天国の組
天国の組(てんごくのくみ、Group of Heaven)とは、死の組とは逆に弱小チームが多く存在し強豪チームが不在か少ないグループやブロックを指す。
FIFAワールドカップ[編集]
下記にもあるように、日本代表は出場6回中4回も天国の組に入るという幸運のチームである。
1998 FIFAワールドカップ[編集]
1998 FIFAワールドカップから出場国が32ヶ国に増えた影響で、実力の劣るチームの出場が増えグループリーグで弱小チームが揃う「天国の組」が生まれるようになった。
この大会の天国の組はアルゼンチン、クロアチア、日本、ジャマイカと、シード国のアルゼンチン以外の3ヶ国が初出場という異例の組になったグループH。特にジャマイカと日本という前評判ワースト5に入る2ヶ国の対戦は「最弱決定戦」とも言われた。アルゼンチンとクロアチアがそれぞれ日本とジャマイカに2連勝し、第2戦で決勝トーナメント進出の2ヶ国が決定するワールドカップ史上トップクラスの空気のグループにもなった。消化試合となった最終戦はアルゼンチンがクロアチアを下し3戦全勝で1位通過。ジャマイカ対日本の最弱決戦はジャマイカ2点リードの後半29分に中山雅史が日本のワールドカップ初ゴールを決めるもジャマイカが2-1で勝利しワールドカップ初勝利、日本は3戦全敗に終わった。
2002 FIFAワールドカップ[編集]
21世紀最初の2002 FIFAワールドカップは初のアジアでの開催、さらに初の2ヶ国の共催となった。開催国は実力に関係なくシード国になるきまりにより、韓国と日本というまだワールドカップで未勝利のアジア勢2ヶ国がシードになった。その影響でグループHは前回3戦全敗の開催国日本、ともに過去にベスト4の経験があるヨーロッパの常連だが近年は落ち目のベルギーとロシア、アフリカ勢で最弱のチュニジアというワールドカップ史上最大ともいえる天国の組になった。強豪国が1つも存在しないグループであったため、日本を1位通過の本命にあげるメディアすら多くいた。
グループHの日本は初戦で鈴木隆行と稲本潤一がゴール、ベルギーと点の取り合いの末2-2の引き分けでワールドカップ初の勝ち点1を獲得する。ロシアとの第2戦は稲本潤一の今大会2ゴール目で先制し、この1点を守りきり1-0でワールドカップ初勝利を手にした。第3戦は森島寛晃と中田英寿のゴールでチュニジアに2-0で勝利し、2勝1分勝ち点7の1位で初の決勝トーナメント進出を決めた。2位は日本とチュニジアに引き分け、ロシアに勝って1勝2分のベルギーとなった。
他にブラジル、トルコ、コスタリカ、中国と、ブラジル以外前評判の低いチームが揃ったグループCがグループHに次ぐ「天国の組」になった。ブラジルは過去優勝4回、前々回優勝、前回準優勝の実績があったが南米予選で苦戦しギリギリの通過となったことで下馬評はそれほど高くなかった。このワールドカップ初戦でも12大会ぶりの出場のトルコに苦しみながらも、後半42分のPKで2-1の逆転勝ち。するとその後は中国に4-0、コスタリカに5-2で快勝し、3戦全勝で1位通過を決める。2位はコスタリカとトルコの争いになった。コスタリカは初戦で中国に2-0で勝利し、第2戦でトルコに引き分け、1勝1分の勝ち点4とし、最終戦でブラジルに引き分け以上なら決勝トーナメント進出、負けてもトルコが中国に引き分け以下か、トルコが中国に勝っても得失点差で上回れば決勝トーナメント進出という非常に有利な状態で迎えた。一方トルコは初戦でブラジルに1-2で逆転負けし、第2戦でコスタリカに引き分け、1分1敗の勝ち点1にとどまり、最終戦は中国になるべく大差で勝利し、なおかつコスタリカがブラジルに負けた上で得失点差でコスタリカを上回らなければ決勝トーナメントに進出できない厳しい状態であった。しかし既にグループリーグ突破を決めていながら手を緩めることのなかったブラジルにコスタリカは2-5の完敗、もう一方の試合でトルコは中国に3-0で快勝し、トルコが最終戦で勝ち点3点差、得失点差3点差を逆転して初の決勝トーナメント進出を決めた。
このグループCとグループHの天国の組同士が決勝トーナメント1回戦で対戦し、ともにC組のブラジルとトルコが勝利。トルコはグループリーグで中国、決勝トーナメントで日本、セネガルと、ヨーロッパ・南米の国に勝利することなくベスト4に進出するというワールドカップ史上稀に見るくじ運での上位進出となった。ブラジルも主な強豪との対戦はイングランドとドイツのみというくじ運で優勝。フランスやアルゼンチンが死のグループでグループリーグ敗退を喫したことから強豪国から不満が出る結果になった。
