ビル・ブファリーノ

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ビル・ブファリーノ英語:Bill Bufalino、本名:ウィリアム・ユージン・ブファリーノ(William Eugene Bufalino)、1918年4月13日 - 1990年5月12日)は、アメリカ合衆国弁護士全米トラック運転手組合(チームスターズ)の顧問弁護士[1][2]。全米トラック運転手組合と会長のジミー・ホッファの裁判で代理人を務めた。バファリーノバッファリーノとも表記される。

初期の経歴[編集]

1918年4月13日、ペンシルベニア州ピッツトンで、シチリア島モンテドーロ出身のイタリア人移民、サルバトーレ・ブファリーノとルイーズ・ブファリーノの間に生まれた[3]。炭鉱労働者の家庭の9人の子供のうちの1人だった。2年間カトリックの司祭になるための勉強をした後、法律の道に進んだ。1942年にディキンソン法科大学を卒業し、第二次世界大戦では陸軍法務総監部の中尉として従軍した。復員後は個人の法律事務所に入った[4]

1945年にデトロイト・パートナーシップの一員、ヴィンセント・メリの妹で[5]アンジェロ・メリの姪であるマリー・アントワネット・メリと結婚した[2]。2人の間には1人息子のウィリアム・ジュニアと4人の娘、ルイーズ、グレース=アン、トニ、フランが生まれた[4]FBIの情報提供者によると、結婚後にマフィアメイドマンになったとされる[2]。メリ一族の助けを借りてBilvin Distributing Companyを立ち上げ、ジュークボックス・ビジネスを始めた[2]

また、いとこのラッセル・ブファリーノブファリーノ・ファミリーのボス)と生涯を通じて親しく、ラッセルはビルの娘の名付け親にもなった[2]フランク・シーランによると、実際はラッセルと血縁関係に無かったが、いとこだと称することを許されていた[6]。ただし遠縁だった可能性はある[7]

キャリア[編集]

1947年[2]から21年間にわたり[8]全米トラック運転手組合(チームスターズ)の第985支部長を務めた。この間に7つの裁判で組合と会長のジミー・ホッファを弁護し、5つの裁判で勝利を収めた[4]。ホッファが陪審員買収の罪で収監された1967年[9][10]、または出所した1971年にホッファと決別した[4]

ブファリーノはマフィアとのつながりをたびたび非難された。1950年代に労働組合と組織犯罪の関係を調査した2つの上院委員会で証言した[8]デトロイト地域の「ジュークボックス・ローカル」である第985支部は、上院の調査では「ギャングが支配する事業者のための集金代行会社」とされた。自分を組織犯罪の一員だと描写し、評判を傷つけたとして、アーカンソー州選出の民主党上院議員ジョン・マクレランと上院マクレラン委員会の首席顧問ロバート・F・ケネディを提訴したが、敗訴した[4]

ホッファは1975年7月30日に失踪した。その2日後にブファリーノの娘の結婚式が開かれ、ホッファが失踪当日に会う予定のあったアントニー・ジアカローネ(デトロイト・パートナーシップのカポ)とアントニー・プロヴェンツァーノジェノヴェーゼ・ファミリーのカポ)や、ラッセル・ブファリーノ、フランク・シーランなどホッファの拉致と殺害の容疑がかけられたマフィアが出席した[2]。ホッファ失踪の6週間後に開かれた連邦大陪審では、ホッファの拉致と殺害の第1容疑者9人(アントニー・プロヴェンツァーノ、スティーヴン・アンドレッタトマス・アンドレッタサルヴァトーレ・ブリガグリオガブリエル・ブリガグリオ、フランク・シーラン、ラッセル・ブファリーノ、アントニー・ジアカローネ、チャッキー・オブライエン)の弁護を引き受けた[11]

ブファリーノは、CIAがホッファに頼んでサム・ジアンカーナシカゴ・アウトフィットの元ボス。1975年6月19日暗殺)にキューバ大統領フィデル・カストロの暗殺を手配させ、この陰謀に関与したホッファは口封じのために殺されたのだと主張した[12]

1982年に引退した[4]。引退後は全米トラック運転手組合の特別顧問となった[13]

死去[編集]

1990年5月12日、白血病のためフロリダ州フォートローダーデールのホーリークロス病院で死去した。72歳だった[4]ミシガン州のHoly Sepulchre Cemeteryに埋葬されている[12]

映画[編集]

2019年に公開されたマーティン・スコセッシ監督の映画『アイリッシュマン』では、レイ・ロマーノがブファリーノを演じている[7]

出典[編集]

  1. チャールズ・ブラント著、高橋知子訳『アイリッシュマン 上』ハヤカワ文庫NF、2019年、251頁
  2. a b c d e f g McKennett, Hannah (2019年11月8日). “Meet Bill Bufalino, The Lawyer Who Abandoned Jimmy Hoffa Right Before His Disappearance”. All That's Interesting. 2022年7月4日確認。
  3. “Atty. Bufalino Hoffa's Choice Monitor Board”. Pittston Gazette: p. 1. (1960年3月25日. https://www.newspapers.com/clip/21510996/pittston-gazette/ 2022年7月4日閲覧。 
  4. a b c d e f g Fowler, Glenn (1990年5月15日). “William Bufalino Sr., 72, Lawyer For Hoffa and Teamsters' Union”. The New York Times: p. 6. https://web.archive.org/web/20090701062802/https://www.nytimes.com/1990/05/15/obituaries/william-bufalino-sr-72-lawyer-for-hoffa-and-teamsters-union.html 2022年7月4日閲覧。 
  5. MARIE A. TONI BUFALINO”. Legacy.com (2002年12月6日). 2022年7月4日確認。
  6. 『アイリッシュマン 上』36頁
  7. a b Holmes, Adam (2017年7月15日). “The Irishman Has Added Ray Romano, Here's Who He'll Play”. CINEMABLEND. https://www.cinemablend.com/news/1680960/the-irishman-has-added-ray-romano-heres-who-hell-play 2022年7月4日閲覧。 
  8. a b “William E. Bufalino Sr.; Attorney for Teamsters Union, Jimmy Hoffa”. Los Angeles Times. (1990年5月21日. http://articles.latimes.com/1990-05-21/news/mn-201_1_jimmy-hoffa 2022年7月4日閲覧。 
  9. Dan E. Moldea is the author of the 1978 book, The Hoffa Wars. MOLDEA.COM
  10. Jimmy Hoffa: Disappearing Man - The Trial”. crimeandinvestigation.co.uk. 2022年7月5日確認。
  11. チャールズ・ブラント著、高橋知子訳『アイリッシュマン 下』ハヤカワ文庫NF、2019年、126-127頁
  12. a b “Union Ex-Teamster attorney Bufalino dies”. Detroit Free Press: p. 18. (1990年5月13日. https://www.newspapers.com/clip/36754316/bufalino-obituary-pt-2/ 2022年7月4日閲覧. "After Hoffa disappeared in 1975 from a Bloomfield Township parking lot, the lawyer often was asked what he thought has happened. Mr. Bufalino theorized the CIA had asked Hoffa to have Chicago Mafia boss Sam Giancana arrange for assassination of Cuban leader Fidel Castro. [...] According to Mr. Bufalino's theory, because Hoffa was involved in the intrigue, he had to be killed to insure his silence. [...] with entombment in Holy Sepulchre Mausoleum, Southfield." 
  13. RISEN, JAMES (1985年7月27日). “But FBI Thinks It Knows Killers : After 10 Years, Hoffa Case Still Shrouded in Mystery”. Los Angeles Times. 2022年7月15日確認。

外部リンク[編集]