サイクロン

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サイクロン(Cyclone)とは、インド洋や南太平洋西部に発生する台風のことである。熱帯亜熱帯の海洋上で発生する熱帯低気圧の一種である。構造や発達メカニズムは熱帯低気圧に分類される台風とほぼ同一である[1]

概要[編集]

サイクロンは定義が異なる場合が多く、一般的に北インド洋・南インド洋・南太平洋西部に発生する強い熱帯低気圧をサイクロン、もしくはトロピカルサイクロンと呼ばれている。ただ、サイクロンは英語で広い意味での低気圧全般、つまり温帯低気圧や小さなスケールの渦までを意味する場合があり、トロピカルサイクロンも熱帯低気圧全般、つまり台風やハリケーンを含んで意味する場合があるため、インド洋や南太平洋西部に限定された熱帯低気圧を意味するかどうかは注意を要する場合が多く、書籍によって意味が異なっている場合も少なくない[1]

北インド洋のサイクロンは1年の内で活発な時期が2度あり、1度目は5月から6月頃、2度目が10月から11月頃で、7月から9月(9月の場合は前半まで)頃は強いサイクロンが比較的発生しにくい。同じ北半球の北太平洋西部の台風や北太平洋東部・北大西洋のハリケーンはからをピークとして1年に1度だけ比較的長く活発な時期を持っているので、その点は北インド洋はユニークな海域と言える。この原因は北インド洋の北側にある大きな陸地、つまりアジア大陸があるからで、夏は陸地が強く温められる影響で他の海域とは異なる風系(モンスーン)が形成されるからである。夏の北インド洋では対流圏の上層と下層との間の風の向きが大きく異なるため、サイクロンの構造が壊されやすい。このため、サイクロンは夏の時期には発達しにくく、その前後に分かれて活発な時期が1年に2度起こるのだと考えられている[1]

インド洋のサイクロンの発生に関わる現象の一つとしてマッデンジュリアン振動がある。これは活発な積乱雲の領域が赤道をゆっくりと東に進む現象であり、これによりサイクロンの発生も活発化させられる。時として北インド洋と南インド洋に同時にサイクロンが発生するという現象も起こる。2006年5月にはマッデンジュリアン振動に伴ってインド洋西部で赤道をはさんでほぼ南北対称に2つのサイクロン(A1とA2)が発生し、その後、マッデンジュリアン振動がインド洋東部に進むとそこで再び南北対称に2つのサイクロン(B1とB2)が発生した。これはマッデンジュリアン振動がインド洋からさらに東に進み、太平洋の熱帯低気圧の活動に影響を与えたものと言われている[1]

脚注[編集]

  1. a b c d 『風の事典』丸善出版、2011年、69頁

参考文献[編集]

関連項目[編集]