アイリッシュマン
- 基礎情報 - | |
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ジャンル | マフィア映画、伝記映画、歴史映画 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
製作年 | 2019年 |
- 備考 - | |
配給 | Netflix |
上映時間 | 209分(3時間29分) |
言語 | 英語 |
製作費 | 1億5900万ドル(約175億円)[1] |
『アイリッシュマン』(原題:The Irishman)は、2019年に公開されたアメリカ映画。監督はマーティン・スコセッシ、主演はロバート・デ・ニーロ。原作はチャールズ・ブラントのノンフィクション作品『アイリッシュマン』(原題:I Heard You Paint Houses、2004年)。映倫区分はPG12[2]。
概要[編集]
ラッセル・ブファリーノ(ブファリーノ・ファミリーのボス)とジミー・ホッファ(全米トラック運転手組合会長)に仕え、数々の犯罪を行ってきたとされるフランク・シーラン(1920~2003)の半生を描いたギャング映画。フランク・シーランをロバート・デ・ニーロ、ジミー・ホッファをアル・パチーノ、ラッセル・ブファリーノをジョー・ペシが演じている。物語は90年代末に介護施設でシーランがインタビューに答えるタイムライン、1975年7月にシーランとラッセル両夫妻がラッセルの従兄弟ビルの娘の結婚式に向かうためドライブ旅行をしているタイムライン、50年代にシーランがラッセルと初めて出会い、一介のトラック運転手からマフィアのヒットマン、全米トラック運転手組合の幹部になりあがっていく過程のタイムラインという大きく分けて3つのタイムラインからなる。3つのタイムラインが頻繁に入れ替わり、50年代から75年のドライブ旅行の場面に追いつき、そのまま75年以降も描かれるという構成になっている[3][4]。ケネディ暗殺事件とともにアメリカ近現代史上最大の謎と呼ばれる1975年7月30日のホッファ失踪の真相が明かされる。1949年から2000年までの出来事を描いているが、主演者は俳優をコンピューターグラフィックスで若返らせるディエイジング技術によって代役なしで演じている[5]。台詞がほとんど無いものの物語を通して重要な人物と目されるシーランの次女ペギーは、少女時代をルーシー・ガリーナ(Lucy Gallina)が、成人後をアンナ・パキンが演じている。
製作総指揮を担当したニコラス・ピレッジは、『ミーン・ストリート』(1973年)、『グッドフェローズ』(1990年)、『カジノ』(1995年)と合わせて緩やかなスコセッシ4部作をなすと考えている[6]。4作ともスコセッシとデニーロが組んだマフィア映画で、マフィアのアソシエイトを主人公にしている。『アイリッシュマン』と『ミーン・ストリート』はギャングものでありながらキリスト教(カトリック)的な贖罪をテーマとした点で共通性がある。『アイリッシュマン』で全米トラック運転手組合年金基金の融資を受けたラスベガスのカジノが『カジノ』の舞台になっている。またアル・パチーノが出演してきた映画、特に『ゴッドファーザー』シリーズ(1972~1990年)へのオマージュが散りばめられており、家族の崩壊や裏切りといったテーマや時代を超越した構成は同作品と共通性がある[7][3]。主人公の人生とピッグス湾事件、マクレラン委員会、ケネディ暗殺事件、ウォーターゲート事件、ホッファ失踪事件といったアメリカ近現代史の出来事が交差するストーリーは『フォレスト・ガンプ』(1994年)と共通性がある[3][8]。
登場人物[編集]
受賞・ノミネート[編集]
- 2019年11月、第23回ハリウッド映画賞:アル・パチーノが助演男優賞、エマ・ティリンガー・コスコフがプロデューサー賞、パブロ・ヘルマンが視覚効果賞を受賞[9]。
- 2019年12月、第91回ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞:作品賞を受賞。スティーブン・ザイリアンが脚色賞を受賞[10]。
- 2019年12月、第85回ニューヨーク映画批評家協会賞:作品賞を受賞。ジョー・ペシが助演男優賞を受賞[11]。
- 2019年12月、AFIアワード2019年:映画部門トップ10に選出[12]。
- 2019年12月、第77回ゴールデングローブ賞映画部門:4部門5ノミネート(作品賞ドラマ部門、助演男優賞[アル・パチーノ、ジョー・ペシ]、監督賞、脚本賞)。
- 2020年1月、第25回放送映画批評家協会賞映画部門:アンサンブル演技賞を受賞[13]。
- 2020年2月、第92回アカデミー賞:9部門10ノミネート(作品賞、監督賞、助演男優賞[アル・パチーノ、ジョー・ペシ]、脚色賞、衣装デザイン賞、撮影賞、編集賞、美術賞、視覚効果賞)。
紹介しているサイト[編集]
- Mashup Reporter 編集部「マーティン・スコセッシ監督「アイリッシュマン」NY映画祭でワールドプレミア。批評家が絶賛」Mashup Reporter、2019年9月28日。
- Beatrice Loayza「Seen but not heard: why don't women speak in The Irishman?」The Guardian、2019年11月7日(最終更新日:2020年8月18日)。
