甲斐姫

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甲斐姫(かいひめ、元亀3年(1572年) - ?)は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての女性。『のぼうの城』で一躍有名になったが、実像は不明な点も多い。

生涯[編集]

父は後北条氏の家臣で武蔵忍城主を務めていた成田氏長。母は上野国衆である由良成繁の娘。外祖母に赤井輝子がいる。

母は甲斐姫が幼い頃に氏長と成繁が後北条氏への帰属をめぐって対立したために、離縁されて実家に送り返された。甲斐姫はこの際、父親に引き取られている。

天正18年(1590年)に豊臣秀吉による小田原征伐が開始される。この際、父の氏長は小田原城に参加して籠城しており、忍城にはわずかな兵士と女子供を合わせて3000ほどしかいなかった。しかし一族の成田長親を総大将にして忍城は徹底抗戦する。このため、6月には石田三成大谷吉継率いる豊臣軍によって忍城は包囲された。忍城は「浮城」と呼ばれるように利根川荒川の間の低湿地に築かれた難攻不落の地であり、石田三成は忍城を水攻めしようとしたが、かえって失敗して自陣のほうに水が押し寄せてしまう。さらに甲斐姫は自ら鎧をまとって200の兵を率いて出撃して豊臣軍を散々に翻弄した。それを見た敵将の三宅高繁は甲斐姫をとらえて妻にしてくれると大言壮語して挑みかかるが、甲斐姫は矢であっさりと三宅を射殺した。後に上野を攻めていた前田利家真田昌幸らの別働隊が忍城に到着して加勢したが、それでも忍城は陥落せず、本城の小田原城が落城した後、甲斐姫の父の氏長の命令によりようやく開城している。

甲斐姫は父の氏長や継母と共に忍城から退転し、陸奥会津若松城主となった蒲生氏郷に身柄を預けられて岩代の福井城に入る。ところがこのお預かりの際、氏長の不在中に家臣が謀反を起こして継母を殺害するという事件が発生。甲斐姫はこの際、謀反の首謀者2人を討ち取ったという。このことを聞いた秀吉は甲斐姫を召し出し、その美貌を見て自らの側室に取り立てた。この縁により、父の氏長も赦免されて下野烏山城に2万石の大名として復帰している。

秀吉の死後、豊臣氏はその息子の秀頼が継承し、甲斐姫は秀頼の娘・天秀尼(奈阿)を養育する役目についた。慶長20年(1615年)の大坂夏の陣で豊臣氏が滅亡すると、秀頼の正室で徳川秀忠の長女である千姫の助命嘆願により、天秀尼は助命されて尼となる。この際、甲斐姫も助けられて共に尼となり、鎌倉の東慶寺に居住してその生涯を終えたと言われている。

関連作品[編集]

小説
  • 『笄堀』(山本周五郎
  • 『紅蓮の狼』(宮本昌孝) - 主人公。
  • 『水の城 いまだ落城せず』(風野真知雄)- 美しさと気性の荒さを併せ持ち、もし男性であったなら家臣や領民を災禍に巻き込みかねない、猪突猛進型の人物として描かれている[1]
  • のぼうの城』(和田竜)- 他国に知られるほどの美しさを持つが、武芸に秀でており男性並みの怪力を見せる。お転婆な性格だが、成田長親のことを密かに慕う人物として描かれている[2]
  • 『忍城の姫武者(上・下)』(近衛龍春) - 主人公。
  • 『甲斐姫物語』(山名美和子) - 主人公。『埼玉新聞』に連載された『甲斐姫翔る あかね色の道』を加筆修正したもので、その生涯が描かれている[3]
小冊子
  • 『忍城甲斐姫物語』(行田青年会議所)- 1995年発行。忍城築城から、石田三成との攻防戦での活躍や謀反討伐譚、秀吉の側室として生きる姿と、後の天秀尼とともに鎌倉・東慶寺へ入寺して亡くなるまでが記されている。作中では秀頼の娘は甲斐姫と豊臣秀頼の間に生まれた実子という説を採っている[4]
映画
漫画
  • 『のぼうの城』(和田竜、花咲アキラ
  • 『涙切姫〜のぼうの城 甲斐姫外伝〜』(和田竜、木嶋えりん) - 主人公。 『のぼうの城』のスピンオフ作品で、甲斐姫の視点から長親や忍城の戦いを描いている[5]
ゲーム

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. 風野真知雄 『水の城 いまだ落城せず』 祥伝社2000年、18-19頁。ISBN 978-4396327668
  2. 『『のぼうの城』オフィシャルブック』 角川書店2012年、53頁。ISBN 978-4041103135
  3. 甲斐姫物語”. 鳳書院. 2015年12月31日確認。
  4. 行田青年会議所広報委員会 『忍城甲斐姫物語』 行田青年会議所、1995年、49頁。
  5. 涙切姫〜のぼうの城 甲斐姫外伝〜”. 小学館. 2013年1月24日確認。
  6. a b characters”. 戦国無双3 Z. 2013年1月26日確認。

外部リンク[編集]