フィリップ・テスタ

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フィリップ・チャールズ・テスタ英語:Philip Charles Testa、1924年4月21日 - 1981年3月15日)、通称:チキンマン(The Chicken Man)は、アメリカ合衆国マフィアフィラデルフィア・ファミリーのボスを短期間だけ務めたことで知られる。1980年にアンジェロ・ブルーノが暗殺された後にボスになったが、1981年に自宅の玄関ポーチの下に仕掛けられた釘爆弾で暗殺された。ニックネームは養鶏業に携わっていたことに由来する。

経歴[編集]

ペンシルベニア州フィラデルフィアシチリア移民の子として生まれ、10代の頃は家族とともにサウス・フィラデルフィアに住んでいた。サウス・フィラデルフィアで後にマフィアのボスとなるアンジェロ・ブルーノと出会い、友人になった。その後、アルフィア・アーチディアコノ(記録によれば彼女の家族はニュージャージー州セイラム郡に農場を所有していた)と結婚した。テスタに関する初期の警察の記録では、テスタは合法的な収入源を持たず、「普通のギャンブラー」としての勝ち金だけに頼っていると警察に指摘されていた。テスタ夫妻の息子のサルヴァトーレ・テスタも父と同様に組織犯罪に関与し、父が殺害された3年後に殺害された[1]

1970年にアンジェロ・ブルーノのアンダーボスとなった。1980年3月21日にブルーノが暗殺された。この暗殺はコンシリエーレのアントニオ・カポニグロの命令でなされたとされる。1980年4月18日にカポニグロが死体となって発見された。カポニグロは事前にコミッションからブルーノ殺害の許可を得るためにジェノヴェーゼ・ファミリーのボスであるフランク・ティエリに近づき、ティエリはカポニグロにコミッションの支持を得たと話したとされる。しかし、コミッションはカポニグロがコミッションの許可無くブルーノを殺害したとして、カポニグロの殺害を命じたとされる。テスタが新しいボスとなり、ピーター・カセッラをアンダーボスに、ニコデモ・スカルフォをコンシリエーレに任命した[2]

死とその余波[編集]

テスタが殺害される1カ月前、テスタ、フランク・ナルドゥッチ・シニア、ハロルドとマリオ・リッコベネ、パスクァーレ・スピリト、ジョゼフ・チャンカリーニとその仲間数人が、マフィアが運営するギャンブルと高利貸しを中心としたラケッティアリング事件で起訴された。この事件は「ギャングプランク作戦」と呼ばれる捜査に基づいており、フィラデルフィアの連邦検事局がRICO法に基づいて提起した最初の訴訟の1つだった。1981年3月15日、テスタはスティーブン・ジラード公園の向かいにあるサウスフィラデルフィアの自宅に戻った。テスタがポーター通り2117番地にある2棟立ての自宅のドアを開けようとしたとき、玄関ポーチの下に仕掛けられた釘爆弾が爆発した[3]。テスタの死はアンダーボスで麻薬密売人のピーター・カセッラとカポのフランク・ナルドゥッチ・シニアが命じたとされ、その結果、ナルドゥッチは銃殺され、カセッラはマフィアから追放されてフロリダに逃亡した。

テスタ殺害はファミリー内の抗争の引き金となった。ニコデモ・スカルフォがトップの座を手に入れ、長年の友人であるチャッキー・メルリーノをアンダーボスに、テスタの忠臣であるフランク・モンテをコンシリエーレに登用した[4][5]。スカルフォはその後10年間にわたって、暴力的かつ偏執的な性格に押され血みどろの暴力でファミリーを率いた。

大衆文化[編集]

テスタの非業の死はブルース・スプリングスティーンの曲「アトランティック・シティ」(1982年のアルバム『ネブラスカ』に所収)の冒頭で言及されている[6]。この曲の冒頭の歌詞は「やつらは昨夜フィラデルフィアで / "チキン・マン"を殺し、家まで爆破した / ボードウォークでは喧嘩の準備 / あのギャングたちがどうでるか見ものだ」(訳詞:三浦久)である[7]フィリップ・レオネッティは、この歌詞の「ボードウォークのギャング」は叔父のニコデモ・スカルフォと自分のことであり、テスタの殺害に関わった者を皆殺しにしたと述べている[8]

2019年に公開されたマーティン・スコセッシ監督の映画『アイリッシュマン』では、ラリー・ロマーノがフィル・テスタを演じた。

出典[編集]

  1. Upi (1984年9月21日). “Salvatore Testa, Buried; Reputed to Be Crime Leader”. The New York Times. https://www.nytimes.com/1984/09/21/obituaries/salvatore-testa-buried-reputed-to-be-crime-leader.html 2022年8月25日閲覧。 
  2. Organized Crime in Pennsylvania: A Decade of Change, 1990 ReportPDF”. Pennsylvania Crime Commission (1991年4月). 2022年8月25日確認。
  3. Capuzzo, Michael 『The Murder Room: The Heirs of Sherlock Holmes Gather to Solve the World's Most Perplexing Cold Cases』 Gotham Books、New York City、2010年189。ISBN 978-1592401420
  4. “This Mob Shot Its Brains Out Crime boss Ralph Natale, in rare testimony against his own, tells a tale of murder--and ineptitude.”. The Los Angeles Times. (2001年5月4日. https://web.archive.org/web/20160311064832/http://articles.latimes.com/2001/may/04/news/mn-59280/2 2022年8月17日閲覧。 
  5. Mob Violence Is Personal For Narducci's Sons”. Philly.com (1988年10月5日). 2022年8月17日確認。
  6. Beviglia, Jim 『Counting Down Bruce Springsteen: His 100 Finest Songs』 Rowman & Littlefield、2014年、161頁。ISBN 978-1-4422-3066-8
  7. LPレコード『ネブラスカ』(CBS・ソニー、1982年)付属の訳詞より。
  8. The Mafia Prince Next Door”. Huffington Post (2016年12月11日). 2022年8月17日確認。

参考文献[編集]

  • Anastasia, George 『Blood and Honor: Inside the Scarfo Mob - The Mafia's Most Violent Family』、2004年。ISBN 0940159864

外部リンク[編集]