- David Fear「史上最高のギャング映画になるか? スコセッシの新作『アイリッシュマン』に迫る」Rolling Stone Japan、2019年11月20日。
- 藤原敏史「これはもはや「映画」ではないのかも知れない〜マーティン・スコセッシ監督最新作『アイリッシュマン』(東京国際映画祭)」cinefil、2019年11月22日。
- 福山幸司「アイリッシュマン - レビュー」IGN Japan、2019年11月27日。
- D-ANE「『アイリッシュマン』──レジェンドたちが見せた凄みと、その見どころ。」VOGUE、2019年11月28日。
- Martin Chilton「『アイリッシュマン』のテーマ曲を手掛けるロビー・ロバートソンが語るスコセッシや曲作り、そして裏社会との関係」uDiscoverMusic日本版、2019年11月28日。
- 大森さわこ「『アイリッシュマン』マーティン・スコセッシが描いてきたギャング映画への「落とし前」」CINEMORE、2019年11月30日。
- 平田裕介「マフィア映画の巨匠・スコセッシが最新作『アイリッシュマン』で「有害な男性性」を描かなければならなかった理由」文春オンライン、2019年12月6日。
- 奥富敏晴「滝藤賢一が語る「アイリッシュマン」」映画ナタリー、2019年12月13日。
- 宇野維正「宇野維正が『アイリッシュマン』を徹底解説!スコセッシ&デ・ニーロが映画人生を注ぎ込んだ集大成」MOVIE WALKER、2019年12月13日。
- 「宇多丸、『アイリッシュマン』を語る!【映画評書き起こし 2019.12.13放送】」TBSラジオ、2019年12月19日。
- MATT GOLDBERG「‘The Irishman’: Let’s Talk about That Final Shot」COLLIDER、2019年12月20日。
- 宇野維正「『アイリッシュマン』は、2回目がより面白い!宇野維正が解説するアメリカの“自己批判”と“郷愁”」MOVIE WALKER、2019年12月20日。
- デーナ・スティーブンズ「スコセッシのマフィア映画『アイリッシュマン』は円熟の境地」ニューズウィーク日本版、2019年12月21日。
- 辰巳JUNK「ハリウッドで広がる“男性像の再編” 2019年のトレンドワード「有害な男らしさ」をめぐる映画界の動き」Real Sound、2019年12月30日。
- 「THE BACKGROUND OF “THE IRISHMAN” vol.01 スコセッシ、デ・ニーロ、パチーノ。 遂にクロスしたレジェンドたちのキャリア」SWITCH ONLINE、2020年1月13日。
- 「デジタル技術による“若返り”の驚異:映画『アイリッシュマン』のデ・ニーロたちは、こうして若々しく生まれ変わった」WIRED、2020年1月13日。
- リチャード・ブロディ「『アイリッシュマン』は、家の小さな画面で繰り返し観るためにつくられている:映画レヴュー」WIRED、2020年2月29日。
- rightwide「「アイリッシュマン」の食べ物」FoodWatchJapan、2020年5月22日。
- 「マーティン・スコセッシが語る、『アイリッシュマン』と死について」SPUR.JP、2020年5月23日。
出典[編集]
- ↑ ネットフリックス、オスカー不調 「アイリッシュマン」受賞逃す 日本経済新聞、2020年2月10日
- ↑ 一般財団法人映画倫理機構
- ↑ a b c 宇多丸、『アイリッシュマン』を語る!【映画評書き起こし 2019.12.13放送】TBSラジオ、2019年12月19日
- ↑ リチャード・ブロディ「『アイリッシュマン』は、家の小さな画面で繰り返し観るためにつくられている:映画レヴュー」WIRED、2020年2月29日
- ↑ デジタル技術による“若返り”の驚異:映画『アイリッシュマン』のデ・ニーロたちは、こうして若々しく生まれ変わったWIRED、2020年1月13日
- ↑ David Fear「史上最高のギャング映画になるか? スコセッシの新作『アイリッシュマン』に迫る」Rolling Stone Japan、2019年11月20日
- ↑ 福山幸司「アイリッシュマン - レビュー」IGN Japan、2019年11月27日
- ↑ 佐野亨編『マーティン・スコセッシ 映画という洗礼』河出書房新社、2020年、30頁
- ↑ マーティン・スコセッシ監督作『アイリッシュマン』、ハリウッド映画賞で3冠。 VOGUE、2019年11月5日
- ↑ ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞発表 作品賞は「アイリッシュマン」 映画com.、2019年12月4日
- ↑ ニューヨーク映画批評家協会賞発表 マーティン・スコセッシ監督「アイリッシュマン」が作品賞 映画com.、2019年12月5日
- ↑ AFIの2019年映画トップ10に「アイリッシュマン」「ジョーカー」「1917」など 映画com.、2019年12月9日
- ↑ 放送映画批評家協会賞作品賞は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」 映画com.、2020年1月13日