、社会経済生産性本部生産性労働情報センター、2003年)
- 『Welfare policy and labour markets : transformations of the Japanese and Swedish models for the 21st century』(A. Björklund、C. le Grand共著、Almqvist & Wiksell International、2004年)
- 『高齢者福祉サービスの市場化・IT化・人間化――福祉ミックスによる高齢者福祉改革』(川野辺裕幸共編著、ぎょうせい、2005年)
- 『出生率の回復とワークライフバランス――少子化社会の子育て支援策』(川野辺裕幸、的場康子共編著、中央法規出版、2007年)
- 『福祉政策と労働市場――変容する日本モデル・スウェーデンモデル』(カール・レグランド、レグランド塚口淑子共編、ノルディック出版、発売:海象社、2008年)
- 『ECOシティ――環境シティ・コンパクトシティ・福祉シティの実現に向けて』(三橋博巳、廣野桂子、矢口和宏共編著、落合由紀子著、中央経済社、2010年)
- 『コミュニティの再生――経済と社会の潜在力を活かす』(宮垣元、矢口和宏共編著、中央経済社、発売:中央経済グループパブリッシング、2016年)
訳書[編集]
- アドルフ・A・バーリ『財産なき支配――アメリカ経済の新しい発展』(加藤寛、関口操共訳、論争社[論争叢書]、1960年)
- A.ションフィールド『成長と安定の経済政策――英国労働党と保守党の政策』(加藤寛、藤田至孝共訳、理想社、1961年)
- マイケル・キドロン『現代の欧米資本主義』(藤田至孝共訳、経済往来社、1968年)
- G.ミュルダール著『社会科学と価値判断』(竹内書店、1971年)
- グンナー・アドラー=カールソン『機能的社会主義――中道経済への道』(永山泰彦共訳、ダイヤモンド社[ダイヤモンド現代選書]、1974年)
- G.ミュルダール『反主流の経済学』(加藤寛共訳、ダイヤモンド社[ダイヤモンド現代選書]、1975年)
- スウェーデン経営者連盟編『スウェーデンにおける経営組織の革新――500の実験例から得た結論』(高須裕三共監訳、日本能率協会、1977年)
監修[編集]
- 菊池幸子共同監修『労働者教育と産業民主主義』(富士社会教育センター出版局[富士選書]、1978年)
- 和田雄志、佐藤政孝、半場卓編著『地域からの情報発信――地域情報化テイクオフの条件』(ぎょうせい、1988年)
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ↑ 公共政策の分析視角 紀伊國屋書店
- ↑ a b 丸尾直美『福祉国家の話』日経文庫、1967年
- ↑ 丸尾直美 普通科第一期生(1955年度卒) 池新田高等学校 創立100周年
- ↑ 丸尾直美、鈴木守『演習経済学双書⑦経済政策』法学書院、1981年
- ↑ a b c d e 経済学の巨匠―26人の華麗なる学説入門 紀伊國屋書店
- ↑ ポスト福祉国家の総合政策―経済・福祉・環境への対応 紀伊國屋書店
- ↑ a b ECOシティ―環境シティ・コンパクトシティ・福祉シティの実現に向けて 紀伊國屋書店
- ↑ a b どうなる?どうする!年金と福祉 紀伊國屋書店
- ↑ 丸尾直美『福祉国家の経済政策――混合経済の政策原理』中央経済社、1965年
- ↑ CiNii 博士論文
- ↑ 「井口武夫教授・上條末夫教授・東忠尚教授・丸尾直美教授 退職記念号」『尚美学園大学総合政策研究紀要』11号、2006年3月
- ↑ 丸尾直美「書評 塚原康博著『高齢社会と医療福祉政策』(PDF)」『公共選択の研究』46号、2006年
- ↑ 丸尾直美、藤田至孝『賃金分配の新しい在り方――経済成長・生産性・物価』ダイヤモンド社、1964年
- ↑ 丸尾直美、藤田至孝『支払能力と適正賃金』林書店、1966年
- ↑ 『社会思想研究』第22巻第8号、1970年8月
- ↑ G.ミュルダール著、丸尾直美訳『社会科学と価値判断』竹内書店、1971年
- ↑ a b 青木慧『政労使秘団――組織と人脈』汐文社、1983年、141-142頁
- ↑ 原田運治、丸尾直美、永山泰彦「座談会 マル優見直しと財形制度改革の方向」『財形福祉』第12巻第6号、1986年6月
- ↑ 『インシュアランス』第3432号、1990年9月
- ↑ 福祉ミックスの設計―「第三の道」を求めて 紀伊國屋書店
- ↑ 国際医療福祉大学報『IUHW』第28号(PDF)学校法人国際医療福祉大学、1999年10月20日
- ↑ 『改革者』第147号、1972年6月
- ↑ 青木慧『政労使秘団――組織と人脈』汐文社、1983年、185頁
- ↑ 『改革者』第35巻第2・3号(通巻406・407号)、1994年6月
- ↑ 政策研究フォーラム役員体制(2011・12年度) 政策研究フォーラム
- ↑ 年表(PDF) 核兵器廃絶・平和建設国民会議
- ↑ 丸尾直美氏が死去 元慶応大教授 日本経済新聞、2020年12月10日
- ↑ 丸尾直美さん死去 朝日新聞デジタル、2020年12月10日
- ↑ 加藤寛『最適社会の経済学――比較経済体制論入門』講談社現代新書、1967年
- ↑ 武藤光朗編『福祉国家論――北欧三国を巡って』社会思想社、1965年
- ↑ 月刊誌「改革者」2021年2月号 政策研究フォーラム