2006 FIFAワールドカップ[編集]
2006 FIFAワールドカップは比較的各グループともバランスの取れた組み合わせとなったが、アフリカ予選で番狂わせが多発しカメルーンやナイジェリアが予選敗退、5ヶ国中チュニジアを除く4ヶ国が初出場となったことで死の組が少ない反面、天国の組が多くできた。
開催国のドイツが所属するグループAは、意図的にくじを操作したかのように実力の低い国ばかりが揃い、ポーランド、エクアドル、コスタリカという天国の組になった。ポーランドはヨーロッパ予選でも組み合わせに恵まれた天国の組で2位、プレーオフに回らずワイルドカードで出場。エクアドルは南米予選でホームのみ強い内弁慶で、コスタリカは北中米予選3位。開催国ドイツは難なく3戦全勝し1位通過。ポーランドとコスタリカを下し2勝1敗のエクアドルが2位通過となった。
またグループHもシード国ながらまだ優勝経験のないスペイン、初出場のウクライナ、前回天国のH組で最下位のチュニジア、前回ドイツに0-8の記録的大敗を喫したサウジアラビアという天国の組になった。前評判は1強1中2弱という構図で、下馬評通り1強のスペインが圧倒的な3戦全勝で1位通過、1中のウクライナが2勝1敗で2位通過した。
他に世代交代が進まず前評判が低かったフランス、3大会ぶりの出場のスイス、前回ベスト4(八百長疑惑あり)だがアジア予選でサウジアラビアに2連敗し2位通過だった韓国、アフリカ予選まぐれ通過で初出場のトーゴがいるグループGも天国の組と言われたが、結果的にはフランス、スイス、韓国の三つ巴による激戦の組になった。1位は2勝1分のスイス、2位は1勝2分のフランス。韓国はフランスに引き分けたものの最終戦でスイスに敗れ、1勝1分1敗の3位に終わった。
このグループGとグループHはの天国の組同士が決勝トーナメント1回戦で対戦し、フランスがスペインに3-1、ウクライナがスイスに0-0からのPK戦の末勝利。ウクライナは強豪国に1つも勝利することなくベスト8に進出し、準々決勝でイタリアに0-3で完敗して場違い感を見せつけた。
2010 FIFAワールドカップ[編集]
2010 FIFAワールドカップは前回に続いて各グループともバランスが取れ、目立った死の組も天国の組も存在しない大会になった。そんな中で唯一天国の組と言えたのは、イングランド、アメリカ、スロベニア、アルジェリアのいるC組。アメリカは前回大会1分2敗の最下位でグループリーグ敗退、スロベニアは唯一の出場となった2002年大会で3戦全敗、アルジェリアは6大会ぶりの出場で、イングランド以外に強豪のいない組になった。結果的に圧倒的有利と言われたイングランドは苦戦し、アメリカ、アルジェリアに2試合連続の引き分け。アメリカも2試合連続引き分けスタートとなる。最終戦でイングランドとアメリカがともに勝利し、1勝2分で決勝トーナメント進出を決めるが、総得点の差でアメリカが僅かに上回り1位通過となった。グループCを勝ち上がったアメリカとイングランドはともにベスト16で敗退。今大会唯一ベスト16で全滅したグループとなった。
2014 FIFAワールドカップ[編集]
2014 FIFAワールドカップでは開催前年の2013年10月時点でのFIFAランキングでシード国が決められた結果、ワールドカップ本大会から遠ざかっていたベルギーとコロンビア、過去の実績が少ないスイスがシード国に入り、前回準優勝のオランダや過去に優勝経験があるイタリア、イングランド、優勝候補のポルトガルなどがシード落ちした。その結果グループB、グループD、グループGと死の組が3つも形成された。
それと同時に天国の組も形成され、グループCはシード国だが1998年以来の出場で過去ベスト8以上に進出したことがないコロンビア、ヨーロッパの出場国中最弱評価のギリシャ、過去2大会連続グループリーグ敗退で今回は落ち目のコートジボワール、アジアの日本という過去ワールドカップでベスト8以上に進出したことが1度もない国ばかりの天国の組になった。日本は2010年以降の好成績に欧州主要リーグでの日本人選手の活躍で期待が高まった上、このような天国の組に入ったことでグループリーグ突破間違いなし、初のベスト8進出も狙えると予想する人が多くなっていた。しかし初戦でコートジボワールに本田圭佑のゴールで先制するも、ディディエ・ドログバ登場後は圧倒的劣勢となり、後半2失点し逆転負け。続く第2戦ではギリシャが試合序盤に退場者を出し数的有利に立ちながらシュートが決まらず0-0のスコアレスドロー。ほぼ絶望的となりながら首の皮一枚つながってる状態で迎えたコロンビアとの最終戦は1-4の大敗。2010年から続いた日本サッカーの黄金時代が終わった。コロンビアが3戦全勝で1位通過、最終戦のアディショナルタイムに疑惑のPKでコートジボワールに勝利したギリシャが1勝1分1敗で2位通過となった。
またグループHは2002年以来ワールドカップにもユーロにも出場していなかったにも関わらずシード国のベルギー(ポット1)に、ロシア(ポット4)、アルジェリア(ポット2)、韓国(ポット3)というすべてのポットから最弱レベルの国が勢揃いしたワールドカップ史上最大級の天国の組になった。ベルギーが3戦全勝で1位通過、韓国に4-2で快勝しロシアに引き分けたアルジェリアが1勝1分1敗で2位通過となった。
2018 FIFAワールドカップ[編集]
2018 FIFAワールドカップは、第1ポットだけでなくすべてのポットをFIFAランキングで分けたこともあり、ずば抜けた死の組が存在しないバランスの取れたグループになった。ただFIFAランキングが出場国中最下位の開催国ロシア、3大会ぶりの出場のポーランドが第1ポットになった影響で、この2ヶ国が入るグループが天国の組になった。
2018 FIFAワールドカップ・グループAは開催国ロシア、古豪ウルグアイ、7大会ぶりの出場のエジプト、2002年大会で0-8の記録的大敗を喫したことで有名なサウジアラビアが入り、強豪がウルグアイしかいない天国の組になった。ロシアとウルグアイがそれぞれサウジアラビア、エジプトに2連勝し、第2戦で決勝トーナメント進出の2ヶ国が決定。最終戦はウルグアイがロシアに3-0で快勝し3戦全勝で1位通過、前評判通り1強1中2弱がはっきりした無風のグループになった。サウジアラビアとエジプトの敗退が決まった国同士の最終戦は、サウジアラビアが2-1で逆転勝ちし1994年以来24年ぶりのワールドカップ勝利をあげた。 ただグループA通過国はともにベスト16でウルグアイはポルトガルに、ロシアはスペインに勝利し2ヶ国ともベスト8進出となった。
グループHはポーランド、コロンビア、セネガル、そして日本が入り、優勝候補にあがるチームが1つもいないため下馬評ではグループAを超える天国の組と言われた[1]。初戦のコロンビア対日本戦では試合開始3分にコロンビアのカルロス・サンチェスがペナルティーエリア内でのハンドで退場(これは1986年のウルグアイ対メキシコ戦の開始1分に次ぐワールドカップ史上2位の退場記録になった)。それによって獲得したPKを香川真司が決めて日本が先制する。コロンビアは試合時間のほとんどを10人で戦わざる得なくなった結果、前半39分にフリーキックから川島永嗣のキャッチミスでコロンビアに追いつかれるも、後半28分に大迫勇也の勝ち越しゴールで日本が2-1で勝利。日本は前回敗れたコロンビアにリベンジを果たすとともに、ワールドカップでアジア勢初の南米勢からの勝利をあげた。
ともに初戦を勝利して迎えた日本とセネガルの第2戦は2-2の引き分け。もう1つの試合はコロンビアがポーランドに3-0で快勝。ポーランドは2連敗でシード国でありながら最終戦を待たずにグループリーグ敗退が決まった。結果的にコロンビアは初戦に負けたものの残り2試合を連勝し、2勝1敗で1位通過を決めた。 2位争いとなった日本とセネガルは、どちらも初戦は2-1の勝利、直接対決の第2戦は2-2の引き分け、第3戦は0-1で負けたため、1勝1分1敗で勝ち点、得失点差、総得点、当該チーム同士の成績がすべて並んでしまう。最後の決め手となったのはこの大会から導入されたフェアプレーポイント。イエローカードの枚数が日本4枚、セネガル6枚でイエローカードが少なかった日本が辛うじて2大会ぶり3回目の決勝トーナメント進出を決めた。
このグループは日本対コロンビアでのコロンビアの同点ゴール、セネガル対ポーランドでのセネガルの2点目、日本対セネガルでのセネガルの先制点とゴールキーパーの凡ミスによる得点シーンが3度もあった。さらに最終戦の日本対ポーランドでは、同時刻に行われていたコロンビア対セネガルでコロンビアが1-0でリードしているという情報を知った日本が、ポーランドに0-1でリードされていながら試合終盤の残り10分前後をボール回しでやりすごし、そのまま0-1でポーランドに敗れるというプレーが世界中で物議を醸した。GKのミスによる失点の多さに加えて、開始3分で退場の珍事、世界中から批判を受けた談合試合と、顔ぶれだけでなく試合内容もレベルの低いグループとなった。
物議を醸しながらも決勝トーナメントに進出した日本は、ベスト16で優勝候補のベルギーと対戦。後半に原口元気と乾貴士のゴールで2点を先制し初のベスト8進出に近づくが、その後ベルギーが2ゴールで追いつき、アディショナルタイムにカウンターからベルギーに逆転ゴールを決められ、2-3の逆転負け。決勝トーナメントでは48年ぶりとなる2点差からの大逆転負けで日本は初のベスト8進出を逃した。コロンビアもPK戦の末イングランドに敗れたことにより、グループHはベスト16で全滅した。
UEFA欧州選手権[編集]
UEFA EURO 2012[編集]
UEFA EURO 2012はドイツ、オランダ、ポルトガル、デンマークと4ヶ国すべてがFIFAランキング10位以上の死の組グループBの他、グループCもスペインとイタリアが同居、グループDもイングランド、フランス、スウェーデンが入るなどどのグループ強豪揃いの中で、1つだけ誰もが「ん?」と思った天国の組がグループA。ポーランド(ポット1)、ロシア(ポット2)、ギリシャ(ポット3)、チェコ(ポット4)と、すべてのポットから最弱レベルの国が勢揃いした欧州選手権史上最大級の天国の組になった。チェコは初戦でロシアに1-4で大敗するが、その後2連勝し2勝1敗で1位通過。2位争いは最終戦でギリシャがロシアに勝利し、1勝1分1敗で並ぶも直接対決の成績でギリシャが2位通過した。開催国ポーランドは意図的にくじを操作したかのような天国の組に入りながら、2分1敗の最下位でグループリーグ敗退となった。グループAを突破したチェコとギリシャは、ともに準々決勝で死のグループBを突破したドイツとポルトガルに敗れ、グループBとのレベル差が明らかになる決勝トーナメントになった。
FIFAワールドカップ予選[編集]
2018 FIFAワールドカップヨーロッパ予選[編集]
ワールドカップ本大会だけでなく、予選のポット分けもFIFAランキングで行われるようになった結果、実力や実績の低いチームが一時的に高い位置にランキングされて第1ポットに入ることが各大陸で見られる。2014 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選ではポット分けが発表されたときから、名の知れた強豪国が第1ポットの中に1つだけ「ん?」と全世界が思うような国が混じっていた。1998 FIFAワールドカップを最後にワールドカップにも欧州選手権にも出場できていないノルウェーがまさかの第1ポットになったのである。そして予想通り第1ポットからノルウェーが入ったグループが天国の組になった。
2014 FIFAワールドカップ・ヨーロッパ予選グループEはノルウェー、スロベニア(第2ポット)、スイス(第3ポット)、アルバニア(第4ポット)、キプロス(第5ポット)、アイスランド(第6ポット)と、第1ポットだけでなくスイスとアイスランド以外各ポットで実力が落ちるチームが勢揃いし、ヨーロッパ予選史上最弱クラス、アジア予選レベルとまで揶揄された天国の組が誕生した。第3ポットでは最強のスイスがこのグループに入ったことが唯一の救いであった。
ノルウェーは第1ポットになった上にこのような天国の組に入れたにも関わらずその恩恵を生かせず4位と惨敗。第3ポットのスイスが余裕で1位通過でワールドカップ出場を決め、さらにスイスは本大会でオランダを抑えてシード国を獲得した。2位でプレーオフに進んだのはなんと第6ポットのアイスランドになった。第6ポットのチームがグループ2位になったのはヨーロッパ予選史上初で、他の大陸予選を通じても4ランクのアップセットは例がない。アイスランドはこの予選のプレーオフではクロアチアに敗れたが、続くUEFA EURO 2016に初出場を決め本大会でもベスト8進出、さらに2018 FIFAワールドカップにも初出場し、ワールドカップ史上最少人口の出場国にもなった。このアイスランドの躍進は黄金世代が揃ったこともあるが、2014年のワールドカップ予選でこのような天国の組に入った恩恵もある。
脚注[編集]
- ↑ 日本と同居は“天国の組”!? W杯敵国コロンビアメディアが喜色満面「最高のドローだ」 Football ZONE Web、2017年12月2日